ドヴェルク族
すっかり忘れてました。
最近急激に冷え込んで、寒さの影響か頭が回転しません。
集中力が散漫というか、考えがまとまらないというかですね。
もしかすると再びスランプが来たのかもしれませんが……。
「――ということで、すまないが内部分裂が起きてしまった。本当に申し訳ない」
ダークエルフ族前族長のディルトレイさんが本当に申し訳なさそうに頭を下げた。
後ろではディネルースさんも頭を下げ、他の地区長達もこればっかりはといった感じで頭を下げている。
「あの様子じゃ仕方ないじゃろう。全体の何割ほどじゃ?」
ゴルドニアさんは予期していたみたいだ。
まあ、僕達もあの後話し合ってその可能性が高いとなっていたんだ。
特にレオンシオ団長達はああいった類の人達を見たり、連行したりが多くてほぼ確信している素振りだった。
前世でも偶に聞こえていたテレビのアニメやドラマとかでやってたなぁ。
よく覚えてないけど、スパイ的な奴とか、意見が食い違って仲間割れして逃げるとかね。
「全体の二割だ。だが、主に若手が連れて行かれてな、戦える者だけと考えると四割ほど。ダークエルフ族はエルフ族よりも戦闘向きだからな」
「若手が多いのは最後の戦争が印象深いのと血の気が多いからだ。私は日頃からお爺様にいろいろと言われてきたから、相手に遺恨があっても二百年も経てばそうでもない。元々戦争の経験も最後の一度のみで痛み分けだったからな」
最後の戦争は魔族が撤退していつの間にか終わった感じかな。
「それは……厄介じゃな。この大事な時期に……」
「ゴルドニアも済まない。折角条約まで結んだというのに、水を差すような裏切る行為を」
「いや、過去のことを思えば仕方なかろう。こうやってすぐに分かっただけでもましじゃ」
ゴルドニアさんの言うことは尤もだ。
「そうなるとダークエルフ族は後衛支援に回した方がいいだろうな。治安部隊の方も少し手を回さないとな」
「すみません。動ける者には訓練を施します。子供達にも訓練を促しましょう」
ダークエルフ達もエルフみたいに留学……学校じゃないから留錬?
留まって学ぶならぬ、留まって訓練するって感じ?
「それは少し早いからまた今度にしよ? だって、エルフ族との仲が良くなったわけじゃないんだからね」
「あ、そっか。早計過ぎたね」
そこまでいがみ合ってなかったから忘れてた。
ついさっきダークエルフ族はそれが嫌で姿をくらましたんだもんね。
本当に僕はあんまり考えてないな。
「年を取ると保守的になるのはどの種族も同じということですかな?」
「ああ、その通りだ。私達は小さくもなるのでな。戦いではなく、生産活動や閉鎖的になっていく」
その辺りは何となくわかる。
僕も戦っているより何か皆で作ったり、料理をして食べている時が楽しい。
特にフィノや家族と食べるのは別格だね!
「どこへ行ったのか分かっていますか? それ次第ではすぐに対策を練らなければなりません」
「フィノリア様もシュン殿も国へ伝えた方がいいでしょう」
ポムポム魔王様とレオンシオ団長の言う通りだ。
天魔族のこともあるし、気を付けた方が良いのだろう。
ほんと、政治絡みとか、邪神絡みとか、いい加減ゆっくりしたいよ。
「可能性が高いのは森の奥だな。魔物が強くなり複雑になるが、エルフの森と同じく結界が張られ隠れるのにもってこいだ」
「追いかけたいが若手が少なくなり、今追い掛けると甚大な被害が出てしまう。本当に申し訳ない」
ダークエルフ一同頭を下げて謝る。
地区長は半分に減り、この前の兵士もいない。
あっちのあまりしゃべっていなかった兵士はいる。
「でも、計画的だわ。話し合いの場でもそうだったけど、あの短絡具合でここまでばれずにできるかしら?」
「話し合いも昨日だぞ? 少なくとも協力者がおらねば無理であろう」
サテラさんとバリアルも怒ってはないね。
ダークエルフの内部については知られていたんだろう。
「そうですね。ディルトレイやシュンさんの様に転移できるのなら別ですけど、事前に準備がされていなければ無理ですね」
「我の蝙蝠化も同様だな。だが、ダークエルフは闇魔法を除けば使えまい」
「魔法を使えば分かるだろうな。俺達と違い魔法に長けているだろうし。――な、ギュンター」
「ぐっ! す、少しは感じられるようになりましたよ! 兄貴達が異常なんです!」
狼男のくせに言うなぁ。
数日でそんなに上達するわけがないだろう!
お前の方が訓練不足だったんだよ!
僕は絶対異常じゃないもん!
「普通に考えれば天魔族ですね。証拠とかはないですけど、可能性が高い気がします」
「私もそう思います。あの訝し気な『罠を打ち破って道が切り開けるもの』という言葉……。流石のシュン君でも数には負けるかもしれないしね」
「まあ、そうだね。あの言動は確かに罠を仕掛けていると見るべきでしょう」
あの不気味な感じ。
絶対に何か罠があると思う。
逆になさそうにも思うけど、そう思ってたら泥沼にはまるだけだからね。
こういう時は何かあるって思ってた方がいいだろう。
「何にせよ、どこかに行ったのは仕方ない。用心しつつ俺達の方も進めていこう」
「そうですね。森の方を一応調査します。ですが深追いは禁止とし、何が起きても良いよう気を付けることとします」
本当に森にいるのか分からないし、森は危険みたいだからね。
それに僕以外に転移できる人がいるってことは、他にもいるかもしれない。
今思えば邪神の集団はどこから現れているのか分からないしね。
闇魔法でも限界があるだろうし、きっと転移が使えるんだろう。
「それに私達は加わらない方が良いな。バリアルとスペンサー卿、頼んでもいいだろうか」
合流してダークエルフ族がいなくなるかもしれないからだね。
バリアルなら問題ないだろうし、冷静で読みに長けているスペンサー卿も問題ないんだろう。
「そうね。疑われやすい行動は避けた方がいいわ」
「私達は疑ってないですが、皆が皆ではありませんからね。――バリアル、スペンサー、よろしくお願いしますね」
「「分かった(分かりました)」」
二人は会議の場から立ち去り、さっそく調べるんだろう。
「さて、この話もおしまいにしましょう」
そうだね。
気を付けないといけないけど、今日はこれ以上にドヴェルクとの話し合いをしないといけない。
血の気も多いみたいだし、戦闘にはならないだろうけど心しておかないとね。
ドンッ!
大型の机が罅割れるほどの勢いで殴られた。
いや、実際に罅が入ってる。
大理石製のはずなんだけど……。
「ドワーフと仲良くしろだと? ふざけるのも大概にしろッ!」
「そうだそうだ! 誰があんな自由な奴等と手を組めるかッ!」
「最高の作品を作るからいいのだろうが! あんのアバズレ共がッ!」
自由な奴等ってねぇ……。
あってるけどさ、ドヴェルク達も自由人だと思うけど。
再会すると同時に装備している剣を取ろうとしたり、詰め寄ってきたり、ポムポム魔王様に対してどこか気やすいといった感じで、かなり自由な振るまいだった。
まあ、僕はかまわないけど。
「まあまあ、落ち着きなさい。別に仲良くしろとは言っていないでしょうに」
サテラさんもどこか呆れているように言う。
いや、呆れてるんだろう。
ポムポム魔王様もいるのに僕が取り出した装備品や魔道具を見てぶつぶつ言ってるもん。
トリップしてるって感じ。
で、数人のドヴェルクがこっちの話を聞いて騒ぐってところ。
それと、ドヴェルクも酒が好きみたいで、堅苦しいのが嫌だって宴会みたいな話し合いになってるんだ。
「ならどうしろというんだ!」
「いがみ合わないで、と言っているのよ。せめて事が終わるまで喧嘩を売るなってことよ」
「そんなこと知らんわい! あっちが喧嘩を売ってこん限りドヴェルクは何もせん!」
信用できねぇ……。
絶対、どっちかが作品にケチを付けて喧嘩に発展するはず。
ドワーフ族と良く関わってるからわかるんだけど、少しでも気に食わなかったら怒るはずだもん。
さて、どうやって和解……せめてサテラさんの言うように不可侵に出来ないか。
一番怒っているドヴェルクは族長の『ババルン』さんという人。
ドワンさんと知り合いみたいだけど、やっぱり作品でいざこざがあるみたい。
ドワーフ族は自由に物を作って新たな物を探求する、面白い物を作る、興味が引かれるものを発見するって感じ。
ドヴェルク族は同じように自由だけど一つの物を満足いくまで作り上げる。
どっちが良いとは言えない。
僕は前に言われたようにドワーフ寄りだと思うけど、回復薬みたいに探求と追求する時もある。
料理は美味しくなるよう頑張るしね。
でも、一つの物を最後まで探求しないといけないものもある。
例えば冒険者にとっては武器や防具というのは手抜きされて良い物じゃないし、料理人にとっても調理器具は専用の物が良い。
逆に探究し過ぎると発展が遅くなって困ったことになる。
冒険者は種類や数の少ない中で生き抜き、料理人は腕でカバーしないといけない。
どっちも限界ってのがあるんだ。
まあ、ドワーフもドヴェルクも手先が器用で上手いから問題はない。
僕が思うにそこが二つの種族を和解に持っていくものだよね。
「この酒美味いな。だが、酒作りの俺ならもっと上手く作れる」
「うむ。料理は美味い。じゃが、儂等は料理は作れんからのぅ」
酒はここと王国で作っている店で買ったものだからね。
料理は僕がどんなものでも大概作るけど、酒は飲んだことないし作れない。
魔法で発酵できたとしてもどうやったらいいのか分からない。
分かるのはヨーグルトとか納豆ぐらいかな。
あとは酒の原料が麦、米、葡萄、トウモロコシ……ジャガイモとかでんぷんとかが強いものってことだけ。
作り方とか分かんないんだよね。
あ、料理が褒められるのは良いね。
「こっちは調理器具だな。この道具はなんだ?」
「そりゃあ……ハンマーとかじゃねえのか?」
「こんななりでハンマーなわけねえだろうが!」
「じゃあ、なんだってんだよ! 攻撃力を上げるための棘が付いてるじゃねえか!」
「ちいせぇじゃねえか!」
何でそれだけで喧嘩腰なんだ?
その道具は全部調理器具だよ。
それハンマーじゃなくて肉を柔らかくする肉叩きだから。
まあ、英語読みはミートハンマーかな?
「何だこの無駄ばっかりの魔道具は! 技術は素晴らしいが職人は素人だな」
「俺ならもっと効率よくコンパクトに作れる! これだからドワーフは!」
すみません。
その辺りの魔道具は僕達が話し合って作ったものです。
後で誤解を解いておかないと。
と、まあ、こんな感じで自由な所は同じだ。
そして、改めて怒っているババルンさんの方を向く。
何度も言うけど色以外ドワーフと同じで、エルフとダークエルフに似ている。
「魔王様の言う通り人族とかとは手を組んでも良い。俺達は前線で戦っていたわけではないし、仲間も無駄に殺されたわけじゃねえからな」
ドヴェルクをあっちの大陸で見たことが無いってのもそうなんだろう。
見たことが無いってことは知らないだけかもしれないけど、あっちに行ってないってのもある。
行ってないから奴隷とか無駄にとは言わないけど殺された人数も少ない。
だから、そこまでいがみ合ってないんだろう。
全部推測だけど。
「だが、ドワーフとだけは手を組めん! 誰が好き好んであんな手抜き野郎どもと!」
手抜きっていうけど、どれも精一杯手を入れてあると思う。
考え方が違うからそうなんだと思うけど。
「手抜きといいますけど、お互いに主張が違うんですから仕方ないと思います」
「ああん? お前は俺達が悪いってえのか!」
いや、誰もそんなこと言ってないよ。
「ババルンさん達はその物自体の最高作品を作ってるんでしょう?」
「ああ、そうだ! だが、ドワーフ共は途中で放り投げてるじゃねえか!」
「いやいや、放り投げるって……。違わないとは言いませんけど、今できる最高の作品でもいいじゃないですか」
多分ドヴェルク以外は僕の考えが分かるんだろう。
どっちも正しいからどうしたらいいのか困る、といったように情けないような顔になっている。
「それが手抜きだつってるんだ!」
そんなに机を叩いたら埃が舞って料理が汚れるよ!
それこそ僕が物申したい気分だ!
まったくもう。
「じゃあ、ババルンさんは依頼主に満足いく物が出来るまで待ってもらうのですか? 私がもし一週間で、と依頼しても無視するのですか?」
「あー、や、そうは言わねえけどよぉ。なんか、こう、あんだろ?」
流石にフィノのような女の子には怒鳴れないんだね。
怒鳴ったら僕は怒ってたと思うけど。
それに聞かれてもわかんない。
「ドワーフ族が周りの物に移り変わりやすいとは思いますよ? 僕が提案した物は面白いからと付き合ってくれましたし、何も無かったらそっけなかったりしますしね」
「でも、だからといってその作品が手抜きをされているとは思いません。ただ、ドヴェルク族の様に改善点・改良点を見つけ最高に近づけることはしないと思いますけど」
そこが違いなんだよ。
二つの種族で作り上げられたら最高作品が作れるんだろうけど、職人はその辺意固地だからね。
人の作品に手を加えて完成、では納得いかないだろう。
改造するとかならまだいいのだろうけど。
「私はドヴェルク族の仕事しか知りません。多少依頼日数が遅れても私達は長寿ですから、数年遅れない限りとやかく言わないでしょう」
「だけど、人族は数年も遅れたら大変な迷惑なのよ? 最近は冒険者ギルドを作ってから注文がひっきりなしでしょう? 供給が間に合ってないでしょ」
「そうだが……満足いく物を依頼主に渡すことは出来ん!」
これはどこまで行っても平行線だよ。
主張が間違ってないってのは分かるんだ。
でも、なんにでもそれを適用させるってのが問題なんだよね。
職人はそれで良くても、必要とする人はたくさんいる。
調理道具は手抜きされてても最低基準を満たしていればいいという人もいるだろう。
長持ちする切れる包丁とか、しっかり作られた木の皿とかね。
そんなものに錆び付かない魔力を流すと切れ味が増すミスリルの包丁、世界樹から作った腐ることもない伝説の皿とか言われても誰も買わないよ。
買う人は好事家とかでしょ。
「こうなったらドワーフ族とドヴェルク族で作るものを分けるしかないと思う」
「分ける? 武器と防具……じゃないか」
それだとどっちかが遅れるからね。
「そうじゃなくて、ドワーフ族は多い物。例えば日用品や大量にいる武器とかだよ」
「そういうことね。逆にドヴェルク族は高ランク冒険者の注文品や特注品を作るってことね」
「それならどちらの主張も交じりませんね。今と変わらない気もしますが、それが一番だと思います」
交差するからいけないんだろう。
進む道が平行線のままでいれば一生交差することはない。
結果、喧嘩は起きないってことになる。
「それにドヴェルク族の中にも新しい物に興味がある人とかいますよね? そうでなければ停滞しますからね」
「ああ、いるにはいる。はみ出しもんだがな」
だろうね。
ドワーフ族に関しては分からないけど、一つの物に凝っている人が少なからずいるだろう。
そう言った人はドヴェルクと少し話が合うと思う。
そう言った人を中心に交流していけばいいのだろう。
「だがなぁ、ドワーフ達の手抜き作業品を見せられただけで俺達は――」
「ズバッといいますけど、それ難癖付けてますからね」
「なっ! や、まあ、そうなんだけどよ」
ドワンさんやガドンさんも同じようなこと言って息を詰まらせてたし。
結局同じような人種ってことだね。
「喧嘩っ早いのは良いですよ? でも、職人が作り出した作品に難癖をつけるのは同じ職人として駄目ですよ」
「だ、だがな、坊主。同じ職人でも譲れねえところが――」
「ですから、難癖を付けてはいけませんって」
これは業が深いというか、子供の喧嘩みたいじゃん。
怒鳴り散らさないところがまだ大人しくて、自分達がいけないとわかっているみたいだけど。
「シュン君の言う通りですよ。どちらも間違っていないのですから」
「それに難癖付けるというのは自分達の方が劣っていると思われてもおかしくない行為ですよ? 忌憚のない意見を言うのは問題ありませんけど」
段々と小さくなっていく。
周りのドヴェルク族も聞き耳を立てて少し大人しくなっている。
素直じゃないねぇ。
「まあ、いきなり友好にしろというのも無理でしょう」
「うむ、無理だ。自慢じゃねえが、ドワーフを見たら襲い掛かってもおかしくねえな」
うん、自慢にもならない。
「やっぱりシュン君の言う技術大会とか開くのが良いと思うよ」
「大会? う~ん、今すぐってのは無理だからね」
「それにルールや基準も決めなければなりません。順位を決めても気に食わない時もあります。そうなった場合暴動もあり得るでしょう」
「そうだけど……」
フィノの言う通り僕も大会を開けば安全だとは思う。
でも、レオンシオ団長が言うこともわかる。
基準もどっちかに偏るようなことにしてはいけないし、審査員もその道の人じゃないといけない。
僕は見ただけでどのくらい良い物とか分からないしね。
まあ、やろうと思えば創造部門や鍛錬部門や品質部門とかでわければいいし。
総合部門は問題が出るからあれだけどね。
「ババルン、お互いに合わなければ協力はやぶさかではないですか?」
「まあ、そのぐらいなら魔王様の言うことを聞く。――お前達も顔を合わせなければいいよな!」
ババルンさんがそう訊けば、
「ああ。難癖を付けないとは言えんが、壊すとかはせんよ」
「他人の作品を壊すのは職人あるまじき行為じゃ。悪態は付くかもしれんが、壊すなんて……」
「顔さえ合わせなかったら大丈夫だろう」
「聞こえた大会というのも少し興味があるが……」
と返ってきた。
これならいける……のかな?
ま、ポムポム魔王様達が何か考えがあるみたいだ。
「それなら……そうですね。ドヴェルク族には今まで通り作業をしてもらいましょう。その代わり少しずつ交流をしていきます。切っ掛けはシュンさんとフィノさんの言う大会にしましょう」
「大会は名前を使わず、匿名で競うのが良いでしょう。いくつかの部門を作り、規則やルールはドヴェルク、ドワーフ、最初は提案の人族と魔族の四種族で作るのが良いと思いますわ」
名前を使わないというのはいい案かも。
まあ、作り方で誰の作品かは分かる人がいるかもしれないけど、そう言った人を入れなかったら大丈夫だろう。
私事を入れたら大会にはならないしね。
「といっても今すぐというわけにはいきません」
うんうん、今すぐというのは無理。
魔族との友好のために、というのも考えると今年の秋くらいかな。
秋というのは丁度良いし、祭りの季節でもあるわけだ。
「ドヴェルク族には時間がかかっても最高品質の物を作ってもらいます。代わりにドワーフ族には数が多く必要な武器や防具を作ってもらいましょう」
「勿論、武器や防具は好きなように作ってもらって構わないわ。注文の内容をそうするということね」
ふむ……?
ドヴェルク族は最高の物を時間をかけて作りたい。
ドワーフ族は腕を振るっていろいろな物を作りたい。
「そもそも手を組むんじゃなくてドワーフ族がいても喧嘩をしないでもらえたらいいんだよね。二人の仲を良くするのは私達の役目じゃないよ」
「あ、そうだね。エルフ族とダークエルフ族と同じようにするんだと思ってたよ。ドワーフ族とドヴェルク族とは同じようで違うもんね」
早合点してたってことだね。
ま、いずれそうしないといけないし、考えておくことは必要だ。
「それならババルンも構いませんね?」
「あ、ああ。俺達も他人の作品に難癖付けるのはいけねえとは思ってるからな。顔さえ合わせなきゃ大丈夫だろう。――だよな?」
その返答に全員が渋々っていった感じだけど頷く。
「では、二つの種族には今まで通りしてもらいます。あとはサテラ、頼みますね」
「分かりましたわ」
この後はまさに宴会の様になり、僕達はいろいろな質問をドヴェルクからされながら答えて食事をした。
まあ、酒が入ってドワーフのことをグチグチ言ってたけど、良く聞いてみると嫉妬ではないけどドワーフに対していろいろな物が生み出せる発想力が羨ましいみたいだ。
ガンドさんもドワンさんも自信をもって最高だと言える作品を作れるのが羨ましかったりするんだろう。
やっぱりこの二つの種族は似ているんだ。
一緒に作れたらもっとすごいのが作れると思うけど、反りが合わないのはどうにもならないからね。
これから長い年月を掛けて良くなってほしいよ。
こうして魔大陸での用事を終えた僕達。
日程を確認すると少し時間が残っているみたいで、残りの時間は魔大陸で友好のために過ごすことになった。
といっても二日くらいしかないから王都を探索するくらいだ。
レオンシオ団長とポムポム魔王様もいるからデートじゃない。
デートは二人で行きたいからね。
それに初めてはやっぱりデートらしいことがしたい。
遊園地とか、水族館とか、花火とかいいよね。
火魔法を応用した花火以外ないんだけど。
あと、こっちでは交換する習慣が無い指輪もね。
ちょっと想像すると楽しくウキウキ緊張してくる。
初めてのデートの時の為に計画を今のうちに練っておこっかな!
あ、そうだ!
ドワンさん達に相談して小さい遊園地とか山に作ってもらおう!
観覧車は無理でもメリーゴーランドとかコーヒーカップとかは作れるんじゃないかな。
Sランクの魔物の魔石が必要だとしても取って来れるし、回路ぐらいなら僕が作れるからね。
よし、明日はデートの練習に当てよう!
男ならエスコートできるようにならないといけないしね。
ま、魔大陸の王都とかよく分からないんだけど。




