42話
アルカナと思う存分いちゃついてから、僕達は《ヴォワヤージュ=エトワール》のクランハウスに移動した。
そこには既に他のメンバーが揃っていて、展開したウィンドウを見ながら何かを話し合っていた。
「こんばんはー、みんなで何見てるんですか?」
「おや、我らがエースのカカソーラくんこんばんは。上位ランカーの顔ぶれを確認しているところですよ」
MEIさんが少し茶化しながら僕達にも見えるようにウィンドウを移動させてくれた。
そこに表示されていたのは最高ランク・エトワールのランキングで、1位はもちろんクウさん、2位にはヴェントスという名前のヒューマンの戦士が名を連ねていた。
「この2人の順位は不動ですね。そして今シーズン躍進したのはなんといってもこちらのゼンさん」
そう言いながらMEIさんはランキング上位のプレイヤーの中から1人の詳細を開く。
そのゼンというプレイヤーの種族はトロールで、職業は二刀流――双剣士の上位職で通常サイズの剣を2本同時に操る職業だった。多彩なコンボルートを持ち強力だが使いこなすのは難しい職業だと聞いている。
「噂に聞くパルクール神拳のゼンだな」
「クウとの試合はすごかったらしいね、後で試合動画も見に行こうよ!」
二つ名が気になりすぎるしクウさんとすごい試合を繰り広げたというのも興味を惹かれる。
僕はその提案にうなずいてから、MEIさんの解説する上位ランカーに意識を戻す。
「今シーズンでエトワール昇格を決めた中での注目株はこのぽぷらさん。マニュアルモードを駆使して移動しながら魔歌を奏でる高機動型吟遊詩人です」
表示されたプレイヤーは両方とも折れ曲ったうさ耳のドワーフの女性で、プロフィール画像ではバニーガール風のコスチュームを着てノリノリのポーズを決めている。
ドワーフ女性の使用者はほぼ男性という情報と目の前にいるその実例ルピナスさんがあるからなんとも言い難い感情が湧いてくる画像だった。
「他にも上位ランカーはいますが、カカソーラくんが来たことですし次のシーズンで闘うことになるプルミエ残留の面々も見ていくことにしましょう」
「よろしくお願いします」
「ランクが上がったからには今シーズンみたいに楽勝とはいかないだろうしね、ライバルの研究もしっかりしていこう」
アルカナの発言はもっともだ。
敵を知り己を知れば百戦殆からず、シーズン休止中の間にやれるだけのことはやっておきたい。
「ではまず今シーズンでの昇格確実と言われていましたが試合数の少なさからプルミエ残留となったミロさん」
そう言ってMEIさんが最初に表示したプレイヤーはまたまたドワーフの女性。
軽装の鎧を身に着けた少しキツ目の美少女……悪役令嬢って感じの雰囲気のキャラクターだった。
職業は騎士、僕も汎用スキル習得のためにレベル上げはしているが、メインで使っているプレイヤーを闘技場ではあまり見かけない印象の職業だ。
「騎士メインでそこまでいけるものなんですね」
兼光くんが心の底から驚いたというようにそう漏らす。
「騎士だって全体的な性能は他の職業に劣ってないよ?優秀なスキルが汎用スキルに集中してるから他の職業メインで騎士の汎用スキル使ったほうが色々悪さ出来るってだけで」
アルカナのフォローになっていない気がする騎士へのフォローであまり見かけなかった理由を悟る。
「それでもあえて騎士で闘技場に挑む、よっぽど気に入ってるんだろうな」
「実際騎士をメインとするプレイヤーのクラン・《真竜騎士団》に所属しているそうです。次はそのミロさんときょうだいらしく、公式コミュニティサイトで一緒に記事を投稿しているリッドさんです」
次に表示されたリッドさんはトロールの男性、職業は拳聖だった。
プロフィールのコメント欄には「クウさんみたいな拳聖を目指してます!」と書かれている。
「この人はクウさんのファンなんだ、ちょっと親近感」
「とはいえ戦闘スタイルはクウさんのような常識外れのものではなく拳聖の防御性能の低さをトロールのステータスと他の職業の汎用スキルで補った堅実なものですね」
「憧れて真似したいからって出来るような戦闘スタイルじゃないからね」
「あっ、リッドさんの記事発見!」
ルピナスさんが別のウィンドウをみんなに見えるように展開する。
そこにはリッドさんがクウさんを追っかけて彼の所属するクラン・《カンフーハウス》に入ったものの、幽霊メンバーだったらしく全く会えませんでしたと嘆いている記事が表示されていた。
「そういえばクウを客寄せに使ってるクランへの文句を言ってる人を掲示板で何回か見た覚えがあったな」
シリウスさんが記事を見ながらそう呟く。
「有名プレイヤー周りは大変ですね……まあそれは置いておいて、次。剣舞士の水月さんです」
表示されたのはちょっと古めのセンスを感じる鎧に身を包んだヒューマンの男性だった。
その外見にアルカナが反応を示す。
「この人、初代『ドラゴンファンタジー』の主人公の見た目再現してる」
「あっ、なんか古い感じだと思ったらそういうやつなんだ。初代に思い入れがあるのかな?」
「うーん、それにしては職業が『セブンソード』再現の剣舞士でちぐはぐだね」
ルピナスさんが僕の予想を職業を根拠に否定する。
『セブンソード』はシリーズで最も売上を出した人気作で、プレイしたことのない僕でも主人公の姿をすぐ思い浮かべられるほど有名な作品だ。
闘技場でも剣舞士のプレイヤーは多く見かけたし……そういえば。
「なんか剣舞士って使いこなせている人少ない印象が……」
「それね!闘技場以外のダンジョンのマッチングとかでも感じるよ」
「『セブンソード』人気の影響で剣舞士人口が多いから、ってだけでもなさそうなんだよな」
僕の感想にルピナスさんとシリウスさんも同意する。
「おれもネットでよく『剣舞士と拳聖には気をつけろ』って見かけるんですけど、なにかあるんですか?」
兼光さんもなにか心当たりがあるらしく疑問を投げかけた。
それにアルカナとMEIさんが気まずそうな表情で答える。
「その2つの職業、上級者向けにわざと難しく調整されている職業なんだよ」
「その分使いこなせば強い……ですがクウさんという運営の予想外の原因で人気が出た拳聖はともかく人気が出ること確実な剣舞士をそういう調整にするのは、日村案件ですね」
「おのれ日村P」
「詫びレターはやく役目でしょ」
お約束っぽいやり取りは置いといて、剣舞士は上級者向け職業、そして水月さんはプルミエに昇格出来る程の実力者。
つまりこれまで僕がカドリーユで闘った剣舞士と違ってその性能を十分に発揮してくるということだ。
油断せずに剣舞士対策も考えておかなくてはならないようだ。
「あともう一人くらい見ておきましょうか……魔導師のリンさんです」
「あっ!」
それは聞き覚えのある名前で、表示されたプロフィールの画像に写っているのも見覚えのある姿。
以前出会ったアルカナの知り合いのプレイヤーさんだった。
「今シーズンからプルミエに昇格しましたが優秀な成績を上げており……ってその反応、知っている方ですか?」
「はい、僕は1回会っただけでアルカナのほうがよく知ってる人なんですけど……」
「カカソーラにケンカ売るやつなんて知らないよ」
アルカナはバッサリと切り捨てた。
ちょっと揉めちゃったけど、厳しすぎじゃないかな……?




