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自由人なドワーフ族と神様との話し合い

急に寒くなりました。

キーボードも冷え、指先だけでなく肘辺りまで固まるように冷えます。

もう、手首が固まると打ち難くてかないません。


暖房はありますが役に立たず、エアコンは冷房のみ(クーラー?)ですからね、隙間風が相当堪えます。


皆さんも急に寒くなりましたが気を付けてください。

「ここかぁ、確かに地面が柔らかい。だが、出来ないこともないな」

「だな。シュンも手伝ってくれりゃあ、このぐらいどうにかなる。ま、シュンの屋敷を建てるんだから手伝えや」


 ガンドさんが一回り大きい白髭のドワーフに同調して、隣にいる僕の背中をバンと強く叩いた。


「い、痛いですよ。僕は身体は普通なんですから」


 うん、神様が作った神ボディだけど、そこまで強いわけじゃない。

 多分ガンドさん達の方が純粋な力は強いだろうね。


「な~に言ってんだ、お前は。このぐらいで痛がってたらこの先やっていけんぞ。彼女に嫌われるんじゃねえか?」

「そんなことないですよ! フィノは嫌いになりません! これは不変です! きっと看病してくれます!」

「そ、そうか? それはそれで情けない気がするが……お前が良いのならいいか」


 そうですよ!

 フィノは絶対に僕から離れない。

 僕もフィノから離れない。


 情けない?

 フィノを守るのは当たり前だけど、僕だって女の子に看病してもらいたいとか気持ちがあるんだ。


「ガンドと仲が良いのだな。ドワーフの中でも気難しいと有名な奴なんだが、珍しいな」


 そうなの?

 僕は最初からガンドさんと仲が良かったから、ドワーフは皆こんな感じなのかと思ってた。

 まあ、確かにあんな村に住んでたり、気に入った武器を作り上げたり、手が先に出たりするけど。

 気難しいという印象はあまりないかも。


「いやいや、ガンドはな――」

「おいおい、俺の話を勝手にするなよ。族長だからといっても限度があるぞ」

「良いではないか。こやつのことを気に入っているのだろう? 少しぐらいお前も弄られるが良い」


 なんだその理由は……。

 でもガンドさんが恥ずかしがるのは珍しい。

 ちょっと聞きたいかも。


「ほら、こやつも聞きたそうにしておる」

「おい、シュン!」

「え、ちょっとぐらい良いじゃないですか。ガンドさんほどの鍛冶師があの村に住んでる時点でなんとなく理由は察せますし」


 多分師匠と同じで巻き込まれたりしたんだろうね。

 でも気難しいというから貴族を殴りつけたり、捨て値同然で力作を気に入った相手に売ったり、その結果少し金に困ったりとかね。

 ファチナ村はお金があまりかからないし、人は来ないし、同じような人が多くいる。

 最近はたくさんお金も入ってきてるだろうし、楽しんでやっていけてるんだろう。


「ま、そんな感じだ。酒で首を吊りそうになった時はどれだけ笑えたことか」


 いや、それは笑い事じゃない気がするけど。


「ガンドさんとドワンさんも仲が良いですね。まさか、僕の屋敷をドワーフ族が総出で作ってくれることになるとは思いませんでした。しかも族長自ら」


 そう、この白髭のお爺ちゃんドワーフがドワーフ族の族長ドワン・ギーゼンさん。

 十人ぐらいのドワーフを引き連れてやってきて、今はガンドさんも含めてローギスさんと鍛冶ギルドの所に厄介になってる。

 理由は畏まったのが嫌いというなんとなくわかるもので、義父さん達も笑いながらドワーフらしいと言っていた。


「なんの、お前のことを儂も気に入ったからな。なんというか同族の匂いがする」

「同族ですか? 流石にドワーフの血は入ってないと思いますけど……」


 神様が作った身体だからよくわからないけどね。


「そういう意味じゃねえよ。何て言うかなぁ、シュンは俺達ドワーフと同じで興味があることに突っ走る。お前はそこまでじゃねえが、自重をそれ程しないだろ?」


 何か胸にグサッと刺さったけど正しくその通りだ。


「確かにシュン君はドワーフの人達に似てるかも。そうじゃないと研究所でいろいろなもの作らないと思う」

「そっか、フィノが言うのなら間違ってないか」

「惚気んじゃねえ」


 いいじゃないですか、そのぐらい。

 僕のことを一番分かってくれているのはフィノだと思う。

 次に師匠とか義父さん達。

 そして、今まで知り合って迷惑とかかけた人達だね。


「でも、族長なんですよね? 皆心配するとかないんですか?」


 エルフ族は師匠が代役を担ってるしね。

 流石に近くに住んでると言ってもかなり距離がある。


 僕としてはガンドさん達がいろんなことを手伝ってくれるから楽だけど、ドワーフ族のトップ達がここに居てもいいのかな?


「んー、まあ、どうにかなるだろう。ドワーフってのは基本自由人なんだ。勿論規則や法律はある。だが、最低限守ってさえいれば、後は酒を飲んだり、何か作ったり、馬鹿したりしている」

「外にいるドワーフの方が珍しいぐらいだからな。それなりに戦えもするし、族長だからといってもそれほど重要なポジションじゃねえな」


 いや、かなり重要なポジションだと思うけどなぁ。

 まあ、本人がそれでいいというのならいいと思うけど、流石に僕はドワーフの村まで転移できない。

 行ったことないし。


 方法が無いわけじゃないけど。

 例えば空を飛んで転移していくとかね。

 視界に入っていればそこに転移したらいいだけだからかなり簡単なんだ。


 転移ってのは行ったことのある場所に飛ぶ魔法じゃなくて、正しくは知っている場所に飛ぶ魔法だから。

 視界に入ってればそこに転移できるから簡単なんだ。


「まあ、おかげで協力がスムーズにいっただろ? 良いじゃねえか、些細なことぐらい」

「政治を些細って……。それに協力云々は来て早々笑いながら協力するって言ったじゃないですか。スムーズどころじゃないですよ」

「ガハハハ、そうだったか? 仲が良いのは良い事だ」


 何良い事言ったみたいな顔を。

 まあ、良い事なんだけどさ。

 もう少し考えた方が良くないかな?



 ドワンさん達は謁見の間であった瞬間に協力するって宣言したんだ。

 何か身構えてた僕達が馬鹿みたいだった記憶がある。

 いや、予め協力はしてくれるって聞いてたからわかってたんだけどさ、まさか何も聞かずに豪快に笑いながらそういうとは思ってなかった。

 まあ、ガンドさんから多少聞いてたみたいだけど、族長としてそれでいいの? と聞きそうになった。


 ま、こんな感じでドワーフは思った以上に自由人だった。

 今思えば知り合いのドワーフは皆こんな感じだ。


 ガンドさんとはいろいろ作ったし、ドリムさんには国宝級を凌ぐあの剣を二本作ってもらったし、ローギスさんにも調理器具やフィノの防具とかを作ってもらった。


 うん、僕と同じで自分の最大を注いでるね。


 元々ガンドさん達からドワンさん達ドワーフ族に独自のネットワークで情報は行っていたみたい。

 言い方は悪いけど、エルフ族とは違ってドワーフ族は外に出ないんじゃなくて、籠って趣味に走る種族柄なんだ。

 だから自由人だって言われるんだけど、知り得た情報などは作り上げた魔道具等で伝えられてるんだって。


 何が言いたいかというと、僕のことはファチナ村にいた時から伝わっているってこと。

 で、目を付けられてはいなかったみたいだけど、面白い奴がいるみたいな感じで伝わってたらしい。

 それで、一度会ってみたいという話が出ていて、その間に僕がいろんなことをしでかしたから余計に会いたくなった。


 そんなところに僕から協力要請が出て、ついでに見たこともない屋敷を立ててほしいという話が出た。

 ならドワーフ族の族長自らが出て作ろうみたいな、本当に自由人な考え方で来たと言っていた。


 まあ、ドワーフ族も最近きな臭いことになっているのは知っているみたいで、王国なら協力しても構わないって。


 勿論ドワーフ族もエルフ族と同じで秘密が多いからそれを出せとは言わない。

 してほしいのは皆の武具の調達や魔道具作りの手伝いだ。


 長距離映像の魔道具を見せてみたら粗削り過ぎると言われてね、僕は図案と刻印をするだけで、後の製作はドワーフ達に丸投げすることになった。

 いろんなものを見せたら躍起になってくれたんだ。


 エルフ族も薬品とか見せたら興奮してたし、同じようなものなんだろう。

 まあ、おかげでいろんなところに転移しまくって魔物の素材や調合の素材を集めなきゃいけないけどね。


 転移装置は流石に作ると危ないから時期を見極めることになったんだ。


 ドワーフ族と魔族の関係性については特になかった。

 恨みが無いとは言わないけど、二百年も経てば思う所はあるみたいだし、ドワンさんは魔族がすべて悪いとは思っていなかったみたい。

 ドヴェルクっている黒いドワーフ族がいるみたいだけど、価値観の違いで差が出たみたいなんだ。


 ドワーフ族は自由に自分の最高の品を作り上げる、ドヴェルク族は一致団結して神話になぞらえれるような品を作るっていう感じみたいだよ。



「ドヴェルク族とは折り合いがつかん。どっちの主張も正しいとわかっておるんだがなぁ、鍛冶に関わってくるとほんと主張を変えれんでな」

「同じ技術を持っているからこそ余計に、な」


 二人は恥かしそうにしているけど、それ子供の喧嘩じゃん。

 まあ、それが発端で殺し合いをしたとは考えにくいけど、仲良くしてほしいものだ。


「せめて作った物で競ってください。人の作品にケチ付けるとか職人として負けを認めているようなものですよ?」

「「ぐっ!」」

「自由人ならシュン君みたいに面白い発想をしていけばいいと思う。私はシュン君から聞いた楽器とか、ロボットとか、車とか見てみたい」

『なんだそれは! 教えろ!』

「きゃっ!」


 結界展開! 僕はフィノを守る!


「ぐおっ!」

「シュン! いてえじゃねえか!」

「詳しいことを教えろーっ!」


 何だこの金の亡者ならぬ、技術の亡者共は!

 ドワーフの子供は可愛いみたいだけど、こんなもじゃもじゃ達に群がられると怖くて夢に出てきそうだよ!

 しかもガンドさんには話したことあるよね!?


 因みにドワーフの子供は小っちゃくて可愛く、男子は十歳頃から髭もじゃになり始め、女子は一言で済ませるとロリだね。

 ただ、これにも個人差があるから、過去巨大なドワーフやイケメンドワーフ、女性らしいドワーフとかいたみたいだよ。


 でも、フィノを怖がらせた罪は償ってもらおう……。


「アースバインド、アイスボール」

『あだだだだだだ!』


 群がっていた全員を成敗。


「これ、大丈夫なの?」

「うん、このアイスボールの中身は空洞だからね。それに上空から落としてるだけで、痛いって感じるだけだと思う」

「それなら安心だね」


 フィノの笑顔に癒される~。


「シュン! 大人しくするから止めてくれ!」

「そうだぞ! ダメージはないが痛い! 冷たい! 動けん!」

「お、面白い感触だぞ。中が空洞になってんのか」

「これを有効活用すれば面白いもんが作れるかもしれん」


 仕方ないなぁ。

 てか、こんな状況でも物作りを忘れないんだ。

 連れてきた人だけがってことはない気がするし。

 これから大変な気がするなぁ。




 結局僕はその場でいろいろな説明をすることになり、帰る頃には陽が暮れ始めていた。

 まあ、今はオーバーテクノロジーなんだけど、あの様子を見ている限り十年もすれば動くロボットぐらい作り上げてるかもしれない。


 こんなドワーフ族だけど、物作りに関しては天才的で、ドヴェルクとも出来る限り仲良くするということだ。

 まあ、争うのは仕方がない。


 お互いに住んでいる所から出て顔を合わせない限り大丈夫だろうということだ。






 次の休みの日、僕はフィノとの食事を終えた後、分かれて王都の教会まで転移していた。

 フィノも連れてこようかと思ったけど、多分僕しか会えないと思うんだよね。


 無駄足でもよかったんだけど、フィノにはアル達に話をしてもらっている。

 勿論、全てを話すんじゃなくて差し障りのない事だけだね。

 既に王国と帝国が手を組んだことは知らされ、不可侵である魔法大国が協力体制に入ったことは声明が出たからね。


 まあ、そのおかげで騒然となってるんだけど、既に様々な国に通達が入っていてそこまで騒ぎになっていない。

 不可侵だけど協力自体は決められてないっていうグレーゾーン的な言い訳をしてた。

 元々不可侵は戦争をしない為の物で、魔法技術をばらまいてるんだからそういった好影響になる協力は構わない、クロスさんは黒に近いグレーなことを言っていた。


 そのために僕は教会でロトルさん達と話すことにしたんだ。

 そろそろメディさんとも話せると思うんだよね。

 前は仕事がどうとか言ってたし。


「これはシュン様、おはようございます」

「おはようございます。今日も使わせていただきますね。これはお布施です」


 金額は中金貨十枚だ。

 一千万円のお布施だ。


 これでも今月分の研究で得たお金の方が多いぐらいなんだ。

 月に稼ぐのが一千万だとしたら、僕は年休一億円を超えることになる。

 所得税とかないからさ、お金はそっくりもらえるんだ。

 大富豪だよ!


 まあ、義兄さん達から金を貯めるなって言われてるからいろんなところでばらまいてるんだけど、ばらまくと何故か増えるんだ。

 不思議なこともあるんだね。

 一応フィノと結婚したら僕も王族に近くなるからお金が公的に使える。

 そうなるまでもう少しかかるけど、そうなったらお金をばらまける。


「これはいつもありがとうございます。では、聖堂の方へ」


 中身を見てないけど、多分いつものことだから分かってるだろう。

 最初の頃は驚かれてたけど、最近は挨拶をする仲だ。




 で、聖堂にやってきた僕は人のいない椅子にちょこんと座り、腕を組んで祈った。


「すぐに俺がここに呼んで神域に来た」

「はい、そうですね」

「いや、普通ホイホイ来れるもんじゃないんだが、お前は特別なんだろう」


 そうですね。

 アルセフィールの管理神ロトルデンスさんと知り合いで、創造神のメディさんとも知り合いですから。


「それだけじゃねえ。魂を狩る俺やその身体は神の力が宿っている。あいつが作ったんだから当たり前だが」

「それでも神気は使えませんけど」


 神気は神様の力ですからね、僕は使えません。


「シューーーン! 会いたかったわーーーっ!」

「メうわっぷっ!」


 く、苦しい……それに痛い!

 柔らかくていい匂いがするけど痛い。

 首が少し締まってます!

 聞こえてますよね?


「ごめんごめん。この前会えなかったから、つい」

「いえ、僕も久しぶりに会えて嬉しいですから構いません」

「でも、彼女以外の女性に抱き付かれてあんなことを思ったらいけないわ」


 フィ、フィノ、ごめんなさい。

 でも、抱き着いたメディさんも悪いと思います。


「だからごめんってば」


 仕方ない。

 メディさんはこんな人だったし。


「何それ、酷くない?」

「酷くないですよ? 接しやすくて良いですね」

「あら、そう? なら別に構わないわ」


 少し話した後に用件を伝える。


 この場にはミクトさん、ロトルさん、メディさん、フレイさん、それに加えて魔法使い風の少女魔法神イシュルさんと筋肉マッチョの武術神クレアストルさん。

 最後の二人は初めて会うけど、僕に加護をくれている人だね。


 魔法神の加護は魔法が使いやすくなって消費魔力を抑えられるみたいだね。

 武術神の加護は身体能力が上がったり、魔法神の肉体版って感じらしい。


「お前の考えていることは分かる。聖王国についてはこちらでも神託として授けてやる。最近お前のおかげで世界教の影響力が高くなっている。俗世のセリフになるが、お金の力は偉大だな」


 神様が言うとおかしなセリフだ。

 でも、あのお金は役に立ってたんだね。


「それでも光の神の教会は影響力がありますが」

「でも、そこは、神いない。光の神、存在しない」

「うむ、属性を司る神はいない! いるのは日光や照明などの光の神太陽神!」


 へぇ~、そうなんだ。

 まあ、属性の神様って魔法神ってことだもんね。

 焚火の火を属性の火とは言わないし、それもひっくるめて炎の神とか鍛冶の神になるんだろう。


「正解だ!」

「うおっ!」

「馬鹿野郎! お前は何時も声がでかいんだからいきなり出すなと言っているだろうが!」

「ぐわーっ!」


 ミクトさんの鎌で吹き飛ばされてベチャっといったけど、何でもないかの様に戻ってきた。

 見た目通り頑丈なんだろう。


「フハハハ、我が筋肉は偉大なり!」

「はぁ~、もう言わん」


 多分いつもやってるんだろう。

 周りの反応はそんな感じだし。


「聖王国にはそれとなく伝えてください。一番ネックなんですよ」

「それは分かっているわ。偶に頭が痛い行動をする時があるもの」

「信仰してくれるのは有難いですが、勝手な解釈は止めてほしいですね」

「そうだよねぇ。あの子と結婚したいと言われても私が決めてるわけじゃないし。多少運命は変えられるけど、相性とかはどうにもならないし、行動で嫌われたら自分のせいでしょ」


 フレイさんが愚痴った。

 多分悲恋とかで怒られたりしたんだろう。


「そうなの! 理不尽だよね。それに比べてシュンくんとフィノちゃんは……んー! とっても見ていて悶えるわ」


 何その恥かしい黒歴史が日々暴かれているような感じは!


「いやー、見ていて楽しいのよ」


 僕の恋愛は見世物じゃありません!


「そう言わないで。地球だとシュンの恋愛は普通なんだけど、この世界では普通じゃないのよ。デートだってする人は少ないし、恋愛結婚なんて貴族や王族は滅多にしないの」

「そうですよ? シュンさんのおかげで文化祭は楽しかったです」

「そう。多くの人が結ばれて、シュンくんと同じように恋愛している。まあ、それが将来結ばれるかは私にもあやふやな所があるけど、何人かはこのまま行くわね」


 パスタ君、頑張ってください。

 名前を覚えない僕は最低かもしれないけど、確かラングレイ・フォン・パフューとかいう名前だった気がする。

 意外にかっこいい名前だ。


「まあ、聖王国は任せとけ。世界教は熱心な信者が多いからな、多分拗れずに伝わるだろう」

「ご迷惑をおかけします」

「いえ、こちらこそシュンさん、延いてはその影響で世界に迷惑を掛けていますから当然の補助ですよ」


 これでも大分ギリギリの線で手伝ってくれてるんだろう。

 力自体は貸してないからいいんだと思うけど、僕の加護の多さは神と戦うからだと思う。


「そうだぞ。その加護は神――相手は半分天使の様な物だが、シュンが筋肉で戦うためにあるのあだッ! 何をする!?」

「筋肉で戦うのはお前だけだ! ごほん、こいつの言う通り調べた結果、相手は神と天使の血を引く者だった」


 だからどうなんだろうか。

 神様には神気が無いとダメージを与えられないとか?

 で、天使はちょっと違って普通にダメージがあるとか?


「それで、間違いない」


 おお、なんという都合のいい感じ。

 まあ、僕としては助かるからいいけどさ。


「といってもほとんど神だ。天使からの成り上がりなんだろうが、シュンには想像もつかないほど神をしている。だから、相手は天使の血が一滴混ざっている神だと思っておけ」


 成り上がりでも天使も神様の分類ということなんだろう。

 ま、ダメージさえ与えられればいいや。


「そう考えればいいだろう」

「加護は私達の力でもあります」

「加護が多いということは私達の力――神の力も増幅するの」

「必然的、少し神気が、混ざる。でも、微量」

「でもないよりはマシってこと。他の加護もあるけど、一人に上げまくると魂が悲鳴を上げちゃうからね」

「お前でなくとも五人が最大だろう」


 安心した。

 また魂が消滅して、世界が終わりになるとか嫌だもん。

 大体複数の加護を貰った人ってのはあまりないんじゃないかな?


「シュンの言う通りだ。二人の加護ってのは稀にあったが、五人ってのはないな。そもそも魔法神と武術神が一緒に渡すってのも初かもしれん」


 確かに、魔法も格闘もってのはあまりいない。

 いや、僕はそこまで運動できないぞ?


「そんなことはない! と言いたいが我もそう思う」


 何だ、それ。


「だが、我は思うのだ。いや、思ったのだ。何も武術とは筋肉や格闘や剣技や筋肉だけではないと!」


 いや、そうだけど、何が言いたいのかよくわからないですよ。

 筋肉二回も言ったし……。


「意訳すると、強さというのも武術に入るのではないか、ということだ。ただ、魔法の強さだと魔法神だが、お前の場合剣や身体強化による動きとかが入る」

「もう気が付いていると思いますが、シュンさんの護身術は全部達人級です。アリアさんの技量もその程度までありますからね」


 やっぱりそうだったのか。

 護身術にしては動きが洗練されてたし、Bランク以上の魔物と対等に戦える護身術とか違うよね。

 まあ、魔法を使ってと注釈がいるけど。




「話を戻しますが、聖王国はこちらにお任せください。協力するよう言いましょう」

「はい、後はどうにかできると思います」


 ちょっと行き過ぎないか心配だけど、僕の言うことも聞いてくれるだろう。


「後は今のところあちらの動きはない。すまないが場所の特定は出来ていない」


 ミクトさん達が済まなさそうにする。


「いえ、動きが無いとわかっているだけでもましです」

「そうか。――魔族に関しては少し気を付けろ。魔王派は完全にお前のことを歓迎しているが、それ以外の奴は敵だと認識しておくのが無難だ」


 特に天魔族とか?


「天魔族。私も、知らない。多分、天使は関係、ない」

「やっぱりですか」


 薄々気が付いてはいた。

 だって、そうだとしたらメディさん達が何かするはずだもん。


「天使の血が入るのはまだ構わないわ。でも、やり過ぎると手を出さないといけなくなるわね」

「そもそも魔族側だけ天使の血が入った種族がいるってのもおかしいでしょ」


 確かに。


「多分だが、天魔族ってのは誰かが付けた種族だろう」

「ミクトさん達も知らないんですか? 責めるわけじゃないですけど、ロトルさんはアルセフィールの管理者ですよね?」

「うっ、そう言われると言葉に詰まります。ですが、私が管理している世界はかなりあるのです。一つをずっと見ているわけにはいきませんし、私の神としての役目もあります。ある程度は許容しないといけないのですよ」


 すみません。

 それなら仕方ないのか。

 天魔族は殺戮を楽しむとか、チート的な能力があるわけじゃないみたいだし。


「とりあえず、天魔族には気を付けておけ」

「はい、分かりました」

「後の魔族は、族長を捻じ伏せればよいだろう! バリアルより強い魔族は魔王を除けば大差ない! シュンなら勝てるはずだ!」


 やっぱりそうなるのね。

 ま、元からそうなると言われていた気もするし、魔王やバリアルも納得できるだろう。


「魔王派の連中はお前の知恵のおかげで豊かになれたと喜んでいる」

「魔族も人間だからね。全員が全員戦いが好きなわけじゃないの。だからシュン、出来る限りで良いから魔族との懸け橋になってほしいわ」


 見ていて面白くはないだろうからね。

 僕も嫌い合うのは仕方ないとして、殺し合うとか戦争は嫌だ。


「勿論ですよ。そのために長距離用の魔道具も作りますし、話し合いもします。多分話せばわかってくれるでしょうしね」




「最後にいろいろとやり過ぎているようだな」

「うっ」


 し、仕方ないじゃないですか。

 作りたかったしやりたかったんだから。

 それに悪用はしていない。


「分かってるわよ。それが今回の件で役立つこともね。でも、ドワーフ達のロボットとかはどうかと思うわね」

「その件に関してはことが終わり次第、私が全世界に伝えます。悪用したら神罰落しますよ? みたいな」


 そ、それは……。


「すごくいいと思います。ただ、上手くいきますか?」

「信用してないわね? まあ、人ってのは長い年月が経てば誤認したり、忘れたりするから仕方がないか」

「まあ、その辺りは追々考えるとしよう。俺としてもお前が手に入れた平和を壊すつもりはない。神とて平和が一番だと思っている」

「ただ、急激な発展は止めてね。魔法の発展はいいけど、科学は地道にやらせてあげて。下手したら魔法で核兵器とか作っちゃうかもしれないしね」


 それはすごく怖いじゃないですか!

 原理や効果を知らないから使うのか。

 知らないってのは凄いと聞いたことがある。


「だから、少しずつ発展させるのよ」


 はい、了解しました。




 そこで僕はメディさん達と話しを止め、現実世界へと戻ってきた。

 帰りにシスターさんにこれからよろしくお願いします、という言葉をかけ後にすることも忘れなかった。

 まあ、疑問顔で笑みを浮かべて首を傾げられたけど。




 そして、冬休みへと突入し、僕達は魔大陸へ旅立つことになった。

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