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34話

「それでボク達は心を一つにして闘技場に挑むことになったんだ」


「わたしが指導役としてみんなをサポートしたことも忘れずにね」


「まるで運命に導かれるように仲間が揃っていったんですね……」


 ルピナスさんとアルカナがなんかいい感じに改変されたこれまでの経緯を語り、兼光さんがそれを真に受けているのをどうしようかなこれと思いつつ、僕達はコトナ遺跡のボスであるコトナ・ガーディアンと戦闘中だ。

コトナ・ガーディアンは自分の近くを狙う範囲攻撃と、遠くを狙う範囲攻撃を使い分けてくるので直前に出て来る攻撃範囲を示すオレンジ色のゾーンをしっかり確認する必要がある。

ボスの周囲を行ったり来たりしながらもヘイトを維持して、ルピナスさんと兼光さんが攻撃に専念できるようにする。


「次はボスの近くに範囲攻撃だよ!」


「はいっ、ボスから離れて、【飛燕剣】!」


 僕が送った注意に兼光さんはきちんと反応してボスから距離を取り、中距離から斬撃を飛ばして攻撃する侍の戦闘スキルで安全地帯からの攻撃に移る。


「兼光さんいい感じ!カカソーラさんもナイスフォロー!!」


「ボスのHP残りちょっと、火力上げて削り切るよ!」


 アルカナは魔法のキャストタイムを縮める賢者の戦闘スキル【コンセントレーション】を発動、怒涛の勢いで攻撃魔法を連発する。

ルピナスさんも銃士の戦闘スキル【ガトリングガン】でどこからともなく回転式機関(ガトリング)砲を取り出し撃ちまくる。


「ひゃっはー!これでおしまいっ!!」


 ハイテンションなルピナスさんの宣言通り、2人の攻撃はコトナ・ガーディアンのHPを削り切った。

軽快なファンファーレと現れる宝箱、ファンといっしょのダンジョン攻略は情けない姿を見せることなく無事終了である。


「みんな、お疲れ様」


 僕が真っ先にそう言うと、まず反応したのは兼光さん。


「お疲れ様です!一緒にダンジョン出来るだけじゃなくて、色んなお話も聞けて最高でした!!」


「おつかれ~、そう言ってもらえて何よりだよ」


 色んなお話(改変済み)を主に語っていたルピナスさんも満足気にそう労う。


「お疲れ様。ドロップの分配はどうする?」


「ドロップか……流石にこのレベルのダンジョンの装備はみんなもういらないよね」


 アルカナとそう話しつつ宝箱を開けると、思っていた通り入っていたのはレベルの低い装備品……と1つだけ初めて見るアイテムだった。


『ミニ・コトナ・ガーディアン

  使い魔

  コトナ・ガーディアンを模した魔法人形。』


「これはちっちゃいさっきのボスを連れ歩けるアイテムか。欲しい人いる?」


「ボクはもう持ってるから大丈夫だよ」


「わたしも持ってる」


「ぼくは持ってませんけど、カカソーラさんがもらってください。重要なタンク役をやってくれたので」


 うーん、持ってないアイテムへの興味は少しあるけれど、今日はそれよりもファンの前でカッコつけたい気持ちが勝るんだよね。

相談するようにアルカナに視線を送ると、無言で首を縦に振られた。

これはやっちゃえのサイン……よし、思う存分カッコつけよう。


「いや、今日は初めてファンと交流できた記念の日だから、これは記念として兼光さんにあげるよ。これからもがんばるから応援よろしくね」


「えっ、いいんですか!?」


 兼光さんは困惑しつつも、喜びをにじませた声で答える。

その後ろにいつのまにかアルカナが忍び寄って、低い声で告げた。


「カカソーラの好意が受け取れないって……?」


「やめてよアルカナ」


 これは流石に僕も止める。

小さい頃から僕が他の子に優しくすると拗ねるくせに、それを断る子にはもっとキレるんだよね……


「アルカナのことは気にせずに、いらないなら無理に受け取ってくれなくてもいいんだ。でもここは僕の気持ちを満足させると思って受け取ってもらえるとうれしいな、なんて……」


「無理じゃないです!喜んで受け取らせていただきます!!これから常に連れて歩きます」


 ちょっと大袈裟だが、ちゃんと受け取ってもらえて良かった良かった。

じゃあそろそろダンジョンを退出しよう……と言い出しかけたそのとき。


「兼光さん、ここで満足しちゃっていいのかな?」


 ルピナスさんが待ったをかけた。

そういえば最初に会ったときもルピナスさんに呼び止められたような……

はっ、もしやこの続きは。


「ど、どういうことでしょうか、ルピナスさん?」


「せっかく一緒にパーティ組んでダンジョン攻略までしたんだよ。するしかないでしょ……フレンド登録!」


「フレンド……!そんなの、いいんですか!?」


 兼光さんは大袈裟に僕の方を振り返る。

狼の瞳に込められた感情は期待半分不安半分といった感じだった。


「えーっと、僕はいいけどアルカナがなんて言うか……?」


 視線をアルカナの方にやると、その表情は訝しげ……ただし見つめている先は兼光さんではなくルピナスさんの方だった。


「きっちり面接したからわたしも構わないけど、ルピナスさん、なにか企んでない?」


「企むなんてとんでもない!ボクはただ新たな友情が芽生える機会を応援したいのと、ちょうどあと1人で頭数が揃うなーって思っただけだよ」


「頭数……?」


 僕達闘技場に挑戦チームのメンバーはルピナスさんにシリウスさん、僕とアルカナにMEIさんの5人だ。

パーティの構成は4人だから、サポートはしても参加する気のないアルカナを抜いても兼光さんを入れたら足りるんじゃなくて余ると思うのだが……

なにか6人で出来るコンテンツもDFOにはあるのだろうか?


「えっと……フレンド登録、やっぱりダメですか?」


 少し考え込んでしまった僕の耳に、不安そうな兼光さんの声が入ってくる。

おっといけない、ちゃんと答えないまま放置してしまっていた。

パーティ内で一番大きいはずなのに小動物のようなオーラをまとわせてしまった。


「駄目じゃないよ、これからよろしくね」


 僕の方から兼光さんにフレンド申請を送り、同時に握手を求めて右手を差し出す。

申請はすぐに承認され、兼光さんはぷるぷる震えながら、軽く僕と握手をした。

それをぎゅっと強く握り帰して、僕は笑顔でいたずらっぽく言う。


「闘技場に向けたレベル上げばっかりしてきたから他のコンテンツはきっと兼光さんに教わることばっかりだと思うんだ。初心者同士仲良くがんばっていこう!」


「……!そ、そうですね。がんばりましゃう!!」


 あっ、ちょっと噛んだ。

恥ずかしさでさらにぷるぷる震える兼光さんをなだめて、ファン1号にして新たなDFO友達とのダンジョン攻略は今度こそ無事に終了したのだった。

その後ルピナスさん、兼光さんと別れて2人になった僕達はもう少しダンジョンを周回してレベル上げをしていったのだが……


「ルピナスさん、やっぱり油断ならない……絶対何かを企んでいる。まさか本当に中身女性で天のことを……?だとしたら許すわけにはいかない……」


 アルカナがなんか疑心暗鬼モードに入ってしまった。

心配しなくてもルピナスさんが悪いことを企んでいるとは思えないし、現実のルピナスさんがどんな人だったとしても僕が秘ちゃん以外に気をそらすなんてありえないのにな。

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