#301 リラックスタイム
とりあえず新章のプロローグ的な( ˘ω˘ )(難産だったので遅れたのは許して
ぐにゅり、と何かに頬を押されて目が覚めた。
そろそろ見慣れた天井。ブラックロータスに用意した俺の寝室の天井だ。両脇に感じる体温。ああ、そう言えば昨日はティーナとウィスカと一緒に寝たんだっけ。ということはこの頬を今も押し続けているのはきっと姉妹のどちらかだろう。両隣で寝ている二人を起こさないように気をつけつつ、俺の頬を押しているものを手で掴む。
ん? これは?
「……足?」
俺の頬を押していたのは小さな足だった。ふむ、小さいけど意外とぷにぷにはしていないな。やっぱ立ち仕事だからかね? しかし寝相の悪い……これはティーナの足か?
「んん……起きたん?」
と思っていたら、足があるのと反対の方向からティーナの声が聞こえてきた。視線を向けると、寝ぼけ眼のティーナがもぞもぞと動いて俺の腕に頭を乗っけているところであった。ということは、この寝相の悪い足は――。
「あし……ウィーは寝相悪いんよな」
「悪いってレベルじゃねぇぞ」
何をどうやったら寝ている間に頭の位置と足の位置が逆になるんだ。ウィスカは常識枠に見えてたまに変なことするよな。
「寝相の悪いウィーはほっといて。おはようさん、兄さん」
「おはよう、ティーナ」
枕にされている二の腕は動かせないので、肘から先を曲げて指先でティーナの髪の毛に触れる。うん、ギリギリ。ギリギリ頭は撫でられない。指先が髪に掠るくらい。
「んもー、しゃあないなぁ」
ニヤニヤしながらティーナが俺の腕の付け根あたりに頬を擦り付けてくる。猫か何かかな? まぁ可愛いのでヨシ。さて、起きるかね。
☆★☆
「ああもう、恥ずかしい……」
「あれがありのままのウィーってことやね」
「お姉ちゃん……」
ブラックロータスの食堂。共に並んで席に着いたウィスカが姉のティーナに恨めしげな視線を向ける。二人は朝食のメニューも同じみたいだな。本当に仲の良い姉妹だ。
「朝からテンション高いわねー」
そんな二人をエルマが俺の隣から眺めている。昨夜深酒でもしたのか、テンションがとても低い。珍しく朝食のメニューも軽いので、本当に調子が悪いのかもしれない。いつもは朝からステーキっぽいものとと潰した芋っぽいものをもりもりと食ってたりするんだが。
「エルマさん、大丈夫ですか?」
俺を挟んで反対側に座ったミミがエルマに心配そうに声をかけている。彼女の朝食メニューはいつもと変わらず、甘いお粥みたいな食事だ。料理の名前を聞いたことがあるが、聞き慣れない名前ですぐに忘れてしまった。キュケなんとかって言ってた気がする。
「朝からそんなに調子悪そうなの珍しいな」
「それが昨日開けたお酒の質が悪くてねー? 捨てるのも勿体ないし我慢して飲んだんだけど、悪酔いした上に二日酔いまで……あー、あたまいたい」
「メシ食ったらメディカルベイに行ってこいよ?」
「んー……」
適当な返事をしながらエルマが俺に寄りかかってくる。返事も億劫になるくらいしんどいのか? これはさっさとメシを片付けてメディカルベイに連れてってやったほうが良いかな。
「質の悪い酒、なぁ?」
食堂の広いテーブルの反対側に座っているティーナがニヤニヤしながらエルマに視線を向けている。ウィスカもなんだか微笑ましいものを見るような視線をエルマに向けているな。
「……なによぉ」
「別にぃ? なんでもあらへんよぉ?」
「メディカルベイに行くのも良いですけど、食事を終えたらお兄さんと一緒に休憩スペースでゆっくりするのも良いと思いますよ。安静にしてて治るならそれが一番ですから」
ニヤニヤしているティーナにエルマが噛みつきかけるが、それをウィスカがフォローして宥める。ふむ、俺もニブチンではないのでなんとなく察した。ここは気付いていないふりをしてエルマを甘やかせば良いところだな?
「それじゃあ俺もエルマと一緒にのんびりするかね」
「私はクリシュナのコックピットでシミュレーター訓練をしてますね」
「うちらは会社に提出するための資料作りやな」
「そうだね」
ミミはオペレーターとしての勉強も一通り終えたということで、次はサブパイロットとしての勉強を始めている。サブパイロットに関してはテキストでの勉強も大事なんだろうが、それ以上にシミュレーターによる訓練も大事だからな。最近は暇さえあればクリシュナのコックピットに籠もっている。
そして整備士姉妹ことティーナとウィスカは資料作りか。整備士姉妹は先日の赤い旗宙賊団討滅作戦でサルベージした異国の高速戦闘艦のレストアを終わらせたようで、今はレストアの際に気付いたことなどを彼女達の雇い主であるスペース・ドウェルグ社に報告するためにレポートにまとめているようだ。
まぁそんな感じでゆっくりしている俺達だが、何故こんなにゆっくりしているのかと言うと、ゲートウェイ利用の順番待ちをしているのである、
滞在していたリーフィル星系からゲートウェイのあるエイニョルス星系への道中で歌う水晶を使った結晶生命体テロを食らった俺達であったが、それをなんとか退けてエイニョルス星系へと無事に到着していた。
で、早速皇帝陛下より下賜されたゲートウェイの使用許可証を使って目的の星系への使用許可を取り付けたわけだが、それですぐにゲートウェイを使用できるわけではない。
何せ何千、下手すると何万光年もの距離を一瞬で移動する装置なのだ。動かすには膨大なエネルギーが必要なので、その運用にはそれなりの手間がかかる。いくら皇帝陛下直々の許可証があっても、申請したらすぐにぴょんと跳べるというものでもないのだ。
つまり、どうせ移動するなら当然ながら一度に複数の船を送ったほうが効率が良いので、同じ星系を目的地とする艦船が一定数集まるか、定められた期間を待ってからでないと使用することが出来ないようになっている。まぁ、その間はこのエイニョルス星系に留まってカネを落としていくことになるってわけだな。無論、そんなことだけを考えてこんな仕組みになっているわけではないのだろうが、上手く出来ているものだ。
「ほら、食い終わったから休憩スペースでゆっくりしようか」
「んー……だっこ」
「はいはい、だっこね」
ミミが後片付けはお任せくださいとジェスチャーで伝えてくれたので、お言葉に甘えて露骨に甘えモードになっているエルマをご要望通りにお姫様抱っこして休憩室へと運ぶことにする。
まったく、手のかかるお姫様だよこいつは。




