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100話

 真・カカスペシャルが決まってしまえば”絶対王者”たる流石の父さんもその猛攻から逃れることは出来ない。

怒涛の連撃がエルフの拳聖(カンフーマスター)という防御性能に欠けた組み合わせである父さんのHPを一気に削り取った。

鐘の音が鳴り響くのがどこか遠く聞こえる。

僕は息を荒げながら、宙に浮かぶ「YOU WIN」の文字を見つめた。

本当に父さんに……憧れのクウさんに勝つことが出来たのだ。

喜びの達成感が大きすぎて立ち尽くしている僕に、父さんが声を掛ける。


「完全にやられたよ、『見て盗む』こと自体が相伝の技……いや、カカスペシャルに仕込まれていた罠だったとはな。お前が自信満々だったからついつい面白がって乗っちゃったけど、カカスペシャルのぶつけ合いなんてするべきじゃなかったわけだ。まあ今さら何を言っても負け惜しみだ、素直に勝者を讃えよう……いい試合ありがとう、カカソーラ」


「クウさん……ありがとう。僕もこの試合が出来て、本当に良かった!」


「次やるときは俺が挑戦者だな、リベンジ目指すのもけっこう燃えてくるもんだ……楽しみにしてるぞ!」


「もう次の話!?まあ受けて立つけどね!!」


 父さんは負けても相変わらず楽しそうな笑顔を残して、そして僕は勝利に興奮した笑みを残して、選手控室へと戻される。

一呼吸置いて、僕は改めて勝利の喜びを噛み締めた。

あの日ルピナスさんに動画を見せてもらってから憧れていたクウさんを、ついに打倒することが出来たのだ。


「ぃやったあぁぁぁ!!!!」


 選手控室には他に誰もいないので、思わず大声で喜びの叫びを上げてしまった。

でもこれは仕方がないでしょ?憧れの人、闘技場の”絶対王者”を倒すことが出来た後なのだから。

その後も喜びのあまり次の試合に挑むでもなくそわそわしていると、通知音が連続で鳴った。

なんだろうとメニューを確認してみると、フレンドになっているみんなから続々とテキストチャットにお祝いのメッセージが届いていた。

アルカナや《ヴォワヤージュ=エトワール》のみんな、闘技場に来ていたミロさん達やリンさんだけでなく、いつの間に知ったのか”ツインスネーク”さん達からもメッセージは届いていた。

僕はとりあえず、アルカナとのボイスチャットをつなぐことにする。


「もしもし秘ちゃん、テキストチャット見たよ」


「もしもし天!?試合観てたよ!途中まではおじさんの方のペースでちょっと不安だったけど、カカスペシャルのぶつけ合いになったら一気に決まって……とにかくすごかった!本当におめでとう!!」


「ありがとう、秘ちゃんと一緒にがんばってきたおかげだよ。そういえば色んな人からテキストチャットにメッセージ来てるんだけど、あの後も知り合い大集合だったの?」


「あー、知り合い大集合っていうか……天とおじさんの試合がマッチングされたこと、ものすごい勢いで情報が拡散されたみたいで、今闘技場とんでもない人数が集まってるんだよね」


「そうなの!?」


「うん、しかも天が”絶対王者”打倒に成功したからその集まってる人達が今大騒ぎで……この後どうするつもりかわかんないけど、選手控室退出するのはもうちょっとほとぼり冷めた後の方がいいかも」


 なんてこった、そんな大騒ぎになっているとは。

父さんとの試合で集中力使いすぎたのと興奮しすぎたのとで今日はもう試合はやめておこうかと思ってたんだけどな……


「そっか……じゃあとりあえずほとぼりが冷めるまでみんなと通話でもすることにするよ。とりあえずこのボイスチャットは一旦切って、《ヴォワヤージュ=エトワール》のSNSグループのチャット起動するね」


「OK。兼光くんさっきからそわそわしてるから、早くファン1号の相手してあげな。それから……」


「それから?」


「天、最高にカッコよかったよ」


「えへへ、ありがとう!!」


 秘ちゃんからの最高のお祝い、頂きました!!

やっぱり応援してくれる彼女がいるって最高だな……

ちょっと「カッコよかった」の言葉にひたってから、僕は連携しているSNSアプリを起動し《ヴォワヤージュ=エトワール》のグループで通話を開始する。

ルピナスさん達は闘技場もやってるはずだから今すぐ通話に入ってはくれないだろうけど……


「もしもし、カカソーラさん!?ボクも試合観てたよ、すごかったー!!」


「カカソーラさんならいつか成し遂げるとは思っていたけど、こんなにすぐクウに勝つとはな……」


「とにかく今は惜しみない賞賛を贈るべきときでしょう、おめでとうございます」


「カカソーラさん!おれ記念すべき瞬間をリアルタイムで観れて感激して、もうなんて言えばいいか……!すごく、とてもすごいです!!!!」


「カカソーラ聞こえてるー?なんかみんな闘技場中断して君の試合観てたっぽいよ」


 ルピナスさん、シリウスさん、MEIさん、兼光くん、そしてアルカナの声が次々と聞こえてくる。

あっという間に全員集合だった。


「聞こえてるよ。みんな観てくれてたんですね、なんかありがとうございます!」


「そりゃあ闘技場に関わるプレイヤー全員が注目する組み合わせだもん、見逃すわけにはいかないよ!」


 そこまで注目されていたとなるとなんだか気恥ずかしさを今さら覚えて照れてしまう僕だった。

その後みんなが僕を祝ったり本日の主役ということで弄り倒したりする通話をして、闘技場に集まっているプレイヤー達の盛り上がりがちょっと落ち着いてきたところで選手控室を退出した。

それでもめちゃくちゃ注目を集めてしまったので急いでクランハウスへと避難する羽目になったのだけれど……どうやら本当にすごいことを成し遂げてしまったようだ。

アルカナにもこれでもうどこに出ても恥ずかしくないトッププレイヤーの仲間入りだね、なんてことも言われちゃって、なんだか不思議な気分である。

でもまあ僕のやることはこれからも同じ、闘技場をメインにDFOを楽しむだけだけどね!



 1ヶ月後、花果家の生活は少し変わっていた。

なぜかと言えば、父さんがついに退院して我が家で一緒に暮らすようになっていたのである。

まだリハビリに通わなくてはならないから普通の人のように生活するのは難しいし、「悲運の天才格闘家・奇跡の復活!」みたいな感じで色んなところから取材も来て割と面倒なことになっているのだが、とにかく僕達一家は新しい生活を少しずつ始めていた。

ちなみに報道の中には父さんが受けた新しい治療法――VRゲームを利用した治療法について深く触れたものもあって、名前こそ出なかったものの「とある人気VRMMO」が治療に使われたことも語られていた。

そのためネット上では「クウの正体は格闘家の花果空だった!」という説も少し広まっているが、あくまで噂止まり。

それよりも年齢の割に若々しすぎる、イケメン過ぎる格闘家といった方面で話題になっていて、母さんは父さんのモテ期到来に不満そうである。


 そしてあの父さんとの試合の後、6月の闘技場シーズンがどうなったかというと……シーズン終了直前に再びマッチングされた僕と父さんとの試合で、カカスペシャルを捨てて新必殺技・クウスペシャルを編み出した父さんに見事僕はリベンジされてしまっていた。

それもあって不敗神話こそ崩れたもののエトワールのランキング1位の座は相変わらず父さんのまま、僕は再び挑戦者として7月シーズンに挑戦中である。

他にもアルカナと約束した通りメインクエストを進めたり、色んなコンテンツに挑戦したりで僕のDFOライフは大忙し。

星を目指す僕の旅路は、まだまだ終わりそうにない。

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