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32話

「……ってことがあったんだよ」


 アルカナと合流後、デイリークエストをこなしつつファンへの対応について相談することにした。

こういうことにもきっと慣れているだろうと思ったからだ。


「応援してもらえるのはめっちゃうれしいけど、結局はよく知らないプレイヤー同士でしょ?どういう風に付き合っていけばいいかわかんなくてさ」


「ファンねぇ……とりあえず浮かれて目移りせずわたしに相談したのは褒めてあげる」


 男の子っぽいと言ったはずだが、アルカナの警戒心は強かった。

僕はアルカナが性別不明のファンの人と知らないところで仲良くしてても気にならないのに……いや、ちょっとは気になるな。

うん、アルカナの警戒心は正しい。

ファンへの対応は相談することにしたさっきの僕、ナイス判断!


「これからガンガン闘技場で勝ち進んでいく予定な以上、わたしの見立てではファンもガンガン増えていくと思うんだよね。そうしたらファン全員と同じように仲良くするのは無理でしょ?」


「買いかぶった見立てな気もするけど、全員と仲良くするのは無理ってのはそうだね」


「とはいえ初めてのファンは特別だし、DFO内の友達がもうちょっと欲しいからこれはチャンスなのでは?と思ってる自分もいる……とか考えてるでしょ」


「おっしゃる通りでございます」


 アルカナに見破られた通り、僕はDFO内での友達作りに興味が出始めている。

《ヴァンガード》の空気感がとても楽しそうなのを見た影響もあるだろう。


「それなら提案!」


 アルカナは人差し指をビシッと立てて、自信満々に言葉を続けた。


「ファン1号くんが交流持っても勘違いしちゃわないしっかりした人かどうか、わたしが面接して見極めてあげる!」


「面接!?」


「そう、何度もわたし達がいっしょにいるのを見てるならそれなりには仲が良いってわかってるはずでしょ。明日にでも闘技場に挑んでる間に話しかけておくよ」


 兼光さん視点だと新人の注目株に話しかけてみたら翌日トッププレイヤーにツラ貸せよされることになるわけだが……

まあいいか、恋人の焼きもち対策は優先順位として上位に入れる、そんな彼氏で僕はありたい。


「じゃあそういうことでお願いしようかな」


「ふっふっふっ、しーっかり見極めるから安心して挑んできてね」


 悪い笑顔を浮べるアルカナだった。



 そして翌日、学校では2日に別けて行われる実力テストの日でいつもより下校時間が早かった。

1年生がどれだけ中学校での知識を身に着けているかを判断するためのものだからスイスイ解くことが出来た。

自慢になるけど学校の勉強はそこそこ得意なのである。

今後はDFOをやる時間を少しは確保したいからちょっと不安だけど、高校受験時にもログイン時間を減らさなかった秘ちゃんにそこは相談することにしよう。


 あのときは僕も三千院家の進路相談に呼ばれて、秘ちゃんの今後について話し合ったっけ。

母親の夜空さんが会社を継ぎたいというのならこれから課すエリート教育を乗り越えた上で社内の出世レースを勝ち抜いてもらう、そうでなければそれなりの資産を譲ってあげるから勝手にしなさい、なんて厳しいんだが甘いんだが極端な条件を出したところから始まったんだよね。

それを秘ちゃんが会社のことは興味ない、天のお嫁さんになるからって即断ったものだから天くんは将来どうするつもりなの?って僕の進路相談会になっちゃって。

最終的に秘ちゃんは資産の管理がちゃんと出来るように法律を学べる大学を目指すことになって進学率の高い今の高校を選んで、なんか僕も同じ学校に行けるように勉強することになったのだ。


 思い返すとちょっと振り回されてる感のある回想はこの辺にして、充実した稽古の時間を経てDFOの時間だ。

開始地点はもうおなじみとなった闘技場。

さくさくと受付を済ませて選手控室に移動、特訓くん相手に軽く準備運動をしてから今日の挑戦開始である。

マッチングする相手と次々に試合をし勝利を重ねていく内に、なんとなんと。

次の対戦相手にルピナスさんが選ばれたのである。

職業ははじめて会ったときと同じ銃士(ガンナー)弓士(アーチャー)の上位職で超攻撃重視の職業だ。

ちょっと驚いたもののすぐに「試合を受ける」を選択、闘技場の舞台へと移動する。


「やっほー、直接対決の機会来ちゃったね」


 ルピナスさんが陽気に手を振ってくる。

僕もそれに手を振り返して、明るく告げる。


「びっくりしましたけど、お互い全力でがんばりましょう!」


「もちろん!全力出して楽しんで行こー」


「あと時間あったら後でいっしょにランダムダンジョン行きません?」


「いいよー、そうなるとシリウスがリアル用事でいないのが残念だね」


 そう言ったところでカウントダウンが終了、試合開始の合図が出て空気が一変する。

お互い戦闘モードに入ったのだ。


「最初からでかいの行くよ!」


 ルピナスさんがどこからともなく巨大な銃器を取り出し轟音とともに攻撃を放つ。

銃士の高火力戦闘スキル【カノンバースト】だ。

当たるとタンクである僕の銃剣士でも大ダメージを食らってしまうが、VRの体の性能をフルに活かしてこれを回避する。

【カノンバースト】は再使用までに時間のかかる戦闘スキル、加えて銃士は遠距離での戦いを有利とする職業、ならばおそらく次の手は……


「近寄らせないための一手、わかってても対処できるかな!?」


 舞台のほぼ全域に紫色のゾーンが広がる。

これは銃士と同じ弓士の上位職、野伏(レンジャー)の範囲デバフ戦闘スキル【ハンティングゾーン】だ。

範囲内の全てのキャラクターの移動速度を下げる効果があり、足止めにはかなり有効な一手である。

さらにルピナスさんは【バレットレイン】からの範囲攻撃コンボを繰り出し僕を牽制する。

単体攻撃では避けられるとみて威力に劣るが避けにくい範囲攻撃、しっかり研究されているようだ。


「それでも、これだけじゃ足りませんよ!」


 僕はタンクの防御力を信じて何発かは攻撃を受けて突撃、ソードバレルの間合いへとルピナスさんを捉える。


「じゃあもう一手あったらどうかな?」


 ルピナスさんは心底楽しそうな笑顔を浮かべて範囲攻撃コンボを中止、小柄なドワーフが持ってもこじんまりしてみえる2丁拳銃を取り出す。

この技が決まったらマズい――だが僕にだってそれを覆す一手がある!

右足を強く踏み込み、目的の戦闘スキルを発動する。

ルピナスさんの銃と、僕のソードバレル、抜き打ち勝負だ!!


 二発の弾丸が僕を撃ち抜く。

しかしひるんでいるのはルピナスさんで、笑っているのは僕だ。


「もう逃さない!!」


 得意の【マジテックソード】起点のコンボと【マナバレット】の追撃を組み合わせた連撃でルピナスさんを打ちのめす。

試合終了の鐘、僕の勝利だ。

選手控室に帰還後、ルピナスさんからボイスチャットがかかってくる。


「やられちゃった、やっぱり強いね!あのときの戦闘スキル、騎士の【ホーリーバインド】でしょ?」


「はい、ルピナスさんのは【デリンジャー】ですよね」


 【ホーリーバインド】は騎士の戦闘スキルでダメージは与えられないが相手の移動スキルを制限するバインド効果があり、【デリンジャー】は威力は低いが発動と同時に大きく飛び退くことが出来る。

【デリンジャー】の移動は【ハンティングゾーン】の効果を受けないがバインド効果には制限される。


「あそこで距離取られてたらちょうど使えるようになった【カノンバースト】食らってましたよ」


「そのつもりだったんだけどねー。【デリンジャー】の発動タイム速いからイケると思ったんだけど、やっぱり強いよカカソーラさん」


「【ホーリーバインド】の入力動作がいつも練習してる踏み込みと同じだったからラッキーでした」


 踏み込むときの力の入れ方は現実だと技の威力に直結するからね!

意外なところで練習は効果を発揮するようだ。

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