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合宿と緊急通信

今回は少し少ないです。

切れが良かったもので……。

 決闘騒ぎが起きてからひと月の月日が流れ、七月となりそろそろ暑くなり始める時期だ。


 その決闘は今でも噂されるほど話が続いており、恐らく僕達が卒業してからも語られる逸話となるだろう。


 内容は皇子の馬鹿さ加減を表すもので、同じような輩が出て来ないようにするものだった。


 そして、その噂よりも急速に広がり、女子生徒は黄色い声と甘い吐息のような息を突如付き、男子生徒は嫉妬の念を向けながらも諦めたような溜め息を吐く、僕とフィノの婚約の噂だ。


 この噂は止まる事を知らず、学園以外にも広がりつつあるようだ。

 先日フィノと一緒に買い物中温かい目を向ける人が多くいたからだ。

 あれは絶対に気のせいじゃなかった……。

 フィノも顔を少し赤らめてたし……。


 まあ、噂に関しては僕達の悪い方向には進んでいないし、二か月間で皆僕の性格を知ってもらえたようで怒らせなければ基本的に優しいと言うのが定着しているそうだ。

 まあ、そうなんだろうけど……納得しがたい。

 僕だって起こる時は怒っているはず……。


 それからカイゼル君と皇子達の処罰が決まった。

 カイゼル君は二週間の謹慎と無期限奉仕が義務付けられた。

 謹慎に関して短いのはカイゼル君が皇子と違い実力行使には出ていないからだ。

 また、生徒達と僕に対する謝罪も行い、許されているためそれを学園が無理やり罰を与えるのもどうかと考え、一番迷惑を被った僕にその判断でいいかと聞かれたので了承しておいた。

 その代わり教師の過半数が許可を出すまで学園で掃除や物資の運搬などの奉仕活動を行わなければならない。


 他にも授業中以外での魔法使用の禁止、二年になるまで大会と決闘の出場禁止(試合は行ってもいいようだ)、いろいろと決められているそうだ。

 それでも僕に負け、認めたことで元々偏見を持っているわけではないそうなので快く受け入れ、現在無期限奉仕はなくなっている。

 授業態度が良かったのもあるのだろう。


 皇子達に関しては退学処分となった。

 まず、皇子は皇帝から学園に対して謝罪が届き、喚こうが退学処分と処し、帝国に帰国後皇帝から怒られ、縁をほぼ切られた状態で暮らすのも苦しい、常に魔物や蛮族が攻めてくる最前線の僻地へ送られた。

 そこは完全実力主義で帝国の中でも荒くれ者や貴族に対して反論し飛ばされた者、実力持ちだが平民でやっかみがられ飛ばされた者が詰めている砦だ。

 そこには皇子のことを知らない人物が多くおり、貴族などの階級も意味をなさず、皇子に仲間はいない孤立同然の場所なのだ。


 だが、死なすなというお達しがあるようで死ぬぎりぎりまで絞り上げられているそうだ。

 これは親心からではなく、死なれても困るというものだろう。


 取り巻き達も帝国に関わっている者は皇子のいない最前線である僻地へ飛ばされ、親にもその教育に関しての処罰が言い渡された。

 事情聴取があり、親も何かしらの加担があった場合取り潰しが決定されたそうだ。

 加担がなかった場合は厳重注意と廃嫡を視野に入れろと言う言葉が出たそうだ。


 皇帝も親なので退位を考えているそうだ。

 歳は義父さんよりも上らしく五十を超えるので早い退位ではない。

 だが、今回の騒ぎに決着がつくまでは皇帝で居続けるようだ。


 また、帝国ではない元生徒達は退学処分とその国の王にノール学園長からの経緯が書かれた手紙が届き、厳重に処罰をすることになった。

 他の国からするととばっちりだが、これをきっかけに帝国と王国が戦争を始めれば巻き込まれる可能性があったのだ。

 僕のことは伝えられていないが噂が広がり始め、今後どのような展開になるのか分からない。




 七月となり、久しぶりに夏の暑さを感じるこの頃。

 この一か月で僕の生活はがらりと変わった。


 毎日のようにいろいろな人が僕を訊ねては魔法に関してのアドバイスをしてくれと言って来るのだ。

 その中には教師も含まれており、それでいいのか? と考えてしまう。


 まあ、教師は半分が平民や元冒険者らしく、貴族の教師もいるにはいるが変わり者が多いそうだ。

 学園は権力が効かない場所なので、肩書を持っていてもあまり効果を示さないということなのだろう。


 まあ、人繋ぎが出来るがそれでも自国の人間でなければ引き抜きは出来ず、貴族として人に教えるということをしたくないのかもしれない。


 変わり者というのは研究者タイプだったり、国民主義というか平民に偏見を持っていなかったり、教えるのが好きだったりといった感じだ。


 勿論プライドの高い貴族の教師もいるが、皇子の事件もあり緩んでいた学園に向上心が出てきたので焦っているそうだ。


 まあ、分かるように教師達にも面子というものがあり、数人の生徒に実力を抜かされるのは毎年のことなのでいいだろうが、今のままで行くと半数以上に抜かれてしまうと危惧したのだ。


 いくらプライドが高くとも生徒に後れを取るわけにはいかん、と生徒に教わるプライドを捨てたそうだ。

 まあ、お前が行くから(付き添い)、見学や様子見等を名目で来ているのだけど、一番質問してくるのがそういった教師や生徒達だ。

 素直じゃないね。


 まあ、僕としても教えるのは楽しいし、教えた人が上達すれば僕も嬉しい。

 最近はフィノも女子生徒に教えられるようになり、楽になってきていた。


 そして、なぜか知らないが、僕は魔法授業の補佐をしている。


 決闘が終わって一週間ほど経ってから職員会議が行われ、僕に対しての議題が上がったそうだ。


 なんでも、教えることがないように見える、だそうだ。


 僕としては魔法を独自に使ってきたから結構新しいことを学べているんだけど、教師から見たら僕は違うのだろう。


 学園長室に呼ばれ、一週間に一回でいいから授業で教えてやってくれないか、と聞かれた。


 そりゃあおかしいと思うけど、理由を聞けばまあ、納得しないこともなかった。

 それに最近放課後や休日がほぼ潰れ、フィノ達と遊ぶということが出来ずにいた。


 授業を受け持てばその分気休めかもしれないが減るな、と考え、条件を付けて受け持つことにした。


 条件はいくつかあり、まず僕が教えるのは攻撃魔法ではないこと。

 これは力を持って他者に使われないようにするためだ。

 後過信もさせないようにするためでもある。

 まあ、僕の怒りを見て怒らせないようにという噂がある様なので、僕の言うことは大概聞いてくれる。


 次に僕の授業は単位に関わり合いがないこと。

 これは僕が生徒に単位を付けられないからだ。

 その代わり、僕が出す課題を合格すれば魔法の点数が貰えるようになっている。


 他にも教師ではないので責任は持たない、悪用したのが見つかれば学園が処罰をする、教えたことは書き取り今後も学園で教えていくことだ。


 授業内容は魔法に関してで、あまり役に立たないことも教えている。


「今日は魔法の造形について教えます」


 とかだ。


 魔法の造形というと僕が作った火の竜、水の龍、土の人形等だ。

 これらは高等なテクニックなため、詠唱をすればある程度の補助はしてくれるだろうが、見れるものになるかは技量次第だ。


 フィノも最近は魔法の形をかけることに興味を見出し、得意な火を使って形を変えて頑張っている。


 僕の目の前ではこの日のために態々ほとんどの生徒が受けられるように授業を変え、魔法関係の教師も出てきている。


 そんなことしていいんかい! と突っ込みたくなるが、あの学園長なので仕方ない。


「造形というのは形を変えるということですか? かなり難しいと思えるのですが……」


 目の前の女子生徒が手を上げて聞いてきた。

 僕はその女性を見て頷くと実際に水の魔法を使って説明する。


「このように水を普通に出せば球体となります」


 そうなのだ。

 ただ単に水を作り出すと球体状の水が出てくる。

 普通はスライムみたいに不形態だったり、湧き水が出るように溢れ出たりしてもいいと思うじゃないか。

 ならどういうことになるのかというと、


「すでに造形をしている、ということになります」


 僕は風魔法を使って皆に聞こえるように話す。

 遠くにいる人にも見えるように大きめの球体を作り出している。

 目の前では実際に水を出し、球体になることに驚いていた。


 まあ、こういうことは言われないと気づかないだろうしね。


「中には球体ではない人がいるでしょう」


 僕がそういうと数人の生徒が顔を上げて頷いた。


「その人達は元々水魔法が得意ではない、魔力操作や制御が苦手、性格によります」


 落ち込むが、こういうことは練習すればどうにでもなる。


「落ち込む必要はありません。何も造形は水だけではないのですから」


 僕は指を鳴らすと火の鳥、土の人形を作り出した。


「見て分かるように始めは土の人形を作ったほうが分かりやすく、人形はあとで加工ができます。上手く作れば売れるかもしれませんよ?」


 僕がそういうと数人の教師が苦笑し、平民でお金に苦しかった生徒は喜びに顔を輝かせるのだった。


「では、まずコツを説明します」


 造形のコツは魔力操作と制御にある。

 これはどんなに下手でも行えるものなのだ。

 球体の水を無意識に作れるのは、魔力が集まろうとした時に球体を作ろうとするからだ。

 放射状に広がるのではなく、出た魔力は切るまで自身のものとして使えるので操りやすくなろうと無意識に固まろうとするのだ。


 これが水が球体になる謎だ。


「まず、皆さんは魔力感知を使えますね? 使えない人はあとで僕の元へ来てください。魔力感知を教えますので」


 すると生徒達は目を輝かせた。

 その中に教師がいるのはなぜだ。


「まず魔力感知が出来る人から説明します。魔力感知が出来るということはある程度操作や制御も出来ると考えますね」


 まず、魔力感知が使える者には目を閉じてもらう。

 そうすることで感知に意識を割き、無用なことに意識をしないでもらうためだ。

 これは目を閉じた方が遠くの音を拾えたり、目を閉じたほうが敏感になるのと同じ効果だ。


 次に手から魔力を放出してもらう。

 まあ、このくらいなら出来るだろう。

 その操作は難しいだろうが……。


 案の定、操作するのは難しく感じているようで声が上がり始めた。


 四苦八苦し始めたので、此処でアドバイスを一つ。


「魔力感知を有効に使ってください。操作しようとするのではなく、頭の中に浮かんでいる魔力の形を動かそうとイメージするのです」


 これはフィノに教えている時に編み出した方法だ。

 これを試しにアル達のも行ってもらうと形を変えることはスムーズに出来た。

 だが、それを竜の形にするなどといったことは難しくてできなかった。


 これは想像力の差が出ているということだろう。


 このアドバイスが効いたのか僕から見ても魔力が変化しているのが分かる。


「では次のステップに移ります。目を閉じた状態で得意な属性に魔力を変換してください。ああ、風は見えないのでやめてくださいね」


 僕がそういうと何人かがクスリと笑い、火や水や土、中には光という属性を持っている者もいた。


「このようにして造形を作っていきます。練習をすれば同じように作れるでしょう。ですが、いきなり本物のようなものは作れません。なので、課題は実物と出来るだけ同じものを作ることにします」


 これでも意味が分からない人がいるようなので試しにやってもらった方がいいだろう。


 絵を描くときに実物がある時と実物がない想像で描くときでは全く完成度が違う。

 この現象も同じで、人形作りに近いところがあり、実物があったほうが造形をしやすいのだ。


「と、言うことになります。最初は果物や武器なんかがいいでしょう。見慣れてますからね。ですが、四角を作って本です、棒を作って杖です、とかはやめてください。造形の最低基準はアプルの実なんかがいいでしょう」


 まあ、それでも意外に難しいのだが……。


 僕はその場をある程度できている教師に任せ、次に魔力感知の出来ない生徒を集めた。


 僕を囲むように円形に座らせた。


「魔力感知とは自身を中心とし、そこからどこに魔力の反応があるのか感知する魔法です」


 この辺りは教科書にも書いてあったのでわかるだろう。


「やり方としては自身を中心に魔力を広げるようにですが、これは難しいのでいい例を見せましょう」


 そう言って僕を中心に水を作り出し、波を整えた。

 生徒達は驚き立ち上がり逃げようとするが、この水は調整しているので濡れるかとはない。

 更にもう一度魔法を使い今度は地面を盛り上げた。


「皆さんは私を中心だと思ってください。地面から隆起しているところが感知対象です」


 僕はそう言って水の中心から飛び上がり、真下に水を落とした。

 すると波紋が生まれ、円形状の波紋は波打ち外へ外へと大きく小さくなりながら進み、感知対象にぶつかり反響する。


 生徒達にその現象を何度も見せる。

 数人の生徒はそれである程度掴めたようだ。


「物を落とす、これを魔力だとするとそれは円形状に広がります。そして、魔力の塊と言う感知対象があると反響し、跳ね返ってきます。そのように感じることで魔力感知は出来るでしょう」


 それでもできない人には何度も同じように説明してわかってもらう。

 これである程度の人が造形の魔法を使えるようになるだろう。


 魔力感知が出来るようになったところで簡易な造形魔法を見せてそれと同じイメージをし、造形をしてもらうということをした。


 このように授業を終わらせると残りは教師に任せ、僕は僕でいろいろな魔法を作っていく。




 放課後になると思っていた通り聞きに来る生徒は減ったのだが、今度は試合を挑んでくる者が後を絶たないのだ。


 僕がAランクの冒険者でも有名な方だとわかると力試しや倒して有名になろうとする生徒がいるのだ。

 こういうのはどこにでもいるので早々に諦めた。


 中には純粋に今の力を試し、アドバイスをくれと言ってくる人もいるので誠意を見せてもらえればしっかり相手をしている。

 相手によってはアル達にも参加をさせているのでいい訓練になっているだろう。


 そして、人によってはあからさまに反則行為などをしてくる人がいるのでお灸を据えた。




 七月に入り、この世界に蝉等の季節の虫がいるのか知らないが、窓の外から涼しい風と共に虫の羽音と鳴き声が響いて聞こえる。


 僕はその音に風情を感じながら、目の前でウォーレン先生が話している今後の日程を聞く。


「あと一週間もすれば合宿がある。目的地はここから東にある山だ。そこには旧校舎があり、そこで合宿をすることになっている」


 東の山と言うとここから十キロほど離れたところにある小さな山だろう。

 その山の布巾は魔物の出現度数とランクが低く、この額戦の生徒でもパーティーを組んでいれば難なく対処できるだろう。


 合宿の内容は例年と違い、いろいろなことをするらしい。


 まず、例年通りすることは合宿の目的である友好を取ることだ。

 この合宿は三学年全ての生徒が向かうため、学年以外の生徒からいろいろと学べるのだ。

 また、この合宿中は試合が良く組まれお互いに切磋琢磨することが義務付けられる。

 恐らく一週間ほど合宿をして十回は試合をしないといけないだろう。


 他にも残りの三日間は夜中にダンスパーティーが開かれ、ダンスをしなければならない。

 貴族は見せつけることと将来のことを考え牽制や婚約者探しをしたり、平民の子はダンス自体をしたことがないだろうから貴族から教わったり見ながらダンスをすることになる。

 これは貴族の見栄っ張りなところを利用した平民と貴族の間を緩和しようとした目論見がある。


 そして、例年と違うのがパーティーを組んでの炊事などだ。

 朝食は出るようなのだが昼食と夕食は出ないようなのだ。

 この山は食料が豊富で一週間ぐらいでは取り尽くせないほどの量が眠っているらしい。

 知識の無い者は予めこの一週間という期間中に調べておくことになり、知識を持った教師が随伴するが聞く度にこの合宿の点数が下がるということになる。


 厳しいが知識も大切なのだ。

 勿論自作でまとめた本やレシピなどを持っていっていいことになっている。

 だが、これは教師から教えられないことなので自分たちで気づかなければならない。

 勿論食材を持っていくことも許可されている。


 まあ、収納袋を持っていないという前提があるのだろう。

 僕としては定番の料理を作りたいのでずるいかもしれないが持っていくよ。

 まあ、上手く出来れば皆に配ってもいいしね。


 後、この料理も採点に入るらしい。


 後はパーティー戦を行いお互いにチームワークを高めたり、夜はキャンプファイアーで盛り上がったり、山の麓から山頂までの競争をしたり(攻撃魔法以外の妨害有)、教師が事前に用意した宝探しなども組み込まれているらしい。


「まあ、このように今年の合宿は盛り沢山だ。去年までは訓練ばかりだったからな。よかったなお前達!」

『はい!』


 訓練ばかりだと聞いた生徒は輝かしい笑顔になり今年入ってよかったと思っているだろう。

 僕が伝えたもの以外にもいろいろと組み込まれているので相当頑張ったのだろうノール学園長は……。


 ちょっと呆れるが、まあ生徒のために尽くしてくれるのならこれほど有難い先生はいない。

 こういう合宿とか初めてだからちょっと楽しみだ。


「シュン君楽しそうね。私も初めてだから楽しみだよ」


 僕の顔は綻んでいたようだ。

 フィノが微笑み、合宿を想像しながらそういった。


「そうだね。僕も初めてだから楽しみだ」


 二人で想像し合い笑うとウォーレン先生が話す。


「パーティーメンバーに関しては今組んでいるパーティーで行ってくれ。多少人数差があるが今回の合宿は強くなることとそのメンバーの絆を深めるためだ。そこを理解するように。あと、点呼も取るからリーダーを決めておいてくれ」


 そういうと同時に授業終了の鐘が鳴り、ウォーレン先生は教材を持って教室の外へ出て行った。

 騒がしくなる教室の中で、僕とフィノは後ろを向き今後のことを話し合う。


「シュン、いろいろと頼むぜ!」

「これで噂のシュン君の料理が食べられるのね」

「そっか、あの昼食は偶にシュンとフィノが作っていたんだったな。想像しただけで食べたくなったぜ」


 アルとシャルは僕とフィノが作る料理が目当てなようだ。

 まあ、料理に関しては自身があるので必ず唸らせる料理を作ってみせる。


「リーダーはシュン君ね。それ以外は考えられないわ」


 シャルの物言いにアルは深く頷き、フィノは当たり前ですと言うように微笑んでいる。

 それを否定することが出来ずに仕方ないと頷くのだった。

 本当ならこういう時は爵位の一番高いフィノがするんじゃないの? と思わないこともないが、僕からすると女の子に任せるわけにはいかず、フィノもいいと言っているので仕方ないだろう。

 クラーラとレンは僕達が貴族というのもあり、リーダーにはならないだろう。

 と言うよりなると思ってすらいないだろう。




 それから放課後となり詳しいことを決めていく。


「まず、必要なものを揃えに行こうか。調理器具とかは最低限準備されていると考えていいと思うけど、調味料とかは持っていた方がいい」


 調理器具なども持っているがさすがに自分だけがそれを使うわけにはいかないので持っていける範囲で持っていくことにする。

 更に食材に関しては収納袋を使うが調味料だけは皆に持ってもらおう。


「あと、山について皆調べること」

「魔物、食材、地形のことね」

「その辺りは冒険者と同じだよ。大事なのは調べたことを覚えるだけでなく紙に書いて持っていくことだ」

「そうですね。忘れてしまったり、同じような食材でも毒物とかありますし、危ないですね」


 レンがその辺りは深く分かっているようなのでメモ帳代わりに閉じた紙を渡した。

 やはり紙に驚く面々だが、僕が作ったという一言になぜか納得された。


「あとは回りながら調べようか」

「そうね、何か見落としがあるかもしれないし」


 皆の賛成を得て僕達は街の方へ歩いて行くのだった。




 二日ほど街中で食材集めや必要な物、着替えや作業手袋、虫眼鏡のような物、虫よけの魔道具等いろいろと買い込んだ。

 魔道具については作れたのだが教えなくてもいいと思ったので黙っておいた。


 三日目は学園の図書館へ向かい、山について調べた。

 僕は少し席を離れ、冒険者ギルドの資料室へ向かいこの辺りの魔物と盗賊関係について調べるのだった。

 何もいなかったので安心した。


 五日目になると天気の心配を感じたので軽く夜中抜けだし、空を飛んで雨雲っぽい雲を風魔法で散らせた。

 ちょっと悪い気もするがこれが初めての行事なので成功させたかったのだ。


 そして、合宿の前日。


 いよいよ明日から合宿と言うことで様々な態度を取る生徒に分かれた。

 こういったことをしたことがない人ばかりの学校のため、そわそわする者、テンションが上がっている者、何かが不安で震える者、持っていく物を他のパーティーメンバーに聞く者等だ。


 僕達は最終確認を六人でし、持っていく分担とあちらでの役割を決めていく。

 この合宿は来年も再来年もあるため料理は僕とフィノとクラーラが行い、アルとシャルとレンは準備や片づけを行う。


 また、合宿は後者の中で寝れる日と外でキャンプをする日に分かれているらしい。

 恐らく僕が言った肝試しなどの案から取ったのだろう。

 ウォーレン先生が悪い笑みを浮かべて「校舎の日は楽しみにしてろ」と悪役の笑い声を上げながら言っていたからなぁ。


「いよいよ明日が合宿の出発日だ。浮かれている者が多いが、身を引き締めてないと怪我をするぞ」


 ウォーレン先生は真面目な顔で釘を刺す。

 恐らく、過去に何度も浮かれて怪我をしてきた生徒を見てきているのだろう。

 そして、合宿を行えず見て過ごしていると。

 特に今回は祭り染みた者になっているから直され浮かれている者が多いと聞く。

 特に例年を知っている二、三年は顕著だと見える。


「出発は明日の朝九時。それから歩いて五キロほど歩く。長いと思うかもしれんが、これは体力作りのために行う。残りの五キロは各自好きなように行ってもらって構わない。だが、昼までには到着するように! 昼食を食べ損なうぞ!」


 そう言われれば急ぐしかないだろう。

 まあ、今回は少し疲れても空を飛んで行く人がいるかもしれないな。

 僕が教えてきた中で一時間ほど飛べるようになった生徒が十数人いる。

 後風魔法で速度を上げられるものも百人ほどいたな。


「それでは授業を始める」


 そこで授業が始まり、騒がしかった教室が静かになっていった。




 それから何時間か経ち、少し暑さにだれ眠くなってきた昼食前の時刻。


 僕とフィノの脳内に盛大に響き渡る久々に聞く声が轟いた。


『フィノ、シュン! 国王……父上と母上が倒られ、現在意識不明の重体だ!』


この後の展開はまだ帝国と王妃との関わりが続きますが、二年、三年度と関わり合いがあるので外すことが出来ない展開です。

了承ください。

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