41話
4月29日の17時、僕の初めての闘技場シーズンが終わり、ランキングは「集計中」となって確認できなくなった。
最後に確認した順位から昇格圏内の維持は間違いないと思うが、こう待たされるとやっぱりドキドキしてしまう。
秘ちゃんに確認したところ、ランキングの発表は明日、30日の午前5時に行われるらしい。
朝の稽古前に確認できる時間なので、そのときを楽しみにしてとりあえず今日は久々の闘技場のないDFO。
空いた時間で時間でなにをするかといえば……
「レベル上げだよ、ダンジョン周回~~~!」
はい、いつものこれだね。
今日のパーティはたった今音頭を叫んだルピナスさん、そしてシリウスさん、MEIさん、僕という構成だ。
アルカナは《ヴァンガード》の活動、兼光さんは僕のために作ってくれているという新装備の作業が大詰めということで欠席。
「付き合ってくれてありがとうございます」
「気にしないで、ボク達もメインで使ってるやつ以外の職業のレベル上げしたいところだったから」
ルピナスさんの言う通り、今日は全員いつもと違う職業だ。
僕はメインの銃剣士のレベル上げが一段落ついたので汎用スキル取得のため2本の短剣を使うDPS職業の隠密に。
ルピナスさんは銃士から同じ弓士の上位職だが楽器を手に魔歌を奏でる独特の戦法を使うDPS職業の吟遊詩人に。
シリウスさんは和風の陰陽師から中華風のヒーラー職業の風水士に。
MEIさん(今日はネズミの着ぐるみ)は大鎌使いのDPS職業の死神から十字架型の大剣使いのタンク職業の暗黒騎士になっている。
「いつもとポジション違う人もいるからタンクのMEIさんはゆっくりめの進行で頼む。俺も同じヒーラーとはいえバリアヒーラーの風水士はあんまり慣れてないしな」
「了解しました。ではみなさん、出発前の料理やポーションの方は大丈夫ですか?」
シリウスさんの提案を受けたMEIさんの指揮に、僕はアルカナからもらったミラクルドリンクを一気に流し込んでから問題なしのサムズアップで答える。
他2人もそれぞれ大丈夫のジェスチャーをしたので、僕達はダンジョンへと乗り込んだ。
いつもと違う役割でのダンジョン攻略がどうなったかといえば。
「DPSってめっちゃ気が楽!」
「あはは、遠距離DPSはもっと楽だよ!」
「いや、吟遊詩人は補助用の魔歌もあるんですからちゃんと考えて使ってくださいね!?」
「そうだぞー、補助や回復ばらまいてるときの命握ってる感は最高だからな」
僕以外そこそこのベテラン揃いなだけあって楽勝ムードで進んでいる。
アルカナとダンジョン周回してるときはほとんど制限解除してアルカナの圧倒的暴力で蹂躙していたから今まで気づいていなかったが、役割……というかタンク・ヒーラーとDPSの負担の差というのは結構大きいようだ。
タンク・ヒーラーは自分の役目をこなしながら攻撃で、DPSはひたすら攻撃だから当然なのかもしれないけれど。
「まあよっぽどやりたい職業があるのでなければ私なら初心者にはDPSをおすすめしますね」
「この楽さはそうですよね。僕はよっぽど銃剣士やりたかった方ですけど」
「銃剣士って人気だよね、タンクの人口だと戦士と2強だったはず」
戦士は確か豊富な自己強化スキルを持ち、攻略サイトでは最強タンクの名をほしいままにしている職業だったはず。
それと僕のお気に入りの銃剣士が並び称されるほど人気とは、なんだかちょっとうれしい気分。
「そろそろ暗黒騎士とついでに騎士にも救済が欲しいんですけどね……そういえばみなさんはコロッセウムポイントの使い道はどうします?」
MEIさんの質問に僕は少しきょとんとする。
コロッセウムポイント……どこかで聞いた気はするのだが、思いっきり頭から抜けている。
「ボクはやっぱり闘技場限定オシャレ装備と交換かな」
「俺もそのつもりだよ、和風のやつがそこそこあるからな」
みんなはちゃんと覚えていて考えていたようだ。
ここは変に恥ずかしがらず、素直にコロッセウムポイントとはなんだか聞いてみよう。
「コロッセウムポイントってなんでしたっけ?」
「わーお、カカソーラさんってば報酬に興味なしとは流石だね!」
「闘技場での試合数と勝利数に応じてもらえるポイントのことだな」
シリウスさんの解説に、MEIさんがさらに補足する。
「Gや消費アイテムと交換することも出来ますが、闘技場でしか手に入らない装備アイテムや乗機、使い魔と交換する方がよいと私は思いますよ」
「なるほど……後で交換できるラインナップ確認してみます」
「それがいいよ!カカソーラさんは勝ちまくりだったからけっこう貯まってるはずだしね」
「それはそれとしてもうすぐボスだぞー」
おっといけない。
僕は2本の短剣を操ることに意識を集中させ、ボスがいる最深部へと突き進む。
先陣を切るのは闇のオーラをまとわせたネズミの着ぐるみ、もといMEIさん。
シリウスさんが彼を魔法で作り出したバリアで包み、ルピナスさんがバイオリンをかき鳴らしながら魔歌で遠距離攻撃と味方の補助をこなす。
僕もそれに遅れないように様々な付加効果のついた隠密の戦闘スキルで攻勢に加わる。
メイン以外の職業なりに、その日僕達は順調にダンジョン周回をこなしたのだった。
そして翌日の朝、待望のランキング発表。
僕は端末でDFOの公式サイトを開き、カドリーユのランキングを確認した。
その1ページ目に並ぶ昇格圏内の中にカカソーラの名前は……あった。
「……ぃよっしゃ!!」
家族やご近所の方に迷惑がかからない程度の声を上げて、僕はガッツポーズを決める。
さらに詳しく見てみると上位報酬として家具のトロフィーとメダル、そして大量のコロッセウムポイントが受け取れるようだ。
僕は攻略サイトに移動し、コロッセウムポイントの交換ラインナップを確認、そして交換可能なものの中からこれは!というアイテムを発見した。
「あはっ、今日は秘ちゃんの時間空いてるといいなぁ」
そんなウキウキ気分で朝の稽古に挑んだ僕はお祖父ちゃん、もとい師範にさらに動きが良くなったと褒められ、そろそろ相伝の技を教えてやろうと意味のわからない動きでボコボコにされた。
打倒クウさんが今の目標だけど、打倒お祖父ちゃんはいつになったら果たせるのかな……
その後《ヴォワヤージュ=エトワール》のSNSグループでみんなからのお祝いのメッセージをもらったり秘ちゃんと祝勝会の名のもとにいちゃついたり色々あってから今日のDFOの時間。
僕はアルカナと一緒に闘技場にやって来て、コロッセウムポイントの交換所にいた。
「けっこうポイントもらったはずだから色々交換できるはずだけど、どれにしたの?」
「それはね……これ!」
僕は交換したての笛――コロッセウムグランドランくんホイッスルをアルカナに見せる。
これはその名の通り乗機コロッセウムグランドランくんを呼び出すためのアイテムで、見た目は巨大な2人乗りドラゴンに成長したドランくんとなっている。
そう、2人乗りである。
「というわけで……一緒に空をドライブしない?」
精一杯カッコつけた僕の誘いに、アルカナは大喜びでうなずいてくれた。
以前一緒に飛行船に乗ったときとは逆に、僕がドラゴンの手綱を握り、後ろに座ったアルカナが僕につかまる。
「2人乗りのときのポジション、気にしてたんだ」
「まあね、そういうの気にするのはカッコ悪いかな?」
「全然!かわいくて、大好き!!」
かわいいはちょっと複雑だけど、大好きと言われたのでそっちの喜びでいっぱいだ。
幸せいっぱいの空中飛行、DFOでの2人の思い出がまた1つ増えた。




