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新13話 俊司と慎からの報告

翌日の朝、いつも通りに学校へ登校する。

教室に入り、鞄からスマホを取り出して、モモンガの動画を眺める。

膜を広げて主人の元へ飛んでくるなんて、めちゃ可愛い過ぎる。


心が癒され、ほのぼのしていると、突然肩を捕まれた。


「朝から和んでんな。あれから俺達は大変だったんだからな」


イヤホンを外して、顔を見上げると俊司と慎が立っていた。


そういえば二人に遠藤先輩のことを頼んでいたんだった……

昨日、朝霧が家に来て、その後もドタバタしていたから忘れてたよ。


「すまん、それで遠藤先輩は?」

「あれからファミレスに行ってさ……朝霧のこと相当惚れてたよ。自分の想いが一方通行だったとわかって、めちゃ落ち込んでてさ。だから三人でカラオケボックスに行って、めちゃ歌い倒したわ」

「それなら遠藤先輩も楽しめたんだな」

「それが……遠藤先輩……懐メロを歌いながら泣いてしまったんだ。見ていて気の毒でな」


それは悲惨な……これはトラウマになるかもな……

朝霧に自慢の筋肉も、ケチョンケチョンに言われたからな。


三人で暗い雰囲気になっていると、教室に朝霧が入ってきた。

そしてニコニコしながら、俺達の元へ歩いてくる。


「九条、昨日は加奈ちゃんと遊べて、とっても楽しかった。加奈ちゃんにお礼を言っておいてね」


加奈が朝霧を送って、彼女の家に行ったのは知っている。

帰ってきてから妹は上機嫌だったから、楽しかったんだろう。

詳しく教えてもらっていないので、わからないけど。


そんなことより、今、その話を言ってくるな……遠藤先輩の状態を聞いただけに、なんだか辛い。


俺が渋い表情をしていると、俊司と慎がニュッと真剣な表情で顔を寄せてきた。


「昨日、朝霧と加奈ちゃんが会ったのか? 朝霧を送っていったけど、どこへ送った?」

「朝霧が腹減ったっていうからマックに行って、それから加奈とバッタリ出会って、話の流れで俺の家へ……」

「はぁ! 俺と慎が遠藤先輩の懐メロ1時間コースに耐えてた時に、お前は女子二人と家でウハウハか!」

「そうだぞ。遠藤先輩、懐メロの中でも特に演歌が好きでな。知らない演歌をずっと聞かされたんだぞ。宗太、俺達二人に謝ってもらおう。とくかく謝れ」

「すみませんでしたー」


俺は姿勢を正し、素早く床に両手をついて土下座をする。

二人がそんなキツイ時間を過ごしていたなんて知らなかった。

これは素直に謝罪を示すしかない。


俺の姿を見た、朝霧が俊司と慎の前に立ち、両腕を広げて制する。

「どうして九条が謝ってるかわからないけど、虐めはダメだからね」

「それは誤解だって、なー慎」

「その通り、昨日、苦しんだのは俺達だからな」

「訳わかんない。ちゃんと説明して」


朝霧は腰に両手を当て、ジッと二人を見る。

すると俺達が騒いでいるの知った赤沢と神楽の二人が早足で歩いてくる。


「あんた達、また何か揉めてるの? 九条も立って、私達にも説明しなさい」

「俺が説明する」

「俺が補足しよう」


俊司と慎は、昨日の遠藤先輩の件を説明し、俺と朝霧が、俺の家にいたことを早口で伝えた。

話を聞き終わった、赤沢は大きく息を吐く。


「それは黒沢と佐伯が文句を言うのもわかるわね」

「結奈、九条君の家に言ったんだー。後から詳しく聞かせてね」

「いやいや、話すなって」


ズレたことをいう神楽の言葉に、俺は慌てて床から立ち上がった。

それを見た朝霧、赤沢、神楽の三人は笑い転げている。

そして、神楽が楽しそうに手をパンと叩いた。


「黒沢君と佐伯君は、九条君だけ結奈と一緒にいたから怒ってたんでしょ。それなら今度、六人で遊びにいきましょう。輝夜もそれでいいよね?」

「……仕方ないわね。部活のない日なら付き合ってあげてもいいわよ」

「それなら、この六人でグルチャしないか?」

「黒沢、調子に乗りすぎ」


興奮で目を輝かせる俊司を赤沢がたしなめる。


赤沢も神楽もクラスでは人気の女子である。

その二人と遊べるんだから、俊司も浮かれるよな。

朝霧も美少女ギャルではあるし。

静かにしているけど、慎も顔がにやけてるし。


皆の様子を見ていると、朝霧はスマホを取り出し、俺のシャツを引っ張る。


「九条、LINE交換しよ」

「グルチャするんだから、それでいいだろ」

「加奈ちゃんは教えてくれたのに……わかった、九条に連絡したい時は加奈ちゃんに連絡するね」


昨日、二人が仲良くなったのは知っていたが、既にLINEを繋げていたとは迂闊だった。

つまり朝霧が頻繁に加奈に連絡するということは……俺の学校での行動が全て妹にバレる。


頬を引きつらせて、俺はポケットからスマホを取り出す。


「俺のLINEを教えるから、加奈を経由するはやめてくれ」

「うわー、いいように転がされてるな」

「もう尻に敷かれ始めてるな」


俊司、慎、二人とも黙れ。

どうしても朝霧のペースに巻き込まれるんだから、仕方がないだろ。


こうして神楽の提案で、機嫌を直した俊司と慎は、昨日のことをすっかりと忘れているようだ。

……遠藤先輩、あなたのことは俺が忘れないから、少しでも早く元気になればいいな。


俺は心の中で、両手を合わせて祈るのだった。

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