19話
「よく来たな、今日からはレベリング地獄だから覚悟するように!」
DFOで合流したアルカナは何故かジャージと竹刀装備だった。
口調もなんか変わってるし、とりあえずノリノリな気分なのだろう。
「そういう世界観おかしい装備ってどこで手に入るの?」
「基本課金アイテム。でもそんなことよりDFOでのレベリングのやり方を教えるからよく聞け!」
アルカナは竹刀を教鞭代わりに振り回しながら教官モードを続行している。
楽しそうなので僕も生徒モード、具体的には体育座りになって話を聞くことにする。
そんな僕の姿勢がお気に召したのか、続く説明はどこか楽しげな声だった。
「メインクエスト1章をクリアしたことで今カカソーラは新しくたくさんのコンテンツが利用できるようになっている。その中の『デイリークエスト』と『ランダムダンジョン』、この二つがレベル上げに大いに役立つのだ」
「えーっと……たしかにメニューで新しく選べるようになったやつにその二つがあります、教官!」
「よし、ではデイリークエストから説明するぞ」
教官呼びでさらに機嫌が良くなったアルカナの説明によるとデイリークエストとは次のようなものだった。
・ブレイブポート、フルッタ、サマレン、ストーンタウンの4つの町から1日1回ずつ受注可能。
・簡単なお使いをこなすだけで大量の経験値が獲得できるのでレベリングに最適。
・クリアするごとに信用ランクが上がり、もらえる経験値が増えるうえにその町の雑貨屋の値段が割引になる。
「……と、毎日欠かさずやっておくべきものなのだ。わかったかねカカソーラくん」
「サー!覚えました教官!!」
僕もノリノリになってきたので敬礼して返事をする。
ジャージと竹刀とは方向性が違ってきたような気もするけど些細なことだ。
「ではランダムダンジョンの方も説明する。こちらも1日1回挑戦できるコンテンツで、クリアしたことのあるダンジョンからその名の通りランダムに選ばれたものに挑み大量の追加経験値を取得出来る。このコンテンツにもマッチング機能があるからパーティを揃えて挑む必要はない」
「ふむふむ、それで今日は僕達2人で行動なわけだね」
「ああ。3人はレベル50の最強装備を作るために素材集め中だ。あ、カカソーラの分はわたしが用意するから」
素材集め、具体的にはどんなことをするのだろうか?
鉱山に行って発掘とか?それともモンスターを狩ってドロップ品を集めるのだろうか。
「教官、素材集めって具体的になにしてるんでありますか?」
「口調が雑になってきているぞ!まあわたしも面倒になってきたから戻すけど」
もう飽きたらしかった。
「具体的に言うと、昨日行ったなっがいダンジョン3連発の最後のところでドロップするアイテムをひたすら周回して集めてるはず。昨日言った通りムービー飛ばせない中でね!」
「あれを周回……何回もクリアしなきゃいけないってこと!?」
「さらに生産系副職業もレベル上げておく必要がある……ここは生産メインでやってる他のプレイヤーに頼むことも出来るけどね」
そうか、装備がそのままダンジョンで手に入るんじゃなくて作らなきゃいけないんだから、そっちのレベル上げも必要になるのか。
しかしこれはまだ最初の初心者ランクに向けての準備であって……
「闘技場って敷居高いんだね……」
「敷居が高いのは間違いないけどここはまだ優しい方かな。高難易度コンテンツで手に入る素材が必須なわけじゃないし」
まだまだDFOの深淵は深いらしかった。
「これで優しいって……じゃあ今一番貴重な装備を手に入れるのはどんなことになってるの……」
「今だとプランシーっていう72人レイドボスを100回くらい殴って素材集めて、レベル最大の生産系副職業持ち……わたしの場合クランに所属してる人に頼んで作ってもらったかな」
当然のごとく入手済みのアルカナだった。
僕の装備も用意してくれるって言ってたし、頼もしい限りである。
「さて、無駄話はこのへんにして、そろそろレベリング始めるよ」
「うん、ノルマはデイリークエスト4つとランダムダンジョン1回だったよね」
意気揚々と言った僕だったが、いつの間にか元の黒装束に着替えていたアルカナの冷たい目線が突き刺さる。
何故だ。説明はちゃんと聞いていたはず……
「わたしが送った銃剣士必須戦闘スキル一覧表、ちゃんと読んだ?」
「もちろん読んだよ。騎士と魔導師と聖者のレベリングをしなきゃいけないんだよね?」
騎士には近接戦闘に必須の汎用スキル、魔導師と聖者にはそれぞれ優秀な攻撃と回復の魔法が揃っていると一覧表にはメモしてあった。
「それは本当に最低限で本当はもっと欲しい戦闘スキルあるんだけど……闘技場の新シーズンまで1週間、3つの職業を50まで上げるにはいくらおいしいデイリークエストとランダムダンジョンでも全く時間が足りないよ?」
「えっ、じゃあどうするの!?」
「決まっている!!」
アルカナがビシッとポーズを決める。
「こちらにご用意した取得経験値アップ料理をひたすら食べて時間効率のいいダンジョンを周回!」
同時にトレード機能で大量の料理が僕に送られてきた。
『ミラクルドリンク
消費アイテム
60分間取得経験値を5%上昇させる。』
「わあ、良さそうな効果。そしてミラクルっていうか食べ物がしちゃいけない色合い!」
「さあ、これをぐびぐび飲んで行くよ!」
「ぐびぐびって、これVRゲームだから実際飲まなきゃいけないんだよ!?」
「味はしないから大丈夫でしょ?」
「見た目だけできついんだけど!……まあ君が僕のために用意してくれたものなんだから飲むけど」
観念してそうこぼしたとき、アルカナの視線が宙を泳ぐ。
「うん、わたしが用意したといえば用意したっていうか……プレイヤーマーケットで買い占めたやつっていうか……」
「…………」
いやまあ、僕が勝手に手料理期待しただけなんだけどさ。
ええい、買ったものでも僕のために用意してくれたものには違いなし!
一気に飲んでみせらあ!!
「ごく……ごく……ぷはあ!」
「いよっ、いい飲みっぷり!」
アルカナがぱちぱちと手を叩いて褒めてくれた。
なんとか飲んだけどこのドリンク妙な喉越しがするんだけど!?ここはリアリティ突き詰めなくてよかったんじゃないかな!
「あーもう、せっかく飲んだんだから効果時間無駄にしないようにがんがん行く!」
「そういえばまず転職してから飲んだ方が効果時間のロスはなかったね」
えっ。
言われてみれば、今から冒険者ギルド行ってジョブクエスト受注してって確かに無駄な時間……
「まあミラクルドリンクは大量にあるから気にせず行こう!」
「……そうだね!!」




