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準備期間1

何度も書き直してよくわからなくなったので、変な所は教えてください。

元から変かもしれませんが……。


あと、感想については見ています。

返信できずにすみません。

彼らが実際のグリム童話を知れば発狂するでしょう。

あと、Kは先日服に異臭を残して飛び立っていきました。

私の服ではなかったのですが、洗い直しですよ。まったく。

最近は服を着る度に数分かけて入念に侵入していないか確かめているんです。


あと、相当長くなってしまいましたが『竜の瞳と精霊の友の英雄 ~世界が生んだ愛し子の人生~』の第一部後半が出来上がりました。

ただ、長くなり過ぎて訳が分からなくなり、あと政治的な駆け引きがやはり苦手で(作者は何か言われると頭が真っ白になり黙るタイプです)、え? こうなるの的な物が出来上がってしまいました。

煩わしいところが多々あるでしょうが、よろしくお願いします。

明日の昼頃に毎日更新していきます。

 文化祭当日まで凡そ一カ月ちょっと。

 その間というより、文化祭前にテストがある。

 まあ、普通にしていれば問題が無いからアル達と勉強会をすることになるだろう。


 夏休み明けの大会は僕もフィノも出場せず、解説の席に呼ばれて魔法の詳しい説明を熟した。

 まあ、緊張したけど劇の前の良い練習になったかもしれない。

 今回もアル達は出場して、レンが優勝した。


 やっぱりこの前の魔力切れと威力不足を補ったのが勝因の鍵だったんだろうね。

 夏休みの間に弱点を大分克服できたみたいだし、アル達も頑張ってたけど精密な魔法が飛んでくるとどうしても避けきれなくなる。

 アルとシャルは突っ込んで行くタイプだから、精密に狙われたらいい的なんだよ。

 魔法で同じように相殺できればいいのだろうけど、不器用でもあるからな。

 アルはまだいいけど、シャルは見た目と違ってちょっと大雑把だから。




 で、今は十月に入ろうとしていて、一日二時間ほど文化祭の準備に当てられている。

 例年は事細かく授業をして、魔法の特訓などをしているみたい。

 では、今年それをしなくて水準が下がらないのか、と思うだろうけど、僕がいろいろと教えた結果水準がかなり上がったらしく、こうやって遊びを入れる時間が取れるようになったみたいだ。

 やっぱり学校というのは青春だし、戦いや練習に明け暮れる日々じゃなくて遊びもないといけないよね。


「さて、今日も魔法の練習をしようか」


 僕は準主役の王子役だけど、最後にちょろっと出て喋って口付けするだけだから余裕がある。

 とは言っても覚えることとか山ほどあるから、時間的な余裕があるわけじゃないけど。


「基本的に僕が場の幻術をこなす。でも、その他のアクションやエフェクトに関しては手が回らないと思う」


 僕の目の前にはクラーラを入れて五人の生徒がいる。

 この五人は劇に出て何かをしたいタイプではない生徒だ。

 だから、僕の幻術に対して補助を頼みたいと思ったんだ。


「例えば幻術だけだから、音はないし、細かい効果までは出来ないし、風で葉が揺れても人が着ている衣服は揺れない」

「そこで私達に細かい部分を魔法で行ってもらいたいのですね?」

「流石クラーラだね。そう、君達には持っている魔法を使って幻術とシナリオの工程に合った光景を産み出してほしい」


 彼らを選んだのは他にも理由がある。

 それはこのクラスの中で魔力操作に長けていて、造形魔法が綺麗に出来ていたことだ。

 他にも繊細な魔法を得意とし、適性の魔法も豊富にあるという点だ。


 この短時間で派生魔法を教えるのは難しいだろう。

 ララスさんは魔法の扱いに長けるエルフだったし、フィノは魔力が豊富にあった。

 そのアドバンテージが派生魔法の習得が早まった結果だ。


「まだシナリオがどうなるか分かってないけど、基本は同じだと思う。風魔法が使える人は声の変換や音を拡散する特訓、光魔法で喋っている人を照らすスポットライトや効果の特訓とかをしてほしい」

「風魔法でそのようなことが出来るのですか?」


 これがフィノだったら音は空気の振動で伝わるという一言で済ませられるんだけど、そんなことを言っても無駄だから原理を説明せずにやり方だけ教えるか。

 それ程魔力も消費する魔法じゃないしね。


「例えば拡声の魔道具は風魔法を応用している。やり方は声を風に乗せてどこまでも送る感じや、遠くにいる人に声を届けたいって感じだね」

「それならどうにか出来そうだ」

「じゃあ、声の変換? ってのはなんだ?」

「そっちは空気の密度を変えることで出来るよ。例えば口の周りの空気を圧縮するとそこだけ密度が上がって声が低くなる。逆に密度を小さくと声が高くなって、男性でも女性の声が出せるようになる」


 実際に試してみると今一だったけど、確かに変わることは実証済みだ。

 ヘリウムガスは空気より軽く密度が小さいから声が高くなる。

 それがヘリウムガスで声が変わる理由だ。


 だから人工的に口周りにそれをやってやると声が勝手に変換されるということだ。本当は喉に直接作用させたいけど、風魔法を喉に間違って傷でもつけた場合取り返しがつかなくなるから教えられない。

 効果は弱くなるけど口周りでいいだろう。


「あー、あー、かなり難しいな」

「あー、『あー』」

「おお! クラーラさんすげぇ!」

「え? どうやるの? 教えて!」

「え、あ、ちょ、待ってください。教えますから、少し落ち着いて」


 やっぱりクラーラがこういうのは得意みたいだね。

 空気を圧縮というのはエアハンマーを小型化して維持すること。

 逆に散らせるというのは真空の刃を作る、空気をその場から無くすと言う事でしかない。

 その辺りは特訓しかないね。


「次に光魔法だけど、普通にライトが使えれば構わないよ」

「それなら皆使えるわね」


 ライトは分類上光魔法だけど、一応生活魔法にも分類される魔法使いを目指すなら最初に習うべき魔法だ。


「そのライトを長細い筒に入れ、片方の穴に蓋をすると……このように一方光を円の形で照らす光となる。これがスポットライトという」

『おおお~!』


 皆思いつかなかったみたいだね。

 まあ、夜は劇もしないし、明かりを使った劇というのはあんまりないからね。


「で、その入り口に赤いフィルターを翳すと明かりは赤くなり、星形の筒にすると床に星型が見え、通りの悪い物を翳すと光が遮断されてぼやけた悲しい感じの光になる」

「これは凄いです! 流石シュン様ですね!」

「これはやりがいがあるわ!」

「そうだな。少し劇に出ない負い目があったが、これなら胸を張って貢献したと言える」


 皆その辺りに負い目を感じてたのか。

 あまり気にしないと思うけどね。

 それは当事者じゃないとわからないことでもあるか。


「で、光の強さを変えると更にバリエーションが増える。更に妖精が現れる瞬間に光りをこうやってまぶすようにキラキラさせると良いエフェクトになるでしょ?」


 妖精役の周りの人にキラキラとした輝きを纏って、ぼんやりとした光を纏わせる。

 こうやると取っても神秘的な、本物の妖精に見えるだろう。

 ただ、問題は妖精と白雪姫の大きさが同じという点だ。


「そこはどうするつもり?」

「そこを君に頼みたい。君も闇魔法が使えるよね?」

「ええ、まあ、適性があるので」


 やっぱり過去に何かあったのかもしれないけど、フィノは普通に闇魔法を使ってるから最近は大丈夫だと思うけどね。


「君にも幻術に応じて辺りを暗闇にしたり、黒い霧を出して雰囲気を醸し出したり、妖精の子の役の生徒を投射してほしい」

「最初の二つはわかるし、出来ると思う。でも、投射っていうのは何?」


 これは難しいかもしれないけど、それをどうしてもやってもらいたい。

 僕はこのときステージにもいるし、フィノは眠っている予定でもあるからその魔法を使うのは難しい。

 それに僕が全てやってはいけないだろう。

 こういうのは苦労し、失敗してもいいから皆でやるからいいんだよね。


「僕みたいに思った物を幻術にするのは難しいと思う」

「そう。私には上手く出来ない」

「だからさ、目の前で見ている物を違う場所に投射することは出来るよね。多分幻術系の魔法のファントムを少し変えて、ミラーイメージとでも言うのかな、見た物は脳でイメージするからそれを縮小して幻覚を見せるんだ」


 これは幻術系の魔法を使った人なら誰でも意味は分かるはずだ。

 幻術の魔法は一見簡単に使っているように見えるだろうけど、これは一連の動作を思い描いて相手の脳を支配する魔法だ。

 例えば相手に悪夢を見せたいとして、その悪夢をイメージしなければ脳に負担をかけただけの魔法と成り果てる。

 しっかりと悪夢となる内容をイメージしなければならないと言う事だ。


 さきほどの幻術魔法はほとんど動かない風景、見たことのある街並みと人の動き、声はなく、一定時間が過ぎると同じ光景が繰り返されるようになっている。


「まあ、意味は理解できる。でも、少し難しい」

「ま、出来なかったら仕方ないさ。もう一つ方法もあるしね」

「そっちはどうやるの?」


 小柄な女子生徒だからなんかこう心をくすぐられるね。

 しかもあった時のフィノみたいな感じで懐かしく思う。

 と思っていたら背筋がぶるっと来たから考えるのは止めておこう。


「もう一つの方法は直にステージ上で演技をしている妖精役の生徒を幻術魔法で小さく見せる方法だ。こっちの方が簡単そうに見えるかもしれないけど、近くには魔法をかけてはいけない生徒もいる。特に白雪姫であるフィノね」

「そう。それにフィノリア様はその幻術に対応した演技をしないといけない」

「それも問題なんだ。妖精の背丈は一メートル弱くらいだとして、それに応じた演技をしないといけない。フィノにもその幻術を見せればいいけど、少しでも立ち位置が変わってしまうと妖精役の本人とぶつかってしまう」


 光りによってできる影は幻覚に作用させればいいだけだからいいだろう。


「だからさ、出来れば最初に言った幻術の魔法を頑張ってよ。君が一番苦労するだろうから頼むよ」

「わかった」

「ある程度は僕もフォローに回るし、幻術は元々僕が掛けてるからやりやすいとも思うよ」


 僕は女子生徒の頭を思わず撫でて、後悔する。

 後で笑顔を浮かべたフィノに怒られるんだろうなぁ。

 だって本当にあの時のフィノを見ているようで頭を撫でたくなるんだもん。


「さて、他にもいろいろと魔法の練習をしないといけないから、裏方であろうと頑張っていこう!」

『おお!』






 それから一週間ほどが経った。


 その間に魔法を形にするところまで出来るようになり、これは自分のためにもなる為精一杯頑張ってくれている。

 シナリオも前半部分が完成し、そこを台本を読みながらゆっくり行ってみたりした。


 誰も演技はしていないけど、僕が作った幻術に合わせて魔法を使っていく練習だ。

 僕も練習しないとすぐにその幻術に切り替えられないし、皆の要望を聞いて幻術も変えないといけないから結構忙しい。


 例えば城の形とか、室内の様子とか、切り替わる時違和感を無くすとかね。

 で、鏡は本物を使うとして、鏡と話している時に何か鏡に反応が無いとおかしい気がする。そこで鏡に幻術で顔を映し出し、誰かにぼんやりとした光を放ってもらうことになったりした。


「やっぱり怪しさを出すのに色は白より紫とかの方がいいわよね」

「そうだな。なら鏡の後ろに紫色のフィルターを作って、その光を使うか?」

「そうね。一応試してみましょう」


 僕は魔法に関しては教えるけど、その他の知恵や知識に関しては相談されなければ何も言わないことにしている。

 それこそ僕の作品ではないからね。


「劇は昼間にやりますよね? 場所も入学式をした講堂ですから、明るいと思いますが暗いシーンはどうされるのですか?」

「夜自体は僕が作るけど、真っ暗にするのは頼むことになる」

「私がやる。闇魔法にブラックアウトという黒い光を出す魔法がある。ダークミストとかと違ってただ暗くするだけの魔法。効果は光を遮断するから幻術にも効果がある」


 僕がその魔法を指定外にした場合、その魔法の効果は幻術内で発揮され、幻術を上書きするのではなく、幻術も現実の様にその魔法で隠れると言う事だ。

 その辺りも練習がいるだろうね。

 でも、これはかなり重要なことで、シーンが変わる度に小道具の入れ替えなどで行わなければならないことだ。

 魔力が持つか分からない為、他に闇魔法が使えそうな生徒を探して特訓中だ。

 意外に闇魔法とか光魔法は使える人がいるからね。

 ただ、使えるレベルになるかは別としてだけど。


「フィノリア様、採寸を測らせてもらいます」

「ええ、構いません」

「では、失礼して。……綺麗な肌ですね」

「ふふふ、シュン君のために手入れは欠かさないもの」

「まあ、羨ましい! 私も護ってくれる王子様が欲しいですわ」

「あなたにもいずれ大切な人が現れますよ。そのためにも綺麗に着飾らないといけません」


 フィノは僕達を除けば基本敬語で話している。


 採寸か……。

 女の子同士だからいいけど、ちょっと周りの男子が気になるな。

 多分動きが止まっている奴は聞き耳でも立てているのではないだろうか。


「『妨害結界』」

「あれ? フィノリア様が消えたぞ?」

「は? 何言ってんだ……ほんとだ」

「おバカ! あっちを見なさい! 婚約者がいる相手をそんな目で見ていれば妨害されるに決まっているでしょ! 後でどうなっても知らないからね!」

「「(サァー)……すいやせんでした!」」


 飛んで土下座をするとは器用な人達だ。


 まあ、採寸と言ってもそこまできっちりするものじゃないから良かったけど、これが肩を露出させたりしたらさすがに目を潰してたと思う。


 服関係について僕は手伝わず、『アロマ』の伝手を使って服を作っている。

 勿論お互いに利益になるよう話を付けて、新たな服のデザインや『アロマ』の宣伝も兼ねて行うのだ。

 なにせ近々ダンスパーティーもあるからね。

 そのための服を買ったりする生徒がいるはずなんだ。


 因みに僕の服は出来上がるまで内緒のようだ。

 勿論僕の採寸は男子が行ってくれて、いろいろな会話を行った。

 全部フィノに関することだったけど。




 全てを幻術で作るのは無理なことで、さっきも言った鏡や衣装、毒林檎や妖精と過ごすときの料理等の小道具、棺も魔法では作れないし、そこに埋める花弁も本物の方がいい。

 この小道具作りだけは時間が足りないから僕も手伝っている。


「鏡は学園にあるのを借りればいいだろ。別の壊したりするわけじゃないしな」

「そのくらいならいいだろう。無くてもある程度は学園も金を出せるからな。準備費としていくらか貰っているから合っている物を買うとしよう」


 特に喋る台詞もないアルは率先して小道具作りの手伝いをしている。

 意外に手先だけはそれなりに器用だから、細かいものでない限り任せることが出来る。

 なぜそれを魔法で出来ないのか謎だ。


 因みにウォーレン先生は小道具作りを手伝い、シュレリー先生は採寸やシナリオ作りなどを手伝ってくれている。

 力仕事が多い小道具作りにウォーレン先生が入ってくれたことで順調に進み、衣装もシュレリー先生のおかげで纏まって作られている。

 『アロマ』に頼むと言っても作るのは基本生徒達だ。

 難しい場所や職人ならではの所は手伝うが、それ以外の構想等は全部僕達で行う。そのために費用がほとんどかからなかったりするのだ。


 実際はどこからか貸してもらったりするんだおるけど、ここは地球じゃないからね。

 貴族がいる時点でいろんなところに伝手があるから、ほとんどお金を掛けずに物を揃えていくことが出来るんだ。

 それに魔法もあるから準備のスピードはかなり速く、出来栄えもかなりのものとなるだろう。




「棺は高さを作って中に板を敷く。その上にクッションを入れ、花を敷詰めよう」

「棺の色はフィノリア様に合わせた黒かしら? ちょっと普通だけど、その方が栄えると思うわ」

「だな。じゃあ、俺は学園の教材倉庫から板とペンキを貰って来る!」

「後ついでにクッションとかあったら持ってきて。無かったらこっちで準備するよ」

「おう!」


 僕が手伝っているのは棺だ。

 加工については風魔法を使って簡単に処理していけばいいから簡単だね。


「大きさについてはフィノの身長の一・三倍ほどが良いと思う。大体二メートル弱かな」

「そうね。それに合わせて幅も決めましょう。でも、いくら段差を付けても観客に見えないんじゃない? ここは一番のシーンなのよ。絶対に見えた方がいいわ!」


 そんな燃えられてもね。

 実際に口付けするかまだ決まってないわけで。

 するとしても見世物じゃないんだから……。


「僕としては口付けをしたかしていないか、といったのを見せるのが一番燃えると思うよ。そういうところに人の想像が集まるからね」

「確かに。キスしたっているより、したか分からないっていう方が興味をそそられるな。でも、こいつが言うように遠くからだとわからないというのもある」

「え? なにしたの? という反応が返って来るのだけは止めたいわ。だってそこは名シーンとなる予定なんだから」


 名シーン、そんな単語がこの世界にもあったのか。

 それとも今生まれたのか?

 ならこの生徒が発祥となる。


「ま、それについては問題いらないよ。一応一年ほど前に作った魔法があるから、あの魔法を使えば誰でも近くの光景を見ることが出来るよ」

「あの魔法、一年前と言うと……あー、あれな。でも、あの魔法はシュンがやったのか? 大英雄様がやったんだろ?」

「ん? あ、うん。ちょっと伝手があるからね」

「へぇーやっぱり強いということはそれなりに伝手もあるのか。俺も紹介してほしいな」


 近々僕とあの英雄様が一緒だと公表する手筈も整えないといけないのか。

 まあ、今なら納得、と帰って来るかもしれないけど、絶対にあの大会と同じで反発してくる人が出て来るはずだ。

 まあ、挑んでくる人を叩きのめせばいいし、ギルドカードもあるから大丈夫だろうけど、何か問題は起きるはずだ。

 隠しても隠さなくても面倒なことになるのは同じだったと言う事か。






 再び一週間が経ち、文化祭まで残り三週間を切った。

 まだ時間的余裕があり、準備を順調に進んでいるから皆疲労を感じながらも楽しそうだ。


「他のクラスではやっぱりダンスとか、魔法の発表とからしいぜ。歌とか劇もあるみたいだが、俺達ほどじゃないみたいだ」


 僕と一緒にいることで上の学年とも交友の広いアルがそう言った。

 僕も魔法を教わりに来る生徒からいろいろなことを聞いているからアルと同じ感想を持っている。

 偶に密偵ではないのか? と思えるほどこそこそとする生徒もいた。

 まあ、その時は丁重のお帰り願ったけどね。


「自信を持つのはいいけど、変な失敗しないでよね。アルは本番には弱いタイプなんだから」

「だ、大丈夫だって。俺はシュンの傍にいる騎士だ。セリフもないから大丈夫な筈」

「はずって何よ、全く。手と足を一緒に出す騎士とか止めてよね。コメディーじゃないんだから。主役をモブが攫っちゃいけないのよ」

「モブ言うなよ!」

「フッ、私は悪訳とは言え王妃よ。セリフもないあんたにモブと言って何が悪いの? オーッホッホッホ」


 完全に役に嵌り切っているぞ、シャルさん。


「やっぱりシャルしかいないね。適役って感じ」

「あはは、僕もそれ思ったよ。それにフィノに演技とはいえ、言えるのは仲の良いシャルくらいだよね」

「シュン君は言えないのかしら?」

「ぼ、僕は言えないよ。そういうフィノはどうなの?」

「わ、私だって……。もう、シュン君は意地悪だ」


 このやり取りが取っても心を満たされるんだけど、


「あー、まーたやってるよ。お似合いなんだが、場を弁えてほしいよな」

「そうね。甘い雰囲気を醸し出して、乳繰り合うのもいい加減にしてほしいわ」


 邪魔がいるからこれ以上は改めてしよう。

 勿論しないという選択肢はないのさ!

 スキンシップこそがこの劇を引き立てるはずだから。

 だってキスシーンだもの。仲が良いほどそのシーンはより栄えると思うんだ。


「偶にシュンはよくわからなくなる時があるよな」

「でもそこが良いところです。フィノリア様を大切にしていることが分かりますし」

「天才と馬鹿は紙一重なのよ。シュン君は頭が良くて強いけど、ああ見えて考えなしな所があるわ。あの決闘が良い例よ」

「そうですね。結果オーライでしたが、少しやり過ぎでしたかも」


 くーっ!

 あれにフィノが関わってなかったらすぐにやめてたさ。

 でも、フィノだけでなく家族まで馬鹿にされたら怒って当然じゃないか!

 それにその件は師匠達からさんざん説教されたんだよぅ!


「ま、そのおかげで良い物が出来るのなら言うことはないな。これで第一回目の名誉ある賞はいただきだ!」


 アルの言う通りこの発表会には賞が出る。

 大会のような大きなものではないけど、クラスに対して優遇処置というか食券とか、装備品とかが学園から払われる決まりとなっている。

 しかも今回は第一回目と名誉があり、魔法王も見に来るということで躍起になっているのだ。

 優勝のクラスには直接言葉がもらえるとかなんとか。


「いや、まだわからないよ? 完成度がいくら高くても技術で負けてたらダメ出し、もしダンスとかでも綺麗に揃って華やかだったら負けると思う」

「自信を持つのは大切よ。でも、必ず勝てるっていうのはあり得ないの。最後まで気を抜かずに行こうね」

「ん、まあ、そうだな。シュンとフィノの言う通りだな」

「アルはつい調子に乗るんだから。これで本番も自信があればまだいいのに」


 大袈裟に肩を竦めるシャルに、アルが反論する。

 でも、その通りだからシャルに丸め込まれてしまった。


 やっぱり女の子は強いんだよ。


「後三週間。これからは何度も練習があるはずだから、頑張らないとね」

「ここまで一致団結で来たんだから大丈夫と思うよ。シュン君に負担がかかるけど、魔法の方はうまくいくの?」

「フィノが信じてくれれば大丈夫さ。もしもの時はその時だ」

「ふふ、シュン君らしいね」


 残り三週間を切った時点でほとんどの物が完成に近づき、後は演技を身に付けていくだけだ。

 基本的に貴族は演技をしているようなもので、飲み込みは早いはず。

 僕は演技に自信がないからどうにかそれに食いついて、フィノにも家族にも恥をかかせないように頑張るぞ!


原理にはツッコまないでください。

一応声に関しては密度の小さいヘリウムガスを吸うと高くなるということだったので、口周りの密度を変えるだけで出来ると考えただけです。

実際は変わらないかもしれませんが、調べても分からなかったですし、魔法で肺の中の空気を変えるとか危なくて書けませんでした。

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