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12話 俺の秘密を!

二人が部屋から去り、再び居眠りをしていると、一階から大声が聞えてきた。


「お兄ちゃん、ご飯できたよ!」


浅い眠りだった俺は、その声に反応してベットか起き上がった。

着替えもしないまま寝ていたので、シャツにしわが寄っている。


ノロノロと制服から上下ジャージに着替えた俺は、髪を掻きながら一階へと向かった。

リビングの扉を開けて中に入ると、朝霧が肩出しニットを着て、テーブルの椅子に座っていた。


「九条、遅い! 私も加奈ちゃんも頑張って料理を作ったんだからね」

「それは悪かった……それよりも、その服は?」

「ふっふーん、いいでしょ。加奈ちゃんが服を貸してくれたんだ」


加奈の身長は朝霧より少し低く、体も細身で胸も小さいはず……

その……胸がすごく強調されて……けしからんことに。


思わず視線を逸らすと、朝霧がニュウっと笑みを浮かべる。

そしてわざとらしく、頭上へと両腕を伸ばす。


「この服、私が着るとピチピチなのよね。ねえ九条、私に似合うかな?」

「似合ってる。似合ってる」

「私の方を見て、言ってほしいなー」


クソっ、完全にからかわれてる。

そっちがその気なら、凝視してやろうじゃないか。


俺は大きく目を見開き、朝霧の胸を直視した。

うわー、さっきよりもデカくてほわっと柔らかくみえる!


「お兄ちゃん、結奈さんのどこ見てんのよ! 家の中でセクハラしないで!」


大声が聞えてきて、ハッと視線を向けると、料理を運んできた加奈が鬼の形相で睨んでいた。

それに焦った俺は、思わず声が裏返る。


「違う、違う。朝霧がこっち見てっていうから」

「うん、言ったけど、ジッと胸を見られるのは、恥ずかしいかも、九条のエッチ」

「そんなつもりじゃなかったんだって!」


朝霧は両腕で胸を胸を多い、恥ずかしそうな仕草をする。

そして椅子から立ち上がると、「料理を運ぶの手伝うね」と加奈に告げ、朝霧はキッチンへと逃げていった。


あの小悪魔め、俺を完全に嵌める気だったな。

妹の評価が一気に氷河期になったじゃないか!


頬を膨らませ不機嫌そうに、加奈はテーブルに料理を並べていく。

そしてじろっと俺を一瞥して「スケベ!」と言ってキッチンへ歩いていった。


俺も年頃の男子だ。

ちょっとぐらい興味があってもおかしくないだろ。

胸をガン見したのは反省するけどさ。


しばらくすると朝霧と加奈が料理を次々と運んできた。


エビフライ、グラタン、ハンバーグ、ポテトサラダ、野菜スープ、ご飯……おいおい、こんなに食べられるのか?


テーブルの上に並ぶ料理の数に驚いていると、隣に座った朝霧がにっこりと微笑む。


「沢山作り過ぎちゃったけど、しっかり食べてね」

「グラタンとハンバーグは結奈さんが料理したんだから、残しちゃダメだからね」

「……わかった、善処する……」


これだけの量を食べられないなんて言えない。

朝霧の料理を残せば、加奈が怒る。

加奈の料理を残せば、明日からの弁当の中身が怖い。


こうなったらご飯だけ残して、料理を限界まで食べてやる!


俺は意を決し、箸でハンバーグを掴んで、口に放り込む。


「……美味い」

「でしょ、でしょ、結奈さん、私よりも料理が上手いの」

「へへへ、そんなことないよ。加奈ちゃんの方が料理上手よ」


俺の驚いた顔を見て、加奈が手を叩いて喜ぶ。

すると朝霧は照れたようにハニカミ、加奈を褒める。


すっかり、加奈と朝霧は仲良くなったんだな。


次にグラタンを食べてみると、グラタンも抜群に美味しかった。

女子二人は楽しそうに雑談している。

その間、俺は全ての料理を黙々と食べ続ける。


エビフライを箸で抓みながら、朝霧が俺の方へ顔を向ける。


「こうして並んで食べていると、私達、カップルみたいだね」

「ゲフォ、ゲフォ、ゲフォ、ゲフォ」

「三人で食べると家族みたいですよねー」

「ゴフォ、ゲフォ、ゴフォ、ゲフォ」


朝霧も加奈もなんてことを言い出すんだ。

思わず、料理が喉に詰まっただろ。


咳き込む俺の背中を摩りながら、朝霧が加奈に問いかける。


「九条って、小学校や中学生の時、好きな女子っていなかったの? どんな女子が好みが聞いてもいい?」

「いいですよー! お兄ちゃんは明るい女子によく絡まれてましたね。お兄ちゃんから告白したことはないはずです」

「俺の黒歴史をバラすな! せめて俊司や慎の中学生の頃の話にしてくれ!」

「そういえば、あの二人も同じ中学だったんだね。三人はどんな中学生だったんだろ?」

「えっとですね――」


加奈は唇の人差し指を当て、昔を懐かしむように話し始めた。

気遣ってくれたのか、俺よりも俊司や慎の話が多い。

許せ友よ……暴露される時は三人一緒だ。


何とか全ての料理を食べ、腹を摩っていると、朝霧は顔を上げ、壁の時計を眺める。


「もう七時かー。楽しかったから気づかなったよ。私、そろそろ帰るね」

「お兄ちゃん、結奈さん帰るって、お兄ちゃんが送っていかないと」

「ちょっと待ってくれ。今は食べたばっかりだから、少し休憩したら、送っていくよ」


腹が満タンで、体が重い。

もう少し消化が進むまで待ってほしい


すると朝霧がスッと椅子から立ち上がる。


「いいよ、いいよ、今日は九条にマックを奢ってもらったお礼だし。私の家近いから」

「それなら、私が結奈さんを送っていきます」

「だったら、加奈ちゃん、私の家でゆっくりしていってね」

「いいんですか! 結奈さんの部屋にお邪魔しても」

「いいに決まってるじゃん」

「わかりました。ちょっと外着を取りに行ってきます」

「私も着替えないと」


二人は楽しいそうにリビングへ歩いていく。

ドアノブを握り、振り返った加奈が、俺をお願いをしてきた。


「お兄ちゃん、私、結奈さんの家に行ってくるから、後片付けお願いね」

「へーい」


朝霧を俺が送っていくつもりだったが、加奈が乗り気だから任せておこう。

同年代の女子の部屋って、ちょっと興味あったんだけどな。


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