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8話 公園での話し合い!

午前中の授業が終了し、昼休憩となった。

いつものように俊司と慎が俺の席に集まってきた。

それに構わず、教材を鞄に詰め込み、俺は椅子から立ち上がった。

すると俊司が不思議そうに声をかけてくる。


「学食にでも行くのか? もしかして加奈ちゃんが弁当を作ってくれなかったのか?」

「違うだろ。宗太は鞄を持っているじゃないか。おまえ、午後の授業をサボるつもりなのか?」


さすがは慎、察しがいい。

俺はチラリと窓側に視線を向け、二人に答える。


「放課後まで教室に居たら、朝霧が一緒に帰ると言い張りそうだろ。だから逃げようと思ってな」

「女子達と一緒に帰ればいいじゃないか。それで皆でカラオケに行こうぜ」

「だからダメだって言ってるだろ」

「いいじゃねーか。女子達と遊びに行く機会なんて、早々ないんだからさ」

「俊司は、俺をネタにして女子が目当てなだけだろ」


俊司と俺が言い合いをしていると、慎が目を細める。


「今日は昼から帰ったとしても、毎日はサボれないだろ。それに今日、遠藤先輩が現れるとも限らないぞ。もう少し冷静に考えてから、行動を決めたらどうだ」

「そんなことはわかってるさ。別に遠藤先輩から逃げるつもりはない。ただ女子達を巻き込みたくないだろ。だから帰るんだ」

「なるほどな。そういうことなら、噂を広めた俺と俊司にも責任がある。俺も一緒にサボるとするか。

帰りにマックにでも寄っていこう」

「慎の奢りならな」

「おいおい、二人で勝手に帰るなよ。マックに行くなら俺もサボる」


慎の提案に、慌てて俊司も同意した。


「じゃあ、駐輪場で待ってるな」


鞄を取りにいく二人に声をかけ、俺は教室の後のドアから廊下に出る。

左右を見回すが、朝、嫌がらせをしてきた二人組の姿はない。

念のため、いつものルートを通らず、校内を遠回りして、裏口から校舎を出た。

そして駐輪場に到着し、俊司と慎を待つことにした。


五分ほど待っていると、二人は現れ、皆で自転車に乗り裏門から道路に出る。

そしてしばらく三人で走っていると、一台の自転車が俺達を追い抜き、手前で停車する。


「おいおいおい、俺を話もせず逃げるのか」


俺達三人は自転車を止め、ジッと男子を見据える。

すると俊司が小さな声で呟いた。


「あれ、たぶん遠藤先輩だ」


大柄で短髪……階段で俺にぶつかってきた男子……やはり遠藤先輩だったか。


遠藤先輩はニヤリと笑い、俺達三人に「話せる場所に、お前達ついてこい」と告げ、自転車に乗って走り出した。

その後ろ姿を見て、慎が俺に問いかける。


「どうする、今の隙に逃げるか?」

「そんなことしても無駄だろ。また学校に行けば、待ち伏せされるだけだからな」

「うわーめんどくせー!。俺、帰っていいか?」


俊司は嫌そうな表情をする。

すると慎が俊司を睨んだ。


「ハンバーガー2つ、奢ろう」

「ポテトも付けてくれ」

「二人の分は俺が奢るよ。巻き込んじまったからな」


俺の言葉に俊司は「やった!」と声を上げた。


それから俺達三人は、遠藤先輩の後に続いて自転車を走らせた。

すると道路脇に小さな公園があり、遠藤先輩が自転車を止める。

俺達三人が自転車から降りると、遠藤先輩は公園の中へと歩いていく。


敷地の中央で、遠藤先輩は立ち止まり、俺達三人をジッと見据える。

そして俊司と慎を後に残し、俺は一歩前に進み出た。


間近で見る遠藤先輩は、首を太く、両肩は盛り上がり、腕が異様に太かった。

さすがはボディービル部。

こんな筋肉鎧と喧嘩なんてできるはずがない。

モブの俺なんて、一発で病院コースになりそうだ。


そんな俺の内心も知らず、遠藤先輩は首をコキコキと鳴らし、ジッと睨んでくる。


「ここなら、邪魔されずに話ができる。九条、結奈に近づくな。結奈は俺の女だ」

「遠藤先輩、噂を聞いて誤解してるみたいですが、俺と朝霧はただのクラスメートですよ。俺は朝霧に告白したこともないし、付き合ってもいないです」

「そうであれば、放課後に二人で抱き合っていたという噂はなんだ。お前のクラスを調べたが、九条と朝霧が教室の仲でも抱き合っていたと、後輩たちから報告があった。これでもまだ言い逃れするつもりか」


居残りの時は目撃者は俊司と慎の二人だけ、しかし教室で朝霧と抱き合ったことは、クラスの生徒全員が見ている。

噂を広めるつもりはなかったとしても、上級生に問われれば、簡単に教えるよな。


「それは朝霧が俺をからかっただけで……クラスで大騒ぎにはなりましたけど、俺と朝霧は付き合っていないですから」

「じゃあ、朝霧から手を引くんだな」

「だから、遊びに誘ったこともなければ、手も足も出してないですよ」


俺の答えを聞いても、遠藤先輩は険しい表情で両拳を握っている。


嘘は言っていない。

このまま遠藤先輩が、俺の話を少しでも信じてくれれば、これで解決だけどな。


俺と遠藤先輩が対峙していると、公園の出入口の方から、自転車のブレーキ音が聞こえてきた。

すると遠藤先輩が俺から視線を外し、驚いた表情に変わる。

何が起きたのかわからず、後を振り返ると、朝霧が眉を吊り上げ、大股で歩いたきた。


おいおいおい、せっかく遠藤先輩が落ち着いてきたのに、どうしてここに来るんだよ。

朝霧が俺を追ってきたら、余計に先輩の疑いが濃くなるじゃないか!

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