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(最低だ)

【前回までのあらすじ】


・主人公・マキ → 研究所に到達。不死身の肉体を失って瀕死

・ハル・ランス・クロ・その他チーム → 防衛戦に勝利

・エドとナナ → エキィーンキングを撃破

・サリー・レイ → 合流。ウォーリー?の壊れた頭部を見つける

・ウォーリー → アルティメットグレートウォールにボコられる ← 今回ここ


時間的に前回から少し戻って、「3度目のグレートウォール」の直後です。

「・・・排除・・・排除・・・スル・・・。」


アルティメット・グレートウォールはその巨体からもうもうと煙を立ち上らせながら、両腕に搭載された巨大な銃器を持ち上げる。その動きは鈍く、銃口は安定せずにフラフラと彷徨っている。


あと一歩。


あとひと押し。


あと一撃食らわせれば、仕留められるに違いない。


まともに大型レーザーを食らったウォーリーは、しかし敵と同じように身体から煙を上げながら立ち上がった。


こちらもダメージは深い。


多少減衰したとはいえ、まともにレーザーを食らったのだ。


そして何よりも問題なのは、唯一の武器である【ハリケーン】を失ってしまったこと。


敵をよく観察すれば、身体から生じた煙が周囲に広がることなく真っ直ぐ上に、まるで見えない煙突でもあるかのように円筒形に昇っていく。機体の周囲をグルリと囲む重力フィールド装置が健在なのだ。


あの最強の盾をかいくぐり、その先にある強固なボディを貫くには【ハリケーン】が必要だ。エド少年は以前、生身の身体でフィールドの隙間をかいくぐったというが・・・あれは身体の小さなエドだからこそできた技だろう。身長2メートル以上のウォーリーには不可能だ。


「ぬぅぅ・・・これは困りまシタ・・・。」


高い防御性能を誇るウォーリーのボディだが、しかし表面の装甲が強烈に焼き付いてしまっている。彼の動きはぎこちなく、もはや敵の攻撃を避けるのも難しい。


「・・・ハイ、ジョ・・・スル!」


敵の主力兵器、レールガンの発射口がウォーリーを捉えた。思わず身構えるウォーリーだが、しかし電磁加速された砲弾が発射される気配はない。


「・・・?」


続けてレーザーもウォーリーの方を向くが・・・やはり、これも発射されることなく、両者の間を沈黙が流れた。


「・・・コレは・・・動作不良デスネ!」


そう、アルティメット・グレートウォールのダメージは、ウォーリーの想像以上に深刻だったのだ。ボディに深々と突き刺さった【ハリケーン】の弾丸は敵の上半身と下半身をほとんど分断寸前になるほどの損傷を与えていた。動作は不安定になり発電量は安定せず、膨大な消費電力を必要とするレールガンもレーザー砲も使用不能になっていたのだ。


表情などないアルティメット・グレートウォールはしかし、明らかにうろたえていた。ガタ落ちした電力で重力フィールドを維持しつつ、わずかな余剰をレーザー砲にかき集める。一撃・・・なんとかして一撃を放てば勝負は終わる。どのみちウォーリーに重力フィールドを破る方法はないのだから、焦ることはない。


そんな敵の思考を察したウォーリーは、今が最後のチャンスであると考えた。この強大な敵・・・っていうか兄弟な敵・・・うまいこと言った・・・に勝つための最後のチャンスである、と。


(イリスサマ・・・必ず、帰りマス。)


そして、ボディに搭載された切り札を解放する。


「オーバードライブ機能」。それは180秒の間だけ、圧倒的なパワーを発揮する彼の切り札だ。それは彼の妻を凶悪なパワードスーツから助けた力。彼に残された、文字通り最後の力である。もし、その約束された時間を過ぎてしまえば体内のジェネレーターが爆発し、命を散らしてしまう両刃の剣。


人工筋肉が膨張し、はちきれんばかりの力がボディの中から湧き上がる。その姿は、大昔の映画に出てきた筋肉自慢のアクションスターのようだ。白い豆腐ヘッドの中で、熱い闘志が燃え上がる。ウォーリーの赤い瞳が真っ直ぐに敵を睨みつけた。


「来いよアルティー!銃なんか捨ててかかって来い!!」


「あ・・・アルティー?・・・対話を拒否スル。」


急に謎の愛称で呼ばれたアルティー・・・アルティメット・グレートウォールは戸惑った。敵の話を聞く気はないが、そもそも彼の武器は腕と一体になっているので捨てられないし、そんなこと見れば分かるはずだからだ。


ウォーリーはまったく無造作に、アルティーに向かって前進を開始する。その歩みには一切の迷いはなく、力強い足音はどんな方法でも止められないと感じさせる何かがあった。


「愚かナ・・・重力フィールドを集中スル・・・潰れヨ。」


当然、アルティーは黙って見ていたわけではない。重力フィールドをウォーリーの前に集中し、電力が確保でき次第、いつでも発射できるように銃を向ける。


そしてウォーリーは、重力フィールドに接触した。自動車程度なら空き缶のように潰すことが可能な破壊的重力が、彼の身体に襲いかかる。


「・・・フン!」


しかし、彼は潰れない。


止まらない。


ナナでさえも動けなくなったパワー受けてなお、ウォーリーの前進を止めることはかなわなかった。


「バ、バカな・・・!」


「間合いデス。」


ウォーリーはたどり着いた。重力フィールドの内側、手を伸ばせば届く距離。巨大なアルティーが見下ろし、ウォーリーが見上げていた。


「ゥオラァッ!」


金属と拳がぶつかる、凄まじい衝撃音が響いた。ウォーリーの放った右フックがアルティーのボディに突き刺さったのだ。


「グッ・・・ヌウゥッ!」


しかしアルティーも負けてはいない。巨大なレールガンが唸りを上げてウォーリーに殺到し、まるで元々打撃用の武器だったとでも言わんばかりに圧倒的な重量でウォーリーの身体にめり込んだ。


精密な射撃用の兵器を、迷うことなく打撃に使用する。素晴らしい応用力、さすがはグレートウォールの名を関する防衛兵器である。


これは決まってしまったか!?


「効きませんネッ!」


いや、ウォーリーも負けてはいない。分厚い筋肉の鎧は、いかに強力でも一撃では破られないのだ。すかさず繰り出したボディブローがアルティーに突き刺さる。


殴り、殴られ、そしてまた殴る。


凄まじい打撃音だけが響いた。


策もなく、ただ2体のロボットが・・・いや、男と男が殴り合っていた。


それは激しくも美しい、どこまでも純粋な形の闘争であった。


永遠に続くかと思われたパンチの応酬は、しかし突然にその均衡を崩す。アルティーの放った一撃が、ウォーリーの頭部を激しく打ち据えたのだ。


「ヌ・・・ハッ・・・」


ウォーリーの視界を大量のエラー警告が埋め尽くし、意識が途切れる。


彼は束の間、夢を見ていた。ほんの数時間前、アリノスでの出来事だ。



そこはアリノス内にあるたくさんの部屋のうちの一つ。ミリィが気を利かせて用意した個室だった。


簡素なベッドがひとつだけ置かれたその部屋で、ウォーリーは妻イリスとふたりきり。


イリスは頬を赤らめて、そっと自分の衣服を脱ぎ去った。静かな部屋の中、衣擦れの音だけが聞こえる。


「ウォーリー・・・今日は、最後まで・・・して、ね・・・?」


2人はまだ、プラトニックな関係を貫いていた。妻の心が癒えるまで、笑って愛し合えるようになるまで我慢するというウォーリーの誓いは本物だったのだ。彼は本物の男だった。


だから、イリスは今だと思った。


この戦いはいつもとは違う。彼は帰ってこれないのかもしれない。


だから今しかない、そう思った。


ウォーリーは妻の眩しい裸身を高画質でこっそりと録画しつつ(最低だ)、そっと彼女をベッドに押し倒す。


「イリスサマ・・・。」


「うん、いいよ・・・きて・・・。」


そして、そのまま・・・彼女をシーツで包み、身体を離した。イリスはショックを受け、目の端に涙を光らせて彼を見る。


「どうして、ウォーリー・・・?私じゃあ、ダメなの・・・?」


「違いマス・・・貴方でなければ、いけまセン。貴方を心から愛しているのデス。」


「それじゃあ、どうして・・・。」


「自宅でしたいデス。」


「・・・え?」


「ここでスルのでは、まるで我が帰ってこないみたいではないデスか。初めてスルときは、自宅のベッドでスルと決めているのデス。」


「でも・・・でも・・・!」


「きっと帰りマス。」


「・・・。」


「きっと、必ず我は帰りマスから。だから、帰ったら、我として欲しいデス。家で・・・前の家はネコの町と一緒になくなりましたケド、また新しい我と、イリスサマの、家で・・・だめ、デスか?」


イリスの大きな瞳から、涙がこぼれた。なんて綺麗な涙なんだろう。ウォーリーはそう思った。


あと、こっそり録画した(最低だ)。


「きっと・・・きっと、帰ってきてね。私、ずっと待ってるから。」



夢から、覚めた。


帰らなければならない。


待っている人が、いるのだ。


待ってくれている人が、いるのだ。


ふらつくウォーリーの頭上に迫る、凶悪な金属の塊。レールガンと大型レーザー砲が、まるで2本の鉄槌のごとく振り下ろされるところだった。


「愛妻パワァァァァァァァァ!」


必殺の威力で振り下ろされる攻撃を両腕で受け止める。アルティーはそのまま押しつぶそうと、ウォーリーは押しつぶされまいとして、2人の男がギリギリと組み合った。


圧倒的な重量を前に、悲鳴を上げるウォーリーの筋肉。勝ち目の薄い力比べは、しかし彼の気迫ひとつで均衡を保っている。


彼は、叫んだ。力の限り、その気持ちを叫んだ。


「我は・・・帰って、カワイイ奥さんとエロいことするんデスゥゥゥゥゥゥ!」


それは確かに、彼の魂の叫びだった(最低だ)。

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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