49話
DFOの奥深さを改めて知ったりしたが、ゴールデンウィークに入り僕のDFOライフは一旦お休み。
お祖父ちゃんの武術仲間の1人が暮らす、都内にあるとはちょっと信じられない山奥の道場で行われる交流会に向かった。
普段から運動していなければ道場に辿り着くまでにへばってしまいそうな道のりを越えて、元気の有り余ったお祖父ちゃんを始めとする武術の師匠たちと、連れてこられた僕と同世代か少し年上の後継者達が集まった。
これから数日間、この山奥で僕達は鍛えた技をぶつけ合い互いを高めるのである。
「山の麓にあったコンビニなくなってたんだけど……」
「マジかよ、夜抜け出して買い出し行けねえじゃん!?」
現代っ子な後継者組はこれから過ごす環境への不満がまず出てくる。
この道場、冷暖房や空調は完璧だがテレビもパソコンもなく、食事は家主が用意してくれる栄養バランスは完璧だがいまいち華のない和食オンリーなのだ。
師匠組の検閲で娯楽用品は持ち込めず、連絡用に端末だけが持ち込みを許されている。
「集まって鍛えるのはいいけど開催場所だけはなんとかしてほしいぜ……天もそう思うだろ?」
「そうだね、秘ちゃんと通話出来るおかげでギリ耐えられるけど」
「クソッ、また出たよ天の彼女いるマウント!」
「隙あらば出してくるんだから振る話題には気をつけろ!」
僕以外は全員恋人のいない後継者組なのであった。
なんでだろうな、みんな見た目も性格もそこそこいいんだけど……
やっぱりこの交流会みたいな鍛錬を何よりも最優先にしてしまうからだろうか?
「まあみんなもそのうち理解ある彼女さんがそのうち見つかるよ」
「適当な慰めはやめろ!!」
「お前これからやる手合わせで絶対ぶちのめすからな!」
あはは、返り討ちにしてやるからかかってこーい!
*
「で、今年も後継者組には全員勝ったんだね」
「うん!みんな強くなってたけど、僕はもっと強くなったからね」
無事全員返り討ちにしてやった僕は寝る前の秘ちゃんとの通話を存分に楽しんでいる。
「まあ明日からはみんなまとめてお祖父ちゃん達にボコボコにされて鍛えられるんだけどねー、秘ちゃんの方は調子どう?」
「こっちも好調だよ。今日はとりあえず肩慣らしに安定性優先で挑んでみたけど、それでもそこそこいいタイムでクリアできたし」
「良かったじゃん!レイドって確か70人くらいでやるんでしょ?それだけ揃ってやるの大変だろうし、ゴールデンウィーク中にうまくやれるといいね」
僕は以前観た《ヴァンガード》が配信しているレイドの動画を思い出す。
何十人ものプレイヤーが巨大なレイドボスに一致団結して挑む姿はかなり壮観だった。
「今やってるやつは72人で挑戦するメガレイドだからそうだね。《ヴァンガード》もメンバーほぼフル出動だよ。でももっとお手軽なノーマルレイドとミニレイドっていうのもあるんだよ」
「レイドにも種類があるんだ?」
「うん。ノーマルレイドは24人で挑戦するやつで、これがレイドの基本形。コンテンツの数も一番多い。ミニレイドは8人、パーティ2組分で挑戦する簡易版で、まあレイドのチュートリアルみたいなやつかな。メガレイドはバージョンごとに1つしか追加されない、PvP以外では最高のエンドコンテンツだね」
ふむふむ、じゃああの秘ちゃんがソロで72人レイドを攻略してたのは本当にすごいわけか。
こうやって説明を聞くと、ちょっと自分でもやってみたい欲が湧いてくる。
「そのうち時間が出来たら8人のミニレイドってやつやってみたいな」
「おっ、いいね。《ヴォワヤージュ=エトワール》のメンバー5人に、わたしで6人。あと2人なら募集するか《ヴァンガード》から助っ人呼ぶかですぐ揃いそうだし……うん、考えておくよ」
「ありがとう。まあ今は次の闘技場のシーズンに向けての準備が……」
「お前ら!消灯の時間だぞ!!」
話している途中で、家主さんが乗り込んできた。
交流会中は21時就寝、4時起床がルールなのだった。
「ごめん、秘ちゃん。おやすみ――」
「今時の若者がこんな時間に寝れるかー!」
「朝も早すぎるのなんとかしろ!!」
「ええい、問答無用!寝たくないのなら気絶させてやろう!!」
毎年恒例の大騒ぎが始まった。
僕は気絶させられたくないので乱闘を横目に大人しく眠る準備に入ることにする。
最近DFOやっててこんな時間に寝ることがなかったので全然眠くならないんだけどね……
*
そんなこんなで師匠組にボコられたり山で荒行をしたり瞑想なんかもしたりしてゴールデンウィークは過ぎていった。
いろいろ文句は言いつつもこの交流会で強くなるための糧を得た僕達後継者組は、深く礼をして道場を去る。
「じゃあな、天。来年こそは手合わせでお前に勝つから覚悟してろよ!」
「ついでに彼女も作って紹介するからな」
「いやお前に彼女は無理だろ……それはオレが成し遂げる」
「女子とまともに目も合わせられないやつがなに自信満々に言ってんだ」
「あはは、みんながんばってねー」
「その余裕がムカつく!!!!」
総出でツッコまれた。
こんなノリの会話が山を降りて最寄りの駅(ここに着くまでがまた時間がかかるんだ)まで続き、そこからそれぞれの帰路に別れていく。
最終的にお祖父ちゃんと僕だけになり、2人で話しながらのんびり我が家を目指す。
「今年もよくがんばったな。またうちの跡取りが一番だって自慢できた」
「えへへ、まだお祖父ちゃん達には追いつけてないからアレなんだけどね」
「いいや、俺やお前の父親が同じ年頃だった頃に比べれば大したもんだ。晴がちょっとおかしいだけで」
よそと比べた僕の成長にお祖父ちゃんは満足したようで、ご機嫌で話を続ける。
「やはり最近やっているVRゲームとやらの効果もあるんだろうな……天、お前が学校に行っている間ゲーム機を借りてもいいか?」
「学校に行ってる間ならいいけど……もしかしてお祖父ちゃんもDFOやるの?」
「いや、前に話した『ストリートバトラー・リアル』の方だ」
そっちかー。
まあお祖父ちゃんなら蠱毒の中でも生き残れそうだしね。
というかその結果今よりさらに強くなっちゃったりして……
「ゲーム全然やらないから慣れるまで大変だろうけどがんばってね」
「ああ、やるからには頂点を目指す」
めっちゃやる気だった。
さて、そんな感じで無事帰宅した僕はとりあえず秘ちゃんに連絡することにした。
とりあえず端末を取り出しメッセージを送る。
『今家についたよ!めっちゃ疲れた~』
DFO中かとも思ったが、すぐに既読がつき返事も送られてくる。
『お疲れ様!こっちはさっき目標達成したところ。
また世界を縮めてしまった……』
ちょうど秘ちゃんも一段落ついて休憩しているところだったらしい。
ならちょっと話してもいいかと思い、通話をかけるとこれもすぐつながった。
「もしもし、天だよ」
「はーい、秘だよ。いやー、達成感でちょっとハイになっちゃってますね」
「あはは、お疲れ様。僕もだいぶ疲れてるから今日はこのままお風呂に入ってから寝るつもり」
「そっか、じゃあわたしもたまには早く寝ようかな。明日からはきみの闘技場に向けた特訓、最後の追い込みに入らなきゃいけないしね」
そう、ゴールデンウィークが終われば次のシーズンが始まる5月15日も目前である。
次のランク、プルミエではこれまで以上の強敵と、恋のライバルであるリンさんも待っている。
そしてプルミエを突破すれば、クウさんのいる最高ランクのエトワールだ。
次のシーズンも全力でがんばるぞ!




