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【星の魔術大綱】 -本格ケモ耳ミステリー冒険小説-  作者: 宝鈴
第24章【Cleanup】クリンナップ
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4 浮上する新たな名前

『昔は大型倉庫にあった……』

 いったん駅から離れた紅葉は、脇を締めて顎を支え、探偵のように考えこんだ。

『もしコリン駅長がショベルカーを中古で入手していたとしたら……前の所有者も大型倉庫に預けていたかもしれません』

『前の所有者に何かあるんですか? 紅葉さん』

『……10年前、私を吊るした犯人だと睨んでいます』

『なるほど! とりあえず事務所に当たってみましょう。——ブーリン警部、大型倉庫の事務所に入ってもよろしいでしょうか?』

 大型倉庫は現在、コリンが仕掛けた爆弾の大捜索が繰り広げられている。オールディスはトランシーバーを点け、12番倉庫にいるブーリン警部に連絡をとった。

『ああ、事務所は問題ない! ついでに残ってる爺さんを引きずり出して避難させてくれ! 危険が危ないぞおおお、ブオオオオ!』

 オールディスは、興奮した警部との連絡をプチッと切った。



 大型倉庫の事務所は、駅から少し歩いた1番倉庫のそばにある。

 赤茶レンガの物置蔵には、膨大な書類が保管されており、物置蔵の玄関である黄色いガレージには、派手な電飾でデコられたギャリバーと共に、ドップラー爺さんが大型倉庫の受付と管理を行っていた。

『すみません。コリン駅長のショベルカーについて、何かご存じでしょうか?』

『あん?』

 洞穴熊族のドップラー爺さんは、昼夜もなく働いているため、目元に黒々としたクマができている。蜜柑タバコを肺にぶち込み、洗濯物を吊るしながらボリボリと背中を掻いた。

『5番倉庫の14-5にあったヤツかい。コリンから毎年カネは払われていたがぁ、ここ3年ほどブツは見ていないな』

『彼はサウザスを去りました……解約していったんですか?』

 石油ストーブの上でヤカンがコポコポ鳴っている。ここはもはや、事務所でもガレージでもなく、ドップラー爺さんの——家だ。

『いんやぁ、次の5月に更新に来なきゃ、3ヶ月後にワッチの所有になるぜぇ。更新にくるか見張っとくかい?』

 ニィーッと金歯を煌めかせた。彼の愛車ギャリバーの、電飾の色とお揃いだ。

『じゃあショベルカーの……前の所有者って分かります?』

 紅葉は金色の輝きに魅せられつつ、ドキドキと彼に問うた。





「——で、誰が持ってたんだ?」

 ショーンの手中の緑山茶はすっかり冷えていた。少し気を抜けば、溢してしまいそうなほど傾いている。

「12年前から7年前まで、とある人物によって倉庫に預けられていたの……赤鶴族のタイ・セイメイに」

 紅葉が厳かに告げた。


「なんでお前ら——戴泉明(たいせいめい)先生を知ってるんだ?」


 急にヴィクトル病院長のドラ息子・アントンに話しかけられ、ショーンは「ウヴァアアアア!」と悲鳴をあげた。

 緑山茶はヌルッと頭上に飛んでいき、カビ臭のする緑色の液体が、ショーンの顔に思いきりブッかかった。



「……それでアントン……戴泉明って誰なんだ」

「先生って言ってたけど、教師なの? それとも医師?」

 ショーンと紅葉の両名は、アントンによって病院の廊下から、ひと気のない3階の奥にある倉庫へと連れていかれた。昔のカルテや古い器具がところ狭しと並んでいる。

 びしょ濡れになってしまったショーンは、消毒液のプンプンするタオルを押しつけられ、クシュン! と何度もくしゃみした。


「戴先生はファンロン州出身の整形外科医だよ。鍼治療もやってた。昔サウザスの東区で個人医院を開いていたんだ。貧乏人でも安く治療を受けられるって評判だったんだぞお!……だいぶ前にクレイトに越していったけどね」

 また外面のいい先生職か……とショーンと紅葉は目を見合わせた。アントンから「そっちこそ、なんで戴先生の名前を出した」と問われ——渋々告げた。

「コリン駅長と関係がありそうなんだ。もしかしたら、10年前に紅葉を吊るした犯人かもしれない」

「ぐううう、やっぱりか!」とアントンがうめいた。

 整形外科医にて鍼師、赤鶴族の戴泉明——

「ユビキタス先生のかかりつけ医だ」

 彼が胸元からカルテを出した。


挿絵(By みてみん)


 数日前にショーンから依頼され、オーガスタス町長のカルテとともに、病院から失敬してきたユビキタスのカルテ——アントンはあれからカルテをじっくり読み、不審な点を探し出していた。

「ほらここ5年前の日付、3年前にも。戴先生の名前があるだろ。戴先生がクレイトにいった後も、何度か診てもらいに通ったらしい」

 古びたユビキタスのカルテには、腰痛、神経痛などの病名や、数種類の薬品名とともに「戴先生」の名前も青インクで書かれていた。

「彼がコリン駅長とユビキタスと繋がってる……州警察に伝えよう!」

 ショーンはいても立ってもいられず、倉庫から出ようと動いたが、アントンが待ったをかけた。

「その2人だけじゃない。エミリオも戴先生に診てもらってたんだ。歩行障害の治療にね」

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