99話
僕ことカカソーラは俊敏なエルフだが職業は重装備型の銃剣士。
対する父さんことクウはエルフかつ職業は軽装型の拳聖、やはり瞬発力ではどうしても父さんの方に軍配が上がる。
試合開始から先に攻勢を仕掛けるのは父さんの方だった。
「ある程度相手の好きにさせて楽しむのが俺のスタイルなんだけど……お前に対してはそんなハンデ、必要ないよな!?」
「もちろん!こっちも最初から全力だ!!」
VRの肉体の性能を十全に活かした俊敏な動きから繰り出される父さんの攻撃を、僕もまたVRの肉体の性能をフル活用した機動力でギリギリ回避する。
ただ回避を続けるだけでは闘いの流れをつかむことは出来ないので、僕は銃剣士の専用スキルで防御力の強化とのけぞりへの耐性を付与し、反撃のための賭けに出た。
父さんが繰り出した戦闘スキルを1発だけ、あえて受けるのだ。
戦闘スキルを使用してしまったあとにどうしても生じる隙を利用してそこに反撃を叩き込む!
「はははっ、そろそろそうしてくるタイミングだと思った!」
「んなっ!?」
しかし僕の反撃の策は父さんの想定内だったようで、僕が反撃として繰り出した戦闘スキルに対して父さんはさらに拳聖の専用スキル【カウンター】を合わせて来た。
相手の攻撃にジャストタイミングで発動することで攻撃を跳ね返すこの戦闘スキルによって、僕の攻撃がそのまま跳ね返ってくる!
父さんの攻撃をあえて受けるために発動しておいた防御用の戦闘スキルの効果時間がまだ残っていたので、跳ね返された攻撃を受けてもなんとかすぐに態勢を整えることには成功したものの、闘いの流れを変えることには失敗したため即座に父さんの次なる攻撃が飛んでくる。
「くっ……ここは一旦、【バックステップ】!」
僕は一旦距離を取るべく、隠密の汎用スキル【バックステップ】を発動する。
後方に大きく飛び退くこの移動用戦闘スキルで稼いだ距離を利用して、僕は銃剣士の戦闘スキル【マナバレット】の遠隔攻撃による攻勢に移る。
「どうしたどうした!?そんな腰の引けた攻撃なんかして!もちろんただの牽制だよな?」
父さんは余裕の表情でこちらを煽りながら【マナバレット】の弾丸を回避し距離をつめてくる。
当然この程度で僕はビビったわけじゃない、一旦距離を取ったのは策があってのことだ!
「もちろん反撃の準備だよ!くらえ、【ライトニングゾーン】!!」
僕は武器を地面に突き立て、銃剣士の高レベル戦闘スキル【ライトニングゾーン】を発動する。
直線範囲上に雷属性のダメージゾーンを作り出すこの戦闘スキルは強力な代わりに対人戦では当てにくいが、相手がこちらに向かって突進してくる状況なら十分当てられる技だ。
「いい罠だ!俺が相手じゃなかったらな!!」
しかし相手は常識破りの”絶対王者”、こともなげにダメージゾーンを跳躍そして空中でのさらなる跳躍――2段ジャンプで飛び越えてくる。
それに対して僕は……計画通り、と笑顔を浮かべる。
父さんならそのくらいやると分かりきっていた、この技を使った真の狙いは、父さんに先に空中ジャンプを使わせること!
「もらったぁ!!」
ダメージゾーンを飛び越えて来る父さんの突進をかわすため、僕もまた跳躍する。
それも1回ではなく2回、アルカナとの特訓で身につけたタンク空中ジャンプだ。
これで僕は動き辛い空中にいる父さんに、さらに上空から攻撃を繰り出すことが出来る。
「くらえぇぇぇ!!!!」
今度こそもらった、そう確信した僕が振り下ろす一撃を父さんはひりついた笑みで受け――なかった。
僕の振り落とした刃は空を切り、一瞬完全に父さんの位置を見失う。
何が起こった!?早く父さんを見つけないと反撃をくらってしまう!と焦りながら着地した僕が辺りを見回すと、そこには着地したばかりに見える父さんがいた。
どうやら向こうもそれほど余裕のある状況ではないらしい、それにしても今の攻撃をどうやって避けた?
父さんは先に空中ジャンプを使っていたからもうあの位置から大きく移動は出来ないはず……いや、まさか!?
「まさか……3段ジャンプ!?」
「正解!いや、マジでぶっつけ本番のギリギリ成功だったけどな」
なんてことだ、ここに来てさらなるとんでもないテクニックを成功させてくるとは。
僕はまだまだ”絶対王者”の常識破りを侮っていたというのか。
いや、弱気になるな、新技を編み出さなければならないほど父さんを追い込めたと考えろ。
僕は自分自身を叱咤して、急いで再び武器を構える。
父さんを追い込むことが出来たなら、おそらくそろそろ本気中の本気でこちらを仕留めにかかってくるはずだ。
「期待通り……いや、予想以上に楽しませてもらったぜカカソーラ。でもそろそろそれもおしまいにする時間だな?」
「うん、全力で仕留めに来なよ。あの技を使って」
「ふーん?いいのか、相伝の技――いや、この世界ではカカスペシャルか。あの技を使っちまったら本当にどうしようもなくなるぜ?」
「構わないよ、こっちも同じ、カカスペシャルで迎え討つからね」
僕がそう言うと父さんはうれしそうに、そして興奮を隠さずにぎらりと咲った。
「いいじゃないか、同じ技同士の対決。純粋に使い手の技量比べになるな、それならやっぱり俺の勝ちだぞ?」
「いいや、どっちがよりこの技を理解しているかどうかの対決だよ。つまり師範から正式に教えを受けた僕の方が勝つってことだ」
お互いに勝利宣言をして、僕と父さんは笑い合う。
僕の言葉に嘘はない、強がりは少し混ざっているもののカカスペシャルのぶつけ合いに持ち込めたなら間違いなく僕の勝ちだ。
さあ、全身全霊を込めて、この闘いに決着をつけよう。
「行くぞぉ!!!!」
「よし、かかってこい!!!!」
僕と父さんは同時に叫び、必殺技をぶつけ合うべくお互いに向けて駆け出す。
「「カカスペシャル!!」」
2人の声が完全に重なり、剣と拳、異なる武器で同じ技が繰り出される。
戦闘スキルと戦闘スキルがぶつかり合い、弾き合いながらもお互い途切れることなく次の攻撃を繰り出しまたそれがぶつかり合う。
鏡に写したかのような動きがぶつかり合う姿はまるで2人で息を合わせて踊っているかのようで、観戦しているプレイヤー達にはいつまでも続くかにも思えただろう。
しかしたとえ疲れ知らずのVRの肉体であっても、終わらないものはない。
カカスペシャルの動きが「見せかけの隙」のポイントに入る。
この技を見て覚えただけの父さんはこの「隙」に気がついていないか、「本物の隙」だと思っているかのどちらか。
もちろん病気で寝たきりだったブランクがあっても僕よりも多くの経験を積んでいる父さんが気づいていないということはありえない。
つまり間違いなく父さんはカカスペシャルの「隙」をつこうとしてくるはずだ。
だがこれはあくまで「見せかけの隙」、ここに僕の勝機がある!
「さあ行くぜカカソーラ、俺もこの技の『隙』は見抜いたぜ!!」
「ああ、クウさん。僕もこの瞬間を待ってたんだ!!」
思惑通り、父さんはカカスペシャルの「見せかけの隙」をつくべく攻撃をしかけてくる。
だがそこに攻撃させることにこそ、この技の真の狙いはあるのだ。
言うなればここからが、まだ闘技場で誰にも見せていない、お祖父ちゃんとの稽古で伝授されただけのこの技の真の姿。
名付けるなら真・カカスペシャル!!
「うおおおぉぉぉ!!!!」
僕は「見せかけの隙」をついてきた父さんの攻撃を華麗に受け流し、完全に虚を突かれた父さんに真・カカスペシャル――完全に隙のない連撃を叩き込む!
「まさか、さっきの『隙』を突かせるまでがこの技の……」
「その通り!!”絶対王者”、破れたり!!!!」




