37話
『カカソーラ:話は大体わかりました
前に言ってた頭数っていうのは、クラン設立に必要な人数だったんですね
ルピナス:そうそう
アルカナさんは《ヴァンガード》があるから1人足りないな~と思ってたところに
兼光さんが来てくれました!
兼光:正直急展開でびっくりしてますが
カカソーラさんのお役に立てるなら喜んで!
シリウス:まだ提案だからな
所属できるクランは1つだけだから流されないように
MEI:まあクランの脱退はいつでも出来ますし
ルピナス:集まれる拠点と自分の部屋があったら便利でしょ?って提案だね
アルカナさんのこともあるしゆっくり考えてね』
ふむふむ、もう話が決まっているというわけではないようだ。
ならばお言葉に甘えて先にアルカナと相談させてもらおう。
「事情は多分わかったから率直に聞くけど、別々のクランになるの……嫌?」
「嫌……だけど、同じクランは無理だなって最初からわかってはいた……」
アルカナはぽつぽつと、しかし正直に今の気持ちを話してくれた。
「《ヴァンガード》は高難易度コンテンツの攻略を目指すクランだからきみは興味持たないだろうなって予想してたし、脱退してきみと2人で別のクランに入るって選択肢もあるのに、それも嫌になっちゃってた……」
「《ヴァンガード》ですごく楽しそうだったもんね」
「うん。だからルピナスさんの提案へのもやもやは、わたしの理不尽なワガママでしかないんだよ。ごめんね、こんなことに気を使わせちゃって……」
俯きがちに話すアルカナの手を取って、僕も正直な気持ちを話す。
「いいんだよ、僕は君のワガママ聞くのが楽しくて仕方ないんだから。それに最近はDFOで助けてもらいっぱなしじゃないか、『こんなこと』くらい僕に甘えてよ」
満面の笑顔で伝えた本心を、アルカナは俯向いていた顔を上げて受け止めてくれた。
そして少し困ったような笑顔を浮かべて答える。
「きみのそういうとこ、叶わないなぁ」
「えー、そこは『好きだな』じゃないの?」
「贅沢言わない。あとそういうからかおうとするところは直して」
言葉は少しきびしいが、すっかり機嫌の良くなったアルカナの返事に僕も一安心。
僕の彼女は照れ隠しもかわいいのだ。
「じゃあルピナスさん達には申し訳ないけどお断りを……」
「ううん、それはいらない。新しいクラン、作っちゃいなよ」
アルカナは吹っ切れたようにそう言った。
「遠慮しなくてもワガママ、聞くよ?」
「もちろんワガママは聞いてもらうよ。新しいクランに我が物顔で入り浸らせてもらうから」
アルカナは胸を張ってそう宣言する。
そんなこと、ルピナスさんが「特別顧問」なんて肩書を用意しているあたり最初からみんなそうなると思ってるはずだけど、アルカナはそれでいいと言う。
これはまたいいところを見せる機会を取られてしまったようだ。
まったく、叶わないのは僕の方だ。
「わかったよ、じゃあ一緒に返事してこよう」
「うん、みんなを喜ばせてあげよう」
『カカソーラ:お待たせしました
僕と特別顧問のアルカナはクラン設立に賛成です
アルカナ:喜べー
でもわたしの肩書は「マネージャー」に変更するように
ルピナス:わーい
これで5人、全員賛成でいいかな?
シリウス:俺は賛成
MEI:私もです
兼光:おれもです
ルピナス:はい全員賛成やったー!
アルカナさんの肩書も変更しておいたよ
頼れるmanagerの誕生だ!!』
僕達が話している間に他のみんなも考えを決めていたようでさくっと可決。
SNSでのやり取りにアルカナも満足気だ。
マネージャーヒロインやりたがってたもんな……
でも英語のmanagerだと支配人とか監督みたいな意味だった気がするな……
『ルピナス:人数が揃ったのでクラン設立のために決めておかなければいけないことが2つあります
兼光:なんでしょうか?
ルピナス:まずクランハウスをどこに建てるか!
ハウスを建てられる居住区はデイリークエストを受注出来る町にそれぞれあるんだけど
みんなどこがいいー?
MEI:ちなみに人気なのは利便性のいいブレイブポートと景観のいいフルッタの居住区です
シリウス:でもうちの場合は闘技場挑戦が目的だろ?
アルカンジェルでいいんじゃないか
兼光:確かに闘技場の近くにあるのが便利そうですね
アルカナ:目的地が近いと便利なだけじゃなく気合いも入るよ
カカソーラ:じゃあ僕もアルカンジェルに1票
MEI:私もアルカンジェルに
ルピナス:おっけー!場所はアルカンジェル!!
じゃあもう1つのより重要な議題……
クラン名を決めましょう!!
アルカナ:何よりも大事な議題
兼光:そうなんですか!?
ルピナス:そうだよ!
シリウス:そうだな……
カカソーラ:これから掲げていく看板ですもんね。
カッコいいの決めましょう』
キャラクターの名付けにも結構こだわった僕にとって重要じゃないはずがなかった。
カッコ良く、かつ闘技場に関わりのありそうな名前をつけたいところだ。
「クラン名……そういえば《ヴァンガード》って誰がつけたの?」
「たしかみんなで色々出し合った候補の中からもめさんが決めたはず。攻略の最前線に立てるクランになろうって目標を込めて、『前線』って意味の『Vanguard』にしたとかなんとか」
目標を込めて、か。
他のみんなはどこまで目指しているか知らないが、僕の目標は打倒クウさん。
そしてそのために最高ランクのエトワールに到達すること。
……そうだ!
『カカソーラ:えっと、あくまで僕の目標なんですけど
エトワールでクウさんと闘いたいので「エトワール」を入れたいです
ルピナス:いいね!志は高く行こう!!
そもそもエトワールって響きがカッコいい
兼光:ですよね、なんて意味でしたっけ?
シリウス:フランス語で星のはず
他のランクと合わせると多分オペラ座のバレエダンサーの階級が元ネタ
アルカナ:じゃあもう1つフランス語の単語くっつけたらいい感じの名前になるんじゃない?
ルピナス:ちょっと待ってね
検索中……
シリウス:MEIさんあれ、外国語ネーミング辞典みたいなの持ってない?
MEI :なんで私に聞くんですか
持ってますけど!!
ルピナス:おまたせー
いいの見つけてきたよ
voyage ヴォワヤージュ、フランス語で「旅」!
くっつけてヴォワヤージュ=エトワール、どうよ!!
アルカナ:星への旅、エトワールへの道って感じかな
いいんじゃない?
カカソーラ:めっちゃいい!!
それにしましょう!
兼光:カカソーラさんが気に入ったんならおれもそれで
シリウス:俺もそれでいいかな
MEI:待って下さい、名詞をくっつけただけじゃそうなりません
アルカナ:いいじゃん、細かいことは
ルピナス:そうそう
ばーん、とインパクトがあればヨシ!
MEI:知りませんよ、後で恥ずかしくて頭抱えても!
カカソーラ:そんな大袈裟な
こんなこともあったねーって後で話のネタにすればいいじゃないですか
MEI:くっこれが陽の者の反応……!』
こうして僕達のクラン名は《ヴォワヤージュ=エトワール》に決まった。
名前が決まると……テンション上がるね!




