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デートの予行練習~魔族王都バラクブルム~

 予定通り、僕とフィノはポムポム魔王様と一緒に魔族が住む王都『バラクブルム』を観光している。

 レオンシオ団長達は少し離れた位置でついて来ている。

 ポムポム魔王様の側近兵も一緒で、和気藹々としている。


 因みに魔族の国というのはないみたいで、バリアルの村の様に種族ごとの村というか集まりがあって、魔王城のある周りに魔族が街を築いて王都になったといった感じらしいよ。


 獣人族もこれに近いみたいで、獣人族の王に協力を要請しに行く時は少し気を付けないとね、とフィノに注意された。



「ポムポムちゃん、この家とか道の整備とか全部魔法ですか?」


 僕達が歩いている所は大通り。

 魔族の食べ物がある飲食店や力自慢がうろちょろする酒場みたいなところ、武具を売っていたり、王国では見れない景色が多くある。


 僕が言ったのもその一つで、道路はゴミとかは落ちてるけど石畳で均一になってるし、家は微かに魔力の跡が見えて西洋風だ。


 あ、ポムポム魔王様は変装してるよ。

 でも、ポムポム魔王様みたいな人はいないから、髪の色を変えただけだとバレバレだね。

 何度もお忍びというかしているみたいで、皆畏敬の念を抱きながらも普通に接している。


「ええ、魔法ですよ。ただ、家には硬質化と固定化の魔法をかけ、道には修復の魔法が掛けられています」

「でも、それって整備が難しかったりするんじゃないですか?」


 フィノの言う通りなんだけど、この石畳から魔力を感じるんだよね。

 魔道具に近い感じのね。


「シュンさんは気付いたみたいですけど、この石畳の裏にシュンさんが使う刻印魔法で二種類の魔法が刻んであるのです」

「その一つが修復なんですね。もう一つは教えてくれますか?」


 こういうのは秘匿もされるからね。

 まあ、害が無ければ教えても問題はないだろうけど。


「構いません。もう一つの魔法は魔力吸収」

「魔力を吸収してるんですか? 空気中とか?」

「いえいえ、その上にいる者から微量の魔力を吸収するのですよ」


 ほほぅ。

 その魔力で修復させているということか。

 魔族は魔力が豊富だからね。

 それに大通りなら絶対に人が通るし、自分達が壊したり傷つけたりするんだから良い案かもしれない。


「所謂税金ですね。石畳は王城まで続いていますから、城の門に貯蓄する魔道具を置いています。その魔力は非常時や王都全体を囲う結界の維持にも使われます」

「考えましたね。王国でも使えないかな」


 王国で使う、か……。

 それって僕が刻印しないといけないってことだよね。

 ポムポム魔王様が使えるのは知ってるからだろう。

 長寿だし、魔族はそういった方面に強いのもわかってるからね。


 問題の魔力も豊富にあるからね。

 問題はそこまで器用じゃないってところかな。


「多分無理だと思うよ」

「どうして? 魔力を持たない人はいないからいい案だと思うんだけど」

「いい案ではあると僕も思うよ。でも、人族は魔族と違って魔力が少ないからね。それに作れるのは僕だけだから時間がかかる。もっと言えば長寿じゃないから僕がいなくなった後壊れたらそれまでだ」

「そっか。刻印魔法はシュン君だけだったね。魔力もたくさんいるから、人族じゃ無理か」


 まあ、魔大陸と違って種族はたくさんいるからやりようはたくさんあるけどね。

 例えば、維持はもっと繊細で難しくなるけど、ドワーフとエルフが協力して魔道具を作るとか、魔石の魔力を使って刻印する機械を作るとか、魔力を本当の税金にして賄うとかね。


「私もシュンさんの刻印を見せてもらいましたが、あそこまで精巧なのは難しいですね。ドカンとしたいタイプですから、私は」


 石畳の刻印がどの程度なのか知らないけど、全部をポムポム魔王様が作ったとは考えにくい。

 というより石畳は手先の器用なゴブリンたちが作り、刻印はダークエルフやピクシーとかの種族が作ったら簡単だ。


 それに二つだけの刻印ならそこまでじゃないはずだ。




「わぁ~、見たこともないアクセサリーがいっぱい! 宝石に見えるけど大きくないかな?」


 ほんとだ。

 僕の親指ぐらいあるよ。

 流石に宝石には詳しくないからわからないけど、プラスチックとか人工で作れないと思うから本物だろう。

 いや、ガラスというのもあり得る。

 でも、魔力を流せばガラスか本物かは伝達力で分かるか。


「どう? シュン君。この髪飾り似合ってるかな?」


 黒い髪に小さい宝石が散りばめられた髪飾り。

 モチーフは花のようで、耳の上や後ろ辺りに着ける女の子用だね。


「うん、とっても似合ってるよ。でも、僕としてはもう少し小さくて大人しいのが良いと思う。フィノの髪は僕と同じで黒いけど、艶やかで綺麗だからね。それを活かすようなのが良いかな」


 女の子にアクセサリーのプレゼントとかしたことないからよく分かんないなぁ。

 女の子と手を繋ぐのもこっちに来てからが初めての経験だったし、デートというのはやはり難しいよ。


 いや、これはデートの予行練習だけどね!

 ここ重要だから!



 この返答も気を悪くしたんじゃないかとひやひやするよ。


「そうかな? 似合ってると思うんだけど」


 唇を尖らせるのは可愛いなぁ。


「確かに似合ってるよ。フィノの髪に白は栄えるからね。とても綺麗だもん。でも、アクセサリーを主役にするんじゃなくて、やっぱり主役はフィノだからね。良い物を付けるのと、良い物で良くするのでは違うんだ」

「シュン君は私のことを思ってくれてたってこと?」

「まあ、そうなるね。作ったのをお披露目するのならいいかもしれないけど、日頃から付けるのなら……こっちのヘアピンみたいな小さいのが良いと思うよ」


 差し出したのは同じような髪飾り。

 小指の先ほどの花が四つあって、白と薄緑色が二つずつ。

 花の中心――花粉があるところだっけ? そこに綺麗な宝石があるんだ。


 フィノの長い髪を三つ編みにして、それで耳の上あたりに留めると可愛いと思う。


「こっち?」


 無難な回答が出来たようだ。

 似合ってないのに似合ってるとは言えないもんね。

 嘘はつかないって決めたし。


「確かにそちらの髪飾りの方が似合うと思います。こちらは華やか場で使うのが良いでしょう。お二人の婚約式や結婚式とかですね」

「「ポムポムちゃん!?」」


 まさか……ではないけど!

 スルッと言われるととても恥ずかしいよ!


 ちらっと横を見たらフィノと目が合うし、何故か顔を逸らしてしまい、もう一度見たらフィノも同じように目を向けてきたから余計に!


「もう、初々しいですね! 私も恋したくなりますよ」


 よく周りを見たらニヤニヤしている人が多くいる。

 幸いここがアクセサリーショップで人が少ないことだ。


 ただ、ポムポム魔王様がいるから目立ってるんだろうな。


「ポ、ポムポムちゃんは婚約者とかいないのですか?」


 フィノも恥ずかしがってる。

 僕と一緒で顔が赤くなってるもん。


 そして、それはちょっと気になるかも。

 でも、魔王ってどうなんだろう。

 実力順だから世継ぎとか作らなくていいしね。

 普通なら強いからモテる世界なんだろうけど、ポムポムちゃんはそんなことするようなタイプには見えない。


「私には婚約者はいませんよ。というより魔族に婚約者という物はほとんど存在しませんね」

「やっぱり強いとモテたりするからですか?」

「まあ、それもありますね。それ以上に長寿ですから、その辺りもルーズなんですよ。あとサテラのように女性だけの種族や行為を好む種族もいます。勿論恋愛結婚や許嫁がいないとは言いませんよ」


 サラッと毎度言うね。

 行為を好むってそういうことだよね?

 サテラさんは前世でもあれで有名な夢魔だし。


「わ、私達にはまだ早いね」


 僕は思ってないからね!

 ちょ、ちょっとピンク色が広がったりしたけど……エッチな事なんて!


 キスすらしてないんだよ?

 ま、まあ、フリはしたけど……。

 それだけだもん!


「はぁ~、シュン君も男の子ってことだね。ま、紳士だからいいけど」

「シュンさんはえっちぃ~ですね。でも、男はやはりそのぐらいでなくてはいけません」


 ……。


「世継ぎが生まれるのは早いかもしれません。ただ、まだ学生でありますし、成人していません。してはいけないとは言いませんが、必ず避妊を」

「これも報告がいるでしょうか? まあ、二人の仲を見ていれば今までもったと思います」

「シュン様はかっこいいですし、それなりに人気ですからね。今時恋愛して~というのはありませんよ。……羨ましい」

「いい男に巡り合えるのも運ですね。勿論シュン様はとてもいい男の子ですけど」

「奥手だと思います。姫様もがっつりきてほしい時があると思いますよ?」


 ……。

 ぐぅぅうおおおおおおおおおいッ!

 最後の騎士は魔法の実験体にしてやろうか!

 てか、またお前かっ!






 その後フィノと少しぎこちなくなったけど、少しして良い雰囲気になって次の店へ向かう。


 因みに魔大陸ではお金が無いから、両者が納得する物々交換が普通のようだ。

 それだと相場が崩れやすいから品物に対しての価格は決まってる。


 例えば食材なら金や銀の欠片だったり、武器とかだったら魔物の素材とかね。

 差があるのは仕方ないけど、その辺は種族柄大雑把だったりするから良いらしい。

 魔王が禁止すれば大概禁止になるし、王都以外は種族の集まりだからね、結局王都だけのルールになる。


 気を付けるのは僕達が貿易をする時だけってこと。



 さっきの髪飾りは両方とも加工前の宝石と交換してもらった。

 宝石は魔物を倒しても手に入らないからね、魔大陸ではそれなりに価値があるんだ。

 それなのに使う人は多くいるし、魔道具にもなるから必需品とも言える。


 僕の宝石は迷宮や街の探索とかしている時に良さそうなのを買ったものだ。

 加工してアクセサリーにしたり、魔道具にしたりしてるんだ。

 高額な趣味、といえるね。



「そろそろお昼にしますか?」


 時計も昼前を差している。

 お腹に関しても同様だ。


「丁度良い時間だし、ポムポムちゃんのおすすめのお店に行きたいかな」

「そうだね。ポムポムちゃんはお忍びしてるんだもんね」


 大丈夫だとは思うけど、食べられるお店に行きたいね。


 これは偏見とかじゃないんだ。

 竜魔族や獣魔族は特にないけど、吸血鬼族は血を飲むし、夢魔族は精を吸い取って、妖精族や植物系の種族は花の蜜を吸ったり虫を食べたりする。


 食べられないわけじゃないけど、美味しそうとは思えないからね。

 ま、出ていた食事は普通だったから大丈夫だろうけど。


「では、後ろの方達も御一緒に魔王御用達のお店に行きましょう。デザートが美味しい所なんですよ」

「デザート、良いですね。甘いものは元気が出る、女の子の源ですから」

「はい。魔大陸は魔力の影響で食材が豊富ですからね。甘いものも数多くあります。といっても、料理は少し独特な所が多いですが」


 だ、大丈夫だよね?






 来た場所は見るからに怪しげなデザートっぽい絵が描かれた『ムンムンハニー』。

 一応お食事処みたいで、普通の料理もあるらしい。


 絵は店長が書いたようなんだけど、夢魔族ということで絵は得意じゃないみたい。

 本人はこれ以上ない出来だと自負しているとか。

 店の名前もどう考えても夢魔族っぽいよね。

 ムンムンとか特に。



 店の中はいたって普通だ。

 木と煉瓦のような作りで、ラ・エールとは似てるけど違う感じだ。

 特に定員とか、中にいるカップルとかね。


「店の中は普通ですね。少し過激にも見えますけど」

「シュン君、あまり見ないように。好きなら今度着てあげるから」


 ……え?


「シュンさんはあのような趣味が?」

「いや、無いですよ! ま、まあ、嫌いとは言いませんけど……でも! フィノにはそのー、ね」

「……シュン君」


 いーやーっ、やーめーてーっ!

 僕の築いた印象が崩れていくよー!


「ま、シュンさんも男の子、ということが分かったのでいいとしましょう」


 良くないよ!


「私だけを見てくれているのなら我慢する」


 見てるからその怖い笑みを向けないで!




 夢魔族が店長だというからサテラさんが関わっているのかと思ったけど違ったみたい。

 関わってはないけど、夢魔族が運営しているらしくて、結局はサテラさんの手も入っているみたいだけどね。


「料理は確かに独特だね。調理法も魔族特有なのかな?」


 僕は赤いのにさっぱりしていて染み込んだ野菜のスープと霜降りよりも柔らかいステーキ定食。デザートに百年単位で固まった甘い氷山アイス。

 フィノはポコポコと泡が浮かぶマグマの様なスープと海鮮の野菜炒めらしき定食。デザートは地層の様に分かれたカラフルなジャンボパフェ。


「こっちのマグマの見た目のスープはひんやりしていてギャップが凄い! シュン君は作れないの?」

「流石に食べただけじゃ製法までは……。それに食材は魔大陸産だろうしね」


 てか、どうやってそんな原理になってるんだ?


「その料理は極寒火山の近くにある湖の水が使われているのだったと思います。魔力の影響で土地も不思議な所が多いのですよ」

「冷たい火山ということですか?」

「ええ。よく分かっていないのですが、その湖の水は沸騰させても温度がほとんど変わらないのです」


 そんな湖があったのか。

 でも、使い処は難しそうだ。

 熱湯にならないということは食べ物を茹でられないということだからね。


「世界には常温では溶けない氷や固まらない水もあります。常識外の食材や素材は山の様にあるんですよ」


 ほほ~。

 僕も知らない物が山の様にあるってことか。

 やっぱり世界を回ってみるのも面白いかもしれないね。


 そうなると絶対に負けられないってことになる。

 負けられない理由が一つ増えたよ。




「それはそうと、お二人は恋人関係なのですよね?」


 なんだろう、改まって。


 フィノと目を合わせても否定することはないし。首を傾げながら頷くしかない。

 何か嫌な予感……いや、何か企んでいるような気がする。

 小指を立てるとか、爺のツンデレがどうのとか、きっと何か考えてるんだ!


 ごくり……。


「やはり、ここはあーん、とかやるんですよね?」


 ……やっぱりかッ!

 敵対していたくせに、なぜ人族達よりその辺りに詳しいんだ!


「あ、あーん? って何? 恋人同士が何かするみたいだけど……食事と関係があるの?」


 あ、あれ?

 フィノは知らないの?


 そう言えば、僕は一度もしたことない気がする……。

 見たことも……ない気がするな。

 子供相手に食べさせるときはあるけど、それ以外では見てないな。


 って、まさか――


「知らないのですか? 私は恋人達はお互いに食べさせあうと聞きました」

「た、食べさせあう!? どうして?」

「それは分かりませんが、スキンシップの一つではないでしょうか? 好きな子に食べさせて、二人で分け合うようなですね。女の子はそういうのを彼氏とするのは嬉しいのではないでしょうか」

「え、ええー!? 魔族はそんなことするの!? ――シュ、シュン君!」


 やっぱり……。


 間違ってはない。

 うん、間違ってはないんだよ。

 でも、大声で言うようなことでもないし、皆の前でするようなことでもない。


 周りのお客さん、特に夢魔族の店員さん達が興味津々なんだけど。

 多分この店を選んだ時からこんなことを考えてたんだろうけど……にっこり笑われたよ。


「こほん。フィノ、あーんというのは確かにスキンシップの一つで間違ってないよ」

「そ、そうなんだ……。や、やっぱりシュン君も私に食べさせたいの?」


 くぅぅぅぅっ!

 何だ、このいつもと違う湧き上がる様な、抱き締めたくなる様な、心の底から喜びを叫びたくなる衝動は!


 くそっ!

 前のめりに近づいて来るフィノの桜色の唇に目を向けてしまう!


「嫌なの?」

「嫌じゃないよ! ……は、恥ずかしいだけで」

「私だって恥ずかしいよ。で、でも、シュン君になら……してもらいたい、かも」


 ズッキュゥゥゥ~ン!


 ピンク色のオーラが見えるよ。

 久しぶりにもじもじしているところを見る。

 ここまで言わせてしまったら、僕も男として覚悟を決めねば!

 正しく今でしょ! だよ。


「わ、分かった。じゃ、じゃあ……フィノ、あーん」


 フィノの口の中に僕が一口大に切ったステーキを運ぶ。

 フォークは今まで僕が使っていた物だ。


「あ、あーん」


 そして、フィノは目を瞑ってその小さな口を開き、恥ずかしそうに僕と同じセリフを返した。


 もう、僕の心がどうにかなっちゃいそうだ!

 全身が火照ってフォークを持つ手が震えるよ!

 それにいつも以上にフィノが可愛く愛おしく可憐で、いろんな感情が噴き出して今にも抱きしめて撫でたい!


「あ、これが……伝説のあーん、です……! この目で見れるとは思いもしませんでした。特にお二人が初々しくてバッチグーですよ!」

『……ごくり』


 外野のせいで余計に恥ずかしい!


 ここはサッとフィノの口に――



 パクリ。



「……ん~! ほいひい!」

「う、うん」


 僕、もう満足です!


 あ、フォークは危ないから離してね。

 感触からフォークを舐めてるのが何となくわかるから。

 それが余計に恥ずかしい!


「ささ、フィノさんも」

「え? 私もするんですか? ま、まあ、おあいこということだし、シュン君が嫌じゃなかったら……。はい、お口開けて……あ~ん」


 くっ、ナイスだと思えばいいのか……!

 いつもと違うフィノを見れて嬉しいけど、これは二人っきりでしたい!

 恥ずかし過ぎて死んでしまいそうだ!


 しかもお口開けて、だってさ!

 もう、嬉しいのか恥かしいのか訳が分からなくなってきたよ!


「あ、あーん……美味しいね」

「でしょ!」

「「あはは(ふふふ)」」


 すぐにフィノが使っていたフォークを離した。

 笑い合ったけど、さっきまでフィノが使い、僕が口を付けたフォークを見てしまう。


 だって、僕のフォークもだけど、そのフォークをまた自分で使うということは――


「間接キス、ですよね」

「……」

「か、間接……!」


 フィノ、こっち見なくてもいいよ。

 いや、見てもいいけど、フィノが恥かしがると僕も滅茶苦茶恥ずかしいから、ね。


 そう言えば、まだキスすらしてなかったんだっけ。


 あ、あの人工呼吸はノーカンだから。

 ここ大事!


「あら? お二人はまだキスしてなかったのですか? てっきり仲が良いものですからしているとばっかり」

「い、いえ、間接キス……ぐらいなら。それにキスは偶にするからいいのです」

「でも、したことないんですよね?」

「……」


 何だ?

 この生暖かい視線は!


 僕はヘタレじゃない!

 ヘタレじゃないんだ!

 ただ、一緒にいるだけで嬉しいからキスまで行かなくていいだけなんだ!

 き、きっと数年後にはキスしてるもん!


 の、のの、濃厚かは別として!


「報告は別として、今のシュン殿はどうなのでしょうか? 同じ男として情けない。ですが、身分から考えるとこれが正しい気もします」


 またお前か!

 いらんことばっかり言って!


「こんなことを報告せんで良い。先代陛下からはその辺りは任せればいいと言われているのでな」

「そうなんですか? ですが、この初々しい所を見ていると、煩わしい反面何故か邪魔したくなります!」


 嫉妬かッ!

 男の嫉妬は醜い……女だったっけ?

 どっちでも醜い嫉妬はダメ!


「どちらにせよ、部下としてどうなのだろうか……」

「何か言った?」

「いや、何でもないよ? はい、あーん」

「え、あーん♪」


 これ癖になったかも……。

 一度やれば恥かしさも収まったし、逆に何度もやればなれるはず、だ!


 ここはそういう店なんだろうし。






 恥ずかしい思いをあの後もいろいろとしたけど、どうにか一日が終わった。

 いや、とても楽しくていい経験となった一日だった。


「今日は楽しかったね。魔族の皆も優しかったし、来てよかったと思うよ」

「そうだね。このことを帰って皆に伝えて友好にしていかないとね」


 フィノもどこかしらに溜まっていた疲れがとれたみたいで良かったかな。

 あと気恥ずかし気な笑顔が見れたしね。


「それはありがとうございます。アクシデントは起きましたが、特にこれといったことは起きず良かったですよ。こちらでも何かあればすぐにお伝えします」

「シュン様から映像の魔道具を頂きましたので、それを用いて連絡いたしますわ」


 映像の魔道具は完成した……わけじゃないけど、一時間程度なら通信できる魔道具が完成した。

 その一時間を使って今後会議が行われるんだ。

 一時間だと短いから、何個か同じ魔道具を渡してある。

 素材は迷宮に入ればいくらでも出てくるから費用はそこまでじゃない。


 今回は対価に貴重な鉱石とかを貰ったから等価交換だね。


「緊急時は私が転移で送ろう」

「戦うときは俺も参加するからな。竜魔族も当てにしてくれ」

「我等は偵察を行ってやろう」


 いろいろと問題があるけど、協力していかないとね。

 こっちもまだしないといけないことがたくさんあるし、冬が明けたらもう二年を切っちゃう。

 それまでに何度も言うけど整えないと。


「では、春になったらまた連絡します。その時は顔合わせも行うのでよろしくお願いします」

「はい、こちらも準備を進めます。今回は双方共に良い機会でした。これからは出来る限り友好にしていきたいと思います」


 最後にエルフ族の時と同じよう握手をする。


「それではこれで失礼します。また会いましょう」

「楽しく過ごせました。ありがとうございます」

「シュンさんもフィノさんもお元気で」






 こうして僕達は魔族を知ることが出来、魔族は今の人族を知ることが出来、お互いに理解し合えたと思う。


 バリアルは雲隠れしている竜人族の里に、ポムポム魔王様達は水棲族等の隠れ住んでいる種族に話しを通してくれるということで、残りは獣人族と聖王国となる。


 やっと世界が一つになる時が来るってところだ。


 これで勝てるようにみんなが一致団結して頑張るということになる。

 そのために次は学園に戻って獣人族の里まで行く準備をする。

 その前に二年になる試験とか、入学してくるシリルリード君の入学式とかがある。


 今年も頑張っていこうと思うよ。

 魔族との友好関係になれて幸先も良いしね。


食べさせてあげる行為は『あーん』と『あ~ん』どちらが正しいのでしょうか?

私としては場面によっては『あ~ん』が良い時もある気がするのですが、イメージ的に違う気もするんです。

皆さんはどっちが良いと思いますか?

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