54話
その後も何回かミロさんの戦術を真似たプレイヤーと当たったが、ミロさんほど完璧な立ち回りを出来ているプレイヤーはおらず全員返り討ちにすることが出来た。
むしろ真似をしていないプレイヤーとの試合の方が大変だった気がしたが、それでも注目のプレイヤー(自分で言うとちょっと恥ずかしい)への対策が見つかると一気に広がるのは流石プルミエ、ランクが上がっただけあって間違いなくプレイヤーの質も上がっている。
僕も情報収集をちゃんとやらなきゃな、と気持ちを改めたあたりで事前に調べておいた要チェックプレイヤーと試合がマッチングされた。
プレイヤーの名前は水月、『ドラゴンファンタジーシリーズ』初代主人公の見た目を再現したヒューマンの剣舞士だ。
上級者向けで扱いづらい職業である剣舞士でプルミエの上位に名を連ねる実力者、今度は勝利してみせると僕は気合いを入れて試合を受けた。
そして移動した闘技場の舞台、まずは僕から挨拶をする。
「はじめまして、カカソーラです。”コスプレ勇者”の水月さん、今日はよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく、カカソーラさん。その二つ名で呼んでもらえてうれしいよ、気に入ってるんだ」
水月さんはにこやかに挨拶を返してくれた。
なので僕もちょっと気軽に疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「やっぱり初代主人公に思い入れがあるからそのキャラメイクなんですか?僕は『ソードバレル』が好きだから銃剣士やってます」
「おっ、いい職業の選び方してるね。僕もご想像どおり、初代主人公が好きだからこの見た目なんだけど……だったらこうも思ってるかな?なんで職業は『セブンソード』の主人公といっしょなのかって」
「ですね……それも聞いちゃっていいですか?」
「もちろん、むしろ語らせて欲しい」
水月さんは楽しげに語りだす。
「実は闘技場以外のコンテンツでは初代主人公と同じ騎士でやってるんだ。もっと専用スキル強化して欲しいって要望メールも送りまくってる。じゃあなんで闘技場では剣舞士かっていうと、僕が使う場合最強の職業は剣舞士だって確信してるからさ」
「確信、ですか」
「うん、僕のために作られた職業なんじゃないかって思っちゃうくらいね。だからこれからの試合で、剣舞士のベストパフォーマンスってやつを見せてあげるよ」
水月さんはにこやかな表情を崩さず、しかし自信満々にそう言った。
過去の動画を観て研究はしているから、それが過信でないことを僕は知っている。
「だったら僕はそれを全力で打ち破らせてもらいます!」
「よく言った、それでこそだよ期待の新人くん!」
お互い啖呵を切って、カウントダウンは残り3秒。
……微妙な間がちょっと気まずいな。
とにかく使いこなせている剣舞士との闘い、スタートだ!
「最初から全開だ、【変形・七剣乱舞】!」
水月さんは剣舞士の武器・合体剣の最強形態である七剣乱舞をいきなり発動する。
片刃剣を両手に1本ずつ、空中に5本浮かべて合計7本の剣で連撃を繰り出すこの形態は高い攻撃能力を持つ……のだが。
同時に7つもの武器を扱うというのはあまりにも難易度が高く、僕が見てきた剣舞士のほとんどはこの形態を使いこなせず逆に隙を生み出してしまっていた。
この形態を一切使わない剣舞士の方が闘技場では上位にランクインしているのではないだろうか?
だがもちろん水月さんはそういった普通の剣舞士とは違う。
「そこだぁ!!」
「なんの!」
水月さんが2本の剣を巧みに操り、空中の5本の剣はまるでそれぞれが意識を持っているかのように縦横無尽に飛び回る。
毎年年末に道場で行っているバトルロイヤル形式の練習試合で僕以外の門下生から集中攻撃されたときの経験を活かしてなんとか対処しているが、本当に複数人と闘っているような複雑な攻撃だ。
人間の脳はマルチタスクが出来るようになっておらず、短時間で切り替えて処理を行うことでマルチタスクに見える作業を行っているというが、おそらく水月さんは行う作業の整理・切り替え能力が突出しているためこんな荒業を実現できるのだろう。
「ははっ、どうだいカカソーラくん!七剣乱舞の稼働時間はまだまだ残ってるよ!!」
「僕だってまだまだ避けられますよ!!」
ギリギリの闘いだが、僕だってさっき言ったバトルロイヤルはここ3年連続で勝利しているのだ。
複数の攻撃を捌くのには自信があるし、7本の剣をどれだけ使いこなそうとも操っているのが結局のところ水月さん1人だという事実は変わらない。
敢えて1ヶ所隙を作っておけば――水月さんがそれに気づいた瞬間はすべての剣の目標がそこを向いてしまう!
その瞬間こそが、僕にとっても水月さんの隙を狙うチャンスだ!!
「喰らえぇぇぇ!!」
「んなっ!?」
空中に浮かぶ5本の剣が僕を切り裂くのと同時に、僕の一撃も水月さんを捉える。
くらったダメージは僕の方が多いが、水月さんには状態異常がかかる。
「これは……ヘビィか!?」
銃剣士のカートリッジ消費戦闘スキル【グラビティブレード】。
相手の攻撃速度を低下させる状態異常・ヘビィを与える効果を持った攻撃だ。
これでどんなに水月さんが高速で剣を操っても、その命令を実行するスピードが遅くなった剣の動きは容易く避けられるものになった。
「ならこれだ!」
七剣乱舞の利点が潰されたことを悟った水月さんは残っている稼働時間を捨てて合体剣を変形させる。
次の形態はほとんどのパーツを収納し、2本の短剣だけを操る短剣形態。
攻撃力は低い代わりに攻撃速度が非常に早く、ヘビィ状態でも戦える形態を素早く選ぶとは、流石の判断力だ。
だが僕も5本の剣をくらって大ダメージを受けてつかんだ勝機、このまま押し切らせてもらう!
「これで決めるっ!」
「まだまだ!」
ヘビィの効果でなんとか戦えるレベルまで攻撃速度の落ちた短剣形態の攻撃を、手に馴染む日本刀型ソードバレル・南部九〇式で捌き切る。
そしてありったけの攻撃力強化の戦闘スキルを乗せた銃剣士の単体攻撃コンボを叩き込む。
さらにマニュアルモードを活かした攻撃途中からの戦闘スキル入力で、途切れない追撃をひたすら打ち込む!!
決着の鐘の音が鳴り、「YOU WIN」の文字が視界に浮かぶ。
今度は要チェックプレイヤー相手でも、勝利をつかむことが出来たのだ。
「お見事……!こっちが君の実力を見せつけられちゃったね」
「7本中5本わざと受けなきゃ攻略できない七剣乱舞、すごかったです!ありがとうございました!!」
互いの健闘を称え合い、僕達はそれぞれの選手控室へと飛ばされた。
選手控室で僕はまず、座り込んで休憩した。
流石に二刀流+飛び回る剣5本の対処は集中力を消費して精神的疲労がキツい。
しばらくぼーっとしていると、アルカナから「今大丈夫?」とテキストチャットが送られてきた。
僕はアルカナにボイスチャットの申請を送る。
すぐに受諾され、アルカナの心配そうな声が聞こえてきた。
「もしもし、次の試合に行ってないみたいだからちょっと心配になったんだけど」
「大丈夫だよ、ちょっと疲れたから休憩してるだけ。いやー、使いこなせてる七剣乱舞、すごかったよ」
「空中の剣全部くらったときは見ててヒヤッとしたよ……でも今度は上位のプレイヤーにも勝てたね、おめでとう!」
「ありがとう。相手の動きを動きを誘導する感覚もつかめてきたし、今日はもうちょっとだけ試合して、それからミロさん対策をするよ」
「うん、『アルカナ虎の穴』をお楽しみに!」
お楽しみに出来る内容なのかなー?




