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特訓

読者の皆様には作者の浅い考えと誤字脱字、日本語の拙さで大変ご迷惑をおかけしました。

この回からはしっかりと見直して誤字脱字を少なくしていると思います。日本語に関してはおかしなところが多くあるかもしれません。(日本人なのにおかしいですね? あまり人と話さないのがいけないのでしょうか?)


十話まで出来るだけの修正をさせてもらったので、この回からシュンとフィノの年齢が十一歳となっています。それと学園も六年間から三年間と変わっています。

やはり多くの方から八歳にしては「過酷だ」とか「年齢が低すぎる」という意見が出てきたからです。私も低いと感じ始め、さらによく考えてみれば学園が六年間もあるのは書くのが辛くなるかもしれないと思ったからです。



この回は魔法の特訓となります。その魔法の特性や効果のおかしな点がありましたら、訂正させて頂きます。


これからもよろしくお願いします。

 五日間の休息を終えた僕達四人は中級最後の迷宮、大海の迷宮に潜っていた。


 この迷宮は五十五層で出来ていて、水系統の魔物が多く現れる。

 硬い貝の殻で身を守っているマリン、海を思わせる大きな青色の蛙ブルッグ、手足が生えて陸地でも行動する獰猛な鮫シャークマン、ギロチンのような大きな鋏を持ったクラブ等だ。


 この迷宮に挑んだのは踏破するのが目的ではない。目的はこの迷宮でフィノ達の魔法の特訓をすることだ。

 この迷宮は一層一層がかなり広く造られているため、多少大きな魔法を使っても大丈夫だと思う。強さもBランクはないときついだろうからそれほど冒険者もいない。


 大半が水辺や海辺だからそれほど大きくはないけど、樹海などと違って二次災害を気にしなくていい。魔物も襲って来ればすぐにわかるようになっている。

 だけど、砂や水の中から飛び出てくる魔物には注意を向けなくてはならない。


 大体十層ほど潜ると冒険者の人が数人しか感知できなくなった。魔物の強さは大体D、Cランクとなる。


 この階層は草原と浜辺となっているようだ。

 少し丘となっている草原には気性が穏やかな動物が住んでいるように見え、中には魔物もいるだろうけど近づかなければ大丈夫だと思う。浜辺にはサラサラの砂と綺麗に澄んだ水色の浅瀬が出来ていて、深さは僕の脛辺りだからそれほど深くない。


「今日から二、三週間はここで特訓をしよう」


 僕は辺りに魔物がいないか確認をしてからそう切り出した。

 フィノは初めて見る景色に嬉しそうな目をしている。

 シュリアル王国に海がないわけじゃないけど、結構遠くにあるから見たことがないだろうし、王都の外に出て三か月も経っていないのだからそうなるだろう。


「ここで特訓するんだね」

「フィノは派生魔法を教えようと思う。ツェルとフォロンは魔力制御と魔力操作の特訓をしようと思うけどいいかな?」


 僕はそれぞれに特訓の内容を教えていく。


「魔力制御と魔力操作ですか?」

「うん。二つにそれほど違いはないけど、魔力制御っていうのはその名前の通り魔力を制御して、消費量を抑えたり練り込む魔力量を上げたりすることだよ。魔力操作は保有する魔力を操作して、放つまでの時間を短くしたり魔法を操作することかな」


 それほど違いはないことだから言葉では表し難いのだ。多分、魔力制御は魔力の制御、感覚で魔法を使うのではなく、自分で魔力を練り込んで無駄をなくすこと。魔力操作は魔力を放出させることを言い、変換した魔力・魔法の操作をするというのが正しいかもしれない。『魔力弾』がそれに当てはまるだろう。


「僕も説明し難いからよくわからないかもしれないけど、やってみればわかるよ」

「うん、やってみればよくわかると思う。結構難しくて面倒なんだけどね」


 フィノには僕が教えていたからその実感があるんだろう。

 二人は未だによくわかりません、という顔をしている。


 魔力制御と魔力操作は一般的にも知られていることだけど、皆はこれを面倒臭がって練習しようとしないのが今の現状だ。

 魔法が使えるようになると次の魔法を使えるようになろうと考え、基礎を疎かにしてしまいがちなのだ。

 先天的に魔法を上手く使える者、魔力の多い者ほどその傾向が強くなる。


 この二つの他にも魔力圧縮、魔力障壁、魔力放出などたくさんある。これらは僕が勝手に名付けたものだから誰も知らないだろうな。


「特訓の内容は精神を落ち着かせてもらうね。ここは静かだから丁度いいと思うよ」

「精神を落ち着かせるとはどういうことでしょうか」

「わかりやすくいうと精神統一ということになる。自分の体の中に流れている魔力を感知して、一定の量を一定の速度で流したりすること。そうすることで体が魔力に慣れてきて魔法を使いやすくなるはずだよ」


 僕は以前フィノに説明したことを二人にも言う。

 二人も少しだけ理解してくれたみたいで早速精神統一を始めた。


「じゃあ、フィノも魔法の特訓を始めようか」


 僕はフィノに向かってそう言った。


「派生魔法を教えてくれるんだよね?」

「うん、そうだよ。今までとほとんど変わらないけど、難易度が高くなるから今まで以上に扱いにくくなると思う」

「大丈夫。シュン君が教えてくれるんだから、絶対に使えるようになってみせる!」


 フィノは嬉しいことを言ってくれる。

 僕は嬉しくなって、いつものようにフィノの頭を撫でると、フィノは目を細めて気持ちよさそうにする。


「まずはフィノが得意な火魔法の派生形である焔魔法を教えようと思う。フィノは火魔法と焔魔法の違いが何かわかる?」


 まずここが理解できないと派生魔法を使うことが出来ない。

 特に火と焔の違いなんてほとんどの人が説明できないだろうし。水と氷、風と雷、地と木等は分かりやすいのにね。


 フィノは両腕を組んで首を捻っている。


「……うーん、威力が強くなる?」

「威力が強くなるっていうのは合っているけど、それだけでは派生魔法を使うことは出来ない」

「じゃあ、火と焔はどう違うの?」


 フィノは?を浮かべて僕に訊ねる。


「この前、ララスさんに氷魔法を教えた時のことを覚えてる?」

「うん、氷魔法を教えた時だよね。確か、凍ることをしっかりイメージする、だったよね?」


 ララスさんに僕はそう説明したはずだ。

 フィノはしっかりと覚えてくれていたみたいだった。


「そうだったね。イメージがしっかりと出来ていないと派生魔法を使うことが出来ないんだ。他にもいろいろな条件があるけど、派生魔法にはイメージが一番大切なんだよ」

「じゃあ、焔魔法を使えるようになるには火が焔になる過程をイメージするっていうこと?」

「そうだけど、火と焔の線引きって何かわかる? 火がどの程度強くなれば焔と呼ばれるようになるのかっていうことだけど……」


 焔って言っているけど実際は炎だったり火炎だったりしてもいいわけだ。火より強い、というイメージが持てればいいと僕は考えている。

 とにかく火がどこまでいけば焔って呼ばれるようになるのか、というのが大切なんだ。

 だけど、これは人によって異なることでもある。


 水が完全に凍れば氷なのか、凍り始めて氷なのか。雷はどこから始まるのか、静電気や磁力も雷といっていいのか。芽が出て木と呼ばれるのか、他の植物はどうなのか。ということだ。


 人によって定義が異なるものはイメージも異なってくるし、魔法も異なってくる。

 そういったものは自分がいいと思ったことをイメージし続ければいいのだ。


「火は人が扱えるぐらいで、焔は扱えなくなったところからかな?」


 フィノが考えた末に出した答えがこれだ。


「それは焚火や料理のコンロが人が扱える、山火事や建物の火災が扱えないっていうことでいいのかな?」


 僕はフィノの答えに満足しながらどういったものか訊いてみる。


「うん、火は自分で消火まで行えるもので、焔は大人数だったり消せないようなものを言うことだと思う。……合ってる?」


 フィノは不安そうに聞いてきた。

 僕は撫でていた手で肩を叩いてにっこりと微笑む。


「イメージっていうのは人それぞれだから何が合ってる、何が間違ってる、といえないけど、自分の中で線引きが出来ていればそれでいいと思うよ。フィノが言ったことは僕はそれでいいと思ってる」


 フィノは僕の意見を聞いて安堵する。


「シュン君はどうしてるの?」

「僕? 僕は色と威力かな」

「色? 色って黄色とか赤色とかって言うこと?」


 フィノにはまだ教えていないことだからよくわからないことだろう。

 師匠に派生魔法の事を聞いたときはほとんど違いはないと言われたため、色で区別するしかなかったんだ。

 師匠の家には魔道書や魔法書等がなくて、基礎を習ったところで自分で作るしかなかったんだ。

 特に派生魔法は使える人が少ないから特にそうだった。


 そこで考え付いたのが簡単に区別することだった。火ならオレンジや赤を基準として、白から上が焔魔法とした。氷なら完全に固まってから。雷ははっきりと視認できる量から。木は植物全般全て。といったようにだ。


 そうすることでイメージをしやすくして自分でわかりやすいようにしたんだ。


「まだ教えてないからわからないかもしれないけど、火っていうのは高温にするほど、純度を高くするほど、酸素を適度に保つほど色が青くなっていくんだ」


 僕は手のひらの上にソフトボール大の火球を作り出して、通常の赤い火から徐々に白くしていき青色にした。

 空気を燃やし尽くす音が耳に届き、火の熱さが肌を焼く様に伝わる。


「本当だ!? 青色になった! 感じる熱さも全く違うね」


 フィノはちょっと離れながらそう言った。

 僕は火を消してフィノの方を向く。


「高温になるほど青っぽくなっていくんだ」

「へぇー。私もできるかな?」

「出来るようになると思うけど、使えるようになるかは難しいだろうね。丁度いい魔力量っていうのは使う人にしかわからないことだからね」


 僕も使えるようになるまで四年以上かかったからね。

 この世界の人がどのくらいで使えるようになるかわからないんだからしょうがない。個人さもあるだろうし、一概にそれだとは言えない。


「わかった。……でも、人によって線引きが異なるっていうことは、私が焔魔法を使えるって言っても他の人から見たら火魔法に見えるんじゃないの?」


 フィノの質問は誰もが思いつくだろう。

 水が固まって氷とかなら誰でもわかるだろうけど、火は難しいだろうね。

 だけど、フィノは一つ忘れている。


「フィノ、魔法は始めに詠唱するんだよ?」


 僕がそういうとフィノはあっと声を上げた。


「詠唱は人によって異なるけど、通常魔法と派生魔法の詠唱は違うものだよ。詠唱破棄があるけど、鍵を唱えればわかるし、派生魔法の無詠唱を使える人はほとんどいないと思うよ」

「詠唱があったんだった。詠唱や鍵が異なれば魔法を発動しないんだったよね?」

「絶対に発動しないとは言えないけど、そんなことをする意味ないよね。それに、ギルドカードには明記されるから嘘はすぐにばれるよ」

「それもあった……」


 僕とフィノは話を中断させて派生魔法の特訓に入った。




「イメージに関しては僕からは何も言えない。だから、フィノが自分で一番よく魔法を編むことが出来るものを探して」

「わかった」


 僕のイメージは僕のイメージだからね。

 僕が言ったイメージをしても僕のイメージであってフィノ自身のイメージではないから、魔法が発動し難くなるっていうことだ。


「まずは焔魔法の初級フレイムにしよう」

「フレイム? どんな魔法なの?」

「フレイムは超高温の火柱だと思ったらいいよ。火魔法にも同じような魔法があるかもしれないけど、フレイムは焔魔法に分類される魔法になる」

「火柱……」


 フィノは僕が言ったことを呟いた。


「まあ、実際に見てみればわかると思うよ」


 僕はフィノを僕の後ろの方へ下がらせて、目の前の砂場に向かって魔法を放つ。


「『猛火の焔よ、天を貫く柱となり、我が敵を燃やし尽くせ! フレイム』」


 僕が魔法を放つと同時に十メートル先の地面から砂が巻き上がり、砂を焦し溶かす巨大な炎の柱が空に向かって突き進んでいった。

 火柱は凄まじく燃える音を周囲にならせながら突き進み、十秒ほど経つとその勢いを弱らせ、辺りに散らばるように霧散していった。


 辺りに焦げた匂いと砂が焼けて赤熱している音だけが聞こえてくる。


「今のがフレイムになる。相手の真下から立ち昇る魔法だよ。早めに感知できないとまず避けることは出来ないと思う。難易度で言うと火魔法の中級ぐらいになると思うけど……出来そう?」


 僕は隣で驚いているフィノに声をかけた。

 フィノは僕の声で我に返って返答をしてくれた。


「威力は凄かったけど、火魔法とあまり変わらないような気がするから大丈夫だと思う」


 火と焔は他の派生魔法の属性と違って線引きが難しいと言ったけど、逆に言うと線引きさえ出来ていればイメージがほとんど同じだから、焔魔法を使えるようになるのに時間が掛からないということになる。

 だから、僕はフィノが得意な火魔法の派生から始めようと思ったんだ。


「コツは見て分かったように、どこまでも(そび)え立つようにイメージすることと魔力の供給を一定にすること」

「それは持続させるっていうこと?」

「うん。魔力の供給を切ってしまうと当然魔法は消える。『ファイアーストーム』もそうだけど、魔力を供給し続ければ永遠と持続するよ。だけど、『ファイアーストーム』と違う点は扱いにくいこと。まあ、当たり前だね。一定にするのは大きさを調整するためだよ。大きくしすぎたら自分や味方まで飲み込んでしまうからね」


 注がれる魔力が多くなれば威力や効果範囲が大きくなる。これは魔法使いにとっては常識なことで、魔力制御と操作が出来ていなければ被害が出てしまうだろう。

 これはどんな魔法でも同じことだ。

 自分の実力の範囲以内の魔法をしっかり修めて、更なる修練を積んで次のステップの魔法を覚えろ、ということだ。師匠には何度も言われていることだからフィノにもしっかり伝えてある。


「うん、わかってるよ。始めは少ない魔力で放つようにすればいいんだよね」


 フィノは分かってくれていたようだ。

 僕は頷いて答える。


「どんな魔法も初めて使うときは少ない魔力で行うこと。放つ魔法ならいいけど、広域の魔法とかだったら自分も飲み込まれる可能性があるからね」


 フィノは僕から少し離れて魔力を煉り込んでいく。

 最初の頃は込める魔力が多すぎて暴発することが多かったけど、ここ最近は力加減が分かってきたみたいで暴発することがなくなっていた。


 フィノはゆっくりと眼前に手を上げて詠唱を唱え始めた。


「『猛火の焔よ、天を貫く柱となり、我が敵を焼き尽くせ! フレイム』」


 フィノが魔法を放つと数メートル先で砂が小さく巻き上がった。だけど、いつまで経っても火柱は立ち昇らなかった。


「あれ?」


 フィノは僕の方を向き体全体を傾けてそう言った。


「今のは不発だね。込めた魔力が足りなかったのか、イメージが足りなかったのかのどっちかだと思うよ」


 まあ、派生魔法で使ったことのない魔法だから使えなくて普通なんだけどね。

 一発で発動したら驚愕だよ。

 少なくとも二、三日はかかるだろうね。


「難しい……」


 フィノが難しい顔をしてそう呟いた。


「今までのようにすぎには使えるようにならないよ。自分でイメージを固定して、最低限必要な魔力量を感じないとね」


 僕はフィノにそう声をかけると三人が見えるところまで移動して自分の特訓に入った。




 僕は三年後に備えて強くなっておかなければならない。

 もしかすると邪神と闘う可能性があるからだ。戦わなくてもその手下は強大な力を秘めているとのこと。

 今のままでもある程度は戦えるだろうけど、それではダメなんだ。僕の仲間を守るため、家族を守るため、フィノを守り抜くためには今の僕では実力が全く足りない。

 守りたいもの全てを守り抜くには力がいくらあっても困らない。忌避されるかもしれないけど、今はそんなことを考えているわけにはいかない。

 そう決意をしたんだからこれまで以上に力を蓄えないといけない。


 僕は体に魔力の負荷を掛けてそう思いながら、魔力量の増大と新魔法の開発をしようと考えた。


「でも、どうするべきか」


 魔力量の増大は寝る前に魔力を使い切ればいいだけだから三年もあれば大丈夫だと思う。

 新魔法の開発は原理が分かっていないとそもそも作ることが出来ない。


「とりあえず、魔力を上達させながら考えるか」


 僕は砂浜に突き刺さっている岩に腰を掛けて『魔力弾』を十個ほど作り出した。そのままゆっくりと回転させて動かしていく。慣れてきたところでスピードを上げ、互いがぶつからないように出鱈目に動かす。ぶつかって消滅してしまうと新たに二つ作り出して同じようにする。

 これはギルドでフィノのギルドカード作りを待っていた時にしていたものと同じものだ。


 僕はそれをしながら新魔法について考える。

 僕がこれまでに作ってきた魔法は既存の魔法を昇華させたり、地球の科学を魔法で作り上げたものが多い。

 まだ、作り出せていない魔法や危険すぎて扱えない魔法がたくさん存在する。そういった魔法を扱えるようにするのもいいけど、その間に新魔法を開発していたほうがいいかもしれない。


 僕は剣の扱いが上手くない。

 筋力も乏しいから身体強化と剣に魔力を纏わせないと打ち合うことが出来ない。込める魔力で何とか今まで勝ち星を拾ってきたけど、これからどんな人が出てくるかわからないんだ。


 バリアルのような剣豪が再び現れたとしたら負ける可能性が出てくる。そうならないためにもそこをまずどうにかしないといけないかな。


 でも、これ以上剣技を上達させることは無理だろう。師匠も護身用として使っていたから純粋な剣技を持ち合わせていなかった。

 学校に行けばちゃんとした剣技を教えてもらえるかもしれないけど、今はどうにもできないことだな。


 と、なると……魔法で補うしかないか。

 今まで使ってきたのは魔力の纏、火と風と雷の纏の四つだけか。

 『纏』はその属性の性質が表面上に現れる。

 火なら切り口を焼き尽くし、風なら切れ味を上げ、雷は相手を感電させることが出来る。使い手のやり方によっては飛ばしたり、巨大化させたりすることが出来る。


 残りの属性ならどんな風に使えるだろうか。

 水なら原子を振動させて切れ味を上げることが出来るな。だけど、これは他と変わらない。普通に『バイブレーション』とか名付けて、水魔法を使えばいい。

 地は切れ味がなくなって鈍器になるよな。重さで敵を潰す、か。普通に地魔法を使った方がいいな。

 光と闇はアンデットに有効だったり、目にした者を惑わせたりすることが出来るかもしれないな。

 回復は意味ないな。

 召喚もダメ。

 残ったのは……時空か。


 時空魔法っていうのは今一よくわかんないんだよね。

 転移とか瞬間移動とかならわかるんだけど、それだけじゃないんだよね。他にも、異界を作ったりできるし。

 メディさんが言うには時間を止めたり、早めたり出来るって言っていたはず。


 時間を操作するのは十秒ほどだけど出来るようになった。後は慣れだろうな。

 それを剣に纏わせても意味ないよね。

 と、いうより時空を剣に纏わせるとどうなるんだ?


 剣速が速くなる?

 いや違うと思う。

 じゃあ、剣が瞬間移動して相手に刺さる……というのもおかしいか。

 ちょっと待てよ。

 今までは斬り付けて効果があったんだよね。なら、時空で斬り付けると斬り付けた部分がどこかに飛んでいくんじゃないのか?

 いや、それだとさっきと同じだから……時空を、いや、空間を斬り付けるのか……。


 空間を斬り付ける、切り裂くということは、遠くにいる敵にも斬撃を当てることが出来ることになる。

 斬撃を飛ばすのと違って振った瞬間に斬り付けることが出来て、相手と打ち合っている間に相手を斬り付けることもできる。

 そう考えると時空の『纏』を完成させていたほうがいいかもしれない。


 僕はそう思いつくと『魔力弾』を消し去って立ち上がると、腰を掛けていた岩から十歩ほど離れて振り返る。

 収納袋から白銀の剣を取り出して時空魔法を纏わせてみることにした。


「……くっ、結構難しいな。魔力が安定しない」


 剣に纏わせた時空魔法はすぐに不安定になり霧散してしまう。力任せに纏わせようとすると剣に時空魔法が接触して剣を消し去ろうとしてしまう。


 この後も何度か試してみたけど一向に成功しなかった。

 僕は岩の上に座り直してなぜできなかったのか考えてみる。


「うーん、まず魔力制御が出来ていないんだよね。時空魔法は他の魔法と違って空間や時間に作用するものが多く、どう考えても桁外れな効果だと思う。そして、剣の周りの空間を変えようとしているから難しい。……もしかして、剣全体に纏わせなくても剣先だけ纏わせれば空間を切り裂くことが出来る……かな?」


 その考えを思いつくと座ったまま剣を片手で水平に構え、時空魔法を剣の先ギリギリ制御できる範囲に纏わせて、座っている岩の表面を撫でるように斬ってみた。

 岩の表面に剣先が当たらないようにしている。

 イメージは遠くの対象を斬る様なイメージで、空間をずらすようなイメージも加えている。こう考えると他の魔法と違ってイメージも大きく、イメージし難い。


「……うおっ」


 撫でた表面は斬り付けたと同時に、音を立てずに綺麗な線が入り、岩が綺麗に斬れた。切り口は鉄をも切り裂く高圧の水で切り取ったような断面で、触ってみると岩の感触がせず、磨かれた大理石のような感触だった。

 よく見ると下の砂まで斬れている。


「これはしっかり制御しないと仲間まで斬ってしまうな」


 この『纏』を制御するには、他の魔法と同じように相手を斬り付けずらすイメージが必要だろう。そうすることで周りに被害が出ないようにする。ちょっとでも違えば目標以外も斬ってしまうかもしれない。後は魔力自体の制御をもっと頑張らないといけないな。制御以外に時空魔法の熟練度も上げよう。あまり使わない魔法だから使わないといけない。

 だけど、これで新しい魔法が使えるようになった。


 それに空間を切り裂くのは剣でなくてもいいわけだ。

 試しに指先を揃えて時空魔法の空間作用のある魔法を使ってみると、先ほどと同じように切り裂くことが出来た。

 剣よりも手の方が魔法を使いやすい。これは剣という触媒を無くして、直に使っているから魔力を、魔法を制御しやすいのだろう。


「ははは……」


 自然と笑いが込み上げてきた。

 この魔法が邪神に通じるかわからないけど、確実に手下には効くだろう。防ぐには同じように空間を切り裂いてくるしかない。

 だけど、僕と同じように使うことは出来ないだろう。己惚れるわけじゃないけど、これまでの皆の反応を参考にするとそう考えられる。

 まあ、僕より強い人はたくさんいるだろうから修業は怠らない。


 後は空間と思いついたのは重力や圧縮だ。あれは多分空間を作用する魔法で合っているはずだ。もしかしたら地魔法も使っているかもしれないから、合成魔法になるかもしれない。

 一部の空間を操作して重くしたり、空間を近づけて圧縮できる。自分を中心に考えて斥力を働かせたり、重力の塊ブラックホールを作り出すこともできるかもしれない。


 考え付いて実際にやってみたけど消費魔力量が半端じゃなかった。それに僕の力が弱くて体に負荷をかけるだけだと思う。

 自分にかけてトレーニングする分にはいいかもしれないけど、戦闘にはまだ使えない。

 これを戦闘で使えるようにするには魔力量の増加と制御能力、熟練度が必要だ。


 僕はそろそろお昼になる頃だと思って、三人に中断の声をかけることにした。


「そろそろお昼にしようか」

「ふぅー、お腹空いた。早くお昼にしよ」


 僕はフィノに声をかけて、二人がシートを敷いて寝そべっているところに近づいて行った。




 シートを敷いていたところにオークションで落札したテーブルと椅子を取り出して座る。ツェルとフォロンが王族の物だと固辞したけど、僕とフィノが無理やり座らせて昼食にした。

 僕も歴代の王族が使っていたものを使っていいのかと思ったけど、まあフィノがいいと言っているし、壊さなければいいだろうと思って考えないことにした。今度義父さんに教えておこう。


「今日の昼食は野菜とチーズのハンバーガーとクリームシチューとフルーツジュースとなります」


 ツェルがそう言いながらテーブルの上に料理を並べ、フォロンがフルーツジュースをコップに注いでいく。


「おいしそう」


 フィノが目の前に置かれた料理を見てそう言った。

 その姿が微笑ましく見えて自然と笑みが浮かぶ。


 すぐに給仕が済み、ツェルとフォロンも恐縮しながら席に着いた。

 それを確認するといつもの挨拶をして昼食を食べ始める。


『いただきます』


 まずはレタスやトマト等の野菜ととろけるチーズ、ベーコンとハンバーグが挟まったハンバーガーを一口齧り付く。

 酸味のきいた特製のケチャップと辛味のあるマスタードが合わさり、舌を刺激して食欲を掻き立てる。収納袋の中に入れていたから出来立て熱々のままで、ふんわりとした焼きたてのパンの匂いが鼻を突き抜け、新鮮な野菜のシャキシャキとした触感が歯から伝わってくる。濃厚なチーズが肉と合わさり絶妙な味を出していた。


「おいしい。やっぱりハンバーガーはこの味だよね」


 僕は口元に付いたケチャップ指で拭き取りながらそう言った。

 黙々と食べているフィノが顔を上げた。


「料理もおいしいけど、綺麗な景色を見ながら食べるのもいいと思う」

「そうだね。雲一つない綺麗な青空と透き通った水辺、遠くから聞こえてくる動物の鳴き声なんかもいいね」


 僕とフィノはゆったりと和みながら、今この場所の感想を言いあった。


「ここは一応迷宮内なのですが……」

「そうです。お二方はもう少し緊張感を持たれた方がよろしいと思います。お強いのは分かっているのですが」


 二人が危険な迷宮の中でにこやかに談笑している僕とフィノに苦言を呈した。


 と、言われてもこの辺りには遮音・隠蔽結界を張っているし、何かが侵入してきたらすぐに察知できると思うから、そこまで気にする必要がないと思うんだよね。

 まあ、ここが最下層部だったりしたらこんなことはしないんだけど、この辺りの魔物なら僕の結界内に入ってくることすらできないと思う。

 気を抜いているように見えるけど、しっかり魔力感知を使っているし、いつでも戦闘に入れるように剣を横に置いている。


 僕とフィノは二人に、


「大丈夫、大丈夫」


 と、答えて二人を困らせてしまったが、二人もこの辺りには危険がないことを理解しているからそこまで強くは言ってこない。




 午後の特訓は基礎トレーニングに当てた。

 僕とフィノはまだ魔力量が増えていきそうだから魔法を使って魔力量を増やすことにする。僕はいいとして、フィノの魔力量がまだ伸びることに驚きだ。

 魔力量を伸ばす方法は魔力をたくさん使うこと。今回は魔力の消費を激しくするために、魔力を放出することで張られる障壁を持続させて、お互いに魔法を放つことにした。

 こうすることで一度に使えるようになる魔力量を増やすことが出来る。同時に身体と精神力の強化も量っている。戦闘もこなすことになるから丁度いいだろう。


 何かを維持しながら他のことをする、並列思考は難しい。

 この並列思考は魔法使いにとってとても有効な術となる。並列思考ができるようになると、右手と左手で違う属性の魔法を同時に放つことが出来るようになる。

 また合成魔法を一人で使うための必須な術だ。


 ツェルとフォロンには簡単にイメージ特訓をしてもらおうと思っている。

 フィノには僕の知っている知識を全部教え込んでいるから理解できているけど、二人にはほとんど教えていないから理解できていない。

 そこで、簡単に図解した資料を作って二人に覚えるようにさせた。


 二人の属性に合うようにした火と水の原理を重点的にして、筋肉や骨格等の体の内部の作りを覚えるようにさせている。

 肉体の作りを覚えることで補助魔法や回復魔法のかかり具合を上昇させるためだ。




 昼食を食べ終えた僕達は二人組に分かれて特訓を再開させる。

 ツェルとフォロンは資料と睨めっこして実際に魔法を使ったりしている。

 僕とフィノは砂浜から離れて地面がしっかりとしたところまで移動した。


「この辺りにしよう。まずは魔力障壁を展開して」

「わかった」


 フィノは全身から魔力を放出させて、自らを球体で囲むように展開して維持した。


 魔力障壁は放出した魔力で身を守る魔法のことだ。

 放出させた魔力を逃げないように維持することで、結界のような効果を持たせることが出来る。

 僕が以前ヒュードさんのお店で使った物理障壁も魔力障壁の一つだ。


 『物理障壁』は名前の通り放出された魔力の強度が耐えられる限り、物理攻撃のみを防いでくれる。

 他にも魔法攻撃のみを防ぐ『魔法障壁』、両方を防ぐ『障壁』というのがある。

 『障壁』を使えばいいと思うけど消費魔力が多いから一長一短だ。


 どれも攻撃されると魔力が減り、持続させるために魔力を消費させる魔法だ。

 僕とフィノのように魔力量が数十万ある人じゃないと使おうと考えない魔法となる。だから、普通の冒険者が使ったところを見たことがない。もしかすると存在を知らないかもしれない。


 これを見つけた時も古い古文書のような本に乗っていたから『纏』や『刻印』のような古代魔法の一種と考えていいのだろう。


「準備できたよ。シュン君も早くして」


 準備を終えたフィノが魔力障壁の『魔法障壁』を維持させながら僕を急かす。

 僕も『魔法障壁』を展開させて準備に入る。


「それじゃあ、始めようか」

「うん」


 距離を取るといつものようにフィノが僕に先制攻撃をした。

 『魔力障壁』を維持させたまま体内の魔力を煉り込み、二十メートル先にいる僕に向かって魔法を放つ。


「『ファイアーボール』」


 最初はウォーミングアップの初級魔法の打ち合いとなる。このような場合、手数や精度が大事になってくる。属性によって異なることだけど、同じ数を同じところに放つことは結構難しいことなのだ。


 詠唱破棄で放たれた燃え盛る火球が連続で僕に向かって飛んでくる。

 僕は慌てることなく同じ数の火球を作り出して相殺させる。


 相殺した瞬間にフィノが僕の目の前から消えて側面から現れた。

 身体強化による移動だろう。


「『ファイアートルネード』」


 僕の真下から燃やし尽くさん! と炎の渦が吹き上がり、僕を中心に辺り一帯を焦し尽くした。僕は『魔法障壁』で守られているけど、さすがに熱さまで防ぐことは出来ない。

 僕は風魔法を使って炎の渦を内側から打ち消す。


「フィノ、それは僕には効かないよ」

「シュン君の無詠唱は反則だよ」


 今度は僕からお返し、とばかりに腰に肘を固定して両手を拳銃のように構えると、水の弾丸を撃つ。

 フィノは高速で向かって来る水の弾丸を左右に躱して魔力の煉り込む。避けきれなかった水の弾丸がフィノの『魔法障壁』にあたり、障壁の強度を削ぎ落とす。


 フィノの顔に一瞬焦りの色が浮かんだけど、すぐに気を引き締めて煉り込んだ魔力を魔法に変換させて放ってきた。


「『燃え盛る炎よ、赤き波となり、敵を飲み込め! ファイアーウェーブ』」


 地面の上を赤い炎の波が僕に襲い掛かってくる。僕の放った水の弾丸がジュッ、と音を立てて飲み込まれた。

 僕は迫り来る炎の波を地魔法で地面を隆起させて防いだ。

 熱風が僕の肌を撫でる。


「『シャドウバインド』」


 炎の波が止んだ瞬間に影がくねるように動き始めて僕の身体を拘束し始める。僕は上に飛んで回避すると光魔法で打ち消す。


「『ライト』」


 目が眩むような光量の光が放たれ、僕を拘束しようとしていた影が塵のように消え去った。

 と、同時にフィノが僕が隆起させた岩の上から僕の側面に魔法を放ってきた。


 僕が上に飛んで消し去ることを読んでいたみたいだ。


「『ダークボール』」


 フィノが突き出した手から黒く渦巻く球体が僕に向かって放たれる。

 僕は体を後ろに反らしながら、風魔法を前方にはなって飛んでくる闇球を避ける。


 今のは危なかった。

 あと少しでも反応が遅れていたら、『魔法障壁』が削られていただろう。


 フィノの方をちらりと見ると悔しそうに顔を歪めていた。


「今のは危なかったよ。腕を上げたね、フィノ」

「それはありがとう。でも、簡単に避けられちゃった」


 フィノは唇を突き出してそう言った。


「さすがに師匠が弟子に負けるわけにはいかないよ」


 僕は地面に着地して、フィノが立っている地面に地魔法を放つ。

 フィノはその場から離れようとするけど、僕が使った魔法から逃げきることが出来なかった。


「『アースクリエイト』」


 僕が地面に手を付いてそう唱えると、粘土のようにグニャグニャと蠢き始め、フィノのバランスを崩して尻餅をつかせた。そのままトランポリンのようにフィノを上空に打ち上げる。


「きゃああ!」


 フィノが突然のことで可愛い悲鳴を上げた。

 僕はフィノの勢いが減速して上空で止まった瞬間に、水の弾丸を撃ちフィノが展開した『魔法障壁』を全て削ぎ落とした。

 もちろんフィノに当たらないよう横を通り過ぎるように撃っているし、威力を落している。


 フィノが地面に衝突する前に近付いてそっと抱き寄せて、お姫様抱っこで着地する。


「体に当たらないように撃ったから大丈夫だと思うけど、怪我はない?」


 僕の胸元に顔を埋めているフィノに優しく声をかけた。

 フィノは目をギュッと瞑って縮こまっていた。

 僕の声に反応してビクリと体を震わせたけど、すぐに目を開けて僕の首に腕を回して抱き着いた。

 体を襲った浮遊感が怖かったのだろう。


 僕はちょっとやり過ぎたと反省して、フィノを地面に立たせると頭を優しく撫でて安心させる。


「うー、怖かった」

「ごめんね。怖がらせるつもりはなかったんだ」


 フィノは目尻に溜まった涙を拭き取ってそう言った。


「フィノも大分上達したね。そろそろ飛行魔法と上級魔法を教えてもいいかもしれない。まず派生魔法からになるけどね」


 僕はフィノの頭をポンポンと撫でながらそう言った。

 魔力障壁を維持しながらあそこまでの魔法と奇襲攻撃が出来れば、次のステップに移っても大丈夫だろう。

 上級魔法は魔力消費も激しいけどそれ以上に制御が難しいからね。教えても使えなかったら意味がないし、怪我をされたら困っちゃうから今まで教えてこなかったんだ。


「本当?」

「うん、明日からは派生魔法と飛行魔法を教えるね」

「わかった! 明日が楽しみ」

「飛行魔法を教えるけど、最初の内は僕が見ている時しか使ってはいけないよ。浮いている時に落ちて仕舞ったら怪我では済まないからね」

「うん! さっきので危ないのがよくわかったから、絶対に一人ではしない」


 フィノは新しい魔法を教えてもらえる、と喜んで僕に抱き付いてきた。

 僕はフィノの勢いで後ろに倒れそうになるのを、片足を下げて踏み止まりフィノを抱きしめ返す。


 それからツェルとフォロンも呼び、四人で迷宮の魔物や採取を行った。

 魔物を倒せば魔石が多く、次に素材が多く出てくる。よくてもCランク前半しか出て来ないからそれほど質のいい魔石ではない。


 そして、この迷宮では魚を取ることが出来る。

 王都でも魚を食べることが出来たけど、海辺から王都まで馬車で数日かかる距離があるため鮮度がどうして落ちてしまう。

 だから、この迷宮で魚を見つけた時はテンションが上がってフィノに嗜められてしまった。


 それから二週間の間、地上と迷宮の中を行き来して特訓をした。その内半分は召喚獣を出して連携の練習や魔法などを教えていった。

 これで僕達のパーティーはまた戦力が上がっただろう。




 バラクに滞在できる期日が一か月を切ったところで、僕達は最後にこの迷宮を踏破することにした。

 残りの一か月は体を癒すことと入学試験の勉強、僕の貴族としての振る舞い勉強をすることになった。


 僕は一応伯爵という立場になっているから、もしかしたら何かしらの集まりやお茶会に誘われる可能性があるらしい。

 と、いうよりフィノがいるからフィノが行くところには行かないといけなくなると思う。フィノも僕が一緒の方がいいと言っているしね。


 誘われなくても将来のこともあるからどちらにしろ、しなくてはいけないことだ。

 それに、学園の大半の生徒が貴族だ。平民もいるだろうけどそれほど多くはないだろう。

 だから、貴族としての振る舞いが出来ていないと見下されるし、他国の王族もいるから失礼があってはいけないと言われた。


 貴族としての振る舞いは単に礼儀作法や食事のマナーだけではなく、乗馬や言葉遣い、ダンス等々たくさんある。

 全てを完璧にしなくてもいいけど、学園では年に数回舞踏会があるみたいなんだ。そこでダンスが出来ないと嘲笑されることが多いらしい。

 特に位の高い貴族は踊れない方がおかしいみたいだ。

 まあ、相手はフィノになるだろうからどうにかなるだろう。


 どうしてフィノになるかは僕とフィノが婚約者だからだ。

 まだ世間には発表されていないことだけど、正式な婚約者だからフィノ以外の異性と踊ることは出来ない。

 というよりしたくないし、されたくない。

 そこのところはフィノも同じだ。


 その他の言葉遣いや歴史や相手の位の有無等は、ある程度元々できているということだから大丈夫だと思う。




 これからの予定が決めるとすぐに迷宮の準備を整えて踏破に向かった。

 魔法の特訓をしている間に二十層辺りまで踏破していたから残りは三十層ぐらいだ。


 全体の戦力が上がっているからサクサクと迷宮の最深部まで進んでいく。

 前回の迷宮よりも簡単だ。

 前回は出てくる魔物や地形も悪かったからなぁ。


 三十層のボスはCランクのアックスシャーク。シャークマンに似ている魔物だけど、その体はシャークマンより二回りデカく、大きな両手斧を持っていた。盛り上がった筋肉と岩をも粉砕できそうなぐらいの強度を秘めた鮫肌、手足に生えている爪も気を付けなければ切り裂かれていただろう。


 倒し方としては火に弱いため、僕とツェルが足止めをしながらフィノが火魔法をあてるやり方だ。偶に攻撃が掠ることがあったから、フォロンは回復役に徹していた。

 このパーティーは魔法特化で、ちゃんとした前衛がいないからこういう敵には手こずってしまうことが多い。

 まあ、この辺りの魔物は僕達には弱いから、手古摺ることはほとんどないことだけどね。


 手に入ったアイテムは魔石と両手斧だった。両手斧は普通の斧だったからギルドに買い取ってもらうことにした。


 四十層のボスはCランクのホエールというクジラ型の魔物だった。十メートルほどの体躯と背中に苔が生えているのが特徴的だ。基本攻撃は水のブレスや飲み込み、プレスとかだ。ボス部屋は浜辺と海辺の半々で攻撃を当てるのに苦労するだろう。


 だけど僕達には関係のないことだった。

 ホエールが顔を出せば一斉に魔法を放ち、海の中に潜り込めば僕が雷魔法を放つ。僕達はホエールが何の攻撃をするのか見極めて行動することに気を付けるだけだった。


 入手アイテムは魚介類と上質な塩だ。

 魚介類はなぜか箱詰めにされていて、中には数十匹の魚と甲殻類や貝がたくさん入っていた。上質な塩は白色で木目細かくサラサラとしていた。


 五十層はBランクのオクトニアンという二メートルほどのタコ人間の魔物だ。タコのような吸盤付きの八つの足を自在に操り、両手に持った三又の槍を高速で突き出してくる。脚でも絡み捕ろうとしてくるため近づいて攻撃することを良しとしない魔物だ。


 ボス部屋は変哲のない土でできた部屋だった。

 作戦は僕が脚に捕まれない程度の場所で速さを生かして動き回り、その間にフィノとツェルが脚を焼いたり斬り飛ばしたりして身動きを取らせないようにした。捕まれそうになりそうな時は魔力障壁を張って一時的に防いだりした。

 全ての足を斬り飛ばしたりすると立つことが出来なくなった。その後すぐに止めを刺して最後のボス部屋まで急いだ。


 ここでは生タコと三又の槍を入手した。

 ここで気になったのがこの世界でもタコを食べるのか、ということだ。地球でもタコを食べない地域もあるのだから疑問に思ってもしょうがないだろう。

 訊いてみたところフィノは初めて見たということで見た目にしか抵抗がなく、ツェルとフォロンは少し顔を顰めていた。

 二人が言うには一部の漁師の間では食べられているけど、見た目や食用と認知されていないとのこと。また、調理法も考えられていないからその影響もあるみたい。


 タコの調理法といえばたこ焼きだね。

 この話をしてあげたらフィノはすぐにタコの素晴らしさを感じ取ってくれた。本当に食べ物が好きだと思ったのは内緒だ。

 二人も、地上に帰ったら僕が調理をするのを食べてみることにした。少し嫌そうな顔をしていたけどね。

 なんでなんだろうね。あんなにおいしいのに……。


 で、僕達は最期のボス部屋の前まで来ていた。


「ここが最後だね。気を引き締めていこう」


 僕は三人に少しきつめに言う。

 ここまで強行突破のように来たから少しだけ疲れが溜まっているかもしれない。

 ここまで来るのに一日と半日かかった。普通の冒険者ならもっとかかるはずだ。

 しっかり休憩は取ってきたけど何が起きるかわからないのが戦闘だ。それに迷宮というのも気持ちに拍車をかける。最後だと尚更だ。


「わかってる。地上に戻ったらおいしいものをたくさん食べるんだから」

「心得ております」

「は、はい。回復は任せてください」


 フィノは食い気に走り、ツェルは目で頷き、フォロンは緊張しながらも自分の役割に責任を持つ。


「ここのボスはBランクのウォータイガーという魔物だ。この魔物は体の八割が水で出来ている厄介な魔物で、体の中心にある核が壊すか水を動かしている骨を砕くかで倒すことが出来る」

「水で出来ているのなら、その水を火魔法でなくすことは出来ないの?」


 僕がウォータイガーの説明をしているとフィノから疑問の声が上がった。

 そう思うけど、そのやり方では倒すことが出来ない。


「出来るだろうけどウォータイガーの水は核から出てきているんだ。その核は微量の魔力で数トンの水を作り出すことが出来るみたいなんだよ。だから、蒸発させても無駄に魔力を消費させるだけで、僕達に疲労が溜まるだけだと思うよ」

「そうなんだ」


 フィノは納得して頷く。

 僕はそれを見て続きを言う。


「基本攻撃は水の弾丸や鞭、刃、ブレスで水を凝縮させて飛び掛かったり、切り裂いてきたりするから不用意に近づかないように。あと、動きも本物の虎より柔軟ですばしっこいから早めに行動してね」


 僕の注意に三人が真剣に頷く。


「作戦は核を壊すことを狙いとして、僕の雷魔法を中心にしていこうと思う。水で出来ているのなら多分雷魔法が有効だと思うんだ。効かなかった時は風と地魔法で戦おうと思う。役割はフィノが足止めと牽制を、ツェルは補助魔法を掛けながら核の破壊を、フォロンは回復と全体の把握をお願い。僕は接近しながら雷魔法を叩き込む」

「近づくの? 怪我をしないでね」

「うん、気を付けるよ。それじゃあ、最後のボスを倒して地上に帰ろう!」

『うん! (はい)』


 門を開けてボス部屋の中に入って行く。




 部屋の中に入ると想像よりも一回りデカい、水色で透き通っている波打つ体の虎が部屋の中央に陣取るように寝そべっていた。

 ウォータイガーの身体は三メートル程。

 水の体に波の縞模様が出来ていて、一見綺麗で芸術的な雰囲気を漂わせている。

 波打った水が泡立ち白色の模様となって消える。体の節々から水の飛沫が上がり、体を纏うように水が浮いている。関節部分から泡が発生していてとても綺麗だ。


「ガアアアアアァァァァ」


 だけど、それとは裏腹に僕達のことを視認したウォータイガーは、体の底から震えあがる様な獰猛な威嚇の咆哮を放ってきた。


 僕達は震えあがるのを精神力で制し、各々の役割に入る。

 僕は背中の白銀の剣を抜き放ち、未だに咆哮を続けているウォータイガーに近づいて雷を纏わせる。

 フィノとツェルはウォータイガーを挟むように立ち、魔法の詠唱を始める。

 フォロンはウォータイガーの死角に入り、全体を見て召喚獣のリーチェと一緒に支援を行う。


「『雷よ、纏え!』ハアッ!」

「グラアアアァァァ」


 僕か近付いたことに気付いたウォータイガーは瞬時に僕の持った剣に警戒して後ろの方に飛び去り、いつでも飛び掛かれるように上体を低くした。


 フィノとツェルの魔法が完成するまであと少し時間が掛かる。僕は地を蹴ってウォータイガーの身体に剣を振う。

 ウォータイガーも僕が近づいたと同時に飛び掛かるように僕に迫り、水でできた前脚を振り下ろしてきた。僕は剣で受けようとしたけど、いつもの魔物と違う感覚を捉え、大きく横に飛び去った。

 僕がいた場所は数本の傷跡が出来ていた。


 僕が感じたのは、僕が腕を受けたと思った時間と実際の時間がずれていたことだ。僕が剣で腕を受けようとしたら剣が肉に食い込む感覚がしなかった。だから、いつもと違う感覚が伝わってきて大きく飛び去ったのだ。

肉が水で出来ているから、剣で肉を立つ感覚が伝わらずにいきなり骨にあたる感覚ということだ。更に水の肉は勢いの反動で大きくなり、効果範囲が広がっているようだ。


 アンデットなら大丈夫だけど、この魔物は骨の周りに変幻自在な水という肉を纏っているため、防いでも水だけが攻撃してくるのだ。そしてその水は鞭のように撓り、岩をも粉砕する威力を秘めている。


「大丈夫ですか!」

「大丈夫。それよりも、すぐにフィノの魔法が放たれるからこの場から引く」


 フォロンが近寄ってこようとするから僕は手と言葉で制して、二人の魔法に巻き込まれないように促した。

 僕がその場から後ろに飛び退くと同時にフィノの魔法がウォータイガーに襲い掛かる。


「『ウィンドバースト』」


 フィノから放たれた風の砲弾がウォータイガーの身体の中心にある核に向かって行く。ウォータイガーは体を捻って躱そうとするけど、遅れた右前脚にあたり水を纏わせている骨を内側に曲がらせた。

 ウォータイガーは魔法を放ったフィノに狙いを定めるが、死角からツェルの短剣が飛び水で減速しつつも核に命中した。が、破壊するところまではいかずに傷を付けるだけに留まったようだ。


「ガアアアアァァァァァ」


 だけど、その少しの傷だけでもウォータイガーは上体を起こして苦しみの咆哮を上げる。

 僕はその間に魔力を瞬時に煉り込み、雷魔法をウォータイガーの身体に叩き込む。


「『ライトニング』」


 ウォータイガーの真上から轟音を鳴らせる雷が降り注ぐ。いつもの魔物と違い、透き通っているウォータイガーの身体は雷がどのように伝わっているのかが見て取れる。

 水の肉を貫通して地面を爆ぜさせる雷と水に広がり綺麗で幻想的な光を発する電流、骨に纏わりついて感電させ放電を放つ。核にも深刻なダメージを与えているようで、ウォータイガーは声にもならない声を上げているのか上を向いて痙攣している。


 雷が止むと不安定になった体から放電を放つ水が噴き流れ、辺りに水溜りを作り出している。骨から泡が発生し、体は高温になり沸騰している。

 雷系統の魔法は結構有効のようだ。

 魔力から作られた水だから大丈夫だとは思っていたけど、純度の高い水は電流が通り難いと聞いたことがあるからウォータイガーの水に通じるかわからなかったんだ。

 

 体をぐったりと横たえたウォータイガーは低く苦痛の声を上げている。

 まだ倒し切れていないようだ。


「ツェル、フィノ!」

『うん(はい)!』


 僕が二人の方を見て名前を呼ぶと既に詠唱に入ろうとしていた。


「「ウィンドストーム」」


 二人から放たれた風の竜巻が横たわっているウォータイガーに襲い掛かる。ウォータイガーはすでに動く力も残っておらず、低く唸るような雄叫びが辺りに木霊する。

 風が不安定となった水を吹き飛ばし、骨に細かな傷を付け、核を破壊した。


 風が止む頃には水が消え去り、傷付きボロボロになった骨と粉々になった核だけが残っていた。少し経つとその骨と核も光の粒子となって消え去り、討伐アイテムだけが残った。


 すぐに迷宮最後の宝箱が出現し、地上への転移陣が設置された場所も開いた。


「お疲れ様。誰も怪我していないよね?」


 僕は三人に怪我をしていないか確認する。

 まあ、僕以外は近づいていないから大丈夫だとは思うけど。


「大丈夫だよ。シュン君はどう?」


 フィノが僕に近づいてきながら、心配そうな顔でそう言ってきた。

 僕は笑って答える。


「僕も大丈夫だったよ。所々危なかったけどね」


 僕がそういうとフィノは安心して笑顔になった。


「シュン様、手に入ったアイテムは水肉と魔剣です」


 ツェルが討伐アイテムを拾って近づいてきながらそう言った。


 水肉というのは正しく水のような肉だ。色や見た目は普通の肉と変わりないけど、触った時の触感はぷよっとしていてスライムのように液体と固体の間といった感じがする。味は円やかで高級な霜降り肉というような感じではなく、筋がない柔らかい肉といった感じだ。


 結構人気のある肉でキロ単価銀貨三枚から五枚はする肉だ。水虎(ウォータイガー)以外で入手するには水鳥(アクアバード)水熊(マリンベアー)という魔物から剥ぎ取ることが出来る。この迷宮で、と考えると五十層以下のこの五層の魔物から低確率で取れ、ウォータイガーから高確率で手に入るという。

 手に入らないこともあるから今回は運が良かったということだ。


「じゃあ、宝箱を開けて地上に戻ろうか」

「何かな何かな? 宝箱を開ける瞬間ってワクワクするよね」

「そうだね。これも迷宮の醍醐味の一つだね」


 古びた大きな宝箱が現れた台座まで歩き、フィノが代表して宝箱を開く。

 迷宮名に設置されている宝箱とは違って、中から魔物が出てくるということもなければ罠が設置されていることもない。

 だから、安心してフィノに開けてもらうことが出来る。


 迷宮内に設置されている宝箱は下の階層、難易度が上がるほど中身が上質のものとなり、出てくるアイテムは難易度によって異なるけど、中級にもなれば魔剣等の価値の高いものが多くなる。

 一定時間で元に戻る宝箱は中確率で罠が設置されている。どのような原理で罠が出来ているのか分からないけど、多分中にアイテムが作られたときに一緒に罠も作られているのだと思う。


「なにこれ? 魔力を感じるから魔道具かな?」


 宝箱から取り出したのは二つのイヤリングだった

 フィノは宝箱の中にあったイヤリングを手に取って僕達に見せながら、肩透かしを食らったかのようにそう言った。

 まあ、その気持ちを分からないでもない。

 両手で抱えるぐらいの宝箱の中からイヤリングが出てきたらそう思って当然だよね。他にも、数十枚の小金貨と数枚の中金貨があるけどそれ以外は何もない。

 本当に何もない。


「フィノ、とりあえずそのイヤリングを良く見せて」


 僕はがっかりしているフィノからイヤリングを手渡してもらう。イヤリングはくすんだ青色のダイヤのような宝石が嵌められていて、留め口も薄いピンク色の銀でできているみたいだ。耳朶に穴を開けるタイプではなく、耳輪と呼ばれる耳の外側にはめて使うタイプだ。もしかしたらイヤリングとは呼ばないかもしれない。

 イヤリングからは結構な量の魔力が噴き出していることから、相当な魔道具なのだろう。


 感じる魔力は今までに感じたことのないもので、呪いの装備ではないみたいだ。どちらかというと装備者に祝福を与えるといった感じだ。


 試しに魔力を流してみると……何も起きない。

 魔力を吸収するだけで何も起きない。

 少しずつ魔力の流す量を増やしていくと、みるみるうちにくすんだ宝石が綺麗で透き通り、光が内部で屈折して光り輝くブルーダイヤのイヤリングに変わっていった。


「わあ、綺麗だね~。シュン君何をしたの?」


 フィノがその現象に感嘆の声を上げた。

 僕が魔力を流すのをやめると放っていた光りが弱まり、少し光るだけのイヤリングに収まった。

 一体何の魔道具なんだ?


「うーん、僕はただ単に魔力を流しただけなんだけど……。調べてみても初めて見るもので、感じたことのない魔力だからよくわからないんだよね」

「シュン君にもわからないの? そっかー、なら、クィードさんに鑑定してもらおう」

「それがいいだろうね」


 僕達はよくわからないイヤリングと宝箱の中の金貨を収納袋に入れて、転移陣に乗り地上に帰還した。




 地上に帰った僕達は早速、今回の戦果のアイテム達を鑑定してもらうためにクィードさんのお店に向かった。

 今回入手したアイテムは道具類が多くほとんどがギルドで換金することになると思う。だから、クィードさんに見せるのは先ほど手に入れたイヤリングと数本の武具類だけだ。


「……このイヤリングは、魔力補充能力を秘めているな」


 クィードさんはイヤリングを捏ね繰り回しながらそう言った。

 魔力補充能力? 初めて聞く効果だ。

 魔力吸収とかなら効いたことあるんだけど、補充は一度も聞いたことがないな。


「魔力補充能力ですか。それは魔力吸収とは違うものですよね? 補填できるということですか?」


 いや、補填と補充は意味が違うか……。


「それで大体合っていると思うぞ。このイヤリングは装備者の過剰魔力を常時吸収して、任意に装備者の魔力を回復させる能力、といった感じの魔道具だな。もちろん過剰魔力じゃなくても吸収してくれる」


 過剰魔力を吸収して、装備者の魔力を回復させる魔道具。それって、所謂魔力回復薬の魔道具版で壊れるまで使えるっていうことになるのかな?


 ああ、過剰魔力っていうのは自身の許容量以上の魔力のことを言うもので、生きるものは全て過剰魔力を体外に放出している。コップに水を注いでコップに入り切っている水を内包魔力といい、零れ始めた水のことを過剰魔力という。

 で、このイヤリングはその漏れ出した魔力を吸収していつでも使えるように保管してくれるものなのだろう。


「それは誰にでも使える物なのですか? 僕が補充してフィノが使う、みたいに」

「いや、そこまで便利なものじゃない。補充した者しか回復させることが出来ないだろう。まあ、こちらは既に魔力が溜まっているからダメだが、こちらはまだ魔力が溜まってないから誰でも使えるだろうよ。補充量もどれぐらいかはわからないが、この填められている宝石の価値が高いだろうから相当な量を溜めこんで補充してくれるだろう」


 クィードさんはそう言って僕にイヤリングを返してきた。

 ということは、一つは僕が補充してしまったから僕専用で、もう一つは誰でも使えるということになるのか。


「一つは僕が補充しちゃったから僕専用で、もう一つはフィノに渡そうと思う。ツェルとフォロンには悪いけど」


 僕はフィノに片方のイヤリングを差し出しながらそう言った。

 フィノはお揃いだと喜びながら受け取り、二人は大丈夫だと断ってくれた。


 二人にも近い効果を発する魔道具を作って渡そうかな?

 魔力を覚えたから多分似たような魔道具を作れると思うんだよね。


「今回は中金貨二枚だな。そのイヤリングの他には魔道具はないようだしな。他は魔剣ぐらいか」

「ええ、踏破した迷宮でのアイテムのほとんどが道具類と食材が多かったですから」


 僕はクィードさんから査定額の中金貨二枚を受け取った。


「次はどの迷宮にする?」


 クィードさんはいつものように迷宮の地図を取り出しながらそう言った。

 僕はそれを手で制して、予め決めていたことを告げる。


「いえ、もう迷宮には挑みません」

「そうなのか?」

「はい。あとひと月もすれば魔法学園に向かうことになるので、これからはその準備と勉強をしようかと思っているんです」

「ならしょうがないか。お前達は上質なものをたくさん持って帰ってくれるから、重宝していたんだがな……。まあ、用があるのなら無理に引き止めはしない。学園に受かれるように頑張れよ」


 クィードさんは僕とフィノの頭を撫でながらそう言った。

 僕とフィノは顔を照らし合わせて笑顔を浮かべると、クィードさんに元気良く返事をした。


『はい! 頑張ります』


古代魔法とか出しましたが、あまり気にしないでいい単語です。

この作品の古代魔法は時代の古い魔法、扱い辛い、効率の悪い魔法だと考えていればよく、古の魔法だとか戦略級の魔法というわけではありません。


ウォータイガーの名前には突っ込まないで下さると助かります。(パクったわけではないです。同じになったんです……)


アクセサリーに詳しくないのでイヤリングではないと思います。説明でわかっていただければいいのですが……。あと、補充であってますよね?


あとシュンがSSランクなのに手古摺り過ぎだという意見が出ましたが、これは普通ではないのでしょうか。いくら強くても守るものが傍に居たり、仲間との連携、初見の相手等があるので瞬殺は出来ないと考えています。

瞬殺できないこともないですが、周りの被害を考えないということになります。特に迷宮は狭いところです。

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