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22話

「さあ、もう観念して正直に言え。そしてオレ達とこれからもDFO廃人としてエンジョイしていくんだ!」


 フレイさんは完全に勝ちを確信しているようだった。

勝ちを確信して言うことがこれからもよろしくね!な辺り本当に仲が良さようだ。

というかこの人は廃人を自認してるんだな……


「誰が観念するか!ほら、カカソーラ。なんか言ってやってよ!!」


 もちろんアルカナが観念するはずはない。

フレイさんに恨みはないが僕は秘ちゃん、もといアルカナの彼氏(真)。そしてDFOを始めて1ヶ月も経っていないのに闘技場に挑もうとしているやつ(実在)である。

ここはバシッと否定しなければなるまい。


「本当に騙してないですって。闘技場の動画でクウさんを見て、どうしてもやりたくなったんですよ」


 僕の言い分に対するフレイさんの反応は……一時停止。

どうしたのかと思っていると、気まずそうにしながらこう尋ねてきた。


「クウさん……って誰?有名人?」


 知らなかった!!

そういえば秘ちゃんも僕が教えるまで知らなかったし実は有名じゃないのか!?

ちょっとびっくりした僕だったが、それは杞憂で周囲からフレイさんにツッコミが入る。


「有名人って、闘技場の頂点だよ!?」


「拳聖が増えまくった原因って聞いたことないの?」


「クウ知らずにDFO廃人名乗ってたんだ……」


「動画勢でも知ってるのに……恥ずかしい……」


 なんかアルカナに向いていたターゲットがフレイさんに変わったような空気だった。

《ヴァンガード》は常に狩る者と狩られる者が入れ替わる修羅の世界のようである。


「はぁ!?そんなトッププレイヤーなら他の高難易度コンテンツにも顔出してるはずだろ?全然聞いたことないぞ!」


「それは確かにちょっと変わった話なんですよね」


 うろたえるフレイさんの言葉にもめさんが反応する。


「闘技場の他の上位ランカーはフレイの言う通り他のコンテンツでも見かけることがあるんですけど、クウに限っては一切なし。ファンの間じゃ対人戦にしか興味のないストイックなところがいいって好意的に受け止められてるみたいだけど……」


「まあ、それでもフレイがクウを知らないモグリだったってことは変わらないけどね」


 狩る立場に変わったアルカナが楽しげにフレイさんを煽る。

僕は気を使って黙っておくけど自分も知らなかったとは思えないふてぶてしさである。

中学生になったあたりからこういうところは人前で見せなくなったと思っていたんだけれど、《ヴァンガード》では見せているらしい。

ちょっと嫉妬。


「うぐぐ……いや、話題をそらすんじゃない。カカソーラさんが本物かって話はまだ終わってないだろ!」


 フレイさんは反撃を試みるが、ターゲットを変更した《ヴァンガード》のみなさんは容赦がなかった。


「少なくとも闘技場目指してる初心者さんはいないって理論は崩れただろ」


「クウに憧れてDFO始めたなら自然だよね」


「アルカナのサポートありなら前提条件もショートカットできるしな」


「っていうかカカソーラさんの見た目完全にクウ」


「本当だ。違うの装備の見た目と三つ編みがついてるかどうかくらいじゃん」


 見た目が一緒なのは偶然なんだけどね。

とにかくアルカナに有利な流れになっているので、タイミングを逃さないように僕はすかさず自己紹介をすることにした。


「えー、改めて自己紹介します。アルカナの彼氏でDFO始めたて、カカソーラって言います。闘技場目指してて、職業は銃剣士をやってます。いつもアルカナがお世話になってます」


 そして礼儀正しくお辞儀。

これには《ヴァンガード》のみなさんも頭を下げながら「こちらこそお世話になってます」と返してくれた。

この流れに遠慮のなさ過ぎる会話をおろおろしながら見守っていたもめさんは安心し、目的を果たせたアルカナは溜飲を下げる。


「ふふふ、これでみんなわかったでしょ。わたしに何か言うことがあるんじゃないかな?」


「……廃人の彼氏は当然廃人の卵」


 フレイさんが負け惜しみのようにこぼす。


「まだ減らず口を叩くかてめぇ!現環境最強細剣・パンデモニウムエストックの切れ味を喰らえ!!」


「オレが作ってやった武器でドヤるな!出てこい最強魔神アスモデウス!!」


 アルカナとフレイさんの間でド派手なエフェクトを撒き散らす喧嘩が始まってしまった。

《ヴァンガード》のみなさんはそれを全く止めずやれやれと囃し立てる。

僕がその光景を呆然と眺めていると、頭を抱えたもめさんがごめんねー、と声をかけてくれた。


「あんな感じだけど実はクラン内じゃ一番仲良いから、あの二人」


「遠慮のない関係っていうのはわかります……でもいいんですか、あの喧嘩止めなくて?」


「それは大丈夫、知ってると思うけど闘技場以外ではプレイヤーの戦闘スキルが他のプレイヤーを傷付けることはないからね。実際やったら万能型魔法剣士のアルカナさんに完全遠距離型の魔神使い(デーモンルーラー)なフレイさんは一方的に殴られるだけだよ」


 となると、見た目は殺意の高そうな魔法や禍々しい悪魔っぽいものが飛び交っていても完全にじゃれ合いというわけなのか。

だからみんな止めないしあんな近くで囃し立てているわけか。

じゃあ僕もしばらく二人を見守るとしよう。



「今日はこのくらいにしといてやるよ……」


「こっちの台詞だよ……ごめんね、カカソーラ。待たせちゃって」


 囃し立てるのに飽きたらしい《ヴァンガード》のみなさんと歓談していると、十分やり合ったらしいアルカナとフレイさんが僕のところへやって来る。


「大丈夫だよ、アルカナの活躍も色々聞かせてもらえたし」


「……余計なこと吹き込まれてない?」


 アルカナがジト目で睨んでくるので僕はぶんぶんと首を横に振る。

カッコいい武勇伝ばかりでしたとも。いや本当に。

そんなことをしている僕達の耳に入ってくるコホン、という咳払い。

どうやらフレイさんから僕に用事があるようだ。


「あー、クラン内のノリに付き合わせて悪い。オレはフレイ、職業は魔神使いっていう妖術士(コンジャラー)の上位職やってるけど、副職業での装備作りの方をメインに遊んでる。今日は装備を頼みにも来たんだろ?」


 口調は少し雑だが、こうして話すとフレイさんもちゃんとした人っぽい感じだった。

僕はフレイさんの方をちゃんと向いて、しっかりとお願いをする。


「はい、クランのメンバーでもないのに厚かましいですが、どうかよろしくお願いします!」


「そんなかしこまらなくていいよ、カカソーラ。材料と触媒の費用とついでに心づけはわたしがちゃんと払うんだから」


「そうだけどお前が言うことじゃないだろ」


「は?」


「あ?」


 再び二人の間で始まる遠慮のないやり取り。

なんかこれは、彼氏としてちょっと……


「いいなぁ、二人で楽しそうで……」


 うっかり僕が口に出してしまった一言に、アルカナとフレイさんは大袈裟に焦りだす。


「ない!そういうの全然ないからね!!」


「マジ誤解だから!変な気全然ないんで!!」


 うーん、惚気ける気で来たのに何だか複雑な気分だぞ。

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