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【星の魔術大綱】 -本格ケモ耳ミステリー冒険小説-  作者: 宝鈴
第22章【Logistics】ロジスティックス
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3 駅長からの置き土産

 ショーンは大地呪文 《グングニル》——

 黄金の細長い光を、サウザスの上空から大地へ放った。

 呪文が放たれたのを見て、紅葉はとっさの判断で、列車を降りて退避するよう運転手らにむかって叫んだ。

 神の槍 《グングニル》は空を斜めに切って進み、

 停止すんぜんの列車の鼻先に飛びこみ、線路を壊し、

 神槍が壁にめり込むがごとく、地面をえぐり割って進んだ。

 光るモグラの口は、禍々しい火薬の塊を飲みこみ、地層の奥へゴブンと潜りこんだ。

 地面下で起爆された爆弾は、間欠泉のように爆風をブシューッと吹き出し、サウザスの大地を揺らす。

 ラヴァ州が誇る鉄紺色の蒸気機関車『イィールド号』は、眼前の爆風にひどく揺れたが……横倒しはなんとか耐えて踏みとどまった。

 貨物駅から離れるべく、北西方面へ走った運転手3名と紅葉らは、起爆音が起きた瞬間、伏せて倒れたが怪我はなかった。



「……たす…か……った……」

 ショーンはヨロヨロと足から生えた翼を動かし、線路の右脇に降りたった。

 グラつく貨物列車から急いで離れて、紅葉らとは逆方向の南東側へ走っていく。

 光るモグラのおかげで衝撃はかなり抑えられたとはいえ、近場で爆発を喰らうのはやはり辛い。

「おえっ……ゲフっ……」

 主に濃煙のせいで、目と鼻と耳が酷いことになっている。

 火薬を使った煙というのは、どうしてこう気管部を痛めつけるのか。

 ジリジリ、バチバチという音も遠くで聞こえる。

「……ジリジリ?」

 厭な予感がして爆弾のほうを向いた。

 炎と煙が大地の裂け目からモクモクと上がっている以外、変わったところは見つからない。

 でもバチバチとどこかで鳴っている。

 よく聞くと、音自体が移動していた。

 地表を見ると、太い線、あるいは管のようなものが熱探知のレンズに映った。

 管はジリジリ音を立てながら赤く光り、右へ右へ……大型倉庫へと向かっている……


「……導火……線……?」

 全部で12棟ある大型倉庫のうち、一番端にある倉庫に、導火線が繋がっていた。

 ショーンがいる位置からおよそ50mほどの距離だった。

 倉庫の壁に置かれている謎の黒い塊は、先ほどの線路脇のものより遥かに大きい。まるでドラム缶が何10本も積まれているような……

「はあっ、ハアッ……」

 まずい、導火線がもう倉庫の近くまで迫ってる……

 止めなきゃ、止めなきゃ……

 そう指先を動かすも、脳みそが完全に動かなかった。

 マナはまだ体内に残っている。なのに何の呪文も浮かばない。

 無意識に猿の尻尾を振った。

 どうする……どうすれば…………



【私とアイススケートをしよう。 《エーリヴァーガル》】



 ショーンの左後方部から右前方へ向かって、雪のように白く輝く光線が体をかすめて飛んでいった。

 冷却呪文 《エーリヴァーガル》——

 氷の川のごとき光線を放ち、触れたものを冷却する。

 パチパチと火花を鳴らしていた導火線は中の火薬ごと凍りつき、着弾前に発火の役割を失った。

「ガッハッハ、お手柄だ! ショーン君!」

「悲劇は食い止めたようだな、小僧」

 簡易トロッコで線路を走ってきたクラウディオとペイルマンが、ショーンを褒め称えた。冷却呪文はクラウディオの右手から発射されたようだった。

「…………おふたりとも……ご無事で……」

 ショーンは全身が脱力し、それしか言葉が浮かばなかった。


「これはこれは。君のとこの駅長氏は、ずいぶんな宝物を置いてきたようだな」

 クラウディオは真鍮眼鏡をレインボー色にキランと光らせ、倉庫に積まれた爆弾を眺めた。

「こんな特大の馬糞があっては、明日の鉄道交通はままならん。さっそく解体するとしよう」

「お願いします、クラウディオ先輩。ワタシはサウザス病院に行って患者の治癒を行います。——お前さんはどうする、もう休むか⁉︎」

 ペイルマンはショーンに向かって怒鳴った。

 サウザスのアルバ、ショーン・ターナーはゆっくりと振り向き……

「ぼくは……」

 彼はどこか遠くを見るような、胡乱な瞳で——

「……治癒を手伝います」

 ——しかし、何かを決意した表情で、先輩たちにそう答えた。


挿絵(By みてみん)

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