84話
DFOのはじまりの町・ブレイブポート。
その居住エリアにPieceさん――もとい僕の兄嫁である日向義姉さんが個人で所有しているハウスにて、僕とアルカナ、Pieceさんとクウさん――父さんは集まっていた。
「……で、日向さんもDFOにドハマリしてることが露呈したけど普通に受け入れられて、せっかくだから身内パーティで遊んでみなよってことになったと」
「あははは……その通りです、秘ちゃん」
アルカナがジト目でPieceさんを見つめつつ現在の状況をまとめる。
ちなみに僕が話の流れで家族みんなにアルカナはそれ以上にドハマリしていることをバラしてしまったことはまだバレていない。
……さて、どこまで誤魔化しきれるか。
「世間が狭すぎてビックリですよ……というか天と同じくクウさんの正体に全く気がついてなかったわたしが言うのもなんなんですけど、日向さんはクウさんとカカソーラの正体には気付かなかったんですか?」
「クウがお義父さんだってことはわかってたんだけど、カカソーラくんはクウに憧れて見た目を真似してるだけの子だとばっかり思ってて……」
「実際俺の見た目真似してるだけのプレイヤーはたまに見かけるしなぁ。実力は全然伴ってないけど」
父さんは少し恥ずかしそうにそう語る。
クウさんが活躍して以来拳聖の人口も増えたらしいし、父さんのDFOにおける影響力、ちょっとヤバいかもしれない。
「それにしても、日向さんのハウスはかなり作り込んであるな。俺はクランのハウスでもらった個室も放置してるからこういうのちゃんと作ってる人は尊敬するよ」
そんな父さんの言葉を受けて改めてPieceさんのハウスの内装を見渡してみる。
オシャレな喫茶店風の内装で、現実にあっても人気店になりそうないい雰囲気が出ているし、店員代わりに置いている使用人(Gを払ってハウスの中に設置できるショップNPC)はエルフだったりブラウニーだったりでファンタジー感も出している。
「ホントだね、家具揃えるの大変だったんじゃない?」
「ほとんどプレイヤーマーケットで買ったから揃えるのはそんなに大変じゃなかったかな。配置だってネットで見たハウジング講座サイトをかなり参考にしたし」
「そんな謙遜しなくても、本当に良く出来てますよ?……まあ、家具を全部プレイヤーマーケットで揃えたり個人のハウスを購入する資金はよく稼げたなって思いますけど」
「うっ……それも攻略サイトで金策方法調べてがんばったっていうか……」
アルカナのツッコミにPieceさんが目を逸らす。
僕にはまだよくわからないが、やり込んでいるアルカナにはPieceさんがこのいい感じのハウスを作り上げるのにどれだけ心血を注いだか大体わかるようだ。
「そ、そんなことより!せっかく集まったんだし、みんなで何するか決めましょうよ!!どこに行きます?高難易度ダンジョンとか、せっかくだからレイド少人数クリアに挑戦してみます!?」
Pieceさんが露骨に話題を逸らし始める。
まあ確かにせっかく4人、パーティを組めるだけの身内で集まったのでただDFO内でおしゃべりするだけではなく何かのコンテンツに挑戦は僕もしてみたい気持ちがある。
だが、僕には今やるべきことが決まっているのだ。
「それなんですけど、闘技場に向けての汎用スキル集めのためのレベル上げがまだ残ってて……出来たらダンジョン周回してレベル上げをやりたいんです」
「そうそう、天はおじさんとの決戦に向けての準備で忙しいんだよ」
僕とアルカナの発言を受けて、クウさんはうれしそうにしつつこう言った。
「父さんとの対決に向けて、か。楽しみにしてくれるのはうれしいけど、それに父さんが付き合っちゃっていいのか?」
「もちろん大丈夫ですよ、どの職業の汎用スキルが使えるかわかった程度じゃ対策できない作戦を考えるつもりです。ね、天?」
「うん。もちろん父さんが僕を強くする手伝いはしたくないっていうなら無理強いはしないけどね?」
「ははは、言うようになったじゃないか。いいよ、今日は一緒にお前のレベル上げをしよう。日向さんもそれでいいかい?」
僕の煽りにクウさんはむしろ喜んで応えてくれた。
Pieceさんも大丈夫です、とうなずいて、我ながら豪華メンバー過ぎる身内パーティでの活動はレベル上げのダンジョン周回に決まった。
まずはまだこなしていなかった今日の分のランダムダンジョンからだ。
これにはタンク・ヒーラー・DPS2人揃ったパーティで挑む必要がある。
僕はレベルを上げておきたいDPSの魔導師で行きたいところで、ヒーラーは陰陽師のスペシャリストであるPieceさんがいる。
……ヒーラーの枠に全く収まらない動きをする殴り陰陽師だけどね!
問題はアルカナとクウさん、どちらがタンクをやるかである。
「実は父さん拳聖以外の職業に全く自信がないんだ」
「そうなの?」
「一応いくつかの職業は触ってみてるんだけど、拳聖が楽しすぎて……特にタンクとヒーラーはひたすら殴れないのが面倒で……」
「思考が前のめり!!」
「じゃあわたしが今日は暗黒騎士でタンクやりますね。《ヴァンガード》最強タンクのもめさん仕込みの動き、見せてあげますよ」
そういうわけでアルカナが暗黒騎士、クウさんが拳聖で挑むことになった。
やはりアルカナは頼れるね!
前に言ってた使いこなせるのは魔法剣士と賢者くらいっていうのは完全に嘘だったみたいだけど!!
「じゃあパーティ組んで、ランダムダンジョンに申請いきますよー?」
「うん、さっそく行ってみよう」
「よろしく頼むよ、みんな」
「まずはパーティの雰囲気をつかむためにゆっくり行きましょうね」
アルカナが呼びかけ、僕・クウさん・Pieceさんの順番で答えてランダムダンジョンに申請する。
パーティ全員揃った状態での申請なので、マッチングのための待ち時間はなく即突入だ。
選ばれたダンジョンはLv47ダンジョン:オーク要塞だった。
メインクエスト1章も後半で挑むことになるダンジョンで、強行攻略をやっていた頃はそこそこ難しさを感じた記憶がある。
しかし今はあのときよりキャラクターのレベルも、僕のプレイヤースキルもずいぶんと上がっている。
しかもパーティメンバーは強者揃い、となればダンジョン攻略風景はこんな感じになるわけで……
「よーし、ガンガン進んでいくよ!わたしの後ろについてきて!!」
「はははー、見てろ天!父さんがオークをボコボコにする姿を!!」
「なんかもう余裕っぽいのでわたしも回復より殴るの優先しますね」
「わーい、みんなが進む速度すごすぎて魔法発動する暇がないや……」
なんということでしょう、平和(?)なオークの砦がエルフ3人とヒューマン1人に襲われています。
蹂躙、その2文字がふさわしい勢いで僕達はLv47ダンジョン:オーク要塞を攻略した。
「ふぅ、秘ちゃんも日向さんも上手だな。天ももうちょっとがんばれー」
「魔法使い系職業がいることを気にしたスピードで進めてもらえたらもっと出来たんだけどね!!」
「まあまあ、早く経験値効率のいいダンジョンでの周回にいこう。次は自由編成で挑めるようにもうなってるからわたしは魔法剣士に変えるね」
アルカナにせっつかれて、僕達はすぐにダンジョン周回へと向かう。
今度は魔導師・魔法剣士・拳聖・殴り陰陽師という全員攻めるつもりしかないパーティ編成である。
それでもアルカナが真の力を解放した以上、編成の偏りなど問題になるはずもなく。
「行くよ!強化魔法メガ盛り魔法剣をくらえー!!」
僕どころかPieceさんとクウさんすら置き去りにしてのアルカナワンマンショーだった。
「……天、いつもこんな感じでダンジョン周回してるのか?」
「だいたいこんな感じだねぇ」




