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【書籍化】私の推しメンは噛ませ犬◆こっち向いてよヒロイン様!◆  作者: ナユタ
◆番外編◆ ラシードとカーサの場合。

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◇―◇ このルートは諸事情により読み込めません。

これにて番外編も無事完結です!

ここまで長らくお付き合い下さった読者様方、

五十万文字も読んで下さって本当にありがとうございました(*´ω`*)



 片手に銀色の顔料が入った小皿を持ち、もう片手に絵筆を持ったルシアが時折鏡に張り付けた見本を眺めつつ、真剣な眼差しで絵筆を走らせる。けれどその絵筆が走るのは紙の上でも、キャンバスの上でもない。


 銀色の顔料を含ませた絵筆が滑るのは、小麦色を通り越した浅黒いラシードの右頬の上だ。端から見ていると、ギュッと寄せた眉根の間には緊張感と高揚感が入り交じったような、悩ましげなルシアの感情が読みとれた。

 

 そのせいか見ているだけのこちらまで眉間に力が入るのだが、そのたびに隣に立つクラウスが自身の眉間を指先で叩いて「主役の表情じゃないぞ」と苦笑する。けれどその視線はまたすぐに真剣なルシアの横顔に戻され、普段はにこりともしない無愛想な口許に、彼女への愛情を忍ばせるのだ。


 今日の親友夫妻はルシアの方は前回結婚式で着ていたような民族衣装で、色は黒、赤、白の三色を基調にしたドレスがとても可愛らしい。ルシアならば何を着ていても可愛いに違いないけれど、それにしても可愛いと思う。


 緩くうねる髪はラシードに編み込まれ、少し大人っぽい仕上がりになっている。対するクラウスは面白味はないものの、正装を着こなしていて隙がないからか、やはり年齢よりも大人びて見えた。


「――ねぇ、ルシア。これってまだかかりそうなの……? 筆の思い切りが悪いからくすぐったいんだけど」


 ワタシ達の見守る先で、目蓋を閉ざしたままのラシードが絵筆が離れた瞬間を見計らって口にすると、ルシアは「ラシード……今すっごく集中してるんだからもう少し黙ってて」と低い声でそれを制した。


 普段ならこういう際は真逆の立場にある二人のやりとりは新鮮で、だからこそ今日の特別感も増していくというものなのだが――……次に描かれるワタシの番がくるまでは、まだ時間がありそうだ。


 だけど……今だにこうしてワタシ達が騒いでいるここが、ベルジアン領にある教会の準備室で、後二時間もしないうちに式が始まるという事実に現実味が感じられないのは、ここ最近のバタバタとした日程のせいだろう。



 ――ラシードと父上が剣を交え、雌雄を決した日から三週間。



 あの日を境に事態は突然動き出し、まさかの母上指揮の元に結婚式に向けての準備が怒涛の勢いで展開された。


 母上は父上がラシードに投げ飛ばされた直後に卒倒したものの、翌日には前日の一戦ですっかり剣術指導に目覚めた父上が、彼を追い回すことを禁じていた。何となくだけれど、父上に対して強い姿勢に出るようになった気がするのは気のせいではないと思う。


 父上は、これまでのことでワタシに対して詫びることはなかった。とはいえ、ワタシも今さら自分の進んできた道を詫びられても困る。ラシードには『父娘揃って不器用ねぇ』と笑われたが、ワタシと父上の関係性は表面上はこれまでと何ら変わらなかった。


 それでも、ワタシはこれまでのように父上に対する緊張感や恐怖心がなくなったことは、小さいようでいて意外と大きな変化ではないかと思う。


 そうしてラシードとの勝負から四日後、職場で鉢合わせることを嫌う父上が鍛錬場に顔を出して『式を挙げるなら十七日後だ』と、そう言い残して立ち去られた時には流石に意味が分からなかったが……。


 言葉の意図を掴むべく実家の母上を訪ねれば、母上はおかしそうに『どうせ式を挙げるならお友達の都合もあるでしょうし、早い方が良いでしょう?』とたおやかに微笑んだ。


 それから『ねぇ、カサンドラ。少しだけわたくしの昔話につき合ってくれるかしら』と、母上から珍しい提案をされた。急にどうしてそんな提案をしたのかと気になって小首を傾げれば、母上は『わたくしが教えたことは秘密よ?』と前置きしてから、とても意外な内容を告げられたのだ。



『貴女が産まれた時に、周囲は女児を産んだわたくしに“次がある”と声をかけたわ。わたくしも……ごめんなさい、カサンドラ。男児が産めなかったことをセシリオ様に謝ったのです。けれど、セシリオ様はわたくしと周囲の言葉にとてもお怒りになって下さったの。それに男児の名しか考えない殿方も多い中で、娘の名も同じ数だけ考えていらしたわ』



 普段あまり多くを語らない母上の言葉が俄には信じられず、咄嗟に『今更そんな慰めなど』と笑ったワタシを母上は抱きしめ、幼い子供を慈しむように優しく撫でて下さった。



『――あの方の国で娘が産まれた時には、絹糸を作る為に蚕を飼うのです。成長してその絹糸で紡いだ糸が娘の幸せな縁を結ぶようにと、願いを込めるの。結んだ後はその絹糸で仕立てたドレスを纏わせて送り出すと、幸せな家庭を築けるのだと……そう仰っていたわ』



 初めて聞く異国の風習。


 初めて聞く不器用な父上の姿。


 以前用意して下さったドレスは、あの馬鹿な元婚約者との件が破談になった時に、父上は縁起が悪いからと捨てようとしたのだと言う。母上しか知らないという時点で信憑性には欠けるけれど、それが本当だったなら良いと……ほんの少しだけ思ってしまった。


「よし、ラシードの紋様完成! 次はカーサの番だよ」


 ちょっと意識を飛ばしている間にラシードに施していた絵を仕上げたのか、ルシアがこちらに顔を向けてそう言い笑ってくれる。嬉しくてはにかんだワタシを見たルシアはさらに微笑みを深くして――、


「やっぱりカーサの着てるそのドレス、あの強面なお父さんの見立てだとは思えないねぇ。でもカーサの凛としてて、可愛い乙女な一面もちゃんと感じられるし、何よりとっても似合ってるよ!」


 ワタシが今日身に纏っているドレスは一生縁がないと思っていた、花嫁の純白(いろ)


 ぴったりと身体に添うドレスの上半身はシンプルで、僅かに背中にあしらわれた透け感のあるレース部分以外にほとんど装飾らしいものがない。しかし後ろに長く引きずる華奢なレースで出来た下半身は、まるで孔雀の尾羽根を思わせた。


 生憎と年頃の娘らしいところがないせいで生地には疎いが、光が当たれば均一に輝くドレスの生地がとても上質なものであることくらい分かる。


 それに親友のその言葉が嘘偽りのないものだと知っているから、一瞬で顔に熱が集中してしまった。そんなワタシに向かい、さらに「この可愛い生き物が、ラシードみたいに腹黒い奴の奥さんになるのか……」と真顔で返してくるルシアの脇腹を「そんな余計なことを言う悪い子は――こうよ!」と、椅子に腰かけたラシードが振り向きざまにくすぐった。


 せっかく綺麗に着飾っているのにルシアは身をよじって笑い、ラシードが容赦なく攻める。ついには横から見かねたクラウスが「止めろ、二人とも。衣装が皺になるだろう。それにそう騒ぐと何事かと思われるぞ」と小言を交え、ルシアを自身の方へ抱き寄せた。


 それがもっともらしい注意を兼ねた独占欲なのだと分かるのは、これまでの付き合いがあるからだろう。そんな様子に微笑ましさを感じていると、部屋の外から『大丈夫ですか、お嬢様?』と心配した使用人が声をかけてくれる。


 騒いでいた三人にもその声が聞こえたのか、クラウスに「だから言っただろう」と呆れられた二人が「「はぁい」」と声を揃えて返事をした。


 三人のやりとりがおかしくて笑いを堪えていたワタシに「じゃあ、アタシはクラウスに手伝ってもらって着替えてくるから。また後でね、カーサ」と甘やかすような声音でラシードが声をかけてくれるけれど、今のワタシはこれ以上の色気を醸し出すであろう新郎に「ま、また後で」と上擦った声で返すのが精一杯だ。


 男性陣が出て行くとすぐにワタシを隣に招いたルシアが、銀色の顔料が入った小皿の中身を絵筆で練り混ぜながら、見本の絵を視線で頬に転写する。


 見本の紙に描かれている図案は左右非対称の葡萄の蔓と葉で――……意味するところは【信頼】と【陶酔】。ラシードの国では結婚する男女に施して、お互いの愛情を表すのだという。


「それにしても……ラシードも負けず嫌いだよね。カーサのお父さんが自分の国の風習に合わせるなら自分も~って。私としては結婚式の様式が入り交じってて面白いけど、参列してくれるお客さんは驚くだろうなぁ」


 顔料を練りながらそう言うルシアの言葉が気にかかり、思わず「やはり変だっただろうか?」と訊ねると、鏡に映った彼女は朗らかに笑って首を振る。


「ううん、まさか。二人らしくて良いと思うよ。私だってこの日のために紋様の練習したんだから。長年刺繍の下書きで磨いた転写能力が、こんなに素敵なところで役に立つなんて嬉しいよ。本当はお化粧も手伝いたかったんだけど……そこはラシードに任せた方が絶対良いもんね」


 ふわりと微笑む親友は久し振りに見るあの大人びた表情でワタシを覗き込み、笑みの形に細めた目には、うっすらと涙が光っていた。無言のまま鏡越しに見つめ合うワタシの頬に、冷たい絵筆がサラリと滑る。


 一筆一筆、願いを込められた筆先から伸びるしなやかな葡萄の蔓と葉が、左頬から首筋の辺りまで降りて。銀色の顔料で描かれるそれは、同じ年頃の令嬢達の白く滑らかな肌を羨んだ記憶を消していく。


 目蓋を閉じて、息を潜める。


 さっきのラシードで少し手慣れたのか筆には一切の迷いがなく、不安に揺れるワタシの心を慰めてくれた。


 描いてもらい始めてから、小一時間ほどそうしていただろうか? 耳許で「よし、これで完成」というルシアの声につられて静かに目蓋を持ち上げると、鏡の中に銀色の葡萄を描かれた自分の顔が映っている。


「銀色の紋様だから、カーサの肌色にぴったりだ。絶対この瞬間世界で一番綺麗だよ。どうか私の親友二人がこの紋様の通り愛に酔って、お互いを信じて頼れる家庭を築けますように」


 隣で絵筆を置いたルシアがそう言って泣き笑いを見せてくれた直後に、化粧と絵が流れても構わないから、その華奢な身体に抱き付いて思い切り泣きたいと思ったけれど、直後に部屋のドアがノックされて、外から『カサンドラ、準備は出来たのか?』と、硬質な父上の声がかけられる。


 その声に今までとは違った緊張を覚えるワタシに頷き返して、ドアを開けようと立ち上がったルシアが、テーブルの上から以前ラシードから贈られた手袋の入った箱を持ってきてくれた。


 金銀のリボンとパールホワイトのオーガンジーのラッピングはすでに剥がしてあるものの、中にはあの繊細な刺繍が施された手袋が納まっている。恐る恐る手袋に手を通している間に、ドアを開けて父上達を招き入れたルシアは「先に会場で待ってるからね」と言い、二人に会釈をして部屋から出て行った。


 入室してこちらの顔を見た途端「綺麗よ」と顔を綻ばせてくれた母上とは違い、父上は難しい顔をしたまま頭の天辺から爪先までをじっと眺める。また何かお小言を言われるのかと居心地の悪さに眉根を寄せれば、父上はギリギリ聞き取れるほど小さく「似合うぞ」と褒めて下さった。


 あまりに珍しい言葉に呆気に取られていると、そんな様子に気づいた父上は急に苦虫を噛み潰したような渋面になり――……次の瞬間ワタシを横抱きに抱き上げた。


 子供の時にも抱き上げられたことなど数えるほどしかなかったことと、普段とは全く異なる格好のせいで重心を崩したワタシを抱え、難なく姿勢を立て直した父上の体幹には感心するのだが――。


「ち、父上……あの、抱き上げるのは、会場入りする直前で良いのですが……」


 花嫁を父親が抱き上げて運ぶこの一連の奇妙と思える趣向も、ラシードの国で古い婚礼に見られる儀式だそうで、花嫁の足は生家から嫁ぐ相手の元へ行くまで地面につけてはならないのだという。 


 ドレスといい、頬の紋様といい、異国の風習に振り回されてばかりだが、不思議と嫌ではなかった。肩口にしがみついて囁くワタシの耳許で「後か先の問題なら、別にここから抱き上げても変わるまい」と低く呟くその声が、僅かに震えている。困惑のまま父上の肩越しに母上を見やれば淡く微笑むだけで、そこには止めようという気配の欠片もない。


 それどころか床についたままのドレスの裾が汚れないように持ち上げた母上は、ワタシと父上に向かって「早くお披露目に行きましょう?」と会場入りを促す。


 父上は母上の言葉に頷くと、まるで壊れ物を抱えているかのようにゆっくりと歩き出した。


 式の会場に続く廊下を歩くワタシ達家族を、控えていた屋敷の使用人達が頭を下げて見送ってくれる。初めてベルジアン家の【一人娘】として扱われることの、何と恥ずかしくて、こそばゆく、苦しくて、幸せなことだろうか。


 涙を零さないように引き結んだ唇にはイチゴジャム色の口紅。


 繊細な手袋の中に隠された手と裸足の指先には、夕陽色の爪紅を。


 父上の肩口に顔を伏せている間に背後で会場の扉が開かれる気配がしたかと思うと、心許ないドレス姿の背中に沢山の拍手と歓声がぶつかってきて、ワタシの決壊寸前の羞恥心と涙腺を刺激した。


 母上が微笑みながらドレスの裾を離してワタシ達を送り出す。赤い絨毯を父上の腕の中で揺られながら見下ろす耳許で、ぽつりと。 


「――カサンドラ。お前が娘ではなく息子であれば良いと思ったことなど、ただの一度もない」


 そう呟いた父上の表情を見ようと肩口から顔を上げたのだけれど……爪先が絨毯に触れて「いらっしゃい、アタシの花嫁さん?」と微笑むラシードを見たワタシは、その姿に釘付けになってしまった。


 この国の装いとはまるで違う黒い長衣には金縁の豪奢な刺繍が、腰に巻かれた帯には色とりどりの糸を使って幾何学模様の刺繍がされている。頭には帯と同じ糸を使って全面に刺繍を施された丸い帽子が載せられて、そこから零れるラシードの鮮やかな髪色を一層引き立たせた。


 言葉を忘れて見惚れるワタシの傍から、父上が母上の待つ席へと戻って行ったことに気づいたのは、牧師様の咳払いと、ラシードの苦笑の後だ。慌てて俯いた視線の先には、ワタシと同じく裸足のラシードの足があった。


 星女神神話を元にした聖書の朗読の後に誓約を交わし……普通ならば指輪の交換となるところで、一面に青い花の刺繍を施した遊牧民が履くような乗馬ブーツが二足、それぞれの手許に渡る。


 勿論これにもきちんとした意味があって。


「カサンドラ、これからアタシと一緒にまっさらな道を歩きましょう。いつかこの身が朽ちて、二人で葡萄の木が生い茂る土に還るその時まで」


 目の前で跪いたラシードが、ワタシを見上げて蕩けるように甘い誓いの言葉を口にしたかと思うと、恭しく足の甲に口付けて、手にした真新しいブーツを履かせてくれたのだけれど……。

 

 ぼうっとなったワタシを牧師様が促し、ラシードにブーツを履かせて誓いの口付けを落とされるまでの意識が朧気だったのは、本当に、まったく、勿体なかった。



***



 誓いの言葉の直後に意識を失いかけた以外は順調に進んだ式の後、ワタシ達は父上の同僚や上司の多い堅苦しい顔触れの二次会を抜け出し、幼い頃から息抜きをする時はここと決めていた川辺にルシア達を案内した。


 秋も深まってきた川辺は季節的にもうちょっと寒かったけれど、それでもこの四人で訪れれば暖かい。


 川を眺められる木の下で横並びに腰を下ろし、二次会の途中までに口にしたお酒の冷めやらない状態のまま、口々に式での出来事を挙げていく。


「最初のドレス姿の登場でも最高に盛り上がったけど、やっぱりラシードが考案した真っ白な燕尾服もウケたねぇ!」


「結婚式でウケを狙う奴があるかと言いたいところだが、確かにラシードの黒い燕尾服と並ぶと見応えがあったな」


「んふふふ、そうでしょう? アタシのは自前だから良いけど、カーサの燕尾服を二週間で仕上げてもらうのに凄く頼み込んだもの。でもお陰でお義母様にもらった剣帯も見事に映えたから大満足よ」


 中でも特にワタシ達のお気に入りの場面として話題に上がったのは、ドレスの次にお色直しとして着用した真っ白な燕尾服だった。これまでは好んで男装をするというより、義務感のようなもので着用することが多かったああいう服も、着る意味や目的が違うと楽しいのだというのは新鮮な発見だ。


 ラシードが悪ふざけをしてお色直しのドレス代わりに発注した燕尾服は、出席してくれた人達を楽しませる余興として一役かってくれるどころか、ルシアの絵を描いてくれた絵描きが凄まじい勢いで素描を描き上げ、早ければ半月で仕上げてくれるという。


 本当は単にルシア達の絵が仕上がったとの連絡をもらったから、ついでに招いただけだったのだが……得をした気分だ。


 実際に錦糸と銀糸を使って精緻に編まれた剣帯には、ワタシの瞳と髪の色をした宝石が無数に輝き、そこに長年愛用してきたレイピアを携えれば、まるで白い燕尾服を彩る為の装飾のように映えたから、絵の完成が今から待ち遠しい。


「あのだな、ルシア、クラウス。今回はワタシのせいで二人に本当に迷惑をかけてしまったが……これに懲りずにまた遊びに来てくれるだろうか?」


 だから狡いやり口だとは思いつつ、楽しい気分の勢いに任せて今回の一件で足止めをしてしまったことを謝罪すると、ルシアとクラウスはお互いに顔を見合わせて小さく笑った。


「あったり前だし、それを言うならこっちの方が先に迷惑かけたんだから。謝るなら私達の方が先だよね、クラウス?」


「同感だ。今回は本当にラシードとカーサのお陰で、こうしてルシアに許してもらえたようなものだからな。今後呼び出されることがあれば、ルシアといつでも馳せ参じよう」


「はぁ~……これだもの。相変わらず堅苦しいわねぇ。そこは素直に“また遊びに来る”で良いじゃないの。結婚してからも集まれる友人関係なんて中々ないんだし、アタシ達は一生こうして四人で馬鹿騒ぎする仲でいましょうよ」


 ルシアの柔らかい発言と、クラウスの四角四面で誠実な発言に、絶対に結婚などしないと思っていたワタシの夫になった、大切な人の発言が重なって心地良く溶け合っていく。


 ワタシ達が学園に置き去りにしたあの温室は、今もこの先も、きっと、ずっと。喪われることなく【現在(ここ)】にあるのだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はぁ…♡ 尊い…♡ ぐはっ♡_:(´ཀ`」 ∠):_
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