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12話

挿絵(By みてみん)


 カカソーラと瓜二つのキャラクター・クウの戦い方は初心者である僕から見ても次元が違った。

対戦相手の攻撃――もちろんダンジョンのボスの攻撃のように事前に範囲が見えたりはしないそれを、完全に見切り華麗に回避しているのだ。

それだけではない、そんな回避行動の真っ最中、とんでもなく不安定な体勢、時には空中にいる状態から戦闘スキルを発動している。

前後の動きと比べたときのなめらかさから、クウがマニュアルモードで操作していることが僕にもわかった。

それはつまり、クウのプレイヤーは実際に無理な体勢から戦闘スキルの発動条件となる動作を行っているということで……


「何者だこの人……」


 僕は感嘆の声を漏らさずにはいられなかったのである。


「あれ、クウを意識してその見た目にキャラメイクしたんじゃないかと思ってたけど違った感じ?」


「あ……すみません、動画に見入っちゃって通話してるの忘れてました!」


 それはもう、ルピナスさんのことが声を聞くまですっかり頭の中から飛んでいくくらいには。


「見た目はあーでもないこーでもないっていじってるうちに出来上がった感じで彼……動画でメインに扱われてるクウって人を意識したわけじゃないです」


 リアルの見た目とほとんど同じということを明かすのは恥ずかしかったので半分だけ本当のことを説明した。

いやほんと、なんで自分と同じ顔にしたのが被っちゃうんだろう?

パーツの種類は多いとはいえ有限だから偶然そうなることもなくはないだろうが……もしくは世の中に3人はいるという見た目がそっくりな人がクウのプレイヤーだったり?


「そうなんだね、珍しいこともあるんだ。ならこの話はおいておくとして、闘技場、興味持ってくれた感じ?」


「持ちました!クウさんのことも!!彼が出て来る動画って他にもあったりしますか?」


「やった!動画はいっぱいあるよ、クウはここ2年間不動のチャンピオンだからね」


 ルピナスさんは過去の動画を視聴できるチャンネルを教えてくれて、動画を一緒に見ながら闘技場とクウのことについていろいろ教えてくれた。


現在の国内MMORPGの風潮ではプレイヤー同士の戦い――PvPを制限する作品が多く、DFOでも他のプレイヤーに向けてダメージを与える行動が出来ない設計になっている。

この辺がシビアなゲームでは他のプレイヤーを攻撃して所持するアイテムを奪ったり、多くのプレイヤーを倒すことで得られる恩恵があったり、それらの影響で初心者狩りが横行したりしているらしい。

そんな世紀末なゲームは僕的にはやりたくないのでDFOがシビアじゃなくて良かった。


 とはいえペナルティ無しの安全な対人戦なら需要はあるらしく、DFO1回目の大規模アップデートで追加されたのが闘技場(コロッセウム)なのだそうだ。

1人で挑む個人戦と4人のパーティで挑む団体戦の2つの部門、下からカドリーユ・プルミエ・エトワールの3段階に別けられたランクがあり、クウは個人戦の最高ランクであるエトワールのチャンピオン、絶対王者として君臨しているらしい。


「公式で動画が作られるくらいですから、有名だったりするんですか?」


「ゲーム配信動画見る界隈では知らない人はいないんじゃないかな。DFOの中でもクウが有名になりだしてから一気に拳聖(カンフーマスター)の人口増えたし……あ、拳聖はクウがメインで使ってる職業ね」


「徒手空拳で戦ってるし、格闘士の上位職ですか?」


「そうだよ、コンボを繋いで手数で攻めるタイプの職業。防御系の戦闘スキルが皆無だから結構ピーキーで、よっぽど極まってる人が使うんじゃなきゃ同じ格闘士からの上位職な武僧(モンク)の方が強いんだけど……まあ流行っちゃってるんだよね」


 ゲーム内での流行を左右するとは、かなり人気らしい。

僕だって『ソードバレル』への思い入れがなかったら明日秘ちゃんに拳聖に転職したいと相談したかもしれないくらい興味持っちゃってるし……


「とりあえずひ……アルカナにも聞いて闘技場に挑戦してみようと思います」


「うん、一緒にがんばろうね!あのアルカナさんがいっしょだったら心強いし」


 うん?「あの」アルカナさんとはいったい。

気になったのでちょっと突っ込んでみよう。


「もしかして、アルカナも有名なんですか?」


「あれ、本人から聞いてない?クウほどじゃないけど《ヴァンガード》のアルカナといえば高難易度最速攻略勢としてそこそこ有名だよー」


 有名らしかった。

最速攻略勢って……中堅ギルドというのも秘ちゃんなりにサバを読んだ説明だったのか。

もしかするとクウともコネがあったりするのだろうか、後で聞いてみよう。


「じゃあ今日はクウさんの動画漁ろうと思うのでこの話はまた今度!」


「了解、付き合ってくれてありがとね」


「いえいえ、こちらこそ教えてくれてありがとうございました」



 いつもより早く、寝るにはまだ余裕のある時間にログアウトした僕は早速端末で闘技場の動画を検索……する前に喉の乾きを感じた。

麦茶でも注いで来ようと自室を出て台所に行くと、ちょうど母さんが夕食の片付けをしているところだった。


「あれっ天、今日はもうあのゲームはしないの?」


「うん、秘ちゃんも今日は用事だしね」


「ふーん……それにしても、またちょっと背が伸びたね。顔だけじゃなくて身長もお父さん似だ」


 母さんが何故かうれしそうに呟いた。

確かに父さんはそこそこ背が高いけど、母さんだって女性にしては高いほうだからこれでどっち似かはわかんないんじゃない?……と思いつつ黙っておく。

顔は疑問の余地がないほどお父さん似だしね。


 で、麦茶を用意して自室に戻った僕は端末を手に今度こそ闘技場の動画を検索……する前に秘ちゃんのキャラクター・アルカナが実際どれくらい有名なのか確かめるべく「DFO ヴァンガード アルカナ」で検索をしてみた。

まず目に入ってきたのはDFOのプレイ動画だった。


『【DFO】72人レイド・グランベヒーモス魔法剣士単騎攻略【ヴァンガード】』


 タイトルからして物凄いな!!

えっ、72人で挑むボスを1人で倒したってこと?

動画のコメントは……「アルカナ師匠きた!」「はやい!(ソロ攻略タイム更新してない?)」「相変わらずのイケボ」などなど好意的なコメントが目立っている。

これは後方彼氏面してしまいますね……なんて思っていたら端末に秘ちゃんからメッセージが来たと通知が来る。


『食事会終わった!

 今何してる?

 もしかしてDFO中かな』


 僕は素早く返信を返す。


『今プレイ動画見てるところ!

 アルカナが単騎攻略ってやつ

 すごいね!!』


 一瞬で付く既読。

しかししばらくの沈黙。


『どこでしったの』


 後で聞いたことだが秘ちゃんは帰りの車の中でこのメッセージを送っており、年頃の少女がしてはならない叫び声を出してしまったらしい。

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