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85話

 さて、クウさんの正体が父さんだったという衝撃の真実が判明したものの、僕の中の彼と闘いたいという気持ちは変わらない……むしろ増すばかりだ。

となれば僕がやることは変わらない、父さんが待つ闘技場最高ランク・エトワールに向けての準備である。

レベル上げの方はアルカナと一緒に既に進めており、今のところ順調だ。

なので次にやるべきは、装備品の準備である。

そのため僕とアルカナ、兼光くんは《ヴァンガード》のクランハウスの地下・工房となっている部屋にいる生産職マスター・フレイさんを訪れていた。


「まさかこんなに早くカカソーラさんのエトワール用装備を用意することになるとはな……マジですごいよ」


「えへへ、アルカナやフレイさんを始めとしたみんなの協力のおかげです。兼光くんもすごくがんばってるんですよ」


「へえ、褒めてもらえてオレも師匠として鼻が高いぞ兼光」


「そんな、カカソーラさんも師匠もあんまりおだてないでくださいよ!」


「素直に受け取りなよ、兼光くん。実際きみも生産職としてすごいスピードで成長してるんだから」


 こんな感じに和やかに会話してから、話題は本題の装備品についてに移る。


「初心者ランクのカドリーユ、中級者ランクのプルミエではレベル制限があったから鉄板の最強装備があったけど、エトワールは最高レベルだから今ある全ての装備の中から構築に合わせた装備品を選ぶ必要があるんだ」


「つまり、同じ職業でも使う戦術によってどの装備品が最適になるか変わるってことですか?」


 僕の疑問にアルカナが答える。


「その通りだよ、カカソーラ。銃剣士(ソードガンナー)はタンクだから防御力を重視した装備にするのが一般的だけど、君の場合近接戦闘技術とVR適正を活かして相手の攻撃は避ける戦闘スタイルを取ってるから防御力はそこそこでいいんだ。重要視するべきなのは銃剣士の専用スキルのリソースになるカートリッジを貯めるのに必要なMPだよ」


「なるほど……」


 特に【マジックバレット】から他の職業の魔法系戦闘スキルを発動する機会は多いし、防御力よりも魔法系能力を高めるべきというのには納得だ。


「そうなると知力を高める追加効果付きの装備が最適で……パンデモニウムシリーズですね!」


「おっ、すぐ出てくるとはちゃんと勉強してるじゃないか兼光」


「パンデモニウムシリーズ……聞いたことあるような、ないような……」


 兼光くんと違って僕は勉強不足だった。

しかし僕には頼れる彼女・アルカナがついている。


「今わたしが使ってる装備シリーズだね。プランシーを倒したら手に入る素材を集めたら作れるんだ」


 アルカナは装備している細剣――パンデモニウムエストックを取り出し僕に見せる。

黒と赤を基調としたデザインは悪魔をイメージしているのか少し凶々しいがとてもカッコいい。


「プランシーって確か、《ヴァンガード》がゴールデンウィークにタイムアタック挑戦してたレイドボスだよね?」


「それそれ、動画も作ったけど観てくれたか?」


 フレイさんが期待するような目をして僕に尋ねる。

そういえばフレイさんは動画制作も担当しているんだったか。


「観ました!めっちゃ面白かったです!!でもあんな強いボスを倒して素材集めなきゃいけない装備、すぐに用意できるんですか?」


「ふふふ、《ヴァンガード》を舐めちゃいけないよ」


 アルカナが不敵に微笑む。


「新記録出すためにめっちゃ練習重ねたからね、参加メンバー全員で分配しても十分な量の素材が集まったよ。わたしの取り分の中から余った素材をきみの装備製作に提供してあげる」


「でもってそこからの装備製作はオレの担当だったからな、思い出したくないくらいパンデモニウムシリーズの装備品は作りまくったぜ」


「おお……頼もしい!」


 流石トップクランは一味違うようだった。


「というわけで、今からオレはカカソーラさん用のパンデモニウムシリーズ装備を作る。兼光はそれを見て現環境での最効率製作手順を覚えな」


「はい、師匠!きっちり覚えてみせます!!」


 兼光くんはフレイさんの隣に座り、ふんす!と奮起する。

弟子の素直な反応にフレイさんもどこかうれしげだ。


「さて、これで装備の方は大丈夫だね」


「うん、いつものことだけど何でも用意してくれてありがとう、アルカナ」


「きみとわたしとで『二人三脚』だもん。さあ、次はMEIさんが集めてくれた情報を元にエトワールに向けた新戦術を考えておかないとね!」


 当たり前のように色々手伝ってくれるアルカナに報いるためにエトワールでも勝ちまくってみせる、という気持ちを込めて僕は強くうなずく。

そしてウィンドウを開き、MEIさんがピックアップしてくれたエトワールの上位ランカーのリストを表示する。

不動のトップである父さんは別でじっくり対策を考えるので置いておくとして、まず注目するのは同じく不動の2位、戦士(ファイター)のヴェントスさんだ。

父さんとの直接対決こそ負けっぱなしだが、それ以外の相手にはほとんど負けなしでエトワール2位の座を守り続けている実力者。

種族はヒューマンでいかつい鎧に身を包んだ偉丈夫といった雰囲気だ。


「ヴェントスさんは正統派に強い感じの人だね。きみ達みたいな異常な機動力があるわけじゃないけど、戦士のポテンシャルを最大限に活かしつつ得意の近接戦闘に持ち込む試合運びも上手い。正直上にいる人がおかしいだけでこの人が絶対王者でもおかしくない人だよ」


 アルカナの解説通り、MEIさんがピックアップしてくれた動画だけでもその堅実な強さが伝わってくる。

この人に勝つためには戦士が使う斧の間合いをかいくぐって懐に飛びこむ必要があるだろう。

自分より間合いの広い武器を扱う相手と戦うのはシンプルに不利だから魔法などの遠距離攻撃が出来る戦闘スキルを活かすのもいいかもしれない。

だがヴェントスさんもその程度の対策は予想済みだろうし……堅実に強い相手と戦うのは本当に大変だ。


「他には……パルクール神拳のゼンさんに、ぽぷらさんもいるね。」


 ゼンさんは以前試合動画を観た風水士(エレメンタルマスター)のバリアを足場にパルクールで立体機動を行う高機動型の二刀流(ツインブレイド)だ。

父さんとの試合では得意技のパルクールを見て覚えられるというインチキで敗北を喫したが、他の人がそんな真似を出来るわけがないので対策は未だされていないと言っていいだろう。

そしてもう1人、ぽぷらさんの戦術はと言うと。


「マニュアルモードで移動しながら魔歌を発動、ついでに魔歌の発動に必要な旋律を速弾きして連続で使用する吟遊詩人(バード)の革命家だね。リアル戦闘技術が高いきみと似たタイプって言えるかもしれない」


「マニュアルモードでそんなことが出来るってことはバイオリンのリアル演奏技術が高いってことだからね」


 ピアノとかギターとかならともかく、バイオリンを習うのってけっこう難易度高い気がするんだけど。

もしかするとプレイヤーはかなりの上流階級の人間なのかもしれない。

アルカナだってリアルの秘ちゃんは国内有数の大企業・三千院コーポレーションの社長令嬢なわけだし、そういう人がDFOで遊んでいても全くおかしくないのだ。

さてその次は……という風に上位ランカーのリストを見ていくと、最後に1人あまりランキング順位が高くないプレイヤーがピックアップされていた。

降格圏内ギリギリといった順位で、もちろんエトワールにいるのだから油断できない実力者ではあるはずなのだが。


「あるるかん、通称”道化師”?」


 通称そのまんま、ピエロのような格好をしたドワーフの男性で職業は死神(デスサイズ)のようだ。

なぜこの人がピックアップされているのか疑問に思いつつも、僕はMEIさんが添付してくれている試合動画を観ることにした。

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