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44話

 その後もみんなでいくつか動画を観てクウさんを始めとする上位ランカーの戦術を研究した。

そしてそろそろノルマのレベル上げの方に行こうかと思ったとき――僕達に話しかける1人のプレイヤーがいた。


「もしかしたらあんたらもいるかもしれないと思って来てみたが、本当に会えるとはおれも運が良いみたいだ、アルカナさん、そして……カカソーラ!」


 だいぶ下の方から聞える声、そして声質の可愛らしさに反してやんちゃなオレっ娘口調。


「あなたは……ロールプレイヤーのリンさん!」


「……何、またカカソーラに文句でも?」


「ッ!……この前のことならおれも初対面で言い過ぎたよ。ごめん、なさい」


 アルカナの不機嫌まるだしの対応にリンさんは話しかけたときの勢いから急にしおれてしまった。

なんだか可哀想になってきたので僕からアルカナをなだめることにしよう。


「いえ、リンさんの言う通り僕がアルカナに頼りっぱなしなのは事実だし。こうして謝ってくれたんだからもう仲直り、だよねアルカナ?」


「カカソーラがそう言うんなら許してあげてもいいけど、見た感じ謝るためだけにわたし達を探してたわけじゃなさそうだったよね、リンさん?」


 うーん、まだちょっと刺々しいな……

そんな僕達の不穏な空気を察して、ルピナスさんが(多分)能天気を装って話に加わってきた。


「なになに、この人が2人の知り合いでプルミエの注目株っていうリンちゃん?」


「あ、はい。アルカナが助っ人に入って何回か一緒に高難易度を攻略したらしくて……」


「リン『ちゃん』って言うな!おれはブラウニーだからわかりにくいけど24歳の大人の女っていう設定なんだ!!」


 こだわりのポイントに触れてしまったらしい。

オレっ娘と大人の女って食い合わせが悪い設定の気もするけど……


「あはは、ごめんごめん。ボクはカカソーラさんと同じクラン――《ヴォワヤージュ=エトワール》ってクランで一緒に活動してるルピナスだよ。よろしくね、リンちゃんさん」


「だーかーらー、『ちゃん』はやめろって……クラン?えっ、もしかしてアルカナさんも移籍を……?」


 リンさんは困惑した表情でアルカナの方を見る。


「わたしは《ヴァンガード》所属のままだよ。わたしとカカソーラはお互いちゃんと独立して付き合える関係だからね!」


「……そうだねー」


 マネージャーとして入り浸ってますけど……せっかくアルカナの機嫌が良くなったみたいだから言わないけど……

ふと見ると、視界の隅でルピナスさんがサムズアップをしていた。

やはり刺々しい空気をなんとかしようと割り込んできてくれていたらしい。

ありがたい、ちょっと面白がって来ただけなんじゃないかと疑ってごめんなさい!


「……まあクランのことはいいや。おれが何の用でアルカナさん達を探してたか、だったな」


 アルカナの機嫌が良くなったのを察したのか、リンさんもちょっと元気になって話を戻した。


「この前のことを謝ろうってのもちゃんと理由の1つで、あともう1つ――カカソーラ、あんたの成績を見たからっていうのがある」


「僕の成績?」


「初挑戦のシーズンでプルミエ昇格を決めたっていうのは、運が良かったとかアルカナさんに手伝ってもらったとかだけじゃ済まされない、間違いなくあんたの実力が本物だって証だ。認めるよ、あんたは強い」


 リンさんはまっすぐに僕を見つめてそう言った。

えっ、そんなこと言われちゃうととってもうれしいんですが?


「それは、なんと言いますか、ありがと……」


「でもおれの方がもっと強い!!」


 ほえ?

お礼を言おうとした僕の言葉を遮って、リンさんが高らかに宣言する。

そして僕をビシッと指差し、さらに続けた。


「カカソーラ、あんたを探してたのは果し状を叩きつけるため……もし次のシーズンでぶつかったらぶちのめしてやるから覚悟しろ!」


 は、果し状!?

ゲームの中とはいえ初めて言われたよそんな単語!


「果し状、は構わないけど……リンさんはなんでまた僕に対してそんなものを?」


「決まってる、それはおれの方があんたより上……アルカナさんにふさわしいって証明するためだ!!」


 それはもう、リンさんの後ろに「ドン!」という効果音が見えそうなほどの衝撃的な宣言だった。

つまり、僕に対する恋のライバル宣言……だよね!?

これにはアルカナも驚いて呆然とし、ルピナスさんとMEIさんと兼光くんはきゃいきゃいとはしゃぎだし、シリウスさんはやれやれと頭を抱えていた。

そして僕自身はというと、こんな宣言をされた以上返す言葉は1つしかないと堂々と答える。


「そういうことなら、その勝負正々堂々受けて立つよ。アルカナの恋人にふさわしいのは、僕だけだ!!」


 こちらも後ろに「ドン!」、いや、集中線もおまけするくらいの勢いで受けて立つ。

アルカナ――秘ちゃんが関わっていることで退くなんて選択肢は僕にはないのだ。


「そうだよ!!!!負けないでね、カカソーラ!!」


 アルカナは僕の返答がよっぽどうれしかったのか、ハイテンションで僕に駆け寄り肩を掴んでブンブン揺らす。


「盛り上がってきたね!!恋のライバル対決だよ!?」


「ええ、こんな展開滅多に見られるものではありませんよ」


「カカソーラさん、おれ応援しますからがんばってください!」


「みんな今の会話近くのやつには聞こえてるって忘れずにな?」


 ルピナスさん達も興奮して僕達を囃し立て……あれ、待って今の会話聞こえてるってマジ?

あ、そうか、フレンドでもクランメンバーでもないリンさんも含めて会話できるように会話モード設定してるから……まあ、やっちゃったものは仕方ないね!


「こ、こ、恋人……!?」


 盛り上がる僕達と違い、リンさんはぷるぷると震えていた。

どうしたんだろう、言い出したのはリンさんからなのに。


「そこまでの関係だったなんて、そんな、わたしそこまで……」


 口調も素が滲み出しちゃってるっぽい様子だ。

キャラ作り外すと普通なんだな、と思いつつ見ているとシリウスさんがボソリと呟く。


「もしかして、2人が恋人だとまでは言ってなかったんじゃないか?」


「あっ、そういえば!」


 そうだった、言われてみれば確かリアル身内としか言ってなかったような。

あれ、これ僕の盛大な勘違い?いやでも、向こうだってアルカナにふさわしいのはとか言ってたんだからそういう他意があったんじゃ……

そこで僕はさらなる事実に気がつく。

僕達のキャラクターの性別はリンさんが女、僕ことカカソーラが男、そしてアルカナが……男。

これ、もしかしなくても、リンさんはプレイヤーの性別もキャラクターといっしょだと思って……?


「リンさん、ちょっとお互いの認識を確認したいんだけど!」


「必要ない!上等だ、性別の問題くらい乗り越えてみせる。次のシーズンでどっちがアルカナさんにふさわしいかを賭けた勝負、忘れるなよ!!」


「いや、多分大事なことを確認し忘れてるから!ちょっと待と……」


「次に会うのは試合でだ!じゃあな!!」


 リンさんは風のように立ち去ってしまった。


「なんか面白いことになっちゃったね!どうするの、アルカナさんとは伝手があるみたいだし連絡取って誤解解く?」


 ルピナスさんの問いに、僕は少し悩んだが首を横に振る。


「それよりも、レベル上げをします。誤解があったとしてもアルカナを賭けた勝負を持ちかけられた以上、正々堂々返り討ちにしてやらないと彼氏の名が廃りますから」


「お、おぉ……」


 僕の宣言に兼光さんは憧れの眼差しを送り、アルカナに至っては大袈裟なガッツポーズを決めた。

悪いねリンさん、僕達の青春のダシになってくれ!!

それはそれとしていつか誤解は解くけども!

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