62話
一風変わった強敵?との試合も乗り越えて、今日も順調に勝ち点を稼いでいく。
しかし勝ち点が貯まっているということはもし負けたとしたら失う点数も多くなるということ、気を緩めずに確実に勝利を重ねていかなければならない。
何しろ僕の今シーズンの目標は「エトワール昇格」だからね!
「さてと、次の試合は……あっ!」
そんな感じで次の試合相手のマッチングを待っていると、表示されたのはこの前フレンド登録したクウさんのファン仲間、トロールの拳聖・リッドさんだった。
リッドさんも要チェックプレイヤーの1人、そして僕が初敗北を喫したあのミロさんのきょうだいだ。
気を引き締めなければと思ったところに強敵の登場、僕は深呼吸をして気合いを入れ直してから試合を受けた。
「リッドさん、こんばんは。今日はよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします!カカソーラさんの活躍はチェックしてるよ、本当にすごい……でもオレも負けないぜ!!」
カウントダウン終了を待つ間、まずはお互いに挨拶を交わす。
リッドさんが僕をチェックしていてくれたことにちょっとうれしい。
「僕もリッドさんのことは要チェックリストに入れてますよ、いい勝負にしましょうね。あと、レイドの助っ人に応募してくれてありがとうございます」
「ああ、あれね。2人しか枠ないのに姉さんといっしょに応募しちゃった」
「実は応募者が多かったんで24人レイドに募集を変更することにしたんです。たしか『真竜の夢』っていうダンジョンに。よかったらそっちにも応募してもらえたらなーって」
「そうなんだ!あとで募集ページ見直しておくよ。楽しみだなぁ……おっと、それより先に試合の方が始まるね」
リッドさんが言う通り、カウントダウンは残りわずか。
「レイドも楽しみですけど、僕の本業はこっちですからね!」
「オレも闘技場が本業さ。さあ、思いっきりやろうか!」
お互いに啖呵を切ったところで、いい感じに試合開始の合図が出る。
「行くぜ!!」
僕が補助系の戦闘スキルを使用している間に、リッドさんが先手を取りに来る。
拳聖の特徴は発動時間の短い戦闘スキルを次々と繰り出せる圧倒的な手数、一発当たればその攻撃の波から抜け出すのは至難の業だ。
なので僕は持ち前の機動力と武術の経験を活かしてまずは回避に専念する。
「くっ、流石の回避!」
「どうも!じゃあそろそろ僕の番だよ!!」
お祖父ちゃんの指導で掴みつつある相手の動きを誘導するコツを活かして、回避しながらリッドさんの隙を作り出した僕はそこに銃剣士の単体攻撃コンボを叩き込む。
攻撃は命中、さらにリッドさんをのけぞらせることに成功した。
とはいえ流石トロールのHPと防御力、これだけでは大きなダメージにはなっていない。
ここはさらに追撃だ!
「はああぁぁぁ!!」
「……タイミング、ここだ!」
僕が振り降ろした武器・ソードバレルをリッドさんが白く輝く拳で迎撃する。
これは……まずいかも!
もう発動動作を入力してしまったので戦闘スキルは止められない、それでも僕はとっさに衝撃に備え受け身の準備をする。
そして剣と拳がぶつかる瞬間、僕が発動した戦闘スキルのダメージが僕の方に跳ね返ってくる!
「ぐはっ、これは……【カウンター】!!」
「よし、成功!」
【カウンター】は拳聖の専用スキルで相手の攻撃と同時に発動することでダメージを跳ね返すことが出来る。
もともと非常にシビアなタイミングでしか発動しないスキルだった上に、クウさんがほぼ100%の確率で成功させて闘技場で大暴れしたためにさらに厳しい調整が重ねられ続けていたためほとんどのプレイヤーにとっては実用不可能になっていた不遇のスキル……だったのだが。
どんなに厳しく調整してもクウさんだけは平気で成功させてくるから運営が諦めて初期の性能に戻され、今は上位のプレイヤーならなんとか使えるスキルになっているのだった。
受け身の準備をしていたからなんとかすぐに体勢は整えられたが、その間にリッドさんも拳聖と同じ格闘士の上位職・武僧の汎用スキルで防御の体勢を整えている。
こちらはタンク職業だが種族としては防御力に欠けるエルフ、あちらはDPS職業だが種族としては防御力に長けるトロール。
今のところ受けたダメージは互角といったところだろう。
だから落ち着け僕、【カウンター】はクウさんの得意技でもあるんだから、対策はきちんと考えてきたじゃないか。
「流石リッドさん、【カウンター】も使いこなしてくるとは!」
「ははっ、チェックしてるなら知ってるはずだろ……失敗することもけっこうある!でも今日は調子がいいみたいだな!!」
お互い体勢を整えることが出来たので、すぐに再び間合いを詰める。
今度は僕が先手を取るべく攻め、リッドさんがそれを受ける形だ。
トロールの巨体でありながら、敏捷力を高める拳聖の専用スキル【瞬動の極意】を使って僕の攻撃を回避するリッドさんの動きはなかなかのものだ。
しかしもちろん僕はここでも相手の動きを誘導することを意識して闘っている。
狙いはもう一度、リッドさんに【カウンター】を狙いに行かせること。
「もらった、今度こそくらえっ!!」
「こっちこそもらった!もう1回【カウンター】をくらえ!!」
僕のソードバレルをリッドさんの白く輝く拳が受け止める。
【カウンター】は再び成功し、僕が発動した戦闘スキル――ではなく戦闘スキルの動作に見せかけた普通に振っただけの攻撃……通常攻撃が跳ね返される。
DFOでは戦闘スキルを発動せず武器を敵にぶつけるだけでも通常攻撃と判定されダメージを与えることが出来るが、そのダメージは非常にささやかで、のけぞりなどの効果もない。
つまり今の僕とリッドさんの状況は、気にする必要もないダメージを受けた僕VS【カウンター】発動後の硬直時間に入ってしまっているリッドさんという状況。
これ以上ない好機、僕は今度こそ銃剣士の単体攻撃スキルを発動し、リッドさんに叩き込む!
「手応えがない……!?うわっ!!」
攻撃は命中、僕はコンボを繋げてさらに攻撃を続ける。
「まだまだ行くよ!!」
銃剣士の単体攻撃コンボは拳聖ほど長く続けることはできないが、そこは僕のVR適正で補う。
現実では不可能な体勢から戦闘スキルを入力、無理矢理最初から単体攻撃コンボを再開する!
流石のトロールも連撃をくらってHPを怒涛の勢いで削られていく。
「なら……【気功・纏】!」
リッドさんは状況を打破すべく攻撃を受けながらでも発動しやすい拳聖の戦闘スキル【気功・纏】を発動。
これは全身からオーラを放ち近距離の敵にダメージを与えるもので、僕は飛び退いてこれを回避する。
それによって一旦僕の連撃が途切れ、間合いも少し離れるが……撃破まであと一歩、勢いが残っているうちに僕はすかさず距離を詰め、再び攻撃に移る。
対するリッドさんは回避でも【カウンター】でもなく、同じく攻撃の構え。
逆転するには拳聖の連続攻撃の流れを作るしかないとみたか、ならば次の一撃、なんとしてでも僕が決める!
「はああぁぁぁ!!」
「うおおぉぉぉ!!」
リッドさんの拳を体を大きくひねることで回避、その体勢のまま戦闘スキルを発動し単体攻撃コンボに繋げる!
削られる残り僅かなリッドさんのHP、そして鳴り響く鐘の音。
僕の勝利だった。
「2回目の【カウンター】、跳ね返したのは戦闘スキルそっくりの動きを自分でやった通常攻撃ってことかよ……リアル身体能力どうなってんだカカソーラさん?」
「武術やってますので!見抜いたリッドさんも流石です」
「リアル強者怖い……でもオレも次やるときはもっと強くなるからな!」
お互い親指を上げる仕草をして、僕達はそれぞれの選手控室に戻された。




