73話
「よくここまでたどり着いてくれました……我らの試練を乗り越えて、どうかこの世界を守る真の”英雄”となってください」
24人レイドダンジョン「真竜の夢」は清らかな声に導かれて幻想的な空間へたどり着くムービーから始まった。
メインクエストをほぼ読み飛ばしていた僕だが、この声はまだ普通にやっていた頃にも聞いたし、メインクエスト1章ラストのダンジョン3連発でもサポートをしてくれたからよく覚えている。
プレイヤーである僕を最初に見出し力を貸してくれた、ドラゴニアを満たす生命エネルギー・エーテルを司るドラゴン達の女王――
「この声、ジズ様だ!」
「そう、『真竜の夢』の最初のボス戦はジズ様による力試しだよ」
「ジズ様は『創造』を司り、次々と眷族を生み出してけしかけていきます。敵の数が増えても焦らず冷静に対処していきましょう」
僕のリアクションにアルカナとMEIさんがジズ様に関する解説を入れてくれたところでムービーも終了した。
スタート地点に集まった24人は、まず決めておいた3つのチームごとに集合して準備を確認する。
「Cチーム、確認するよ!まずはタンク二人から」
僕達Cチームはアルカナが仕切って確認を行った。
「タンク1、ユニティ。問題なしだ」
「えっと、タンク2、カカソーラ。大丈夫です」
「ヒーラー1、Piece。OKでーす」
「ヒーラー2、海石榴。多分大丈夫です!」
「DPS2、フレイ。行けるぜ」
「DPS3、MEI。準備万端です」
「DPS4、兼光……がんばります!!」
「はーい、DPS1のアルカナも問題なし。Cチームはいつでも行けるよ!」
アルカナがそう言うと他の2チームの仕切り役、もめさんとルピナスさんも状況を報告する。
「Aチームも問題なし、ルピナスさんの指揮で行動開始しますね」
「はーい、Bチームも準備完了。それじゃあまずはザコ敵の湧くポイントを分担して潰していきましょう、よーい、スタート!!」
合図とともに各チームの先導役であるタンク1――僕らCチームのではユニティさん――を先頭にしてそれぞれの目標に向かって走り出す。
僕は普通のダンジョンよりも豪華な風景に目を奪われながらも、遅れないようについていく。
するとすぐに最初のザコ敵……ジズ様の生み出したトカゲ型のモンスターに遭遇する。
「1つの集団ごとにゆっくり潰していくから初挑戦の人達も安心して戦ってくれ、じゃあ戦闘開始!」
ユニティさんがそう言いながらモンスター達のヘイトを集める。
僕は予習した通り、DPSの人達と混じって範囲攻撃戦闘スキルでザコ敵を攻撃していく。
ユニティさんがゆっくり進行してくれているおかげで今のところは余裕の進行だ。
タンクの動きの参考にするためにユニティさんの動きを観察する余裕だってある。
そんな風にしばらく進むと、目の前に白く光り輝くなにか――ジズ様が眷族を生み出すために設置した「たまご」が見つかる。
「よし、最初のポイントだよ!湧き出るザコ敵はユニティさんとPieceさん、わたしでなんとかするから、他の5人でたまごを集中攻撃して!!」
アルカナの指示に従い、僕達はたまごに向かって駆け出す。
僕達が近づいたことでたまごが活性化し、次々とモンスターが湧き出して画面がトカゲだらけになるが、アルカナ達が華麗な動きで彼らを引き付け処理していく。
殴り陰陽師のPieceさんなんか集中攻撃を受けるユニティさんを回復しながらなのに【式打ち】パンチで自分でも次々とモンスターを屠っていく暴れっぷりだ。
3人のおかげでフリーの僕達は、何の気兼ねもなくたまごを攻撃することが出来る。
「ダメージアップのバフ入れます!」
風水士で僕と同じレイド初挑戦の海石榴さんが回復に余裕があるので補助魔法【強化陣・衝撃】を発動してくれた。
おかげでたまごへの攻撃が更にはかどり、素早い破壊が可能になった。
「よし、たまご壊したらユニティさん達の加勢だ!行くぞ兼光!!」
「はい!!」
フレイさんと兼光くんの師弟コンビの後に続いて、残ったザコ敵の殲滅に向かう。
こちらも素早く済ませ、1つ目のモンスターが湧くポイントの制圧に成功した。
「1つ目はこれでOKだね。2つ目は同じ感じで大丈夫だけど、3つ目は加勢があるからカカソーラは備えておいて」
「了解!」
「じゃあ2つ目のポイントに行くぞー」
アルカナの説明通り、2つ目のポイントは同じ調子で余裕で制圧。
問題は3つ目、途中までは前のポイントと同じだが、たまごのHPを半分まで削ったところで大量のモンスターが増援に現れるのだ。
彼らはたまごに攻撃をしているプレイヤーを狙うので本来なら一番ヘイトの高いユニティさんを無視して攻撃してくる、だからここは僕が彼らを引き付ける番!
「こっちに来い!」
僕は【挑発】を使って増援を引き付けることに成功、たまごを攻撃していた5人でまずは増援の処理に取り掛かる。
「バリアどうぞ!」
海石榴さんがくれた【守護陣・集中】の単体バリアのおかげでダメージはほとんど受けずに済み、魔神使いのフレイさんが使う強力な範囲攻撃魔法の力もあって増援の処理も無事完了。
迅速にたまごへの攻撃に戻り、無事最後のポイントの制圧も完了した。
とはいえ「真竜の夢」の攻略はまだ始まったばかり。
「よし、みんな増援にも慌てずちゃんと動けてたよ。次は他のチームと合流して最初のボス『始まりの竜・ジズ』と戦闘だからこの調子でがんばろう!」
アルカナの激励とともに、僕達は他のチームと合流するべく急いでダンジョンを進む。
そんな中、ユニティさんが僕に話しかけてくれた。
「カカソーラくん、さっきのは中々上手だったよ。”闘技場のニューヒーロー”はダンジョンでも侮れないな」
「ありがとうございます!それとはじめまして、ユニティさん。今日はよろしくお願いします」
僕の返事にユニティさんは少し複雑そうな顔をした。
「いや……はじめましてではないんだけどな……まあしょうがないか……」
「えっ!?どこかで会ってましたっけ……すみません、ちょっとわかんなくて」
「君がミロさんに負けたあと、早速戦術を真似て挑んだら通用しなくて返り討ちにあったんだけどね……」
あ、そう言われるとなんとなく思い出してきた。
「新人にメタ貼るのは後ろめたいって言いながらやって来た人でしたっけ?」
「うん、そうだね!改めて言われると恥ずかしいな!!」
「思い出してきたところだけどもうボスのところついたよ!」
はっとして上を見上げれば、そこには羽毛のある白く美しい体とアクアマリンのような瞳を持つドラゴンが待ち構えていた。
「始まりの竜・ジズ」、このレイドダンジョンの最初のボスだ。
「最初の試練はわたしから……『創造』の力を乗り越えて、奥に待つ恐ろしき竜に挑む覚悟を決めなさい」
白い羽を舞い散らせながらジズ様は僕達の元へと降りて来る。
AチームとBチームは僕達より早くここにたどり着いていたので準備万端らしく、ジズ様と記念撮影のスクリーンショットを撮影する余裕ぶりだ。
*あゆぴっぴ*さんがノリノリでポーズを決めるのを”ツインスネーク”さんやぽぷらさんが囃し立てながら撮影しているところなんてまるでどこかのイベント会場のよう。
「お待たせ、このままボス戦行けるよ」
アルカナの言葉を受けてそんな人達も一瞬で戦闘モードに切り替わる。
「わかったよ、じゃあ予定通りわたし達Aチームが本体、他のチームは左右の翼からの攻撃を引き受けてね」
暗黒騎士のもめさんが十字架型の大剣を構え、ルピナスさんの合図を待つ。
「じゃあ最初のボス行こうか。みんなー、料理キメろーー!!」
「おー!!」
なんかちょっとアウトっぽい掛け声じゃない?




