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呪い

スランプに入ってしまいました……。

出来る限り書いていきますが今回のように文字数が少なくなります。

頭が回らず内容がおかしくなっているかもしれません。

書き方もわからなくなってきたのでおかしな点はご指摘ください。

『フィノ、シュン! 国王……父上と母上が倒られ、現在意識不明の重体だ!』


 僕とフィノの脳内に響き渡った焦りと不安が乗った義兄さんの声。

 思わず席を立ちそうになるがどうにか留まり、突然と内容に驚き口元を覆っているフィノと視線を交して続きを聞く。


『義兄さん、シュンです。詳しく教えてください』


 混乱しているフィノに変わって僕が応答する。

 見えない行動は分からないが、声からいろいろな感情が伝わってくる。


 意識不明だといったが一体どういうことだ?

 一体何が?

 場合によっては帰らなければ……。


『シュンか! シュン、今の時間帯ならまだ学校だな!?』


 義兄さんの確信めいた焦っている声が届く。


『はい。今は授業中です。ですが構いません。隣でフィノも聞いています』

『そうか。先日、執務中に父上が急にお倒れになった。そして、その後を追うかのように看護に付き添っていた母上までもが倒られた』


 焦っていた声が冷静になっていくが不安と心配の色が濃くなっていく。

 こちらも何が起きたのかまだわからず不安と混乱が続く。


『病気ですか?』


 病気なら回復魔法でどうにかなるだろう。

 一応病気ならば『診察』で判断が可能で、治すことは無理でも『キュア・メディスン』で進行を遅らせることはできる。

 その間に体力を付けさせ治療に当たれるが、意識不明となると話が変わってくる。


『分からない』

『分からないのですか? 発熱、嘔吐、頭痛に腹痛、喉の腫れ、発汗……』

『いや、全てわからない。王宮の医師達の話では病気ではないかもしれない、と判断された』


 病気ではない?


 フィノが心配そうに僕の手を取る。

 授業中のウォーレン先生も僕達の様子がおかしいことに気付きこちらを向くが、目で続けておいてくれと促し後で説明するために目礼しておく。


『父上と母上の容体は同じだ。死んだかのように眠りに就き、時々生き返ったかのように苦しみ出す』


 眠りに就いたまま……。

 普段は大人しく、突然苦しみだす……。

 身体はいたって健康……。


 と、なると……あれしかないか……。


『呪い、ですか?』


 僕がそう訊ねると隣でフィノが息を飲み、義兄さんから同意の意見が出て来た。


『ああ、医師達も呪いだと言っていた。俺もそう思っているが、解呪できない。高位の回復魔法使いに頼ってみたが魔法が弾かれ、効果がなかった……』


 義兄さんの語尾が下がり不安が出てくる。


『容体は大丈夫ですか?』

『今のところは問題ないそうだ。苦しむ以外には何ともないが、苦しみ方が異常だ。……シュン、お前の魔法でどうにかできないか?』


 やはりそれを聞いてきたか……。

 だけど、さすがに解呪魔法までは手を出していない。

 近くに呪いをかけるような人もかかる人もいなかったし、かかった人も見たことがない。

 呪いになんてこの世界にあったのか、というのが僕の心境だ。


 フィノは……これは帰った方がいいな。


『分かりました。すぐそちらに帰ります。それまでに呪いに関する本か何か全て集めてください。童話でも何でもいいです』

『わかった。すぐに取り掛かる。では』

『はい』


 念話を終了させるとフィノの手を取り、ウォーレン先生の元へ向かう。

 背後ではただならぬ雰囲気が出ていたのかアルとシャルが心配そうにしていた。席が離れているレンとクラーラも同様だ。


「どうした?」

「実は……」


 僕は皆に聞こえないように耳打ちする。

 簡単に義父さんと義母さんが原因不明の重体だということと通信の魔道具によって届いた、と言った。

 するとウォーレン先生は顔つきを変え、少し考えると一つ大きく頷いた。


「学園長に伝えてから行け。後のことはこちらでどうにかするから心配するな」

「わかりました」


 騒がしくなる教室を飛び出るように出て行く僕とフィノ。

 廊下を走り、フィノにフォロンとツェルを呼ぶようにお願いし、僕はノール学園長の元へ向かう。


 何度と訪れている場所のためスムーズにノックをし、返事を待って中に入る。


「あれ? シュン君じゃないか。今授業中だよね」


 僕はそのままその言葉を無視し、学園長の元まで向かうと隣の秘書の教師に聞こえないように話す。


「義父さんと義母さんが倒れたそうです。どうやら病気ではなく、呪いのようなのでフィノを連れて一度帰らせてもらいたいのですが……」


 そう訊ねるとノール学園長はにこやかに笑っていた表情を引き締め、目の色を変えて立ち上がると近くの本棚を漁り始め、一冊の本を取り手渡してきた。


「この本は解呪の本じゃないけど、呪術に関する本だよ。中には禁術に近い魔法もある」


 何でそんなものが学園にあるんだ……。

 まさか、過去にそんな研究をした人がいるとか?


「この本は絶対に人には見せないように。それだけ呪術は危険であり、使うことを忌避されるものだからね。知らない者に持っているのがばれれば……」

「わかりました」


 僕は本を受け取り収納袋の中に仕舞う。

 なくなっては困るから後で空間の方に仕舞い直しておこう。


「それと一応休学扱いにしておくから医師の診察書を今度来る時に持ってくること」

「わかりました」

「呪いは危険だ。だけど、殺せるような呪いは相手が限られている。まずは呪いを掛けそうな者を探しなさい」

「はい。では、失礼します」


 僕は学園長室から出ると魔力感知でフィノ達の場所を確認し、時空魔法の転移を使って移動する。


 転移した場所は昇降口辺りだった。

 すぐに三人に声をかけて手を繋ぎ、そのまま目を瞑って王城の一室、人がいないであろうフィノの部屋を選ぶ。


 嵐が吹き荒れるかのように噴き出した魔力を操作し、僕達四人を包み込むとそのままイメージした場所へ転移する。


「『我らの場所を移せ! 転移』」


 辺りが白い光に包まれ、光は徐々に強くなっていき、一際大きく光ると膨大な魔力が迸り、昇降口から強風が入り込むと奥に咲く花を吹き飛ばした。


 光が消え残ったのは魔力の残滓と吹き荒れる風のみだった。






 徐々に光が収まり瞑っていた目を開けるとそこは想像した通りフィノの部屋だった。

 三人は初めての転移に少し酔っているようで全体に酔い覚ましの魔法を掛け、急いで近くにいるであろうメイドか兵士に声をかける。


 僕ではまだ信用が足りないのでここからはフィノが先頭を進む。


 部屋から蹴破るように外へ出ると丁度目の前を通り過ぎようとしていたメイドとかち合った。

 メイドは主人がいないはずの部屋から出て来た僕達に驚き、手に持っていた洗濯物を落としそうになるが持ち直し、目の前のフィノに気付いて慌ただしく頭を下げる。


「お父様とお母様の場所は!?」

「は、はい! すぐにご案内します」


 メイドは近くの別のメイドに洗濯物を手渡すと僕達の先頭に立って状況を理解できないまま案内していく。


 連れて行かれた場所は義父さんと義母さんが寝る寝室ではなく、数部屋離れた休憩室のよう場所だった。


「失礼します! フィノリア王女殿下、並びにシュン様が御帰りになられました!」


 ノックをして中にいる人に声を届けると中から返事もせずに義兄さんが飛び出してきた。

 僕は足音で気づき、メイドの手を引いてドアにぶつかるのを防ぐとお礼を言ってきたので簡単に頭を下げてフィノに続き中へ入っていく。


「フォロンとツェルは……一応部屋の中で誰も入ってこないように見張っておいて」

「「かしこまりました」」


 外で待機させないのは二人のことを知らせていないからだ。

 不審者扱いされても困るからね。


「フィノ! シュン!」


 少しやつれたような顔つきになっている義兄さんが僕達の手を取り、義父さんと義母さんの容体を説明していく。


「少し前に苦しみだしたが今のところは落ち着いておられる」


 少し安堵する僕とフィノだが、顔を覗いてみると確かに死んだように眠りに就いている。

 息もしっかりし、体温も少し低いが寝ているので仕方なく、心臓も脈もしっかり動いている。

 まだ健康そうだが呪いによってはこの容体も急激に変わるかもしれない。

 早く解呪について調べよう。


「苦しみ方はどんな感じですか?」


 僕は二人の容体を前世の知識から人体の仕組みを基準に調べ、病気の箇所がないか簡単な魔法を使って調べるが特に異常はないようだ。


「悪夢に魘されるような感じだ。掻き毟ることはないが、苦しさに唸り、冷たい汗を掻いていたはずだ」

「呪いについてどこまで分かりましたか?」

「恐らく相手は集団ではないことと、父上と母上に相当怨みがある者だろうというのが今のところ分かっていることだ」


 義兄さんはやつれた顔を歪めてそう言う。


「とりあえず僕は呪いに関して調べます。義兄さんとフィノは精神を落ち着かせる魔法を掛けながら容体に変化があれば呼んでください」

「わかった。資料に関しては隣の部屋に置いている。頼んだぞ」

「……シュン君」

「わかっているよ。僕が治して見せるから今は、義父さんと義母さんの傍にいてあげて。呪いは感情によるものだろうから手を握って呼びかけてあげるんだよ」


 僕は今にも泣きそうなフィノの頭を撫でて優しく出来ることを伝える。

 呪いは特殊な魔法に分類されるはずだ。


 通常の魔法は相手がいなくとも使えるが、呪いに関してはまず対象者がいなければ行えないはずだ。

 それ以外にもいろいろとあるだろうから早く調べに行こう。




 僕は一緒にいた解呪の出来る人と、呪術について研究しているという人物と共に、資料を置いているという別室へ向かった。


 部屋の中は薄暗く蝋燭と明かりの魔道具で照らされている。

 テーブルの上には数十冊の図鑑の様な本と同じくらいの童話、巻物等が所狭しと置かれていた。


「まず、呪いに付いて簡単に説明してください」


 僕はこの部屋にいた数人を集め、収納袋から紙とペンを取り出し、皆を席に座らせると呪いについて訊ねていく。


 五人ほどいるのだが、僕のことを聞いているようで不思議に思うことなく皆話し始めた。


「まず、呪いとは対象者と使用者の最低二名がいて初めて成り立つものとなります」

「中には道具や食べ物に呪いをかけ、それを対象者に媒体として呪いをかける物もありますが、今回は可能性が少ないと思われます」

「どうしてですか?」


 僕は書いていたペンを留めて訊ねる。


「まず、国王様と王妃様が食べられるものは厳重に検査・審査がされます。その中には毒物以外にもいろいろと行われるのです」

「呪いがかかっている物は微量の魔力を発します。その魔力は魔法に精通している者、特に魔力感知を使える者は分かるでしょう」

「となると外部という可能性は低くなりますね。城の出入りの禁止は?」

「現在厳重な検査と審査をした上で出入りを行っていますが、一部を除き現在は禁止しております」

「ならいいでしょう。では、呪いに付いて続きをお願いします」


 僕は再びペンを取り色々と書き足す。


「呪いは対象者に対する憎悪が高ければ高いほど効果を発揮し、相手の命を蝕んでいきます」

「国王様方が倒られになって一週間ほどが経とうとしておりますが、一度も目が覚めておられない。相当怨みを持たれている者が呪いを使っていると思います」


 ふむ……。

 呪いというのはやはり感情によって決まるものだ。


「だけど、かける側もその代償があるのではないですか?」

「はい。呪いの種類によりますが使用者は生気を吸い取られるでしょう。他にも高額な媒体や他人の魂、大切な物や人、生血や体の一部等を捧げることで更なる効果を発揮します」

「そうなると……呪いの解呪方法は? 使用者を倒せばいいのですか?」

「いえ、場合によってはそれでも解呪出来ますが、此処まで強力だとすると倒した瞬間に道ずれにされる可能性もあります」


 それは少しきついな……。

 僕も大体わかるから皆、犯人に目星はついているのだろうが、呪いをかける者は精神状態がまともではない者がほとんどだろう。

 追い詰めると犯人が何をするか分からないというのと同じで、呪いをかけたものも同じような行動を取るはずだ。


 解呪なら呪いそのものを弾き飛ばす、消すわけだから大丈夫。

 電話の回線を切るのと同じだろう。

 ならイメージとしては使用者と繋がっている呪いという名の回線を途中で切るという感じでいいだろう。

 だが、それを切って目が覚めるかが分からない。

 もしかするとそのまま昏睡状態に入ってしまうかもしれない。


「呪いに失敗した場合は? 跳ね返るのですか?」

「はい、跳ね返ります。他にもいろいろとあるそうです」


 そのあたりに関してはノール学園長に貸してもらった呪いに関しての本を読むとしよう。


「解呪の仕方はどうですか? 僕は呪いに携わったことがないため手順を教えてください」

「解呪には回復魔法に似たところがあります。まず対象者の呪いの種類について大まかに定め、その呪いに関する祝詞を唱えます」


 呪いに対して祝福を与えるということか。

 打ち消すという考えに基づくんだな。


「今回の場合は昏睡状態、悪夢、発汗から『ナイトメア』と呼ばれる闇魔法に近い呪いが使われたのではないかと思いました」

「『ナイトメア』か……」


 『ナイトメア』は相手を眠らせ、悪夢や一番恐ろしい物や嫌いな物等を見せ続ける魔法だ。

 だが、この魔法は呪いではない為魔力を打ち消せば目が覚め、今回のように一週間も目が覚めないということはあり得ない。

 使っている間は魔力を消費し続けるからだ。


「犯人の目星は付いていますね?」

「はい、今第一王子様が指揮を取られ、監視と調査を行っています。ですが、今のところそれらしい行動を起こしていません」

「まあ、いいでしょう。犯人に間違いはないと思います。呪いに飛距離は関係しますか?」

「そこまで関係はしないでしょうが、さすがに百キロも離れれば効果はなくなると思います。また、場所に関しても同様です」


 だから義父さんと義母さんは寝室にいなかったのだろう。


 仕組みと解呪、犯人についても目星が付き、呪いについても大体わかった。

 あとは魔法に関して調べていくだけだな。


「……分かりました。皆さんは義父さん達の元へ戻り、呪いの進行を抑えることに努めてください。僕は今から解呪の魔法を組み立てます」


 そう言うと共に僕はその場から離れ、隅の空間でノース学園長から借りた本を開き読み漁る。

 後ろでは簡単に魔法を作るといった僕に驚いている気配がするが、今はそれに取り合っている暇はないので無視するしかない。

 この魔法は多分公開することになるだろう。

 詠唱についても考えておかなければ……。




 まず調べた結果、呪いとは憎悪などの負の感情を燃料に微量の魔力を使ってかける特殊な魔法のこと言う。中には相手の物を使って使うこともあるが、失敗しやすく間違えれば返って来るのでされないそうだ。

 呪いには何種類かあるが、今回の場合半永久的に呪いがかかる仕組みとなっている。


 その対処として呪いの回線を切ることだ。

 これで使用者の呪いを対象者に届かないようにする。


 だが、それだけでは再び呪いにかかってしまうので、呪いを返す、若しくは結界の様な物を張って保護する。

 多分後者の方がいいだろう。

 前者の場合、相手を死に至らしめる可能性もあり、犯人から事情徴収するので返すわけにはいかないだろう。


 次に解呪方法だけど、これは回線を切る以外にもいろいろと加えなければならない。


 さっき言った結界。

 これは通常の結界ではなく、呪い除けの結界とでもいうか隠蔽効果のある結界を少し変えることになるだろう。


 次に目を覚まさせる。

 これは体の中にある呪いを直接消し去るほかない。

 『ナイトメア』に似ているということから、光魔法を使うのがいいだろう。

 義父さん達が見ている物を悪夢と仮定すると、光魔法の幻術を使い自身が一番愛している物や人、好きなこと等を見せればいいだろう。

 それだけでも呪いから抜け出せるかもしれない。


 他は跳ね返った呪いの対処だが、呪い自体の回線に受け流しながら干渉し、呪い自体を他の物と入れ替えるという方法が取れるかもしれない。

 だが、これにはどのような呪いの掛け方をしているのかで変わることだ。


 童話のように姫に魔王が眠りに就く呪いを掛けた。

 口付けで起きるのだが、これは呪いをかけて終了の放置型と名付け、姫の待ち人というキーワードで解決だからすり替えることは不可能だ。

 だが、これには呪いが跳ね返るということもないだろうからそのまま解呪しても良い。


 自身と繋がっている呪いで、今回の可能性が一番高いものの場合。

 通常は呪いを解き跳ね返ることで犯人を特定するのだが、此処まで酷い呪いは初めてのことで対処に困っている。

 すり替えるには対象にかかっている呪いを一度切り、受け流しながら呪いを対象者に似せた物にすり替えるのがいいだろう。

 問題は呪いがどのような対象となっているかだ。


 相手の髪が媒体ならば人形などに髪を刺し、似せて作っていけばいいだろう。

 だが、犯人にそのような行動が見られないということは恐らく感情、憎悪などによる負の感情が媒体となっているのだろう。

 その場合は使用者の方をどうにかするしかないだろう。


 それに関しては皆で話し合うか……。




 数時間かけて呪いに関して調べ終わるとまず皆の元へ戻った。

 疲れ切っているが僕の報告を聞くとそれなら大丈夫だろうという結論になり、犯人に対して罠を仕掛けることにした。


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