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やりすぎちゃった

今考えたら、シュンとフィノは大分温厚ですよねー。

スルーしてください……。

シュンの性格が少し変わった気も……。

切りのいいところまでやった結果、かなり長くなりました。

 朝起きるとやはり思っていた通り、僕達の寝首を襲ってきた者達が結界に捕らわれていた。

 多分宰相が会談中に捕えられたのは、現在集まっている貴族達の耳に入っていたんだろう。

 で、宰相の口から洩れたら困る貴族がいて、宰相を暗殺しようにも厳重に警備されている牢屋だから無理だった。

 それに僕達が持ってきた目録にも名前が書かれているかもしれない。

 なら、もう王国の使者を殺してしまおう。

 という何とも短絡的な、戦争も辞さないというより、考えなしが多いんだろうね。

 まだ、バリアルやバーリスのような戦闘狂や脳筋の方がまだいいと思う。

 話せばわかってもらえるし、行動が先に来るからこんな回りくどいことをしないんだもん。

 多分自分で殺しに来るんじゃないかな?


 まあ、それは置いておいて、結界は隠蔽・侵入・盗聴禁止・物理兼魔法結界に加え、昨夜はある程度侵入すると指定した領域に麻痺、睡眠、悪夢の状態異常を付加させる結界を実験も兼て張っておいた。

 どうやら悪夢は目の前で操作した方が見せる夢を決められるため、予め決めていては人によっては聞かない場合があるようであまり効果がなかった。多分暗殺者だろうからそういった訓練もしてるんだろう。


 すぐにフローリアに連絡して、帝国の騎士を連れて来てもらった。

 騎士には侵入を許してしまったことを只管謝られたが、目の下に隈が出来ているので貴族達の粛清などで忙しいのが見て取れた。


 一年前から考えると帝国はどれだけ腐ってるんだ? と思うだろうけど、武力で成り立っていた国が時代の流れで文になるとこうなるのだろうと、何となく理解できる。

 第一皇子や第二皇子等新しい世代は付いていけるだろうけど、皇帝を除いた旧世代は付いて行けずに腐ってしまったんだろうね。

 でも、次の皇帝が分かり合える人で良かったと僕とフィノは思っている。

 多分これから何度となく会って話すことが増えるだろうしね。




「こう言っては何だが、やはり襲われたか。一応こちらでも夜の間に十数人捕えたのだがな。打ち漏らしがあったようだ。すまぬ」


 朝食を食べ終え、フローリアさん達も交えて話をしていると皇帝自らが現れ、今朝の襲撃の謝罪と召喚獣の容体を確認することになった。


 それにしてもあれだけじゃなく、他にもたくさん暗殺者が紛れ込んでいたんだね。

 皇帝の目の下も薄らと黒くなっている。

 第一皇子達もどこか眠そうだ。


「どいつも目録に書いてあった貴族でな、粛清が楽になったのはいいがおかげで寝不足だ。まあ、ほとんど牢屋にぶち込んだからな、あと数日我慢すればよく眠れるようになる」


 皇帝は疲れを引き飛ばすかのように笑い、第一皇子が傍で小さく溜め息を吐いていた。

 どうやら苦労しているようだ。


「父上。後で王国に謝罪文を送りましょう。それと貴族に根本的な考え方を変えさせないといけないでしょうから、貴族の子弟に現実というのを学園で学ばせましょう。幸い、子供は罪がそこまでありませんし、十を超えた子供はきついかもしれませんが、それ以下の子供は躾ければいい文官になってくれそうです。それでもダメなら軍人として叩き上げましょう」


 第一皇子が爽やかな顔で言う。いや、言い放ったよ……。


 うーん、ちょっと黒い人なのか、それとも疲れている原因だから腹いせなのかよくわからない。

 だけど、悪い人というわけじゃないから大丈夫だろう。


「兄上も父上も、やり過ぎはいけません。弟は学園に行ってダメだったじゃないですか。こうなったらせんの……他国と同じような道徳的な問題を作り、それで間違っているのか指導したらどうです? 自分で考えられるようになりますし、間違っていれば役職に付けません。平民はこの百年で分かっていますからね。平民が分かっていると言えば嫌でもやるのではないですか?」


 あ……こっちの方が何かやばい。

 まだ第二皇子とはほとんど話したことがないけど、この人洗脳って言いかけたよ。洗脳ってさ。

 まあ、確かに子供は親を見て育つというからなぁ、それを考えると日頃から道徳がどうのと、言っておけば凝り固まることは無くなるかもしれない。


「シュビーツ、お前の方がよっぽど怖いわ……。ゴホン、それよりもこれから時間は大丈夫か?」


 皇帝も僕と同じことを思ったようで少し上体を仰け反らせ、誤魔化すように咳払いをしてこれから迎えるか訊ねて来た。

 僕は一つフィノに頷き、フィノが僕の代わりに答える。


「はい、私達はいつでも構いません。今すぐ向かいましょう」

「うむ。いろいろと済まぬな。案内するから付いて来てくれ」


 暗殺者を兵士に任せた僕達は皇帝達の後に続き、七人で移動する。

 すれ違う人全員が忙しそうにしているところを見ると、僕が想像しているよりもずっと大変なことになっているのだろう。

 王国でも今頃大変なことが起きているだろうから、早く帰って手伝えることはしないといけないね。

 とは言っても、僕にはあまり手伝えるようなことはないんだけど……。




 王国にも存在するが、皇族のみが使用できる訓練場がある。

 その隣の区画には芝生と果物が実った木々が生え、半分は天井が無くもう半分は日差しを遮れるような構造をした特殊な部屋があった。

 この区画は数年前まで召喚獣が昼寝をしたり、皇族が少し遊んだりする区画らしい。

 今は動けず治療中ということで召喚獣用の部屋が隣にあり、その部屋で寝ていると言われ、僕達はその部屋で召喚獣の容体を見ていた。


「名前をレコンと言ってな、『白銀虎』という魔物だという。元々気性が荒く、気高い魔物なのだが、儂が幼少の頃に卵から孵し高らか結構人懐っこい背一句に育っておる」


 僕の目の前には目を薄らと開けた白い毛の虎がクッションに埋もれて横たわっていた。

 体長二メートル程で、白い毛に灰色の毛が格子の様に生え、髭が数本長く伸び鼻息で揺れている。魔力を読み取り調べてみるけど異常はなく、かなり魔力が高い気もするけど問題になる量でもない気がするし、年を取って動けなくなったというわけではなさそうだ。

 聴力を強化し心音を読み取ってみても、特に異常は見当たらず、まあ、少し弱いかなと言ったところだ。

 毛は丁寧に手入れされているが、体力的な問題からか白髪のような感じになっていた。

 多分僕の召喚獣であるロロと同じ色の毛のはずなんだけど、ちょっとおかしいよね。

 フィノも何かを感じ取るのか、可愛そうだなと言う表情が見て取れていた。

 皇帝達は辛そうな表情だ。


「Sランクのシルバータイガーということは百年以上生きるはずですね……。もう一度訪ねますが、レコンは何時頃からこの状態で、どこまで調べましたか? あと、レコンとシルバータイガーについて詳しく教えてください」


 まずレコンについて詳しくするところから始めないといけない。

 寿命ではなく、僕は詳しくないけど病気らしい病気の症状もなく、ただ単にぐったりしているように見える。

 初めて見た感想は老人だったけど、健康体そのものだし、そもそも動物が年を取っていっても動き回ってるよね?

 まあ、少なくとも怪我などをしていない限り死ぬ間際でない限り動けるはずだ。


「まず、動けなくなり始めたのが大体五年ほど前だ。このように動けなくなり始めたのが一年弱ほど前だったはず」

「確かその時期でした。四年ほど前から治療を開始しているのですが、怪我や病気でないことはすぐにわかったので体力を上げたりすることしかできていません。それでも呼吸が整うくらいです」


 そう言われてみると呼吸は少し荒い気がするな。

 普通髭は揺れないもんね。

 レコンより長い髭が生えているロロですら、風でない限り髭が揺れないんだから。


 そう言われて少し謝り顔に手を当ててみるが、特にこれと言ったものは見つからなかった。

 ただ、やっぱり魔力がかなり多く、心音がかなり小さく感じる。

 この二つに何かありそうな気がするけど、そんな病気あっただろうか。

 あったとしても魔物特有の病気だと治せるかどうか……。


「どうかなされたか?」

「あ、いえ、少し気になることがありますが、それがよくわからないので続きを教えてください」


 額に手を当てて深く考えていたのを何かに気付いたと感じた皇帝が話しかけてきたが、それを言っても今はどうしようもないので詳しく聞くことにした。


「レコンについてはどのようなことを知りたいですか? まずシルバータイガーから話した方が良いでしょうか?」

「うーん、そうですね。文献でしか知らないのでお願いします」


 文献で知っていることもほとんどがなぞというわけではないけど、虎のような習性みたいなことしか書かれてなかった。

 もしかすると深く調べているかもしれないから聞いておいた方が良いだろう。


「では、シルバータイガーは西方にある山に生息すると言われています。確証がないのはその山が遠いこともありますが、生息する魔物がどれもBランク以上と危険で確認できないからです。ですが、冒険者から聞いた話では正しいとのことですね」


 第二皇子のシュビーツさんが住んでいる地域の特色まで教えてくれる。

 まずその山は標高が高く、その頂上は雪までは降らないが寒いとのこと。そして、その頂上付近に生息するのがシルバータイガーだという。

 帝国は砂漠も近いということで比較的に暑く、ガラリアで経験したような雪は降らない地域だ。それも原因かと思い氷魔法を使い調べたそうだが、結果としては少し喜んだだけでぐったりとしてしまい、風を引いてはいけないとすぐにやめたそうだ。

 その地に何かあるのかとも思ったけど、普通の山とあまり変わらないらしい。

 元々孵った時点で深く調べ、冒険者にも聞き込みを行い部屋や食べ物を準備したので、五十年近く経って異常が出るのはおかしいだろう。


「好物は隣の部屋にあった果物です。あの果物は私が生まれる前なので詳しくありませんが、父上が冒険者に依頼して山付近に生えている果物を持ち帰ってもらったのです」

「ああ、そうだ。もう少し早めにしておけばよかったのだが、あそこまで行ける冒険者と渡りが付かなくてな、十数年経ってやっと依頼で来たのだ」

「山の果物を選んだのは出来る限り食事を近寄らせる為ですか?」

「その通りだ。この地域で孵ったからといっても好物が変わるわけではあるまい。もしかするとその食べ物が無いと生きられないかもしれないとも思ったからな。さすがに頂上付近の食べ物は無理だったが、どうにか中腹の果物をいくつか持ち帰ってきてくれた。そして、二十五年ほど前に栽培が普通に出来るようになった」


 皇帝は相当このレコンに深い愛情を注いでいるようだ。

 ロロにも好物とか挙げた方が良いのかな?

 そうなるとフィノのエアリにも好物を探してあげた方が良いだろう。

 狼だから肉という気もするけど、エアリはグリフォンのような魔物だから何がいいのだろうか?


「その果物が隣の部屋に実っていた物ですね? あれを日頃も食べているのですか?」


 あの果物がもし遅効性の毒が入っているような果物だった場合を考えたけど、自分で言ってそれはないだろうと見当を付けていた。

 仮に知らない毒だったとしても毒なら調べた時に分かるはずだからだ。

 あの果物自体が身体に悪いというのも考えられるけど、そうならレコンが食べないだろう。

 人間と違い動物は本能や匂いでそれが身体に悪いかどうか即座に判断するはずだからね。


 ……ちょっと待てよ。

 虎はネコ科の動物だったような気もするけど、果物を食べて平気なんだったっけ?


「うむ。あの果物の名前は『トーカ』といい、あの果物だけはシルバータイガーも食すことが出来るのだ。本当かどうかは知らぬが、これを持ち帰ってきた冒険者が食べていたと言っておったからな」

「それに二十年以上食べていますが、体調不良を起こしたことはありません。それにあの果物は魔力回復にもなるので重宝されるようになり、私達も美味しく食べることができますから、最近は各地に農家を作っていますよ」


 どうやら関係なかったみたいだ。

 まあ、異世界だから虎の生態も違うかもしれないね。

 人間だって病気に地球人とは比べられないくらい耐性があるんだし、虎が果物を食べられてもおかしくない。

 それに相手は普通の虎じゃなく、魔物だからもっと違うね。


「最近は食しておらぬが、大体三日に一度くらいだったはずだ。最近は噛む力もないのか全て液体状にしてから食べさせている」


 流動食という奴かな。

 まあ、医学が発達してないから点滴とないし、流動食を考えただけでもすごい方だと思う。


 僕はもう一度レコンに近づき、今度は体全体をくまなく調べた後、気になっていた魔力をレコン一体に絞り回復魔法を掛けていく。

 回復魔法もいろいろな種類とやり方を試すが、やり過ぎは身体に悪いため大きなことは出来ない。

 血の検査もさせてもらう許可を得て、掌に小さく針を刺し確かめるが、特に臭いや色、粘り等はおかしくなかった。

 やっぱり魔力が関係していると思う。

 その弊害か何かで心臓の鼓動がおかしくなっているのだろう。

 魔力欠乏症の逆に魔力過多症があるけどそれほど多くないし、本に書いてあった症状と違う。

 あれは確か内包する魔力の限界を超える物だったはず。

 だから、身体が内部から破裂しそうになり、発汗や筋肉等の膨張、体力の低下ではなく苦しむのだと思う。心臓に負荷も掛かるはずだけど、それなら鼓動が早くなるはずだ。


「……やはり無理だったか」

「すみません」

「いや、シュン殿が謝ることはない。恐らくもう年なのだろう。元々寒いところで育つ魔物だ。この暑いところでは体調も悪くなるであろうな」

「帝国の象徴なのですが、仕方ありません。飼い主として無理な延命をさせるより、苦しまないようにさせるのも大事です」

「悲しくなるのは当たり前のようです。家族をまだ失ったことがないからわかりませんが、このような喪失感があるのでしょうね」


 僕は最後の別れをしようとしている皇帝達から離れ、心配そうに手を祈るように胸元で握っているフィノの元へ戻る。

 だけど、引っかかるんだよねぇ。

 年はまだ五十で、普通に数百年は生きるのだからまだ子供だと言ってもいい。

 魔力が身体に見合っていないけど、それは僕やフィノも同じだから何とも言えない。だけど、魔物は魔力が多ければ大概大きい気もする。

 心音が小さいというのもやっぱり気になる。


「シュン君。どうにもならないの?」


 深刻そうにしているように見えたのかフィノが僕の手を取りながら聞いてきた。

 僕は後ろに振り返り疑問に思ったことを話し、何か近い症状を知らないか訊ねてみるが、二人とも首を横に振る。


「ううん、私は知らない。私みたいに魔法を使えなくなるんだったら分かるけど……」

「私も知りませんね。それに魔物はまだその生態がよく分かっていませんから未知の症状と言うのもあり得ます」

「だよねぇ。体調が悪くないから僕も病気ではないと思うんだけど、もし未知の症状だったら僕にはお手上げだよ」

「さすがのシュン君も無理なんだね」

「まあ、分からないことが分かったね」


 一応常套文句を言い、もう一度頭の中で整理をする。

 ついでに今まで見てきた魔物やロロとエアリについても思い出す。

 ロロはまだ一年程しか経っていないし、エアリも半年ほどだ。

 二体ともシルバータイガーと同等クラスの魔物で、遥かに寿命が長い生き物のはず。

 病気も一度も掛かったことのない健康体だからなぁ……。


「シルバータイガーは僕の召喚獣のロロ――シルバーウルフと同じ種の魔物だと思うんだよね。だから、住む地域は違うだろうけどその生態とか成長はほとんど変わらないと、おも……」


 と、シルバーという名前を反芻させていると、そこで僕はとあることに気が付いた。


「どうかしたの? 何かわかった?」


 フィノが急に黙った僕に気が付き、何かわかったのかと微かな希望を見出した顔で聞いてきた。

 僕は一度頭の中で整理する。


「いやね、もしだけどシルバーウルフとシルバータイガーを同じ生き物だと考えたら違うところが浮き出てきたんだ」

「違うところ? 魔物と言う括りで虎と狼じゃないよね?」

「うん、括るなら魔物と言う括りの中にランクがあって、その中に例えばスライムなら粘性生物、ゴブリンやオーガなら亜人生物、鳥なら魔鳥とかね。そういう感じの括りで言うと銀毛生物として括れる」

「まあ、確かに言われてみればそうですが、少し無理矢理感はありますね。ですが、括れないというわけではありません」


 他にも銀色の毛並の魔物はたくさんいる。

 シルバーを冠する魔物はライオン、フェンリル、ゴリラとかいろいろといるはず。

 多分そういうような毛が生まれる特徴があるはずなんだ。

 なら、成長過程もほぼ同じだと思っていいはずだ。


「そう考えた時にロロの成長とレコンの成長に疑問が浮かび上がったんだ。それはエアリにも関係しているから、別に銀色の毛を持つ魔物だけじゃないけどね」

「そっか。言われて気が付いたけど、ロロちゃんはレコンの三倍は大きかったよね。もしかして、それが何か原因なの?」

「私はそのようなことを聞いたことがありませんが、魔物は普通の生き物とは生態が違うとは聞いたことがあります。ですから、何かしらの要因で成長が阻害されているのかもしれません」


 そうなると、食事が原因かもしれないか……。

 確かホルモンバランスが崩れると成長が阻害されると聞いたことがある。

 後は病気というのも考えられるけど、それは魔法でも確認したし、血の流れが悪いわけじゃない。

 そうなるとやはり食事関係と栄養バランスだけだ。

 だけど、それが僕の懸念の魔力と結びつくかと考えるとそうでもない。

 多分食事が関係しているけど、もう一つ何か関係があるはずだ。


「とりあえず、ロロを呼び出して確認を取ってみようかな。もしかすると何かわかるかもしれないし」

「私もそれが良いと思うよ。レコンはどう見ても小さいと思うもの」

「一応大きいので確認を取ってからの方が良いでしょう。それとシュン様の魔法に関してもありますから口止めの方を」

「うん、分かってる。そのために今回の件は全て秘匿してもらったんだから」


 僕はフローリアさんの言葉に頷いて了承し、レコンの周りで涙しそうな皇帝達の元へと向かう。

 足音に気が付いた皇帝達が立ち上がり、僕に向かって安らかにさせるというのを制して、先ほど気が付いた要因とロロについて話す。


「一つ原因かどうかわからないことがあるので確かめたいと思います」

「本当か!? して、その原因とは何だ?」

「お、落ち着いてください。まず、今から僕の召喚獣を出しますからその許可と魔法に関しての秘匿を要求します」


 皇帝は僕から手を放し、息子二人と騎士団長に目配せをしてから頷いた。


「よい、そういう約束だからな。だが、シュン殿はどうやって召喚獣を……?」

「詳しくは言えませんが空間から出します。かなりの巨体ですが、危険性はないので驚かないでください」

「うむ、了解した。お前達もいいな?」


 皆の了承が得られたことで僕は横を向き、魔力を練り込みロロのいる亜空間を繋ぎ、空間を切り裂きあちらの世界にロロを呼びかけ出てきてもらう。


「ウォン!」


 空間からのっそりと現れたロロは隣にいる僕の顔を視界に収め、ざらついた下で僕の頬を嘗めるとともにひと吠え鳴いた。


 少しまた大きくなっている気がするけど、大体もうすぐ成長限界かな。

 大体五メートルぐらいか、そのぐらいだけど、威圧感が半端ないなぁ。

 と、皇帝達に……。


「「「「……っ」」」」


 流石に皇帝達はこれほどの召喚獣が出てくるとは思わなかったのか言葉を無くし、恐怖と怯えのような感情が見えているため早く話しかける。


「驚かせてすみません。この子は僕の召喚獣のロロと言います。シルバータイガーに並ぶシルバーウルフです。大人しい奴なので触ってもらっても大丈夫ですよ」

「クウゥ~ン」


 最後の一言入らなかったかも。

 まあ、ロロはよろしく、とお座り状態で片手をひらひらさせているから構わないのだろう。

 やっぱり誇り高いシルバーウルフにしてはちょっと変わってるよね。


「あ、ああ、驚いてすまない。まさかこれほどとはな。それに先ほどの魔法は……」

「はい……。シルバーウルフ、流石はシュン殿と言ったところか」

「これを倒して召喚獣にしたのですか?」


 第二皇子シュビーツが騎士団長に止められるも、恐る恐るその毛皮に触り、ロロが何もしないことに気が付き頬擦りしながらそう訊ねて来た。

 動物好きなのかもしれないな。


「いえ、この子は大体二年ほど前に暮らしていた森で拾ったのです。当時はまだ赤ん坊だったので腕に収まるサイズでした。見つけた時は瀕死の状態で、一週間ほど目を覚ましませんでしたね。目を覚ました後は僕のことを理解しているのか暴れることなく懐いてくれました。それからすぐに召喚獣として契約したのです」

「へぇー、そういうこともあるんですね。私も自分の召喚獣が欲しいです」


 やっぱり動物が好きなんだろうな。


「シュビーツ殿下がどのような召喚獣が好みか知りませんが、少し遠くなりますが迷宮都市バラクに召喚獣を買える牧場が存在します。そこでフィノリア王女も召喚獣を購入しましたよ」


 あの時は大変だったなぁ。

 まさかフィノを待っている卵があるとは思わなかったし、僕の魔力までほとんど持っていったもんね。

 エアリも相当大きくなるはずだけど、ここには出さない方が良いだろうね。


「そのような場所があったのか……。父上、今度行って来てもいいでしょうか?」

「うむぅ……。まあいいだろう。ついでに王国へより今回の件の会談と条件のすり合わせ等を行え。それと礼儀正しくな」

「ええ、分かっています。あいつではありませんし、それぐらいで召喚獣を手に入れられるのなら我慢しますよ」

「私の分も、と言いたいがさすがにそれは無理だろうから、怪我せずに行くのだぞ」

「兄上も帝国のことを頼みます」


 何やら話がすり替わったようだけど、まあ僕には関係ないだろう。

 それよりもレコンについて話さなければ。


「シュン殿それにしてもロロだったか? はかなり大きいな。これは何年生きている……いや、まだ二年程しか経っていなかったのだな」


 どうやら僕が言ったことを皇帝は覚えていたようだ。

 魔法に関しても聞きたそうにしていたけど、さすがに今は言えない。

 いずれ言うようになると思うけど。


「はい、僕が疑問に思ったところは正しくそこです。シルバーを冠する同じ種と言ってもおかしくない二頭なのに、どうしてこれほど大きさに差があるのでしょうか? レコンは少なくとも五十年は生きていますから、既に大人になっていてもおかしくありません。それにこれが大人というのはSランクの魔物としておかしい気もします」


 皇帝は僕の言いたいことを理解し、難しい顔でその理由を考えてみるが何も浮かばなかったようだ。

 僕はロロの身体を撫でながらその思いついた理由を話してみる。


「多分ですが、何かしらの影響か原因かで成長を阻害されているのではないか、というのが僕達が話し合って出た結論です。病気というのも考えられましたがどこにも異常がありません」

「そういうことがあり得るのか? 聞いたことがないが……」

「ええ、僕も聞いたことがありません。ですが、ここまで顕著にはならないでしょうが、人間も生まれ立てから二年ほどの間に何かしらの病気にかかれば、成長が阻害されることがあります。そして、魔物の生態はほとんどわかっていませんから、もしかすると魔物特有の原因があるのかもしれません」


 レコンの目がこちらを向いた気がしたが、今はすやすやと眠っている。


「それと以上と言えるか分かりませんが、体格に対して魔力量が多過ぎる気がします。ただ、これは人間なら多くても害がないので何とも言えません。ですが、魔物は魔力が多くなるほどそれらしい身体を持っていると記憶しています」


 現にロロは魔力量が増えるに応じてその体を大きくしていった。

 ただ、比例はしていない為成長限界に達すると……成長限界?

 成長限界に達する前に魔力が膨大になったらどうなるんだ?

 固い風船に空気を入れるような感じじゃないだろうか?

 そうなると体が膨れるはずだけど、身体は風船じゃないし魔力も空気じゃないから身体に異変が出たのかもしれない。

 それが魔力量の多さにより、魔力を留めようと逆にそちらにエネルギーが割かれ成長の阻害になり、身体が圧迫されることで心臓の音が弱まっているのかもしれない。


 僕やフィノの場合まず魔物じゃない。

 だから成長も緩やかで、魔物よりも高度な知恵というか知性を持っている。

 そのため知らずの内に魔力を出しているかもしれないし、僕やフィノの様に幼少から魔力を高めるという行為をしない。だから体の成長に合わせて魔力が増えるし、急に増えても身体の作りが違うから貯蔵しようとするのかもしれない。


 でも、魔物は基本的に魔力の塊であり、魔力溜りから生まれる存在だ。

 だから魔力を膨大に溜めこんでしまい成長に何かしらの影響が出てもおかしくない。

 それに人間は進化のようなことはしないが、魔物はゴブリンがハイゴブリンになったりと進化する。

 そう考えると今のレコンは急激に増えた魔力を護るために身体を進化させたのかもしれない。

 だが、その進化が身体を急激に成長させることにならなかったのは、レコン自体が持たないと判断したからか、進化が必ず良い方向へ行くとは限らない。

 海に潜れていた生物が陸上適応して海に長時間潜れなくなるような退化も存在する。

 退化も進化の一種なのだ。


 そう考え付いた僕は頭の中で整理しながら、この世界の人達でもわかりやすいように砕いて説明する。


「皆さんお聞きください」

「何かわかったようだな。ぜひ、シュン殿の見解を押してくれ」


 僕は皇帝に促されながらレコンの額に振れ、魔力量を今度は計測しながら確かめる。

 魔道具で出来るのなら、僕が今まで見て来た人間の魔力量から数値化すればいいだけだな。


「まず、先ほども言ったように恐らく魔力が増えたことによる影響が一番可能性が高いと思います」

「儂には魔力量を測れぬし、レコンの魔力量を測ったこともないからわからぬが、シュン殿がそういうのならばそうなのだろうな」

「はい、今調べていますがかなり高いです。ここからはかなりの僕の想像が入っていますので仮説程度に考えください。まず、魔物以外の人間や動物や虫は成長します。そして、その場所に適応した姿を取ります」

「適応とな?」

「はい。解り難いかもしれませんが、人間は他の動物と違い言語や技術等高度な知性を持ち、馬は走るのに特化し、魚は水の中を僕達以上に素早く動けます。魔物なんて溶岩の中に入れるもの、空を飛ぶもの、土の中を移動するものと様々なものはいますが、すべてひっくるめて魔物と呼びます。これが適応というものでしょう」

「なるほどぉ……。鳥が空を飛べるのは飛行をするためとかですか? 後ゴブリンは徒党を組んだりするのも?」

「多分それも適応だと思います」


 微妙に違うけどまあいいだろう。

 レコンの魔力量はフィノより少し多いくらいだ。

 魔物にしては相当高い分類はいるだろう。

 ロロよりも高いところを見ると、やはり魔力の量が関係していると見える。


「そして、レコンも適応……この場合進化と考えた方が良いかもしれません。進化というのは人間や動物にはありませんが、魔物には存在します」

「魔物が上位の姿になることだな?」

「はい、その通りです。そう考えるとシルバーウルフやシルバータイガーには上位の姿が存在しません。知らないだけかもしれませんが、Sランクの魔物が進化するとは聞いたことがありませんね」

「確かに。では、レコンは進化と適応の中間にいるような感じというのですか?」


 第二皇子は聡いな。

 レコンから手を放し、皇帝達の方を向いて続ける。


「そのようなものでしょう。ここからはかなりの想像ですが、生き物は成長する過程で魔力が大きくなります。人間も成長する過程で魔法の練習などをすることにより、魔力が成長とともに大きくなります」

「ええ、その通りです。成長が止まるというのはその人個人の限界か大人になったためと考えられています」

「はい。ですが、それは魔物もなのでしょうか? それは多分違うと思います。まず魔物と人間は身体の作りが違うのでしょう。ですから、レコンは急に魔力が増えたことによりそれに適応する様に体が進化したと考えます」

「ちょっと待て。なら、身体が大きくなってもいいのではないか? ロロは二年程でこの大きさになったのなら、魔物はすぐに大きくなるのであろう」


 皇帝が僕の考えた通りの結論を出すが、それは僕の地球での知識が否定した。


「そうですが、その進化や適応が必ずしもいい方向へ働くとは限りません。僕達は長時間海に潜れませんし、魚は陸上で生活できません。ゴブリンも進化すると体が大きくなり知性が付きますが、ゴブリンのように細かい作業が出来るとは思えません」


 退化という言葉は使わないようにしておく。

 人間が劣るという意味に取られかねないからだ。


「それに成長が止まったのは身体を護るためだったからかもしれません」

「身体を護るため……」

「幼少の時にいきなり大きく成長すると何が起きるか分かりません。人間は食べて寝る、を繰り返すことで体が徐々に大きくなります。魔物はその動きが顕著ですが、一応食べて寝ることで大きくなります。それこそ魔物は僕達以上に身の危険な場所で生まれますからすぐに大きくなるのでしょう」


 人間は周りの者や建物などに護られて生まれる。

 だが、魔物は大自然の中に生まれ、母親も殺されるような魔物が横行する世界だ。そのために成長が早くなってもおかしくなく、馬などの動物は人間と違い数か月もあれば普通に走れるようになる。

 それこそその場で動けなかったら死ぬからだろう。


「魔力が急激に増えたことにより、身体が高まった魔力をどうにかしようと力を貸すとします。そうすると成長するための力が失われ、身体が成長しなくなります。そして、魔力は日々増えますから、更にそちらに力が持っていかれ、今のように成長阻害と魔力を抑えるために力を使っている状態なのでしょう。動かないのもこれ以上体力や力を使うと魔力が暴れてしまうのかもしれません」


 その辺りは魔力過多症と同じだ。

 魔力過多症は先も言ったけど、魔力が多すぎる現象を言う。

 だから、これも魔力過多症と言ってもいいのかもしれない。

 まあ、魔物特有と付くかもしれないけど。


「むぅ……なんとなくわかった。では、どのようにしてやるのが一番いい?」


 どうにか理解してくれたのか、皇帝は結果だけを求めて来た。

 そう考えるとあまり理解されていないのかも……。

 後で文章にしておくか。

 他にも事例がありそうだ。


「僕の結論から言うと魔力を減らせばどうにかなるのではないでしょうか? 元々この辺りで優雅に暮らしているため、野生のシルバータイガーと違い魔力を使うことが少なかったでしょう。それがまず原因ですね。それとあの果物も先ほど魔力が回復すると言われましたが、恐らくしっかりと調べた方がいいでしょう。あと、魔力をあまり使わない高ランクの魔物はあまり聞いたことがありません」

「確かにそうだな。それが原因やったかもしれぬ。何度か狩りに行かせるべきだったな」


 皇帝もわかってくれて何よりだ。

 太っていないところを見ると散歩はしていたようだけど、やっぱり虎とすると狩りに出かけさせた方が良いだろう。

 まあ、他にも原因があると思うけど。


「では、どうやって魔力を減らしますか? この辺りで発散させてもいいですが、この容体ではとてもじゃありませんが……」


 レムエストル殿下が難しい顔で搾り出す。

 そこは僕も迷ったけど、別に使わなくても吸収させるような魔道具を創ればいいだろう。

 幸いあの時の空魔石がある。

 それにホワイトタイガーの魔力を入れさせればいいだろう。


 僕はそうと決めると空間に入れておいた掌大の空の魔石と金属のインゴットを取り出し、背中を向けて作業を見えないようにしてから加工していく。

 流石に魔力の波動で気付かれるが覗き込むとういうようなことはしないだろう。

 金属に魔力を纏わせて形を変え、空の魔石へ魔力を送るように魔力吸収用の魔方陣と限界が来たら吸収を止めるように刻印し、反対側にその速度調節用の魔方陣と逆にレコンの魔力が枯渇しないように三分の一になったら止まるように刻印する。最後にこの魔力をレコンだけが使えるようにする。

 これは少しアレンジしているけど、僕とフィノが付けている魔力過剰分を吸収してくれるイヤリングと同じものだ。

 おお、人間は器以上の魔力は排出しているようだ。


「よし、このネックレスを付けて頂ければ勝手にレコンの体内の魔力を吸収してくれます」

「今作ったのか? いや、詮索は止そう。で、どういった物なのだ?」


 流石皇帝だ。

 そして、レムエストル殿下は魔道具に興味があるようだ。


「簡単に言いうとこれはレコン専用の魔道具です。レコンの体内にある魔力を自動で吸収し、この填め込まれた空の魔石に溜めこみます。レコンしか使えないようにしている魔道具ですが、空の魔石が規定量を溜めこむと自動で外れるようになっていますから、その魔石は普通に使えるので安心してください」

「何やら凄まじい魔道具ですね。あの一瞬でどうやって作ったのやら……」

「あはは……。で、過剰分を吸収するものではないので、安全を規するためにレコンの魔力量が三割を切った時点で吸収を止め、七割まで回復した時点でまた吸収し始めます。あと、いきなり吸収してしまうとレコンの身体に悪いため、確認した時に少し魔力を弄り回復速度を確かめました。その倍ほどの速度で吸収すると思いますから、それでも体調が悪くなりそうな場合教えてください」


 まあ、多分大丈夫だと思うけどね。


「ああ、あと、このネックレスに魔石を填め込んでおけば、レコンだけは自分が入れた魔石から魔力を取り出し使うことが出来ます」


 僕はそこで息を吐き、これなら多分大丈夫だと笑いかけるが、何やら皇帝達は引き攣った笑みを浮かべている。

 フィノ達の方を向くと「さすがシュン君だね」と笑顔を浮かべているフィノと、その背後で頭を抱えているフローリアさんがいた。

 今ならわかるけど、どうやら僕はやり過ぎたようだ。

 だけど、後悔はしていない。

 多分悪用は出来ないだろうし、魔方陣は繊細で細かいから真似しても恐らく粗悪品すら作れない方が高い。

 だから、大丈夫だと思うね。

 逆にこれを魔法として使えるようになったら、かなりの天才だと思う。

 だって、今さっき作った魔法だけど古代技術の塊だよ? それを解読されたら僕の立つ瀬がないもの。


「……シュン殿。よく分かっておられない様子なので進言させていただきますが、これは確実に国宝級です。いえ、それ以上だと言っても過言ではありませんよ?」


 魔道具に詳しいレムエストル殿下が僕にネックレスを見せながら、真剣な表情で僕に言う。

 そんなことを言われても僕はちょっとわかんないかなぁ?

 まず国宝級というのがよくわからない。

 いや、聖剣とか、勇者が着ていた鎧とかは国宝級なんだろうけど、たかが魔力を吸収して保管し、再利用できる魔道具が国宝級になるのだろうか?

 まあ、『刻印』という古代の技術が入っているからそれなりだろうけど、昔なら作れてたってことだよね。

 まあ、魔力の関係もあるんだけどさ。

 それに僕とフィノが付けている魔道具も国宝級にならない?


「そうなのですか? でも、魔力を吸収して再利用できるだけですよ? 世界には似たような魔道具が中級の迷宮で手に入りますし……」

「え? そうなの? 行ってみたいが無理か……。ではなくてですね? まず、あの一瞬で作れたのは何かしらの技術だと考えます。私が知らないということはシュン殿しか使えないと考えてもいいかもしれません」


 おお、かなりの自負だな。

 まあ、師匠も使えない確率が高いそうだからまあ、そうだろうね。


「そして、普通の国宝はいろいろな物がありますが、このように最低でも四つは魔法が組み込まれている魔道具は存在しません。いい例で言うと王都を包める大結界は結界のみですし、戦略級魔道具も一発限り、武器や防具に関して言いますと、持ち主を認めることで触れられる聖剣や魔法を跳ね返す聖なる鎧等です」

「そうだったのですか。これもそれに入るのですか?」

「ええ、入ります。王国ではどうなのか知りませんが、これだけの魔法が組み込まれた魔道具はまずこの世に数えるほどしかありません。それだけでも価値が高く、知らない技術で作られたことでさらに価値が上がり、国の象徴であるレコンのみに送られたことでさらに上がります。そして、レコンしか装備できない専用魔道具であることによりそれは跳ね上がります」


 お、おお、そう訊いたら僕も国宝と納得した。

 だけど、それをしないとレコンが死んじゃうし、仕方ない。

 しかも作っちゃったからさ、フィノも喜んでくれてるから大丈夫。

 何かあれば僕が責任を持って破壊するから。


「でも、それがないとレコンは多分治らないと思いますから、どうぞ収めてください。もしかしたら原因は違うかもしれませんし、今日の所はまずそれで様子を見てください」

「まだわかっていませんか……。ええー、フローリアで良かったか?」

「はい」

「分かっていると思うが、シュン殿には良く教えておいていただきたい。常識はあるようだが、一部欠落しているのか、それとも自分の評価が低いのか分からないがこのままでは危うい。もしかするとすでに危険な物を作り出している可能性がある。そういったものがあった場合、国宝として厳重に扱うかシュン殿に目の前で破壊してしまわれた方が良いだろう」


 し、失礼な!

 僕だって一応分かっているはず。

 でも、レムエストル殿下が言うこともなんとなくわかる。

 まだ納得はいかないけど、僕が知っている魔道具と比べてみると確かに高性能だ。

 気安く作る物じゃなかったな。

 今度から確認を取ってから作るとしよう。

 あと、それが国宝級になるのなら、欠損を治す回復薬はどうなるんだ? 味付きの回復薬もあったな。僕とフィノの服もそうだけど、フォロンやツェルにあげた服はどうだろう? でも二人は何も言わなかったしなぁ。 状態異常を治す奴は大丈夫だろうけど、能力を上げる飲み物はどうだろうか?

 でも、そういうのは劣化するから国宝にするのもちょっと……収納袋に入れておけばいいのか。

 それに魔物騒動の時の素材も国宝になったりして……。


「どうやら聞き出した方が良いものがあるようです。こちらはシュン様を尋問もとい、調査を行いますので、レコン様の容体については後日改めて、ということでどうでしょうか?」


 え? もしかして僕呟いてた?

 それにしても尋問かぁ。


「ああ、よろしく頼む。――シュン殿、今度から何か作る時は誰かに相談されたうえで行われた方がよろしい。言いたくはないがシュン殿は一人で国を落とせます」

「そんな馬鹿な……。あ、いえ、心しておきます」

「はい、くれぐれもよろしくお願いします。それと、この魔道具は首に掛ければ効果があるのですか?」

「はい、首に掛ければ自動で吸収すると思います。あと、盗まれないようにしますか?」

「いえ、それはこちらでしましょう」


 真剣にやめてほしそうに言われたのでやめておこう。

 まあ、ロロにも同じ奴を付けてあげたいし、ロロ用の武装も考えないと邪神との決戦時に困るかもしれない。

 ロロに跨って戦う僕かぁ。あまりかっこよくないな。

 僕、小っちゃいし。


「ふぅ~……。いろいろとあったが、原因らしい原因が分かったのは助かった。シュン殿には感謝をしても尽くせぬよ。もし、何かあれば協力することを誓おう」

「ええ、それほどの価値があります。これで成功していればいいですが……」

「まあ、失敗してもまた調べれば何かわかるかもしれません。一応経過観察、ということでお願いします」

「はい。シュン殿もお気を付けください」


 僕はフローリアさんに連れられてフィノと共に退室した。

 部屋に戻った後はフローリアさんから王国の国宝の基準を教えてもらい、収納袋と空間に死蔵していた物を取りだした。

 僕が考えていた通り国宝級らしいが、流石にそこまではいかない可能性が高いとのこと。

 それでも、僕の持っている素材や剣はフィノが言う限りでは義父さん公認の国宝であり、効果をしっかりと教えた結果伝説級と言われた。

 そんなものを僕は振り回していたのか……。さすがにこれには内部に刻印を刻み、僕以外の人に使えないように施して、悪用できないように今度会ったときロトルさん達に相談しよう。


 その後はげっそりとしたフローリアさんに軽い説教を受け、何か作る時はフィノ以外に相談することと、その製作品の説明書などを提出することになった。


あの時に出したいろいろな物を回収しました。

フラグ……ではないですけど、国宝になっちゃいました。


あとですねぇ、ロロを出そうと思い無理やり召喚獣の話を作ったのをぶっちゃけます。

なので、無理矢理感のあるレコンの病気? だったかもしれません。

話の筋は……合って、ますよね?

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