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15話 宗太の黒歴史!

遠藤先輩と和解した翌日から学校の雰囲気が徐々に変わってきた。

廊下を歩いていても、あまり視線を感じない。

女子は相変わらず、チラチラと見てくるが、明らかに男子からの敵意の視線が減った。


心の中で不思議に思っていると、俊司が答えを教えてくれた。

遠藤先輩が、三年生の友人達に、朝霧から返事も貰っていないのに、勘違いで彼女扱いしていたことを公表したらしい。

そして、今回の件で九条と朝霧に迷惑をかけたので、二人については俺が応援すると断言したという


三年生のボディビル部、筋肉隆々の強面の先輩の宣言で、イタズラしてきていた連中も俺に手が出せなくなり俺は、触れてはいけない異物として、学生達から認知されることになったらしい。


それに、先輩の言葉は噂となって広まっていくことで、なぜか朝霧と俺が学校で公認のカップルであると誤解されているみたいなのだ。


その噂は俺のクラスにも広まっているわけで、多くのクラスメイトから真相は?と問いただされる事態に陥った。


もちろん俺は否定したが、朝霧はなぜカップルだと主張。

なぜかクラスの皆も俺と朝霧のことを生温かく見守っているし。

俊司は「羨ましい奴」と睨まれ、慎からは「現実を受け止め、抵抗するのは諦めろ」と諭された。

朝霧は美少女だし、喜んで受け入れればいいのに、なぜかモヤモヤが晴れない。


午後のHRが終わり、演壇の前に立っている鈴ちゃんが手招きをする。


「九条君、ちょっと来て」

「はーい」


ちょっとウキウキしながら近づくと、鈴ちゃんが顔を近づけ、小声で質問してきた。


「九条君と朝霧さんって、居残り中にいい雰囲気になって、カップルになったんだってね。職員室の先生達の間でも、あなた達二人の噂は流れてきてるわよ。三年生の男子とも揉めたって話も聞えてきたけど、上手く解決できてよかったわね」

「いや、そうじゃなくて……」

「居残りの勉強で思わぬ展開だけど、私が二人のキューピッドになれて光栄だわ。朝霧さんと仲良くするのよ。九条君は腕白だから少し心配ねー」


鈴ちゃんは胸の前で両手を組み、目を輝かせている。

そして、「彼女ができたからって、勉強を疎かにしちゃダメよ」と小さく手を振って、教室から去っていった。


美人の担任教師にまで誤解されてしまった。

なんだか微妙な気分だな。


席に戻って教材を鞄の中に片づけていると、俊司と慎が歩いてきた。

その後に朝霧と神楽も一緒だ。


「今日は皆で帰ろうぜ」

「それはいいが、赤沢は?」

「剣道部だって」

「輝夜の分まで私が頑張っちゃお」


神楽は天然なのか、またズレたことを言っている。


最近では赤沢や神楽とも自然と会話するようになったな。

俊司と慎も嬉しそうだから、それでいいんだけどさ。


俺と朝霧、俊司と神楽、その後に慎の順で、廊下を歩いていく。

隣を歩く朝霧が、俺の腕のシャツを抓んで、ニッっと微笑む。

やっぱり、綺麗だし可愛いよな。


俺達五人は校舎を出て校門へ向かう。

すると朝霧が俺の脇腹を突っついた。


「今日は自転車じゃないの?」

「遅刻しそうな時は自転車。普段は歩いて登校している」

「へえー、私と同じ。やっぱり私達って気が合うね」

「……おう」


俺と朝霧が話していると、後から神楽の笑い声が聞えた。


「二人共、仲良しね」

「俺達がいるのに、イチャイチャすんな」

「私達も仲良く歩きましょうね」

「俊司、お前だけズルいぞ」


俊司が神楽を見て、表情を緩めていると、後から慎が並んできた。

そして三人でワイワイと話し始めた。

後を見ていた朝霧は、俺の方を見て、「楽しいね」と嬉しそうだ。

神楽はおっとりした美少女だからな。

俊司と慎が盛り上がるのもわかる。


道路を繁華街の方面へ歩いていくと、前から清浄女子高の一団が歩いてくる。

その女子達すれ違う時、「九条君でしょ」と名前を呼ばれた。

その声に驚いて顔を振り向けると、一人の女子が立ち止まり、目を大きくして俺を見ていた。


「こんな場所で会うなんて奇遇ね。元気にしてた?」

「ああ、葛西か、久しぶり」

「隣にいるのはもしかして……へえー、彼女ができたんだ」

「……お前に関係ないだろ」


マズイところで、葛西麻耶かさいまやに出会ってしまったな。


彼女は昔、俺の隣の家に住んでいた、幼馴染で、小学生の頃よく遊んでいた。

同じクラスになったこともあった。


仲が良かったことを勘違いして、好きと告白して、見事に振られたんだよな。

その後、葛西が他の女子達に話して教室中に知られ……これ以上は黒歴史だから思い出したくない。

黙ったまま、渋い表情をする俺の腕に、朝霧が腕を組んでにっこりと笑う。


「宗太の彼女でーす。私達、相性ピッタリなの」

「そう……それは良かったわね……九条、またね……」

「バイバイ、さようらなー」


朝霧の笑顔に気圧され、葛西は表情を引きつらせて、先を歩く女子の集団の元へと去っていった。

するとクルリと俺の方を向き、朝霧が無表情で見つめてくる。


「あの子、誰なのかな? 詳しく聞きたいなー」

「いや……あの……その……」


俺は両手を上げ、激しく首を振った。

すると俺達を見ていた、神楽がパンと手を叩く。


「ホントに仲良しねー」

「早くファミレス行こうぜ」

「俺はスタバでいい」


神楽、ほのぼのしてないで、早く朝霧の機嫌直してくれ。

俊司、慎、何もなかった振りをするな。

どうして俺が窮地になってるんだよ。

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