72話
24人レイドダンジョン「真竜の夢」。
24人チームを組んでダンジョンを攻略するコンテンツとしてDFOで初めて実装されたこのダンジョンは、その後行われた数々のアップデートの影響もあってライト層向けの難易度に落ち着いている。
またこのコンテンツでDFOの舞台となる世界・ドラゴニアの重要な設定がいくつも明かされることもあり、レイドコンテンツの中では屈指のクリア率を誇るそうだ。
さて、そんな「真竜の夢」に向けての作戦会議を行うといっても僕はレイドという分野では何も知らないまっさらな初心者。
アルカナ達が話し合っているのを適宜加えてくれる解説を頼りになんとか頭に入れて、同じくレイド初挑戦の兼光くんといっしょに大人しく待機する。
『アルカナ:じゃあチーム分けはこんな感じかな
問題なかったらOKのスタンプこの発言によろしく
Aチーム
タンク1 :もめんどうふ
タンク2 :冷やし中華
ヒーラー1:メリア
ヒーラー2:*あゆぴっぴ*
DPS1 :ぽぷら
DPS2 :弦十郎
DPS3 :アインラス
DPS4 :ヴァイオレット
Bチーム
タンク1 :ミロ
タンク2 :プリムローズ
ヒーラー1:シリウス
ヒーラー2:楠葉
DPS1 :ルピナス
DPS2 :リン
DPS3 :リッド
DPS4 :水月
Cチーム
タンク1 :ユニティ
タンク2 :カカソーラ
ヒーラー1:Piece
ヒーラー2:海石榴
DPS1 :アルカナ
DPS2 :フレイ
DPS3 :MEI
DPS4 :兼光』
あれよあれよという間に、チーム分けが決定した。
アルカナの発言に次々と「OK」のスタンプが押されていくのでちゃんとしたチーム分けになっているのだろう。
しかし僕ではどういう基準で分けたのかよくわからないので、アルカナに解説をお願いする。
「ねえねえ、これはどういう意図で別れてるの?」
「あ、それも説明したほうがいいか。じゃあ兼光くんも聞いて」
「はい!」
アルカナは新しいウィンドウを開き、攻略サイトから「真竜の夢」のマップ画像を表示して説明を始めた。
「『真竜の夢』はシンプルな造りだから、3つのチームに分かれて道中の敵を殲滅してから合流してボスを倒す、って流れを3回やるだけでいいんだけど……道中のザコ敵はともかくボスと戦うときの難易度がチームごとに違ってるんだ」
アルカナは攻略サイト内を移動し、「真竜の夢」内の最初のボス「始まりの竜・ジズ」の情報が掲載されているページを表示する。
そこには3つのチームそれぞれの攻略法とそれぞれの難易度の評価が書かれていた。
「それでも全員慣れてる人でやるなら3チームの戦力のバランスを取ってミスしたときに別のチームがフォローできるようにした方がいいんだけど、今回はレイド初挑戦の人が3人いるからね。一番難しいポジションを担当する精鋭のAチーム、経験者揃いで安定しているBチーム、一番簡単なポジションを担当する初心者とそのフォロー役のCチームに分けたのがこのチーム分け」
「なるほど……」
「そうなると、MEIさんが送ってくれたおれ達が予習に使ってる動画は一番簡単なポジションの動きを解説しているってことですか?」
「うん、とりあえず2人はその動画でCチームの動きだけがんばって予習しておいて。ミスしてもわたしやフレイでフォローするし、別のチームの人も出来る限りCチームを気にしてくれるはずだから」
かなり手厚いフォローをしてくれているらしい。
アルカナとフレイさんは《ヴァンガード》で高難易度に挑戦しまくっているし、Pieceさんも殴り陰陽師解説動画を見ただけでわかる凄腕。
初心者のフォロー役として豪華すぎるとも言える編成だ。
……待てよ?
「ねえアルカナ、その基準ならアルカナは精鋭のAチームに入るのが自然なんじゃない?」
「言われてみればそうですね……」
《ヴァンガード》のクランマスターのもめさんや凄腕と紹介されていた冷やし中華さんやヴァイオレットさんはAチームにいるわけだから、《ヴァンガード》のエースであるアルカナもAチームが妥当なような。
そんな僕達の素朴な疑問にアルカナは目を泳がしながら答える。
「いや、今回一番重要な役割は初心者のフォローだから、一番の凄腕であるわたしがCチームでフォロー役に回るのは自然っていうか、決して主催特権で私情の混ざったチーム分けはしてないっていうか……」
混ぜたんだ、私情……
そんなに僕と同じチームで行きたかったのか……
僕の彼女のちょっと問題のある性格が最高に可愛くてハッピー!
「そ、そんなことは置いといて、ほら、『OK』のスタンプ押してないのあとは2人だけだよ。早く押して作戦会議の続きに行かなきゃ!」
明らかにごまかそうとしているアルカナだったが、言葉の通り僕と兼光くん以外は全員チーム分けを確認したらしく、クランハウスに集まっているルピナスさん達はもう自分のポジションに関する攻略情報の確認に入っていた。
僕は急いで「OK」のスタンプを押し、兼光くんも押したことでチーム分けが正式に決定した。
その後はSNSで同じチームになった人たちに挨拶を送り、アルカナの司会で攻略の流れを簡単に確認した。
ここからは動画で予習していたこともあり、僕も話にちゃんとついていくことが出来た。
確認したあとはそれぞれ自由行動、僕とアルカナは日課のレベル上げへと向かったのだった。
*
翌日のDFOの時間はまずアルカナと動画を観てじっくり予習、その後いつもより時間をかけてレベル上げと最近のいろいろあった期間からは想像できないほどのんびりとしたものとなり、あっという間に寝る時間。
さらに翌日のレイド初挑戦当日がやって来た。
まずはDFOにログインし、クランハウスに集合。
そして約束の時間15分前、余裕を持ってSNSを開きボイスチャットに参加すると同じように余裕を持って集まった参加者のみなさんが雑談に興じている。
「こんばんは、カカソーラです」
そう言って挨拶すると、みなさんも挨拶を返してくれる。
みんな楽しそうだったが、特にハイテンションだったのが”ドラゴニアのニューアイドル”*あゆぴっぴ*さん。
続いてルピナスさんがクラン内でもおなじみのムードメーカーぶりを如何なく発揮し場を暖めている。
僕もミロさんを始めとする闘技場で知り合った人達に声をかけたり、同じチームになったPieceさんや海石榴さんに挨拶をして時間を潰す。
そして全員が揃ってから少し時間が立って、約束の時間。
主催である《ヴォワヤージュ=エトワール》のクランマスター・ルピナスさんが進行を始めた。
「はい、じゃあお時間です。みなさん今日はお集まりいただきありがとうございます!早速ですが、レイドパーティに誘っていきますねー」
その言葉から少し経つとレイドパーティに勧誘されたことを伝えるシステムメッセージが来たのですぐに受諾、すると今まで見たことのないほどたくさん――24人分のステータスが視界に表示された。
「全員参加しましたね!じゃあレディチェックするので、準備できたの確認できたらコンテンツ申請しますよ!」
ルピナスさんが言い終わると同時にレディチェック――準備はいいですか?と問いかけるウインドウが表示されたのでこれもすぐに「OK」を選択。
ずらりと並んだレイド参加メンバーの名前の横にも次々と◯マークが現れあっという間にレディチェックは終了する。
そして間髪入れずに現れる「24人レイドダンジョンに突入しますか?」という表示。
もちろんこれも即「突入」だ。
「では初めての方もベテランの方も、『真竜の夢』楽しんでいきましょう!よろしくお願いします!!」
ルピナスさんの音頭にみんなでよろしくお願いします、と返す。
初めてのレイド、目一杯満喫するぞ!




