38話
その翌日、早速僕達はアルカンジェルの冒険者ギルドにある窓口でクラン設立の手続きをした。
クランマスターとなるルピナスさんがメインで手続きをしてくれたので僕は言われるがままいくつか「承認」の選択をするだけだったが、それでも自分達のクランが出来上がっていくことにワクワクした。
そして少しの待機時間が過ぎると、ついに。
「新規クラン《ヴォワヤージュ=エトワール》の設立手続きが承認されました」
「クラン《ヴォワヤージュ=エトワール》に参加しました」
立て続けにシステムメッセージとクランに関するヘルプが表示される。
メニューにも「クラン」の項目が増え、メンバーリストやまだまっさらな活動記録が閲覧出来るようになった。
「クラン設立完了!入れてない人いないよね?」
ルピナスさんの問いかけに僕達はすぐさま問題ないことを知らせる。
「ちょっとまだ実感わかないけど、やっぱり自分達のチームが出来たって感動しちゃうね」
「はい!しかもカカソーラさんといっしょに、夢みたいです」
浮かれて話す僕と兼光さんをアルカナ達が暖かく見守っているが、ルピナスさんだけは割って入ってきて僕達2人をさらに盛り上げることを告げる。
「これだけで満足してもらっちゃ困るよ。夢じゃなくて現実だって実感してもらうためにも――これから新築ほやほやのクランハウスに直行だよ!」
「おぉ!!クランハウス!」
「おれ達の拠点、ですね!」
空をビシッと指さしてルピナスさんが告げた内容に、僕と兼光さんはさらに盛り上がる。
いいよね、拠点。秘密基地みたいな感じがして!
「まだ家具もなんにもないってこと忘れるなよー」
「シリウスはテンション下がること言わない!それを自分達で充実させていくのも楽しいんだから。さあ、居住エリアに突撃!!」
*
ハイテンションな僕達と、見守りモードの残り3人とでやって来たアルカンジェルの居住エリア。
以前行ったブレイブポートの居住エリアは地中海辺りの観光地風の風景だったが、ここはファンタジー世界の要塞都市の一部といった雰囲気だ。
入ってすぐの場所にある案内板からクランハウスの場所を確認して、居住エリア内の無料ワープポイントも使って辿り着いた僕らの拠点。
それはシリウスさんが言った通り簡素な家が建っているだけで、周囲の装飾や庭具を備えた家々と比べると確かに見劣りする。
だがルピナスさんが反論したように、この家を僕達で充実させていくんだというワクワク感がより強く僕の胸に湧き上がるのだ。
「ルピナスさん……今の僕、既にクラン結成して良かったって気持ちでいっぱいです!」
「ボクもだよ、カカソーラさん……」
「2人で変な世界作らない!」
おっと、アルカナにツッコまれるほどひたってしまった。
アルカナはルピナスさんにちょっと警戒心を抱いてるみたいだからこの辺気を付けなきゃいけなかったのに、迂闊だったな。
「シリウスさんも!ルピナスさんのことちゃんと見ててくれないと困るよ!!」
「いや、俺は別に気にならないから……」
嫉妬したアルカナの矛先がシリウスさんにまで行ってしまった……
いや、待て。「そういう関係じゃない」じゃなくて「気にならない」って言ったな?
「アルカナ、今シリウスさんルピナスさんとの関係を否定しなかったね?」
「うんうん、わたしはとっくに見抜いていたけどね!」
「待った、そういう意味じゃない!」
「え、待って。なんか疑惑発生してる!?」
慌てだすシリウスさんとルピナスさん。
これはどっちと見るべきか……僕達より2人との関係が長そうなMEIさんの意見も聞かなければ。
「私も前々から怪しいと思っていましたよ、はい」
「そうでしょ?だからシリウスさんはもっとちゃんとルピナスさんを見張って欲しい」
「待った、MEIさん適当言わないで!ボク達そういう関係ではないからね!?着ぐるみはぐよ!!」
ルピナスさんは必死で否定し、MEIさんにしがみつき出す。
あー、これは流石に違う方かな。
「っていうか、そういうこと言い出すってことはアルカナさんとカカソーラさんこそそういう関係なんじゃないの!?」
「そうだよ」
「あっさり認めた!?」
アルカナの堂々としたカミングアウトに僕も含めたみんなが驚き、続いてそうなの?という視線が僕に対して集まる。
僕はアルカナが嫌がらないなら付き合っていることを隠すつもりは全く無いので、こっちも堂々と認めることにした。
「実はそうでした」
「え、えぇぇぇぇ!?」
これに大声を上げて一番驚いたのは兼光さんだった。
目を大きく見開いて、現実ならば真っ赤になっていただろうと思われる表情で僕とアルカナを交互に見つめて口をぱくぱくさせている。
「まさか……いえ、そんなこともありますよ、ね?えっとこれからどうすれば……」
少し落ち着いて話せるようになっても、言っていることが全くまとまっていない。
「そこまで驚かれるとは思ってなかったな……」
ちょっと気まずくなって、僕は頭をかく。
どうしようかとアルカナの様子をうかがうと、こっちは満足気にしている。
あれ、実は前から言う機会を狙ってた?
「ボクはちょっとは驚いたけど、そんな予感はしてたかな」
「せっかくクラン作ったわけだし、改めて言える範囲で自己紹介してみようか?」
そんな気まずい空気に助け舟を出してくれたのはルピナスさんとシリウスさんだ。
自己紹介、確かによりみんなのことを知って仲良くしたい、ちょうどいいタイミングかもしれない。
「では私から。DFOサービス開始から楽しませていただいているMEIです。リアルでは都内で大学生をやっている成人済みの男です、改めてよろしくお願いします」
1番手を切ってくれたのはMEIさん。
「わー、特に意外性もない」
「別になくていいでしょうが。必要なら次あなたが自己紹介して意外性出して下さい」
「りょうかーい」
2番手を請け負ったルピナスさんはかわいらしいポーズを決めてから自己紹介を始める。
「DFO歴は4年、職業は銃手メインでやってるルピナスだよ。リアルでは九州で高校生やってる……男の子!!」
「ええぇぇぇぇぇ!!??」
再び兼光さんの驚きの叫びが響き渡る。
うん、僕もアルカナにその可能性をほのめかされてなかったらその反応だった。
なんなら可能性が頭にあっても今めっちゃびっくりしてる。
「ルピナスのキャラメイクと振る舞いはボクが思う『カワイイ』の集大成なんだ。あ、女の子になりたがってるとかそういう願望はないから」
「次は俺かな。同じくDFO歴は4年のシリウスだ。ルピナスと同じ高校で男子高校生やってる……本当にただの友達だからそこはよろしく」
「あっ、その疑惑立てちゃったのはごめんなさい」
続けて自己紹介したシリウスさんは交際疑惑を丁寧に否定した。
僕も誤解してしまったことをちゃんと謝っておく。
「じゃあ次はわたし、マネージャーのアルカナ。DFO歴は6年くらいで、こっちもリアルは高校生。カカソーラとは付き合ってるし、《ヴァンガード》のメンバーにも紹介してるからそこのところよろしく」
その後に続いたアルカナはドヤ顔で僕との関係を改めて強調する。
やっぱり前からはっきり言いたかったのかな……
なら僕も続いてアピールしておくかと次の番に名乗り出る。
「どうも、アルカナとラブラブのカカソーラです。DFOは本当に始めたばっかりの男子高校生です。みんなでいっしょにがんばっていきましょう!」
「ひゅーひゅー、カカソーラさんの方も押し出して来るね!」
「ルピナス、あんまりからかわない。最後は兼光さんだけど、いけるか?」
兼光さんは戸惑いつつもうなずいて、おずおずと話し出す。
「えっと、兼光です。DFO歴は半年くらい、リアルでは中学生やってて……普通に男です。特に面白いこと言えませんけど、よろしくお願いします!」
「大丈夫、面白いこと言う必要ないから」
「そうそう、こういうのに面白さも意外性も必要ないよ!」
「この人堂々と……」
ちょっと波乱が起きかけたけどなんだかんだで僕達は《ヴォワヤージュ=エトワール》としての1歩をこうして踏み出した。
兼光さん年下かー、DFOでは後輩だけどこれはますますカッコ悪いところ見せたくないな。
……あれ?そういえばアルカナが女の子だって言ったっけ?




