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33話

 その後ルピナスさんと闘技場での戦い方について少し情報交換をして通話を終え、それぞれ再び挑戦を始めた。

時間と体力が許す限り連戦、今日も昇格圏内をキープするのに十分な勝ち点を稼いでから退出する。

フルダイブ型のVRゲームはけっこう脳の疲労があるらしく、ダイブ・ギアの初期設定をするときに長時間プレイする場合は休憩を挟みましょうという注意が出てきた。

話を聞く限りDFOのトップ層のプレイヤーは守ってないっぽいけど……


 それはそれとして、退出後まずルピナスさんと合流し、2人で僕を待っているはずのアルカナを探す。

兼光さん見つかってなければいいな……という淡い期待を持ちつつプレイヤーが集まっているところを重点的に探していると、今日も簡単にアルカナは見つかった。


「あっ、カカソーラこっちだよ。ルピナスさんと当たったんだね」


 にこやかに僕達を迎えるアルカナの隣には……カチコチに姿勢を正した兼光さんがいた。

期待も虚しく既に面接は行われたらしかった。


「うん、ただいまアルカナ。兼光さんは、なんというかお疲れ様……」


「ぼくのことはお気になさらず!アルカナさんに色々とご教授頂いただけですので、はい」


 あれ、予想してたよりポジティブな反応だ。

追い返されていない以上アルカナに合格はもらえたのだろうとは思ったが、案外普通に話しただけで済んだのかな?


「カカソーラさんの名に泥を塗らないように、ファンとしてあるべき姿をしっかり学ばせて頂きました。これからは御用があればいつでもおっしゃってください」


「いや、かしこまりすぎだよ!?どんな話したのさアルカナ!」


「一向にカカソーラのいいところをありのままに伝えただけですがー?」


 兼光さんのまっすぐな瞳が重すぎる!

これはどうしたらいいんだと頭を抱えた僕は、一連の流れを見ていたルピナスさんに助けを求めて視線を送る。

それに気づいたルピナスさんは少し考えたあと、ポンと手を叩き口を開く。


「そちらの兼光さん、カカソーラさんのファンになってくれた人なんだ!」


「そう!でもアルカナがなんか色々吹き込んじゃったみたいで……」


「ではカカソーラさんを闘技場に導いたキーパーソンであるこのボク、銃士のルピナスのことはご存じかな……?」


「そうなんですか!?もしよろしければルピナスさんのお話も聞かせて下さい!」


 ルピナスさんもなんかノリノリで話を広げだした!

助けを求める人選を間違ってしまったようだ、なんで今日はいてくれないんだシリウスさん!!


「……まあそんなこんなでボクとカカソーラさんは出会って、おっと、ただ話すだけじゃ時間がもったいないね。ちょうど4人いるし、ランダムダンジョン消化しつつ話さない?」


「それはいっしょにパーティを組んでくれるってことですか?光栄です、ぜひお願いします!」


 僕が頭を抱えている間にも話は進んで、いっしょにダンジョンに行くことになっていた。


「いいでしょ?2人とも」


「はい、それ自体は別に……」


「わたしもいいよ。兼光さんは職業どれで行きたい?」


「生産系メインでやっているのでレベル上げてるのは侍だけなんです。大丈夫ですか?」


 侍はDPSで、僕が今レベルを上げているのはメインの銃剣士でタンク、ルピナスさんの銃士とアルカナの魔法剣士もDPSだから、ヒーラーが足りないことになる。

しかしそこは頼れるアルカナが解決策を提案してくれる。


「いいよ、わたしが賢者でヒーラーやるから」


「おっ、『アルカナ式賢者』だね。動画見たよー」


 ルピナスさんが言った「アルカナ式賢者」とは《ヴァンガード》が上げている動画の一つで紹介されている賢者の運用法のことである。

攻撃魔法と回復魔法の2つに特化しヒーラー初心者に最適とされている賢者を他のヒーラー職業の汎用スキルでさらに強化、高難易度コンテンツでも大活躍できるようにした構築らしい。

僕もちょっとだけ動画を見たが再生数・コメント数ともに多かったのでそれなりに評価されている運用法なのだろう。


「でもアルカナ前に賢者は練習中って言ってなかったっけ?」


「魔法剣士と比べたら極めきれてないから練習中だよ!」


 アルカナの清々しい開き直りを聞きつつ4人でパーティを組み、ランダムダンジョンに参加申請する。

マッチングの必要がないのですぐに突入でき、始まったのは「Lv21ダンジョン:コトナ遺跡」。

初期のあまり難しくないダンジョンなので、話しながらでもなんとかなりそうだ。

僕はまず【ガーディアン】を起動し、パーティメンバーの準備を確認する。


「もう始めていいかな?」


「ボクはOKだよー」


「わたしも大丈夫」


「ぼくもいけます、足を引っ張らないようにがんばります!」


 兼光さんはちょっと緊張しているようだ。

僕もファンの前でちょっとカッコつけたいし、ここはリラックスできる一言を送らねば。


「今日はしゃべりながらゆっくり進めるから、気楽に行こうね」


「そ、そうですね。よろしくお願いします!」


 まだ少し固いが、ちょっとは緊張が抜けたようだ。

それを確認して、僕は先走りすぎないように気をつけつつダンジョン内を進んでいく。


「カカソーラさん、フォローする側になったんだねぇ……」


「立派になってわたしも鼻が高いよ……」


 ルピナスさんとアルカナのしみじみとした発言はこそばゆいのでスルー。

前方に現れた遺跡を守るゴーレム系モンスターに【挑発】スキルを発動し、後ろの3人に戦闘開始の合図を送る。


「戦闘行くよ!」


「了解、【リジェネレーション】!」


「撃ちまくるよ!!」


「えっと、がんばります!」


 僕がモンスターの群れを引きつけ、アルカナが継続回復魔法でサポート、ルピナスさんが弾丸の雨を降らせ、兼光さんが少し遅れて攻撃に加わる。

まだVRの操作に慣れていないのか兼光さんはぎこちない動きだが、セミオートモードの動作補正のおかげで攻撃は問題なく命中しモンスター達のHPを削っていく。


「ボクとカカソーラさんが出会ったダンジョンではボクの友達とアルカナさんを含めた4人で攻略してね、初心者とは思えないカカソーラさんの剣さばきに目を見張ったものだよ」


「ちょっと見ただけでわかるなんて、カカソーラさんもルピナスさんもすごいですね!」


 ルピナスさんが適当な話をし始めるくらいに余裕で戦闘は進んでいく。

なんかもう訂正するのも無駄な気がしてきたのでそれもスルーして、兼光さんの前でカッコつけることに専念する。

敵を漏らさずちゃんと引きつけて、道に迷わずしっかり先導。

たしかこのダンジョンではいくつかの小部屋で最奥の扉を開けるための鍵を集める必要があって……


『鍵1個目→右の廊下の2番目の小部屋』


 アルカナから2人だけに見えるテキストチャットで鍵の場所を伝えるメッセージが送られて来る。

僕の意図を汲んでの手厚いサポート、これはありがたい!

精一杯の感謝を込めてテキストチャットにハートマーク付きの「ありがとう」を送る。


「っっっ!!!!」


「アルカナさん!?いきなり天を仰いでどうしたんですか!?」


「なんでもない……構わず進んで」


 なんでもないと言うがアルカナは絶好調になり、その後の戦闘では攻撃魔法を切らさないまま僕に過剰な補助魔法と回復魔法をかけてくるようになった。

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