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83話

「……つまり見た目も名前もそのまんまでゲームをやってた父さんに気付かず憧れてたと」


「おまけに自分も見た目はそのまんまにしてたから世間では身内説が普通に流れてたのか」


「それで全然気付いてなかったって……天お前さあ……」


「天おにいちゃんってばにぶい~」


「あらあら、天ちゃんったら」


「変なところ鈍いのもお父さん似ね。出会ったばかりの頃なんてほんとに……」


 僕とクウさん――ゲーム内での父さんとの事情を説明する羽目になり、結果この総ツッコミである。

自分でもふり返ってみたら真っ先に思い浮かべるべきだろ、って思うけどね!!

唯一日向義姉さんだけが苦笑いを浮かべて見守ってくれている中、父さんが再び衝撃の事実を語り出す。


「父さんはお前の噂が出回りだしてすぐにそうなんじゃないかって思ったぞ?”闘技場のニューヒーロー”ことカカソーラくん」


「え、そっちは気付いてたの!?」


「カカソーラ……ああ、花に果に、天を伸ばしてソーラか。お前もけっこうそのまんまな名前でやってたんだな」


 風伯父さんが冷静に僕のDFOでのキャラクター名を分析する。

そういう風に言われるとなんか恥ずかしい!そこそこ悩んで考えた名前なんだよ!?


「名前はともかく、見た目は本当にそのまんまだったし、母さんからお前がDFOやりだしたことは聞いてたからな。カカソーラの存在を知って、『打倒クウ』を掲げているとからずっと、お前だったらいいなって思ってたんだ」


 父さんは遠い目をして語り出す。


「天、お前とはほとんど一緒に過ごせてないし、遊んでやったこともない。やっと病気が治っても、もう高校生のお前が父親と遊ぼうなんて言われても、恥ずかしくて出来ないだろう?でもDFO――ゲームを介してなら、同じ世界で楽しく遊べるかもしれない。そんな期待をしちゃってたんだ」


「父さん……」


 確かに僕は父さんとどう接していいかわからなくなっていた。

そしてその悩みは、父さんも同じように抱いていたものだったのだ。

でも今DFOという共通の話題――ついでに憧れの人の正体が父親というとんでもないショックの影響――によって、けっこう普通に話せてしまっている。

普通とは違うけど、「家族」の一歩を僕と父さんは踏み出せたのだ。


「まあ、正体がわかっちゃったら今までと同じようにライバル視は出来ないかも知れないが……」


「そんなことないよ!」


 僕は父さんの心配を全力で否定する。


「父さんと同じものに夢中になってたってわかって、自然に話せる話題が出来て、今ものすごくうれしいんだ!これからも父さんの言うように同じ世界で遊びたいし、直接戦ってもみたい!!」


「天……そうか。そう言ってくれるなら、このまま”絶対王者”としてお前の挑戦を待ち受けなきゃな」


 父さんは安心したように咲い、右の拳を突き出した。

僕はそれに応えて、自分の右の拳を出して突き合わせる。


「次の闘技場シーズン、父さんに挑んで、絶対に勝ってみせるよ!」


「全力で来い、父親という壁を越えてみせろ!!」


 僕と父さんは対決を誓い、僕達なりの「家族」を共に歩み出すのだった。

その光景を見ていた家族のみんなは、良かった良かったというように暖かく見守ってくれている。

まあ兄ちゃん達に僕が父さんとの関係に悩みがあったのバレてたもんね……安心もするか。

というわけで、それから僕と父さんは家族のみんなも交えてこれまでのいきさつをさらに詳しく説明しあうことにした。

秘ちゃんと一緒に闘技場に挑戦する実力をつけるためかなり無茶なレベル上げをしたこと、一緒に闘技場に挑戦するクランの仲間や試合を通じて仲良くなったライバルが出来たことなどを僕が話し、父さんはDFOの世界で病気になる前のように思いっきり闘えたことが本当に楽しかったこと、これまで試合をしてきた個性豊かな面々についてなどを話してくれた。

……話の流れで秘ちゃんがかなりディープなプレイヤーであることも話してしまったが、まあ大丈夫だろう。


「おじいちゃんも天おにいちゃんもなんだかアニメのヒーローみたい!カッコいいね!!」


「どちらの強さの秘訣も現実での修業の成果があるわけか……花果無形流の宣伝に使えるか?」


「いや、空も天も極まってるから一般人には真似出来ねえよ親父!」


 こんな感じに家族全員で和やかな時間を過ごしている……一人を除いて。

日向義姉さんが不自然にしゃべらないのだ。

よく見ると苦笑いどころかひきつった笑いを浮かべているように見えるし、冷や汗もかいている。

どうしたんだろう、もしかして体調でも悪いのかな?


「日向義姉さん、さっきから黙ってるけど何かあったの?」


「へっ、な、何もないわよ!?全然ホント、気にしないで!!」


 明らかに挙動不審だった。


「確かに様子が変だな、どうした日向?お前もあのゲームやってるんだから話に混ざればいいのに」


「そうだよー。おかあさんどうしたの?」


「そうそう、前は秘ちゃんと2人っきりを邪魔するのは良くないって言ってたけど、お父さんもやってるんだからたまにはみんなでやってみるのもいいんじゃないかしら?」


「あはは……そうですね……」


 兄ちゃんとのどかちゃん、母さんが次々と日向義姉さんを問い詰める。

その内容からすると、どうやら日向義姉さんもDFOをやっているらしかった。


「なんだ、日向さんもDFOをやってるのか?」


「まあ、ちょっとだけ……」


「そうだよ、おじいちゃん!前にちょっとだけ見せてもらったけどね、おかあさん()()()っていうキャラクターでおふだでバンバンして戦ってるの!」


 ぴーす?

御札でバンバン戦う?

それってもしかして……?


「のどか!あれはみんなには秘密だって……気にしないでください、あの、陰陽師(オンミョウジ)使ってるだけで有名だったりは全然しないっていうか!」


「えー?おかあさんゲームの中でも空手やってるときみたいでカッコよかったのにー」


「……陰陽師なのに空手?」


 のどかちゃんの発言に、兄ちゃんを始めとした僕と父さん以外の家族は首を傾げる。

しかし僕と父さんにはもうその発言の意味がハッキリとわかっていた。

ぴーす、陰陽師、空手をやっているかのような動き。

間違いない、日向義姉さんが殴り陰陽師のPieceさんだ!!


「日向さん……そうか、俺達とはちょっとレベルが違うみたいだな」


 父さんはそう言って、僕にチラチラと視線を送る。

どうやらみんなに隠したがっている日向義姉さんの気持ちを尊重しようということらしい。


「……そ、そうだね。闘技場もやってないみたいだし!」


 僕はわざとらしくならないようにがんばって演技して、父さんの調子に合わせる。

それを察した日向義姉さんは少し表情を明るくして答える。


「そうなんですよ!!わたしじゃ天くん達の足を引っ張っちゃうっていうか、陰陽師の真っ当な動きをまだ出来てないくらいですから!」


 うん、たしかに真っ当な動きはしてなかったですね。

日向義姉さんのしゃべり方がかなりぎこちないが、これでごまかせるか……?


「そうなの?まあ日向さんは少しだけしかやってないらしいものね」


「はい!のどかが幼稚園行ってる昼間ずっととか、寝ちゃった後ずっととか全然やりまくってませんから!!」


「やってるんだな……日向さん」


「……家事はちゃんとやってますし、のどかを寂しがらせたりはしてませんから。課金もほとんどしてないみたいですし」


 日向義姉さんのものすごい墓穴の掘りっぷりだった。

もうこれはごまかすの諦めたほうがいいかもしれないね。

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