10話
その後数日間、夕食後秘ちゃんと一緒にDFOをプレイしメインクエスト進行とレベル上げをするのを続けた。
お使いばかりに思えたメインクエストも明確な敵となる魔王軍の情報が出てきたり何度も顔を合せるNPCが登場したりで盛り上がってきたし、VRでの体の動かし方もだいぶ慣れてきた。
そしてカカソーラのレベルが30に達したそのとき。
『上位職に転職できるようになりました。
冒険者ギルドの職業案内所に行って新たな力を手に入れましょう!』
こんなシステムメッセージが表示された。
そういえばレベル30が上位職になれるラインだった、いつの間にかそこそこ強くなっていたのだ。
「ねえねえ、上位職になれるって!」
「やったね、ちょうどクエストもキリがいいし……今日は新しい職業に挑戦しよう」
「うん!!」
こうして僕達は最寄りの冒険者ギルドがある町――フルッタへと向かった。
フルッタはゲーム内の設定では身長一メートルほどしかない小柄な種族・ブラウニーが多く集まる町で、建築物が他の町よりも小さく他の種族では入れない建物もある。
もちろん冒険者ギルドなどの重要な施設は全種族入れるユニバーサルな設計になっているから安心だ。
おもちゃのような町並みを通り抜け冒険者ギルドにたどり着く。
「あった、職業案内所!ここで転職できるんだね」
「うん、案内員と話して転職したい職業を選ぶと職業ごとのNPCが出てきてジョブクエストが始まるんだけど……とにかくやってみるのが早いね」
「OK、案内員さんお願いします」
話しかけられた案内員さんはにっこりと微笑み、説明を始めた。
「こんにちは、ここは職業案内所です。他の基本職への転職や上位職への転職が行えます。カカソーラ様は現在以下の職業を選択できます」
ウィンドウが浮かびそこには最初に選べる8つの基本職のうち剣士以外の7つが並び、その下に剣士から派生した3つの上位職が続いている。
『上位職
騎士
片手剣と盾を装備し戦う誇り高き守護者。
役割はタンク。
銃剣士
複合武器・ソードバレルを巧みに使いこなす守り人。
役割はタンク。
侍
東方から伝わった刀を振るう武者。
役割はDPS。』
横にいるアルカナがそれらを簡単に解説する声が聞こえた。
「騎士は良く言えば正統派、悪く言えば地味なタンクでいくつかの戦闘スキルを覚えるために一回通るプレイヤーは多いけどメインにしてるのは少ない職業。侍はシンプルに高火力な上に装備アイテムもカッコいいのが多い人気職業。そして銃剣士は……」
銃剣士。
そう、銃剣士だ。これが気になって正直他の職業のことはどうでもよかった。
だってこの複合武器・ソードバレルって……
「『ドラゴンファンタジー・ソードバレル』に出てきたやつじゃん!主人公のリオンが使ってるめっちゃカッコいい武器!!」
「予想通り食いついたね」
「食いつくよ!僕が一番やり込んだゲームだよ!!」
そう、僕が秘ちゃんに貸してもらったメインシリーズというのが『ドラゴンファンタジー・ソードバレル』、傭兵の主人公・リオンの成長を描いた作品だ。
剣と銃を組み合わせた複合武器・ソードバレルを使った戦闘が爽快感抜群で、ミニゲームの「エレメント・シャッフラー」っていうカードゲームが無限にやり込める作り込みで……とにかく僕はこのゲームに夢中になった。
あと主人公の性格がかわいいんだよね、心の声めっちゃ流れるし。
「もしかして最初の職業に剣士勧めたのは銃剣士になれるから……?」
「その通りだよ、やりたいでしょ?銃剣士」
「やりたい!流石僕のことわかってるね!!」
僕は大興奮で銃剣士を選択、するとどこからともなくNPCが現れて僕に語りかける。
「あんたが銃剣士になりたいっていう冒険者かい?あんたは運が良い、今サマレンに伝説の傭兵が来てるからな」
『ジョブクエスト:銃剣士の伝説を受注しました』
「このクエストを進めると銃剣士になれるんだね。っていうか伝説の傭兵ってさ……」
「さあどうでしょう?」
アルカナがにやりと笑う。
もうこれ絶対に僕が思ってる通りのやつじゃん!
僕達は時間を惜しんで、ワープを使ってサマレンに移動することにした。
DFOでのワープはいつでも使える代わりにG――ゲーム内通貨を消費する。
なのでここまでは出来るだけ使わずに来たが今こそ使い時、一瞬で目的地に移動である。
そしてやって来たサマレンという町はフルッタとは真逆、巨体の種族・トロールが多く暮しているという設定の町だ。
ワープポイントから各施設への移動が最悪という秘ちゃんの情報通り、色々と不便な町並みをしている。心なしか見かけるプレイヤーの数も少ない気がする。
そして今回の目的地である伝説の傭兵がいるという酒場もワープポイントから絶妙に遠かった。
「ちょっとの移動時間がめんどくさい!でも来たよ伝説の傭兵のところ……ってウワーッ!!」
クエスト目標であることを示すマークを頭上に浮かべたNPCを見て僕は叫んだ。
そこにいたNPC、伝説の傭兵さんの名前はルクス――『ドラゴンファンタジー・ソードバレル』に登場した超カッコいいおじさまキャラで主人公の父親と同じ名前だ。
グラフィックは進化しているものの見た目もそっくりでもう騒がずにはいられない。
「やっぱりルクスじゃん!!すごいファンサービスだね」
「そこもDFOの魅力なんだよね、期待以上に喜んでもらえて満足だよ。チャットがパーティモードになってなかったら大変なことになってたね」
アルカナの指摘で僕は少し冷静さを取り戻す。
今ボイスチャットはパーティを組んでいる人にしか聞こえない様になっているが、うっかり近くにいるプレイヤーにも聞こえる状態になっていたら変な人として見られるところだったのである。
「あはは……恥ずかしいことになるところだったね。ちょっと落ち着いてクエスト進めようか……」
「ん?お前、俺に何か用かい?」
「ウワーッ!声優さんも原作と同じ!!」
「ステイ、ステイ」
全く落ち着けないジョブクエストだった。
それでもなんとかルクス(DFO版)と会話を進め、銃剣士専用装備一式をもらって転職に成功。
すぐに使える基本的な戦闘スキルの講座を直接してもらえるという至れり尽くせりの内容を満喫したのだった。
「最高だった……」
「良かったね……沼にはめられたみたいで満足、じゃなくて喜んでもらえて満足だよ」
めっちゃ楽しんでるから言い直さなくてもいいんだけどね。
ヤバいな、憧れの武器をコントローラー越しじゃなくてVRで動かせるとこんなに楽しいとは。
「あのさ、銃剣士の操作に慣れたいから今から練習しに行っていい?」
「もちろん!戦闘スキルの回し方とかも教えてあげるよ」
わーい、僕の彼女超頼れる!
それじゃあ練習(モンスター乱獲)に行きますか!!




