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26話

 オレっ娘魔導師・リンさんとのもめごとがありはしたが、目的だった過去の闘技場の動画は観られるようになったし、レベル上げ作業も順調に進んでいった。

どのくらい順調かと言うと、余裕があるから職業ごとの特徴講座もやるよ!とアルカナが10本以上の動画のURLを送りつけてくるほどだった。

ダンジョンを周回しながら動画用の画面も開いて、アルカナの説明を頭に入れるのは流石に大変だった。


そしてやって来た4月14日、今月の闘技場シーズン開幕前夜。

僕とアルカナ、ルピナスさんとシリウスさん、そしてMEIさん(今日は微妙にかわいくないリスの着ぐるみだ)はブレイブポートのワープポイント近くに集合した。


「装備作成、なんとか間に合ったー!いい加減数緩和しろ!」


「もうしばらくダンジョン周回はやりたくない……」


「ムービー内の台詞暗記できちゃった気さえしますね」


 ルピナスさん達は言葉こそ疲れ切ったように聞こえるが、表情はやり遂げたという満足感に満ちていた。

いや、それどころかこのまま闘技場に行っても構わないと言わんばかりのテンションの上がりっぷりだった。

そして上ったテンションのまま、ルピナスさんが僕に尋ねてくる。


「で!ボク達よりカカソーラさんだよ。どうなの、間に合った感じ?」


「それはですね……」


 僕はもったいぶって咳払いをしてから質問に答える。


「目標の騎士・魔導師・聖者のスキル習得に加え、(サムライ)のスキルもいくつか習得できました!」


「おー!やったじゃん」


「侍の汎用スキルというと、クリティカル率を上げる【心眼】とか戦闘スキル再使用間隔を短縮する【雲耀】あたりか。タンクにしては高めの銃剣士の攻撃力がさらに高まるな」


 シリウスさんの分析が光る。

外見が和風だし、やっぱり侍みたいな和風職業好きなんだろうか?


「50レベル帯のダンジョン攻略ならソロ攻略も視野に入る銃剣士の鉄板構築ですね。流石アルカナさんの指導です」


 MEIさんも納得の仕上がりのようだ。

実際さっきまで運用試験って言われて推奨レベル50のダンジョンをソロ攻略させられてたしね。

ともかく全員準備は万全ということだ。


「それじゃあ5人で闘技場挑戦、前夜祭ってことで記念のスクショ撮影しちゃおう!」


 ルピナスさんが音頭を取る。


「おー!!」


 それに3人の返事が答えた。

3人――4人いるうちの1人……アルカナは流れに逆らって平然と言った。


「いや、わたしはカカソーラの応援だけで参加はしないよ?」


 えっ。

僕を含めたアルカナ以外の4人全員が、完全に虚を突かれた顔になった。

しかし言われてみれば、アルカナは僕のサポートばかりで全く自分の準備をしていなかった。

それに気がつくことが出来る僕はそういえば……と納得したのだが、ルピナスさん達はそうも行かない。

最強の同行者と見込んでいた相手の不参加宣言にかなり慌ててしまっていた。


「な、なんで!?クランの方で予定が入ったとか?」


「いや、そっちは今のバージョンでの目標は一応達したからしばらく休むって言ってあるよ」


「リアルの方の都合でしょうか?」


「全然、特に予定なし」


「実はPvPに嫌な思い出でも……?」


「DFO来る前にないわけじゃないけど、引きずってはいないよ」


 3人が投げかける推測をアルカナはバッタバッタと切り捨てる。

そして少し遠い目をしながらこう言ったのだ。


「わたしは今回、カカソーラの()()()()()()に専念したいんだ」


「まねーじゃー……?」


 3人はなぜそこにこだわりを?と首を傾げている。

初心者のマネージメント、あまり魅力的には感じない響きだろう。

しかし、僕にはわかる。アルカナ――秘ちゃんの脳内が読める。


 秘ちゃんは、部活系マンガのマネージャーヒロインをやりたがっている!

父親の密おじさんの趣味で、三千院家にはちょっと古めの運動部を題材にした少年マンガが揃っている。

小さい頃からゲームが好きで、自分からマンガを買うことがあまりない秘ちゃんにとって「ヒロイン」とはそれらのマンガに登場するサポート役に徹するマネージャーのことなのだ。

『ドラゴンファンタジー』シリーズが恋愛要素薄めでヒロインといえば女性のヒーロー役を指していることも彼女のその認識に一役買っている。

つまり、今秘ちゃんは脳内で主人公・僕、ヒロイン・自分の青春ストーリーが始まった気になっているのだ!


 でもそれをルピナスさん達が察することが出来るはずもない。

リアルのことをまだ全然話していない以上、3人の中でアルカナさんは年齢・性別不詳のトッププレイヤー。

初心者の僕――僕も全然話していないが態度から十代くらいの男だって多分察してると思う――との関係もリアルでも仲が良いらしいくらいにしか認識していないのだ。

秘ちゃんがめっちゃかわいい彼女仕草をしていることなんて伝わらないのだ。

もう困惑するしかあるまい。


「ま、マネージャーに専念するとしても、一緒にがんばってきたのは変わらないんだからスクショ一緒に撮るくらいはいいでしょ?」


 乙女の世界に入りつつあるアルカナを引き戻し、困惑するルピナスさん達をごまかすために僕はそう話をふる。


「んー、それはそうだね。他のみんなもそれで良ければ」


「問題ないよ!ね、シリウス?」


「あ、ああ。俺も大丈夫だ」


「……まあ深く探るようなことでもありませんしね」


 よし、みんな多分ごまかされてくれた。

MEIさんは意味深なこと言ってるけどきっと大丈夫大丈夫。

こうして僕達はブレイブポートの記念写真スポットの1つ、巨大な帆船が停泊しているところに移動した。

撮影はスクショが得意だというルピナスさんにおまかせし、5人で戦隊ヒーローのようなポーズを取る。

みんなが譲ってくれたのでセンターポジションは僕である。


「エフェクト用のアイテムセットして、行くよ、3、2、1――」


 パシャリ、と撮影音が鳴る。

ルピナスさんは早速僕達全員に撮影できた画像データを送ってくれた。

僕達の背後に設置されていたエフェクト用のアイテムは正しく戦隊ヒーローのような五色の煙を立ち上らせていて、得意だと自分で言うのもうなずける、素晴らしい一枚が撮れていた。


「上手ですね、ルピナスさん!」


「でしょう?褒めて褒めて」


「いい景気づけになるな」


 そんな風にみんな画像を眺めて語り合う。

その後はこれもエフェクト用のアイテムらしいシャンパンをかけ合ったり、それぞれが使う予定の職業について話し合ったりして時間を過ごしてからその日はお開きとなった。


「ボクとシリウスは開始の17時からもう闘技場行くつもりだけど、みんなはどうする予定?」


「私はリアルの用事があるので20時頃からになりますね」


「僕もその辺からですね、アルカナはどうするの?」


「もちろんカカソーラの試合の観戦だよ。応援してるからね」


 最後に予定を確認し合ってぽつぽつとログアウトする。

きっと厳しい道のりになるだろうけど、楽しみでたまらない闘技場、そしてクウさんへの挑戦。

ああ、明日が楽しみだ!

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