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71話

 5月30日の朝、5月の闘技場シーズンの結果発表の時が来た。

僕が参加していた中級者ランク・プルミエのランキング上位、最高ランク・エトワールへの昇格者の中に僕ことカカソーラの名前は――あった。


「よし!」


 ガッツポーズを決めて、《ヴォワヤージュ=エトワール》のSNSグループで成果を報告してから僕は日課の朝の稽古に向かう。

プルミエの突破とミロさんへのリベンジには日々の鍛錬と師範――お祖父ちゃんからのアドバイスもおおいに役立ったので、感謝を込めてお祖父ちゃんにも簡単に報告しておいた。

DFOでの戦闘経験がリアルの武術の上達にもつながっていることを既に聞いているお祖父ちゃんはこの報告にも喜んで、正式に始めた花果無形流の相伝伝授に一層力が入った。

つまり僕は普段にも増してビシバシしごかれることになったわけである。

キツいけど、強くなれると思えばこれもまた楽しい!


 そんな朝の稽古が終わってから、朝食などの支度を済ませてから登校までの隙間時間。

僕は端末をいじって《ヴォワヤージュ=エトワール》のSNSグループに反応がないかをチェックする。

クランのみんなもちょうど朝の支度が終わった頃合いのようで、次々とコメントが書き込まれている。


『ルピナス:ボクもプルミエ昇格達成したよ

      初心者ランク卒業やったね!


 シリウス:2人ともおめでとう

      俺はギリギリ足りなくてカドリーユに残留だな

      でも前言った通り目標は達成してるから問題なしだ


 MEI:私も無事勝率6割強でシーズンを終えられました


 兼光:わー!みなさんおめでとうございます


 アルカナ:今シーズンの結果は大成功だね

      レイド企画もあるけど今日のところはみんなでお祝いだよ!


 ルピナス:いえーい!!!!』


 どうやら僕だけではなく全員目標を達成できたようだ。

今日のログイン後は一度みんなクランハウスに集合する約束をして、僕はSNSを閉じ登校する準備に移った。

実はクランハウスでやりたいこともあるので、自然僕の気分はご機嫌でその足は軽やかだった。



 ちょっと浮かれた気分で学校生活をこなし、秘ちゃんから一足先にお祝いしてもらったりしつつ1日が過ぎてDFOにログインする時間がやって来た。

アルカナと一緒に《ヴォワヤージュ=エトワール》のクランハウスがあるアルカンジェルの居住エリアを訪れ、入口近くのショップで少し買い物をしてからクランハウスへと向かう。

到着したとき、そこに広がっていた風景に僕は驚き声を上げた。


「わあっ、庭がなんか豪華になってる!」


 ほとんど手つかずだったクランハウスの庭にたくさんの庭具が置かれていたのである。

それは色とりどりのバラの花壇に大きくはないが白く優雅な噴水、美しい装飾が施された照明などで、どこか統一された雰囲気のデザインだった。

それらの中にシリウスさんが立っていて、庭具の位置の微調整を行っていたが僕達がやって来たことに気がついて声をかけてくる。


「お、カカソーラさんとアルカナさんも来たな。どうかな、闘技場で交換できるエルフガーデンシリーズの庭具を置いてみたんだが……」


「すっごくいいです!なんだか一気に雰囲気が良くなりましたね」


「本当だね、やっぱり庭に何も無いのは寂しかったから……飾り付けてもらって助かるよ」


 僕は豪華になった庭を見た喜びをまっすぐに伝え、アルカナもシリウスさんを褒める。

シリウスさんはちょっと照れつつどういたしまして、と言ってから僕達と一緒にクランハウスの中へと入る。

中には既に来ていたルピナスさんと兼光くんがウィンドウを開いて何かを見ながら談笑していた。


「こんばんはー、2人で何見てるんですか?」


「あっ、カカソーラさんとアルカナさんこんばんは!レイドの日程調整だよ、早速明後日に全員の都合が合いそうだからここに決めようって話してたとこ」


「こんばんは、お二人もシリウスさんの飾った庭見ましたか?すごく素敵ですよね!!」


 ルピナスさんはいつも通りにこやかに、兼光くんはちょっと興奮した様子で僕の挨拶に答える。


「うん、見たよ!なんだかクランハウスが一気に上品になったよね。レイドの方も明後日了解です」


「明後日か……じゃあ今すぐにでもSNSグループ作ってみんなを招待しないとね。じゃあわたしはそっちやるから、カカソーラはさっき買ったやつ部屋に置いてきなよ」


「OK、アルカナ。出来上がったら呼びに来るね」


 僕とアルカナの会話にルピナスさんがすかさず食いつく。


「なになに?部屋に置くって、いい感じの家具でも手に入れたの?」


「そんな大したものじゃないんですけど、まあ模様替えです。みんなも見に来ますか?」


「行く行く!シリウスと兼光くんも行こうよ」


「お邪魔じゃないなら是非お願いします!」


「俺もお言葉に甘えて見に行こうかな」


 そういうわけで4人でやって来た僕の個室。

まだタペストリーが適当に飾ってあるだけの部屋にまずはさっき居住エリア入口近くのショップで買った家具の1つ、赤い大きなカーペットを敷く。

そしてもう1つの買った家具――何の変哲もない木製の棚を設置する。

これだけでは最初よりもちょっとマシになったかな?程度の模様替えだが、本番はこれから。

僕はその戸棚にあるものを飾っていく。


「なるほど、これはいい部屋になりそうだね!」


 様子を見守っていたルピナスさんからも好感触をいただいた。

「飾り」を置くのもすぐに終わって、個室の入口近くに戻って部屋を見回し再確認。

うん、まだまだ改良の余地しかないが、僕の個室の方向性は決まった。

アルカナに報告しに行こう、と個室を出たところでちょうどMEIさんもクランハウスに到着した。


「こんばんは、庭が素敵なことになってますね」


「こんばんは、MEIさん!今カカソーラさんの部屋も飾ってたところだよ」


「僕の部屋はまだまだですけどね……アルカナ、今見に来れる?」


 ウィンドウを開いて作業をしていたアルカナが、僕の声を聞いて振り返る。


「うん、大丈夫だよ。じゃあカカソーラの部屋、見せてもらいますか」


「おお、ついにカカソーラさんもハウジングに力を入れますか。私も覗いてみていいですか?」


「もちろんどうぞ。といってもまだまだ寂しい感じなんですけどね」


 そう言って僕はみんなを引き連れて僕の個室に再び入る。

部屋の内装はまだまだシンプル、タペストリーとカーペットと棚があるだけ。

しかしその棚の中には、先月と今月の闘技場の報酬でもらったトロフィーとメダルを飾ってある。

これからもガンガン闘技場に挑んでトロフィーを増やし、この部屋を立派なトロフィールームにする予定なのだ。


「トロフィールームですか、闘技場挑戦クランのエースに相応しい部屋ですね」


「でしょ?カカソーラはハウジングの発想もいい感じなのだよ」


「アルカナさんの後方彼女面も絶好調だね!」


「この部屋がいつかトロフィーでいっぱいになるんですね……」


「ああ、それまでみんなでがんばろうな」


「はい、《ヴォワヤージュ=エトワール》の思い出もつまった部屋にしたいです!」


 期待以上の褒め言葉といい雰囲気も生まれて大満足の模様替えとなった。

その後はみんなで目標達成の祝勝会、トロフィーの前や豪華になった庭でスクリーンショットを撮影し、その画像を使って《ヴォワヤージュ=エトワール》のクラン紹介ページも更新した。

掲示板で僕のストレート昇格がまた話題になっているのをチェックなんかもして、ひとしきり騒いだところでアルカナが新たな提案をした。


「おっと、レイドのメンバー全員グループに参加してくれたみたい……じゃあ明後日に備えて、『真竜の夢』攻略作戦会議といきますか!」

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