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31話

挿絵(By みてみん)


 午後の授業も帰宅後の稽古もきっちりこなし、夕食時には家族に秘ちゃんのお弁当はどうだったかあれこれ聞かれるのをいなして、お待ちかねのDFOの時間である。

いつも通りアルカナと合流して、まずはデイリークエストとランダムダンジョンでレベル上げから。

アルカンジェルに到達したことでこの町でもデイリークエストが受注できるようになり、獲得経験値がさらにアップしていた。


「……なんか他の町と同じお使いクエストではあるんだけど、楽になってるというかストレスが減ってる気がする」


「アルカンジェル絡みのコンテンツは最初の大型アップデートで追加されたやつだから、プレイヤーの声を反映して色々快適になってるんだよ。この後増えていくのも大体そう」


「へぇ……」


 大体ってことはそうじゃない追加コンテンツもあったのかな?と頭をよぎったが、今は闇を覗き込みたくない気分なのでツッコまないでおこう。

そんな風にレベル上げノルマをこなしたら、あとは闘技場で勝ち点稼ぎの始まりだ。


「よし、今日も勝ちまくって来るよ!」


「がんばれ!今日も試合観ながら応援してるから」


 受付前でアルカナと別れてさあ始めよう……というところでふと気がつく。

せっかくDFOにログインしているのに、試合を観るだけというのはアルカナに悪くないだろうか?

これまでは僕に付き合わせてると言っても2人でおしゃべりしながらとかだったが、僕が闘技場で試合をしている間は完全に放置である。


「僕が闘技場やってる間、そっちも好きなことやっててね?」


「……?どうしたの急に」


「いや、放置しちゃってるの悪いなと思って」


 少し気後れしている僕の態度に、アルカナの表情も少し暗くなる。


「もしかして、リンさんに『寄生』って言われたこと気にしてる?」


「それはそんなに。そうじゃなくてDFOを一緒に楽しむってのは、僕が楽しむのを横で見ててもらうのとは違うよねって思っただけ」


「そうだけど……」


 アルカナが視線を反らす。

高難易度コンテンツ攻略の最前線を楽しんでいたアルカナだ、僕と一緒にプレイするのが楽しいというのは嘘じゃないだろうけど、そっちのことがそろそろ気になりだしているはずである。


「《ヴァンガード》でまた強いボスのソロ挑戦企画立ってるんでしょ?僕は闘技場、君は高難易度で楽しんで、合流してから楽しんだこと報告しながらノルマのレベル上げ……ってのはどうかな」


「そういうやり方もアリかもね……って、待った。なんで《ヴァンガード》の予定知ってるの!?」


「《ヴァンガード》の動画チャンネル視聴登録したからだけど?」


「いつの間に……」


 いつと言われればクランハウスにお邪魔したとき、視聴してくれるとうれしいなってもめさん達におすすめされたから登録したのだけれど。

それはともかく、僕の提案はアルカナにとっても悪いものではなかったようだ。

少しの間考えてから、それに頷いてくれた。


「でも応援するのだって楽しいから、今日はここで待ってるよ。やりたいときに《ヴァンガード》に顔出して、応援したいときに闘技場。それでいいでしょ?」


「いいも何も、2人共楽しめるようにしたいだけだから」


 こうして話はまとまって、今度こそ手を振りながらアルカナと別れる。

2人で楽しむため、とりあえず今できるのは試合でアルカナに手助けしてもらった分結果を出すことだ!

気合いを入れ直して試合に挑み、並み居る試合相手を打ち破る。

その結果、闘技場挑戦2日目の成果は――


「昇格圏内復活!!」


「ふふふっ、今日も無敵でわたしも鼻が高いよ」


 Vサインを掲げながら合流する僕を、アルカナは胸を張って迎えてくれた。

そろそろみんなアルカナが闘技場に参加していないことには気づいただろうが、それでもたくさんのプレイヤーに注目されている中でのイチャイチャ。

これはこれで楽しいものがある。

お互いキャラクターが男性なのは忘れておくけど。



 というわけで僕は闘技場に挑戦、アルカナは応援もしくは《ヴァンガード》の活動を楽しみ、その後合流してレベル上げノルマをこなす日々が始まった。

僕の闘技場挑戦は順調で、DFOにログインしてすぐランキングを確認しても――それなりに順位自体は下がってはいるが――昇格圏内をキープできているようになった。

その日も勝ち点を稼ぎまくって、今日はこの辺でいいだろうと選手控室から退出したときのことだった。

アルカナが《ヴァンガード》の活動に行っている方の日だったので、今どうしているかボイスチャットを始めようとメニューをいじっていたら、あるプレイヤーに話しかけられた。


「あのっ、ぼくは兼光(かねみつ)って言います!急に話しかけてすみません、けどっ、ちょっとお話させてもらっていいでしょうか!?」


 声の印象は中学生くらいの少年。

頭上に兼光という名前を浮かべたキャラクターの外見は、焦茶色の毛並みをした歴戦の勇士風の雰囲気をまとっているルーガルーだった。

ギャップにちょっと戸惑ったが、とりあえず返事をすることにする。


「どうも、こんばんはです。話すのはいいですけど、あなたは……そうだ、何回かアルカナを見てる人達の中にいたでしょ?」


「えっ、覚えられるほど気になりましたか!?すみません!!」


 大きな体であたふたと慌てる兼光さんはちょっとかわいかった。

気になったというか、ルーガルーは狼の獣人という特徴が目立ちやすいので記憶に残ったというだけなのだが。

ともかく、これまでアルカナを見ていて、一緒にいる僕に話しかけて来たということはおそらくアルカナのファンがお近づきになりたくて来たのだろう。

アルカナがファンにどう対応するかはちゃんと聞いていないし、僕が軽はずみに仲介をするのは良くないだろうと思い、穏便に今日は断ることにする。


「で、兼光さんはアルカナのファンでしょ?残念だけど今日は一緒じゃないからさよな……」


「あ、いえ、違います!」


 兼光さんはあたふたするのを止めて、僕をまっすぐに見つめて言った。


「ぼくはカカソーラさんのファンになったので、応援したくて、つい話しかけちゃいました!」


 ……マジで?

なんとなんとなんと、僕にもファンが出来てしまった。

いや、落ち着け。ファンといってもそんな大したものじゃないだろう、浮かれちゃいけない。


「ランキング上位に新人さんがいるのに気がついて、試合のログ観てみたらまるでクウさんみたいなすごい動きをしてて、ここ何日かのログは全部観ました、本当にカッコいいです!!」


 あっ、そんなに褒めないで、ふわふわ浮かれちゃう!


「そんな大したことじゃないよ、あんまり褒められると照れるというか……」


「あっ、すみません!謙虚なんですね、やっぱり強い人はすごいです!!」


 あ~~~、ダメダメ、浮かれまくっちゃいます。

どうしよう、この子がもし悪意を持って近づいてきててもだまされちゃうよこのままじゃ。

冷静に、冷静にならなくては。


「応援してくれるのはとてもうれしいよ、でもちょっと用事を思い出したのでゆっくり話すのはまた今度」


「あっ、お気になさらずに。カカソーラさんとお話出来てうれしかったです、これからもがんばってください!!」


 兼光さんはお辞儀をしてから、どこかへとワープして行った。

その場に少し立ち尽くすが、どうしよう、浮かれる気持ちが戻って来ない!

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