#230 リーフィルプライムコロニーへ
サイバーパンク2077楽しい……気がついたら早朝になっている……_(:3」∠)_(14:00頃に起きた
星系軍に宙賊どもを引き渡した俺達はそのまま星系軍に拘束され、苛烈な尋問を受けることになった――ということもなく。
「この度は我々の不手際の尻拭いをして貰う形となり、本当に申し訳なく思うと同時に、大変感謝している」
このリーフィル星系を守る星系軍のトップに頭を下げられていた。
戦闘の場に駆けつけてきたリーフィル星系軍にまだ息のあった宙賊どもを引き渡し、囚われていたエルフ達を保護してもらった後、俺達は宙賊の大型艦をブラックロータスで牽引してリーフィルプライムコロニーへと到着した。
到着するなりリーフィルプライムコロニーにある星系軍本部から迎えの車が到着し、今回の件についてリーフィル星系軍のトップ――ジェム・ダー将軍閣下直々に挨拶をさせて頂きたいと言われ、今に至るというわけだ。
ちなみにジェム・ダー将軍閣下の外見はきれいに整えられた口髭が似合うダンディなイケオジである。この人何歳なんだろう。
「さっきから何度も言っているように、偶然だからあまり気にしないで欲しい。こちらとしても下心があっての行動だったんだ」
別に人質を助けようという高潔な意志の下に行動したわけではなく、単に宙賊の大型艦をできるだけ無傷で鹵獲したかったからわざわざ白兵戦なんてことをしたわけなので、こうやって感謝されてしまうと非常に居心地が悪い。本当にただ気が向いたからこうしただけで、気分次第ではいるかどうかもわからない囚われのエルフごとあの船を爆発四散させていたのかもしれないのだから。
「貴殿がそう言うならそういうことにしておこう。ただ、我々が深く感謝しているということだけは知っていてもらいたい。貴殿のお陰で多くの無辜の民の命が救われたのだから」
「わかった、わかったから」
本当に感謝されているようで、物凄い圧力である。感謝の圧が凄い。こっちは本当に気まぐれだっただけに、向けられる感謝の念が強すぎて気後れしてしまう。本当に大型艦の鹵獲と白兵戦の実戦訓練、そしてミミの白兵戦オペレーションの訓練のためにやっただけだからな。
「賞金の他にも報奨金と感謝状にも期待してくれていい。事務手続きで数日かかるだろうから、その間は是非当コロニーで寛いでいてくれ」
「ああ、どのみちこのコロニーに暫く滞在するつもりだったから都合が良い」
「このコロニーに? 差し支えなければ、リーフィル星系を訪れた理由を聞いても?」
「物見遊山だよ。クルーにエルフがいてね。エルフの母星について少し話を聞く機会があって、それで珍しい食べ物や飲み物を楽しんだり、珍しい交易品が手に入ったりしないかと考えて足を伸ばしたんだ。幸い、うちのクルーは俺を含めて三人が上級市民権を持っているから降下の申請はできるしな」
「ほう、三人も……」
ジェム・ダー将軍閣下が感心したように自らの顎を撫でる。
グラッカン帝国の市民権回りの制度は俺から見ると中々に複雑怪奇な内容なのだが、上級市民権に関しては凄くシンプルだ。上級市民権を持つ市民は所定の手続きを行えば、帝国が特別に制限を課していたりしない限り、どのようなコロニーにも惑星にも足を踏み入れることができるし、希望すればそこに住むことも可能である。また、居住ではなく訪問に限れば上級市民を持つ市民一人に付き二人まで同行者を伴うことができる……と、まぁこういった感じの内容だ。
つまり、現時点で俺とミミ、エルマの三人が上級市民を持っているので、メイとティーナ、ウィスカの三人も一緒に惑星に降り立つことができるというわけだな。いや、メイはメイドロイドだから備品扱いってことになるのか……?
「しかし、それは都合が良い。実は貴殿が助けた虜囚の中に、リーフィルⅣで有力な氏族の子女と子息が居てね」
「あー……なるほど?」
捕虜の収容室を訪れた際に、あの状況でも気丈な態度を崩さずに俺と会話をした美人さんと、レーザーで撃たれて死にかけていたイケメンを思い出す。もしかしたらあの二人だろうか?
「まぁ、そっちについては実際に話しが来てから考えるということで一つ」
「そうだな、それが良いだろう。ただ、私の見立てでは間違いなくそういうことになると思うので、そのつもりで居て欲しい」
「承知した」
☆★☆
「はー、やれやれ。肩が凝ったよ」
「はいはい、お疲れ様」
「お疲れさまです、ヒロ様」
「おつかれちゃーん」
「お疲れさまです、お兄さん」
ブラックロータスに戻り、休憩スペースの食堂に赴くと俺以外の全員が揃っていた。メイは無言で俺の背後に立ち、席に座った俺の肩を絶妙な手付きで揉み解してくれている。うーん、メイのサービスは実に至れり尽くせりだな。流石はメイだ。
「で、進捗の方はどうかね?」
「降下申請に関しては今も進めてるところよ。なんでこの手の手続きってこんなに入力項目が多いのかしら」
「お役所の仕事だから仕方ないね。ミミは?」
「ブラックロータスの積み荷と宙賊艦の積荷を捌いているところです。結構品数が多くて大変です」
「船倉にたっぷり荷を積んでたからな。ここであまり値のつかない品なら無理に売らないでブラックロータスで運ぶ方向で行くのも良いと思うぞ」
「わかりました」
今ではミミもすっかり頼れるオペレーターとなった。そろそろ取り分の見直しが必要かもしれない。
「ティーナとウィスカは?」
「うちらは例の船の改修計画を立ててん」
「調べてみたら意外と作りはしっかりしているので、内部清掃と修理、あとは装甲板の張り替えとスラスター、装備の入れ替えでなんとかなりそうです」
「なるほど。まぁその辺はプロに任せる。補修部品なんかの請求はいつも通りで」
「合点承知や」
「はい」
当然ながら、修理にも金がかかる。結局のところ、破壊された装置を治すためには相応の部材が必要となるわけで、その部材も作るにしたって材料費はかかるし、既製品を買うならやはりそれも金がかかる。特に今回は単艦鹵獲だったので、不足しているパーツや部材を他の船の残骸から取ることもできないので、改修をするにもそれなりの手間と費用がかかるのだ。無論、それが船の売却益を上回るようでは話にならないので、その辺りはティーナとウィスカも考えて修理するんだろうけど。
「で、細かいところは君達に放り投げているわけだが」
「手伝ってくれてもいいのよ?」
ニコリと笑みを浮かべながらエルマが圧をかけてくるが無視する。そういう入力作業って二人でやるとかえって効率悪くなるじゃん?
「将軍閣下の仰っていたことをお伝えしようか。まぁ、本題は大した内容じゃなかったんだけど」
と、そう前置きして助けた虜囚の中に目的地であるリーフィルⅣで力を持つ氏族の子女や子息が居たのだということを伝える。
「なるほどねー……」
「そう来ましたかー……」
「これはウィスカの勝ちやな」
「あはは……」
何を賭けたのだか知らないが、俺が将軍閣下に会いに行っている間に今回はどんな風に厄介事が転がり込んでくるのかという内容の賭けをしていたらしい。うんうん、こんな些細なことでも賭けの対象に娯楽にしてしまうというのは実に傭兵らしくてイエスだね。きっとエルマが主導したに違いない。
「まぁ、いくら力ある氏族っていっても帝室に比べればなんてことないな」
「そりゃ比べる先が悪いやろなぁ」
俺の言葉を聞いたティーナがケラケラと笑う。
実際、力ある氏族云々と言っても所詮リーフィルⅣだけの話だ。もしかしたら帝国の爵位を持っていたりするのかもしれないが、それにしたって帝室に比べれば木っ端みたいなものだ。リーフィルⅣで有力な氏族ってのは日本の感覚で言えば町内会の顔役とかそういう次元の話だろう。
「あまり舐めてかからないほうが良いわよ。このリーフィル星系は帝国の版図の中にある一星系だけど、種族の母星っていうのは特殊なのよ。しかも母星に根を下ろしている氏族の長とか、その直系ってなるとね……宇宙を旅する私達にとってはリーフィル星系なんて無数にある星系の一つでしかなく、リーフィルⅣもそのちっぽけな星系内にあるちっぽけな居住可能惑星でしかないけど、宇宙に飛び出さない多くの人にとっては自分の住む惑星こそが世界のすべてなんだからね」
「ふむ」
「なるほど……」
「なるほどなぁ」
俺とミミ、ティーナがそれぞれにエルマの言葉を受けて考え込む。ウィスカも無言ながらエルマの言った言葉の意味を考えているようだった。
「とはいえ、こっちは助けた側なんだから、そんなに無体な扱われ方はしないと思うけどな。でも、気をつけることにしよう。異文化交流ってのは慎重にするべきだからな」
人間が降伏のつもりで白旗を掲げたら、それが異星人にとってはこれ以上無いほどの宣戦布告って意味で、それが原因で泥沼の殺し合いになる……なんて内容のアニメがあった気がするし。
「そういう意味ではエルマさんが頼りですね」
「私だって昔一回来たきりで、あんまり覚えてないんだけどね」
「独特の文化を築いているなら、来訪者向けのマナーガイドみたいなのがあるんじゃないか? メイ、調べてみてくれ」
「承知致しました、お任せ下さい」
このような感じで手続きやら問い合わせ、資料の取り寄せなどでリーフィル星系滞在一日目は終了するのだった。




