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体育会系

【前回までのあらすじ】


・主人公以外、みんな強い

「それじゃ、ちょっと耳を塞いで口を開けててよ。」


言うが早いか、リリィは起爆スイッチを押した。発破のときは口を開けていないと鼓膜を痛めるらしい。大きな爆発が起きて土が飛び、通路に煙が充満した。ついでに俺の耳を塞ぐのが遅れたので、耳がキィーンってなった。


俺以外はみんなしっかり耳を塞いでいたようだ。キィーン。なるほど鼓膜を痛めるらしい。身をもって実感できたので、次からは大丈夫だと思う。キィーン。サリーが何か言っている。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜よ。ぇてる?」


「はいはい大丈夫だよ!ハンカチもティッシュも持ってるよ!」


「誰も忘れ物の話なんてしてないわよ。ここからは先は人間が入ったことのないエリアだから慎重に行くって言ってるの。」


「ああそう。」


カンは外れたが、耳はすぐに元通りになった。見れば発破で土砂の一角が崩れ、人がひとりギリギリ通れる程度の穴が開いている。こんなところで爆発物を使ったら余計に天井が崩れるんじゃないかと思ったけど、素晴らしい爆破技術だ。


「おお、リリィさん、すごいですね。」


俺が褒めると、リリィさんは照れたように鼻の頭をかいた。普段の強気そうな顔は彼女を大人びて見せるが、彼女もまだ16か17ぐらいの少女なのだ。


「へへっありがと。あたしのおねーちゃんが爆破の達人でね。負けないように爆破技術だけは徹底的に鍛えたんだ。」


「お姉さんがいるんですか。リリィさんが目標にするなんて、きっとスゴイ人なんですね。」


俺の何気ない言葉に、リリィさんとニックはふと黙り込んだ。・・・うん、俺でもわかるよ。地雷踏んだねこれ。


「おねーちゃんは死んじゃったんだ・・・ここ・・・トキオステーション遺跡でね。」


リリィささんの言葉を継ぐように、ニックの低い声が響いた。


「そうだ、カレンはここで死んだ・・・俺を逃がすために・・・俺のせいで、ここで死んだんだ。」


「それは違うよ!おねーちゃんが死んだのはニックのせいじゃない!」


「うるさい、リリィ!お前に何がわかる!」


おいおいやばいよ、とりあえず土下座でもしとけばいいかな?俺がビクビクしていると、しかし2人の言い争いはピタリと止んだ。代わりに押しつぶされるようなプレッシャーが辺りを支配する。プレッシャーを発しているにいるのはもちろんサリーだ。俺に向けられたものではないとはいえ、あまりの怖さでちょっと涙目になる。


張り詰めた空気の中、彼女の冷たい声が静かに響いた。


「あなた達・・・プロでしょう。事情かあるのは察するけど、こんなところでケンカするようなら・・・。」


サリーがブレードの柄にそっと触れると、リリィがゴクリとツバを飲み込んだ。ニックが慌てて両手を上げ、反抗の意思がないことをアピールする。


「スマン、悪かった・・・この仕事を請けた理由に私情を挟んでいるのは認める。だが足を引っ張るようなマネはもうしないと誓う。」


ヒゲ面の渋い男が黒髪の美少女に言い訳している様はちょっと笑えるが、俺に笑っている余裕はない。正直ちょっとパンツも濡れた。サリーがプレッシャーを解くと、皆があからさまに安堵するのがわかった。でも一番ホッとしたのは俺だ。しかしパンツの代えはない。もしこの後カッコよくマキちゃんと再会することができたとして、その感動的な場面でも俺のパンツは湿っているのだ。そう考えると俺のテンションはガタ落ちである。


とにかく俺たちは、未だ人類が入ったことのない領域に踏み込んだ。あたりに大きな変化はなく、相変わらず薄暗くて広い通路が伸びている。


「ご主人さま、レイは気にしないですよ。」


「やめて。泣きそう。」



「サリーさん、そっちに行ったぞ!」


「任せなさいッ!」


「バックアップはレイが入るです!」


「ニック、バリィ、右からも来てるよ!」


「・・・えっと・・・。」


敵は多く、そして強かった。エキィーンは地下の階層にしか出現しないのか、いまだ姿を見かけることはない。しかし少し進むごとに多種多様なナマモノが出現し、俺たちの行く手を阻んだ。ここはナマモノの王国、人間が歓迎されることはない。


今俺たちを取り囲んでいるのは、クモのようなナマモノの群れだ。体長は1メートルほどとそれほど大きくはないが、10体以上のクモが素早い動きと連携でじわじわと攻めてくる難敵である。


少しずつ包囲をせばめてくるクモ達を見てゾワリと背筋が冷えたが、俺たちも負けてはいなかった。数回の戦闘を経て連携が確実に向上しており、お互いをカバーしながら堅実な戦い方ができるようになってきている。


「これでも食らいな!」


リリィさんが至近距離にグレネードのようなものを放った。爆発に巻き込まれると思って一瞬焦ったが、空中で破裂したそれは粘着質の液体を撒き散らす粘着爆弾だった。数匹のクモが動きを封じられるとすぐにサリーが切込み、クモたちの連携は瞬く間に崩れ去る。


「もらった!」


「レイも負けてられないです!」


ニックのアサルトライフルが火を噴き、レイの爪が暗闇を切り裂く。優位を失ったクモたちは、熟練の戦士たちによって一気に駆逐された。俺?俺はなんていうか・・・囮?そう、囮的な役回りだよ。うん、たぶんね。


「ふう、ちょっとだけ危なかったな。」


「まだまだ、この程度は危険なうちに入らないわ。」


「サリーさんは余裕よね。見習いたいよ。レイさんもすごい動きだったし。」


「ふふん!リリィさんの粘着ボムがなかったら、こんなに簡単にはいかなかったですよ!」


「・・・。」


なにこれすっごい疎外感。


っていうか体育会系のノリ。


別に悲しくなんてないよ。ないけどさ・・・こういうノリ、苦手だし?別に参加したいとか思ってないし?


残念ながら、俺のホワイティは彼らの超高速な連携についていくほどの性能はなく、無理やり参加しても邪魔にしかならないだろう。俺本人の能力はなおさらだ。ごめんなさい、こんな時どんな顔をしたらいいかわからないの。泣けばいいと思うよ。ぐすん。


せめてハッキングしないと開かない扉とかがあれば、俺の出番もあると思うのだが・・・俺、ハッカーだし・・・。


その時、まるで俺の願いが通じたかのように目の前に壁が出現した。押しても引いてもビクともしない、頑丈そうな電子制御の隔壁だ。おあつらえ向きに、扉の横にアクセス用のパネルまである。


「おお・・・ロックされた隔壁だ・・・し、仕方ないな、俺が開けるしか・・・」


俺が端末を取り出そうとすると、後ろを歩いていたレイがパッと駆け出して俺の前に出た。おい、レイ、まさか、待ってくれ。


しかし俺の気持ちも虚しく、レイは皆の前で堂々と宣言した。


「こんな隔壁、レイがちょちょいとハッキングして開けてやるですぅ!」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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