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53話

『ルピナス:ほえー、そんなことが

      恋のライバル登場の次は正統派の実力者に1回負けてリベンジか……

      熱い展開の連続だね!


 カカソーラ:燃え燃えです

       いや、まだリベンジ成功はしてないんですけどね


 兼光:絶対成功しますよ!

    試合の動画観ましたけど、負けたっていってもギリギリの勝負でしたし!!』


 翌日、《ヴォワヤージュ=エトワール》のSNSグループでの戦況報告会。

僕はミロさんとの試合での敗北、その後話しかけられてフレンドになったことも包み隠さず報告し、リベンジと「エトワール昇格」という目標維持への決意も表明した。

みんな励ましてくれてとても心があったかい。

しかし、僕の中にリベンジはそう簡単でもなさそうだな、という気持ちもあったりする。


『カカソーラ:最終的なHPの差はギリギリだったけど……

       試合運びは完全に向こうのペースだったし、実際の差はそれ以上だった気がする……


 MEI:そうですね、騎士と銃剣士の特性の差を理解してあの状況に持ち込んだのでしょう


 アルカナ:銃剣士はタンクの中の万能枠、いろんなことをこなせる

      でもその分防御力はタンクの中では一番低いんだ

      ドワーフとエルフの種族能力値の差もあるし……

      最初からそこをつくつもりで戦術を用意してたんだろうね


 シリウス:ここまではカカソーラさんのぶっ飛んだ機動力でそこを補ってこれたわけだ

      でもランクが上がって強敵が増えて、動画でカカソーラさんの知名度も上がった

      これからは対策される可能性も高いってことだな


 ルピナス:騎士の地味エフェクトの活用も意外だったね

      多分カカソーラさんレベルじゃないと気が付かない差なんだろうけど

      まさに地味に強い……!


 カカソーラ:あんまり地味って言わないであげて!!』


 一旦SNSが表示された端末の画面から目を離して、カカソーラ――自分の弱点について考える。

そもそもエルフという種族は俊敏さを活かした手数の多い近接DPS職業か知性を活かした魔法使い系職業に向いた種族で、タンク職業には不向きらしい。

アルカナは以前普通にDFOをプレイするだけなら気にならない程度の差だし、極まったプレイヤーにとっても誤差でしかないと言っていたが、プルミエ――中級者ランクというそのどちらでもない場所でその差が出てしまったようだ。


 それにミロさんに指摘されたプレイヤーである僕自身のDFO経験値の少なさ……これがどうしようもなく現れてしまったのが昨日の敗北なのだろう。

こればっかりは簡単に解決できる問題ではない。

コツコツと勉強していくのと、二人三脚でがんばろうと言ってくれたアルカナの豊富な知識のサポートでなんとかするしかない。

ミロさん対策ならアルカナがもう考えていると言っていたが……

そんなことを考えつつ、端末に視線と意識を戻す。


『アルカナ:以上、アルカナ虎の穴の予定でした


 ルピナス:流石アルカナさん……ゲームでそこまでやるなんて……


 MEI:カカソーラさんならなんとかこなしそうではありますが……


 兼光:2人ともすごい……流石です!!』


 うわなんかめっちゃ話が進んでる!

「アルカナ虎の穴」って僕なにやらされるの!?



 日課の稽古の時間。

僕は闘技場の参考にならないかと思ってお祖父ちゃんに少し質問をしてみた。


「師範、動作から次の動きが予測しづらい相手と戦うときってどうしていますか?」


「予測しづらい相手というと……袖や裾の広い衣服で手足の動きを隠しているような相手のことか?その程度なら衣服のはためきなどからでも動作を読めるように仕込んだはずだが?」


 やりましたね、そんな稽古。

暗闇で戦う稽古もやってるんだからそれより簡単といえば簡単だったけど。

ロングスカートのメイド服で足さばきを隠すお姉さんと戦わされたときは流石になにやってんだ僕って思ったなあ……

めちゃくちゃ強かったし、今どこでなにやってんだろうあのお姉さん。


「そういうんじゃなくて、今やってるゲームの対戦相手の話です」


「ゲーム……人体には不可能な動きもしてくるということか?」


「まあ、そういうことです。流石にそういうのへの対策はないよね……」


「あるぞ」


 あるんだ。

一体どこまで想定しているんだ花果無形流。


「対戦相手やらゲームを作っているのは結局のところ人間だろう?ならばこちらの動きで相手を誘い、予測できる攻撃を使わせればいい」


「なるほど、そっか……向こうの動きを読んで対策を打つんじゃなくて、こっちが先手を打って相手の動きの選択肢を制限する……」


 そうなるとやはり、ミロさんとの試合は後手に回ったのがまずかったようだ。

もっと自分の手札を増やして、仕掛ける側を維持すればこの作戦を使えるかも……


「どうやら参考になったようだな」


「うん。うまく出来るかはわからないけど、この方向で試してみる!」


「ならまずは俺を相手にやってみろ。先に一発打ち込ませてやるから、それに俺が返す技を見切るんだ」


「い、いきなり師範にですか……」


 絶対ミロさん相手に試合の流れを握るよりも難しい。

案の定打ち込んではカウンターでやられるのを繰り返したが、少しずつ、少しずつ何かが掴めたような気がしてきて……


「ッ!見えた!!」


 最後の1本、お祖父ちゃんのカウンターを回避することに成功した。


「よくやった!」


 そして2段構えの技でふっ飛ばされた。

それはもう、漫画のような見事な吹き飛ばされっぷりで。


「その感覚と勝負は1回避けただけでは終わらないということをよく覚えておけ。この調子で行けば俺の全ての技を伝える日も近いぞ」


「はい……ありがとうございました……」


 本当に?

本当にいい調子でお祖父ちゃんの実力に近づけてる?



 手当てと夕食などのもろもろを済ませて、本日のDFOの時間。

今日もアルカナがいっしょに闘技場に来てくれた。


「陽おじいちゃん流石だね、すぐに対策が出てくるのも、大人げなく追撃してくるのも……」


「あはは……でも掴めたものがあるのは確かだしね。今日はこの感覚を意識しつつ試合して、終わったらレベル上げと『アルカナ虎の穴』だよね?」


「うん!だから試合だけでへばっちゃ駄目だよ?」


「了解、じゃあ行ってきます!!」


 手を振ってアルカナと別れ、選手控室に移動する。

準備運動をこなして、緊張しすぎないように深呼吸もしてから試合のマッチングを始める。

本日最初の試合相手は、ヒューマンの戦士。

やっぱり闘技場では能力値に癖のないヒューマンをよく見るなぁ。

とにかく試合を受けて、僕は闘技場の舞台に移動した。


「昨日の”騎士姫”ミロとの試合、見せてもらったぞ。新星くん」


「それはどうも……注目してもらえて光栄です」


「悪いが勝つためには敵の弱点を調べて狙っていくのも闘技場のやり方だ。同じやり方で俺も勝たせてもらう!」


「それ先に言っちゃっていいんですか?」


「だってやっぱり新人相手にメタ貼るのって後ろめたいし……」


 試合相手さん、憎めない人だった。

まあ先に教えてもらったからにはありがたくそれを想定して闘わせてもらおう。

試合開始の合図とともに、僕達は互いの武器を抜く。


「行くぞ、【ウォーリアーズソウル】!」


 相手は宣言通り、ミロさんと同じ戦術――騎士と戦士の違いはあるが自分の防御力を高め、そして【ハンティングゾーン】で近接戦闘の間合いを維持、僕と防御力比べの削り合いに持ち込もうとする。

それに対する僕の対策は……特になし!

戦士の派手で大振りな攻撃なら、普通に見切って避けられるんだよ!!


「あれっ、削り合い、出来てない……」


「そう簡単に何度も近接戦闘で遅れは取りませんよ!」


 時間はかかったものの、一方的にこちらの攻撃を叩き込んで無事勝利。

うん、やっぱりミロさんのプレイヤースキルってすごかったんだな。

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