77話
「そうなんですか!良かったらお二人もいっしょにお昼ご飯を……」
「こら、カカソーラ。気軽に会う約束しないって今言ったばっかりでしょ」
そうでした。
ルピナスさんとシリウスさんは同じクランだしすっかり仲良しのつもりだったけど、よく考えたらお互いに本名も知らないんだった。
「アルカナさんはしっかりしてて偉いな」
「ボクらみんな未成年だもんねぇ。でもせっかく同じ場所に集まるんだから会ってみたくなるよね……」
そんなことを話していると、もめさんがルピナスさんに声をかけてくる。
「ルピナスさーん、そろそろ解散でいいかな?」
「おっと、そうだね。じゃあ順次解散で。みなさん改めて今日はご参加ありがとうございました!」
「はーい、お疲れ様」
「楽しかったよ、また一緒にやろうな」
こんな感じに解散が決まり、各自挨拶を交わしながらダンジョンを退出、パーティから抜けていく。
ミロさんやPieceさん達とも別れの挨拶をしたところで、ルピナスさんがこう提案した。
「解散になったしファン感謝祭の話の続きはうちのクランハウスでやろう。リンさんもそれでいいかな?」
「ああ、大丈夫だぜ。クランハウス、お邪魔させてもらう」
「……なんかクラン全員でオフ会する流れになりそうなんですけど」
「まあいいじゃない、せっかくだからみんなで楽しもうよ」
ぼやくアルカナをなだめつつ、僕達もダンジョンを退出し《ヴォワヤージュ=エトワール》のクランハウスへと向かった。
やって来たクランハウスにはアルカナの予想通り、MEIさんと兼光くんも集まっていた。
「みなさんレイドお疲れ様でした!……っと、リンさんもいらっしゃいませ」
「どうもリンさん、まだ改築も進んでいないクランハウスですがどうぞごゆっくり」
「ああ……なんかファンシーな内装なんだな」
着ぐるみのMEIさんに合わせてメルヘンチックになっているうちのクランハウスの内装に、リンさんはちょっと意外そうにそう言った。
「ふふふ、可愛いでしょ?MEIさんが専用のアニバーサリーキングチェアに座るとさらにいい雰囲気に!」
「よっこらせと」
ルピナスさんにうながされるまま、今日は白に茶色のぶち模様の犬の着ぐるみ姿のMEIさんが童話の王様が座っているような椅子に座る。
それは完璧と言えるほどに絵本の1ページのような光景だった。
「うわカワイイ!!」
リンさんは思わず噴き出す。
「楽しんでいただけて何よりです。ところで、解散前に少し話し込んでいたようですしリンさんがクランハウスまで来たのは何か相談があったのでは?」
「そうそう、今週末のDFOファン感謝祭の話なんだけどね」
ルピナスさんはMEIさんと兼光くんに僕達5人がDFOファン感謝祭に行く予定であること、せっかくだから一緒に昼ご飯を食べないかと僕が提案したこと、未成年である僕達が気軽にリアルで会うのはどうかとアルカナが心配していることなどを説明した。
「なるほど……実は私も行く予定なんですよね、ファン感謝祭」
「おれもです!アルカナさんが心配するのもわかりますけど、せっかくのチャンスですしみんなでオフ会やりませんか?」
アルカナの予想、完全的中だった。
特に兼光くんはかなりノリノリのようだ。
「私はこの中で唯一成人ですからうっかりすると逮捕ということもありますので、オフ会するのなら保護者同伴は最低条件ですね。そういえばルピナスさんとシリウスさんは以前地方在住と言っていましたが、保護者の予定は大丈夫なんですか?」
「うん。ボクの年の離れた上の方の兄貴が東京に住んでるから、ボクとシリウスの保護者役をやってもらう予定だよ」
「おれはお父さんに連れて行ってもらう予定です」
ふむふむ、みんな保護者同伴はクリア出来るようだ。
そうなったところで、アルカナが口を開く。
「まずみんな連れて行ってもらう約束はしててもDFOでの知り合いと会う話はまだ保護者にしてないでしょ?そこらへん相談してから明日また話したほうがいいんじゃない?」
「その通りですね。まずは許可を取ってから、詳しい話はその後です」
ふむ、それはその通りだ。
というわけで僕達は明日もう一度クランハウスに集まる約束をして、レイドの疲労を癒すべく今日のところはここで解散、ログアウトということになった。
そして翌日。
朝の稽古が終わって朝食の時間、僕は家族にオフ会をしたいという相談をした。
もちろん秘ちゃんのお父さんに保護者としてついてきてもらうこと、公式イベントの会場の中でのみ会うこと、オフ会のメンバーはまず保護者の許可を取るようにちゃんと確認していることも説明した。
母さんが密おじさんに確認の連絡を取って、しばらく話し合いの後なんとか許可をもらうことが出来た。
「ちゃんと密くんの言うことに従うのよ?」
「うん!住所とかも絶対教えないよ」
その後わくわくしながら1日を過ごし、いつも通り夕食後にDFOにログインした。
アルカナと一緒に向かったクランハウスにはルピナスさんとシリウスさんが既に居て、少し待つと兼光くん、リンさん、MEIさんの順番で全員が揃った。
「はーい、ルピナス議長だよ!それぞれ許可取れたか報告していきましょー!!まずボクとシリウスはそれぞれの親にも連れて行ってくれる兄貴にもちゃんと許可取ってきたよ」
「わたしとカカソーラも許可もらってきたよ。当日は私のパパに保護者としてついてきてもらう予定」
「おれもお母様にきちんと説明して許してもらったぜ」
「おれもお父さんに許可もらいました!」
どうやら全員首尾よく進んだようだ。
そうなると、メンバーは僕、秘ちゃん、密おじさん、ルピナスさん、シリウスさん、ルピナス兄、リンさん、リンさんママ、兼光くん、兼光くんパパ、MEIさん……11人になるわけか。
けっこうな大人数、お昼ご飯を食べるカフェでは2つのテーブルに別れる必要があるだろう。
「了解しました。では幹事は年長者の私が務めるということで。いいですか、1人でも保護者と一緒じゃなかったり相談してなかったことがわかったりしたら即中止ですからね?」
「もちろん、わかってるよ」
「ちゃんと相談してるからそれで問題ないよ。じゃあ議長役も幹事のMEIさんにパース!」
それから僕達は集合場所と時間などの細かいことを相談して、オフ会の準備を済ませた。
僕とアルカナは闘技場の最高ランク・エトワールに向けたレベル上げがまだ残っているのでこの後ダンジョン周回に行くことを告げると、兼光くんとリンさんが同行を申し出てくれた。
というわけで、現在レベル上げ中の騎士の僕、他2人に合わせてヒーラー職業の賢者を選んだアルカナ、侍の兼光くん、魔導師のリンさんの4人パーティーでのダンジョン周回が始まった。
「じゃあみんな、範囲攻撃の回避にだけ気をつけてね。ちょっとだけなら当たっても回復する余裕あるけど……まあ基本わたしに任せて自分の身を守る感じで、はい、スタート」
正確にはアルカナ無双の時間が始まった。
敵を引き付けている僕のHPを回復魔法で維持しつつ、攻撃魔法も撃ちまくってほぼ1人で敵を殲滅していく。
普段は僕とアルカナの2人でダンジョン回ってるけど、そのときも大体こんな感じなんだよね……
「流石アルカナさん、敵がゴミのようだぜ」
「もう全部あの人1人でいいんじゃないですかね……」
「あはは……つまんなかったら付き合ってくれなくてもいいよ?」
「まさか!アルカナさんの勇姿を特等席で見れるチャンスを逃す手はないぜ!!」
「おれも、カカソーラさんとご一緒できるならどんなとこにでも行きます!!」
2人がいいならいいけどね!
こうして今日のダンジョン周回で僕の騎士と兼光くんの侍はレベルマックスになりましたとさ。




