75話
深淵を覗いてしまったメンバーを出しつつも鍵を見つけ出し、他のチームと合流して「真世界の門」と表示されている巨大な扉を開ける。
するとイベントシーンが始まり、扉の中から漆黒の体にコウモリのような翼、緋色の瞳を持つ凶々しくもカッコいい見た目のドラゴンが現れる。
「ジズ姉様が導いた勇者……我の元までやって来るのはいつぶりか。この狭間の領域で見た真実を知ってなお、試練を続けるというのか?」
そう語りかけてくる声までカッコいい。
これが2体目のボス、「恐るべき竜・バハムート」!
「ガチでここでしか会えないバハムートさんお久しぶりです!」
「目覚めちゃいけないはずのレヴィアタンさんの方がよく見かけるぞ」
「もっと自己主張して♡」
ベテランプレイヤーのみなさんの反応は全然恐れられてないけど!
というかこんなカッコよくてハイクオリティなモデル作ってるのにここしか出番ないってマジ!?
「バハムートの声優さんはDFOの重プレイヤーで配信のゲストにもよく呼ばれるからことあるごとにバハムートの再登場を願ってるよ」
「本当になんでそんな扱いを……?」
「バハムートにはここ――狭間の世界で世界のバランスを保つ大事なお仕事があるから……」
そんなことをアルカナと話しているうちにイベントシーンが終わり、バハムートとの戦闘が始まる。
まず精鋭のAチームのタンクであるもめさんと冷やし中華さんがバハムートの強力な攻撃を受け止め、ヒーラー勢が2人の回復に専念し残りのメンバーでひたすら殴る。
序盤の流れはシンプルだったが、バハムートの難所はここから。
前兆として現れるオレンジ色の範囲が表示されない範囲攻撃を連発してくるのだ。
「最初の範囲攻撃はバハムートの頭上に現れる魔法陣の方向に直線、その次はバハムートの近くに円範囲!これを3回繰り返すよ、わかんなくなったらわたしについてきて!」
動画での予習とアルカナの指示を頼りになんとか範囲攻撃を回避する。
流石バハムートという大物の名前が付いているだけはある……と感心する暇もなく、今度はタンク全員に周囲に大ダメージ攻撃が来ることを示す矢印マークが付く。
「タンクは散開と防御系戦闘スキル!海石榴さんはカカソーラにバリア貼って!!」
「わかりました!」
バリアをもらいつつ、自分でも散開しつつ防御力を上げる戦闘スキルを使って備えた上でもHPゲージの半分近くが削れる大ダメージをくらう。
さらに間髪入れずまた前兆のない範囲攻撃、なんとかアルカナについていって回避する。
慣れない範囲攻撃の連発に僕がいっぱいいっぱいになっている横で助っ人のみなさんは縦横無尽の大活躍。
竜騎士のヴァイオレットさんは移動効果付きの攻撃スキルで回避と攻撃を同時にこなし、リンさんはわずかな立ち止まれる時間を有効に活用し強力な魔法を放つ。
水月さんは合体剣を大太刀形態で振り回し、”ツインスネーク”さんも2本の剣を華麗に操って的確にバハムートのHPを削っていく。
そして必死に回避したり散開して大ダメージを受け止めたりを繰り返した末に、バハムートの撃破にも成功した。
「よくぞ我が『調和』の試練を乗り越えた、汝らに究極のドラゴン――レヴィアタン兄様への謁見を許す」
バハムートがそう告げると、また異空間へつながるゲートが現れる。
あれを通ればついに3体目、最後のボスとの戦いが始まるのだ。
「はい、2体目のボスもお疲れ様。みんなこのまま行っちゃっても大丈夫かな、初挑戦の人達はどう?」
ルピナスさんの問いかけに僕達初挑戦組は少し興奮気味の気分を落ち着けてからもう行けると答える。
そしてまたのんびりとゲートを通ると、たどり着いたのはのどかで美しい花畑。
BGMもここまでのダンジョンらしい緊迫したものからゆったりとしたテンポの穏やかなものに変わる。
「なんか随分平和なところに出ましたね……ザコ敵も見かけませんし」
「ここは最後のボス『真なる竜・レヴィアタン』が見ている夢の中です。まさにこのレイドダンジョンの名前通り、『真竜の夢』というわけですね」
僕の感想を聞いて、MEIさんが解説をしてくれる。
「プロローグでの説明なのでカカソーラくんも聞いたはずですが、DFOの世界・ドラゴニアは眠りについているレヴィアタンの肉体が形を変えたもの。レヴィアタンが目覚めると元のドラゴンとしての形に戻って現在の文明は滅んでしまうんです」
「あ、それは覚えてます。それと確か……魔族が増えすぎるとレヴィアタンの目覚めが近づくとか」
「その通りです。それでドラゴンの女王・ジズが選んだ英雄に試練を課してここ『真竜の夢』へとたどり着かせ、レヴィアタンと契約してその眠りを守ると誓って現文明の延命を図る……これがこのレイドダンジョンのおおまかなストーリーです」
「なるほど……スケールの大きいダンジョンですね」
「メインクエスト進めてるとちょくちょく目覚めそうになってるんだけどね……あ、海原が見えてきたね、あそこにレヴィアタンがいるよ」
アルカナが会話に入ってきて前方を指差す。
そこには紺碧の穏やかで美しい海原が広がり、とてもこれから戦闘が行われるとは思えない。
しかし僕達が近づくと急に巨大な渦潮が発生し、そこからドラゴンが現れる。
アメジストのように美しく輝く鱗を持つ、薄紅色の瞳の優雅な雰囲気のドラゴン――「真なる竜・レヴィアタン」だ。
「ジズ姉様とバハムートが選んだ英雄か、それにしてはなんと矮小なことか……」
レヴィアタンの言葉はどこか棘があり、僕達プレイヤーに期待していないような雰囲気を感じる。
「貴様らを生き延びさせる価値が果たして余にあるのか?どれ、示してみるがよい」
堂々とした上位種族しぐさに、ロールプレイヤーであるリンさんがノリノリで答える。
「もちろんあるぜ。おれ達人類には、未知を求め成長し続ける『可能性』という力があるんだから!」
それに乗っかるのは闘技場最高ランク・エトワールに到達しているぽぷらさん。
「DFOに捧げる廃プレイパワーと課金パワーも忘れてもらっちゃ困るわ!」
「DFOが末永く続くようにお布施がんばります!」
「オレ達動画勢の布教パワーもあるぜ!」
「今週末のリアルイベントも遠征予定、経済回すぜ!!」
次々と悪ノリしていく参加者の答えを聞いているかのようにレヴィアタンは頷き、再び語り出す。
「よかろう、貴様らの語る『存在価値』これより戦いの中で見せてみよ!!」
「はーい、『真竜の夢』最終ボス戦はっじまっるよー!!」
ルピナスさんの開幕宣言と同時に僕達は防御と回復の戦闘スキルを発動する。
レヴィアタン戦のスタートは全体攻撃連打なのだ。
「Aチームはレヴィアタン本体、Bチームは召喚する竜巻、Cチームは尻尾の相手をするよ!最初は普通のボス戦と同じ感じで進むから落ち着いて戦おう!!」
アルカナの指示が飛び、各チーム目標に向かって攻撃を開始する。
本体からの強力な攻撃を受け持つAチームはもちろん、移動する竜巻の攻撃が他のチームを巻き込まないように誘導するBチームも大変そうだ。
しかしAチームは精鋭揃いだけあってどこか余裕もあり、Bチームもミロさんが的確な指示を飛ばしながら見事なコンビネーションで役割を果たしている。
そうなれば僕達Cチームも負けてはいられない!
「カカソーラ、次の攻撃はユニティさんとタンク二人で受ける攻撃だよ。カートリッジの補充は大丈夫?」
「貯蔵は十分!行ってきます!!」
「よし、上出来だカカソーラくん!」
アルカナの指揮もあり、いい感じに尻尾の攻撃に対処する。
初めてのレイドクリアまであと少し、やってやるぞ!!




