表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/577

#220 お約束の展開

寒くなってきましたね……体調にはお気をつけ下さい_(:3」∠)_(震えながら

 軍用戦闘ボット達が殲滅したツイステッドどもの死体が折り重なる地下通路を進み、目的地へと向かう。


「こりゃ快適だ」

「操作には若干クセがあるそうですけどね」


 俺達の足になっているのはこういった不整地を移動するために開発されたというホバリング車両だ。さして速度は出ないが、でこぼこだったり急な傾斜だったり高低差数メートルほどの崖程度であれば難なく走破できる車両で、運転手含めて乗員六名が乗り込むことができる。これもグラビティスフィアなどと同じく、重力・慣性制御技術の応用によって作られているものであるらしい。


「流石に掃討が済んでるだけあって敵影はなし、か」

「仮に敵が残っていても、随伴している高機動型の戦闘ボットが片付けますよ」


 時速およそ30kmほどしか出ないホバリング車両に随伴しているのはシャープなシルエットの軍用戦闘ボットだった。両足が逆関節の二足歩行型戦闘ボットで、先程から軽快に走り、跳躍してセレナ中佐と俺を含めた地下構造物突入部隊に随伴している。火力面は未知数だが、確かにあの機動性の高さは戦うとなるとかなり厄介だろうな。あれが全速力というわけでもないのだろうし。

 俺が戦うとしたらどうするかな? まぁそんなに頑丈そうには見えないし、足を狙って機動力を潰して逃げるのが良いかね。え? 逃げるのかって? そりゃ逃げるよ。正確無比な射撃を行う戦闘ボットとまともに撃ち合うなんて絶対に御免だからな。SOLでもそうだったけど、軍用戦闘ボットの射撃精度はマジでえげつないから。ほぼ百発百中で当ててくるから、レーザーに耐えられるだけの装甲かシールドがない状態で撃ち合ったら良くて相打ちだ。そもそも人間よりも反応速度が早いんだよ。民間用の警備ボットとかならデチューンされてるからそこまででも無いんだけどな。


「で、戦況はどうなので?」

「シールドを張って完璧に籠城の構えですね。まぁ、それも我々が到着する頃には破られるでしょうが」


 超光速ドライブ宙にスペースデブリが衝突しても守れるようにと開発されたシールドというものは実に強力な防御力を有するものではあるが、決して万能ではない。高出力のレーザーや大熱量のプラズマ兵器、それに強烈な爆発と衝撃波を発生させるミサイルや爆弾などによる攻撃には比較的弱いし、シールド同士の干渉は急激に互いのシールドを中和させてしまう。

 クリシュナに装備されている対艦反応魚雷に装備されているシールド中和装置も基本的にはシールド同士の干渉によって速やかに対象のシールドを中和・飽和させるものである――とSOLのアイテム概要には書いてあった。この世界でも本当にそうかは確かめてないけど。


「ちなみに破る方法は?」


 きっと何かシールドを破るための軍用装備とかでやっているんだろうな、と思いながら俺は聞いた。しかし、セレナ中佐は見ればわかりますと言って何も答えなかった。なるほど、軍事機密とかなのかな? と俺はこの時そう考えていた。


 そして現場で俺が見たものとは。


「この手に限ります」


 目の前で繰り広げられている光景を一言で表すならこうだ。


「なんという力こそパワーな発想」


 多数の軍用戦闘ボットが人工施設を覆っているシールドにレーザーを乱射し、体高5mはあろうかというタイタン級の戦闘ボットがシールドを全開にして体当たりを敢行していた。いや、体当たりと言うかなんというか……シールド同士を接触させてバチバチさせてる? まぁ体当たりみたいなもんだよな、あれは。


「思ったより強固なシールドのようですが、あの様子だとそう長くは持ちそうにありませんね」

「シールドが割れたら俺達の出番ですか」

「それはもう少し後ですね。先に戦闘ボットを突入させます」


 などと話している間にも人工施設シールドが揺らぎ始め、唐突に消失した。消失した瞬間にも戦闘ボット達から照射されていたレーザーが一瞬だけだが人工物の壁を灼き、爆ぜさせる。ちなみにどうでも良い事だが、この世界のシールドはパリーンと割れたりはしない。

 そしてシールドが飽和状態になって消失したのを確認した小型、中型の戦闘ボット達が整然と施設内へと侵入していく。タイタン級の戦闘ボットは流石にデカすぎて入れないからここで待機らしい。


「まずはシールドジェネレーターとメインジェネレーターを掌握させます。シールドで内部に閉じ込められたり、ジェネレーター暴走で諸共自爆などされてはたまりませんから」

「順当なんじゃないかな。わからんけど」


 俺は戦術の専門家ではないので断言はできないが、手堅いんじゃないかと思う。退路の確保は基本中の基本だし、メインジェネレーターを掌握してしまえば敵の防御兵器などをシャットダウンすることも可能だろう。


「適当ですね……突入の時は近いですよ、準備をしておいて下さい」

「アイアイマム」


 しっかし、これだけ戦闘が機械化されているのに最後は剣で勝負を決めなきゃならないとかどうなってるんだ。最悪遺体を確保できればいいってことなんだから戦闘ボットの物量で押し潰せば良いのにな。これも貴族の面子ってやつなのかね。


 そうして待つこと三十分弱。


「施設最奥部で目標を発見しました。行きますよ」

「あいよ」


 ついに戦闘ボットがゲリッツとやらの捕捉に成功したらしく、セレナ中佐の号令で帝国航宙軍の海兵達が動き始めた。戦闘ボットが到着してからは彼らも俺と同様に暇をしていたので、張り切っているようである。

 セレナ中佐が先陣を切って歩き出し、帝国航宙軍の海兵達がその後ろについていく。俺も海兵達に交じってセレナ中佐の後を追ったが、どうにも俺は胸中を過る嫌な予感を消せずにいた。


「あるのか? ここから一発逆転する方法が……」


 頭を悩ませながらも人工施設へと突入する。個人的に嫌な予感がしても行かなきゃいけないのよね。これ、軍事行動だから。俺は雇い主に同行するように申し付けられている傭兵だしね。


 ☆★☆


 人工施設内部は妙に白い内装が目立つ、まるで研究施設のような印象を受けるものであった。ここには悍ましい見た目のツイステッドどもの姿は無く、所々に軍用ボットに破壊されたと思しきレーザータレットなどの残骸が見える。


「あれが大本ですかね」

「恐らくは」


 進んでいる通路の左手には金属製の筒のようなものが多数、ガラス越しに見えている。全て中身は空っぽのようだが、一体何が入っていたのか? 場所を考えれば恐らくはツイステッドの素体というか、原種のようなものが入っていたのだろうということが推測できる。


「ということは、奥は……」

「生産プラントでしょう。基本的には人造肉の製造プラントと同じだと思いますよ」

「セレナ中佐も見たことがお有りで?」

「ええ。前に非合法の人造肉プラント絡みの案件で色々ありまして」

「ああ……なるほど」


 セレナ中佐もこれまでに色々と修羅場をくぐり抜けてきているわけだ。

 しかし人造肉製造プラントね……アレイン星系ではツイステッドとはまた別物の化け物とも戦ったなぁ。あれに比べるとツイステッドのほうがかなり強力だけど。


「前方から戦闘音」

「戦闘ボットが牽制射撃をしている音でしょう。急ぎますよ」


 走り始めたセレナ中佐の後を追い、広いホールのような場所に出る。


「……アレが目標ですか」

「……ええ、アレが目標です」


 俺の指差す先で高機動型戦闘ボットを相手に暴れている物体――四本の腕のようなもの全てに剣を持った体長2.5m程はあろうかという人型のツイステッド――を見ながらセレナ中佐は頷いた。

 えぇ……アレ? まことに? あれはもう人間じゃないのでは?


「アレを生け捕りにするので?」

「可能であれば」

「生け捕りにしてもアレから事情聴取するのは無理じゃないかなぁ……」


 全身を赤黒い、捻れた筋肉繊維と岩石質の鎧のようなものに身を包んだ四本腕の異形の生物。今のアレ――ゲリッツ・イクサーマルを表現するならこう表現するしかあるまい。あれでは生け捕っても情報など引き出せそうにないし、ぶっ殺して遺体を収容してもアレがゲリッツであると証明できるかどうかも怪しいのではなかろうか。


「なんかどんどん動きが良くなってませんかね、アレ」

「身体のサイズの変化と四本腕に慣れてきたのかもしれませんね。早く始末しないと厄介なことになりそうです」

「もうレーザーの飽和攻撃で始末しません?」

「それがですね」


 セレナ少佐が大暴れしている四本腕の化け物に視線を向けると、戦闘ボット達が一斉にレーザーで奴を攻撃し始めた。いくら四本腕とはいっても数十発、下手すると百発以上のレーザーによる同時攻撃は防御しきれるものではない。


『KHOOOSHIIIIAKUUUUU!!!』


 防御しきれるわけではないのだが、無論いくらかは防御される。奴の振るった剣によって何発か、或いは何十発かのレーザーが跳ね返され、戦闘ボットに着弾して小爆発を起こした。一発で戦闘不能になるほど戦闘ボットはヤワな作りはしていないが、確実にダメージは蓄積する。

 一方で、防ぎきれなかったレーザーは奴に命中はしたのだが。


「あんまり効いてないですね」


 一応全く効いてないわけではないようだが、負った傷はすぐに再生してしまっているし、岩石質の鎧のような部分にはそもそも殆ど効いていないように見える。


「はい。再生力もさることながら、あの岩石質の鎧が良くないですね。プラズマ兵器は効きそうなのですが、弾速が遅いので避けられます」

「結局斬るしか無いと」

「そういうことです。行きますよ」

「嫌だなぁ……」


 セレナ中佐が腰元の大振りな剣を鞘から引き抜き、前に出る。俺もその後を追いながら、腰元の二本一対の剣を抜き放つのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
超光速ドライブ宙にスペースデブリが   ドライブ中
[気になる点] 抗光学兵器対応された岩石質(?)の装甲部位ですか、ソフトキル仕様のレーザーじゃ確かにダメージにならなさそう。 兵科的には装甲兵科として設計されているなら、対重戦車・対陸上戦艦クラスの火…
[気になる点] …これって剣で切れるのかな…?成形炸薬弾持ってこないとダメージ与えられなさそうな気がするけど…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ