ランチャー使いと爆弾娘
【前回までのあらすじ】
・メンバー募集中
【用語解説】
・レイダー
遺跡を発掘する人のこと。狩りをする人はハンター。
・レンジムシ
足が生えた電子レンジ。雑魚。たぶんスライム的ポジション。
新メンバー視点のお話。
俺の名前はニック。流れ者のレイダーだ。
俺の足元でワンワン言ってるナマモノは相棒のバリィ。このへんじゃあまり見かけない「ランチャードッグ」ってナマモノだ。俺とバリィは一心同体、ランチャー使いのニックといえばそこそこ有名、知らないヤツはモグリと言っていい。
「ちょっとニック、またその張り紙を見てたの?そいつは地雷だって結論になったじゃないか。」
話しかけてきた女は、俺とコンビを組んでるリリィだ。
長い金髪のツインテールを揺らし、気の強そうな目を俺に向けている。「爆弾娘のリリィ」は大型のナマモノにも臆することなく向かっていって爆殺する命知らずのレイダーとして、このあたりで有名になりつつある。
初めてコンビを組んでからもう2年になるが、あの頃と比べるとすっかり子供らしさが抜けて、いっぱしのレイダーらしい雰囲気をまとわせるようになった。2年前はやかましいただのガキだと思っていたが、いつの間にこんなに成長したのか。切れ長の目は彼女の姉に似ていて、キツイ性格をよく表しているが美人である。
もっとも美人というのは良いことばかりではなく、こういう酒場ではしばしばトラブルの元になる。先日もうかつなハンターがリリィの尻を触ってアゴの骨を砕かれたばかりだ。
「ああ・・・だが、案外そうでもないのかもしれん。」
俺は今、酒場の壁に向かって立っている。そこにはゴチャゴチャと壁の隙間の存在を許さないとでもいわんばかりに、多種多様な紙が貼ってあった。内容はまさになんでもあり、採集依頼やメンバーの募集、近所の雑貨屋の安売り情報など、ほとんど暴力的なほどにバラバラだ。
- アイロンマジロ高額買取 -
- 不死身の血まみれジョージ 目撃情報求む -
- 注意喚起 大型の扇風機系ナマモノが町の付近を徘徊しています -
- ガンナー募集 女性歓迎 巨乳優遇 -
そんな中で、数日前から貼り出されている一枚のメンバー募集が俺の目を引いていた。
- 急募 トキオステーション遺跡 発掘の護衛 成否問わず高額報酬 前金あり -
トキオステーション遺跡。
それは俺にとって因縁の場所だ。
数年前、ランチャー使いという異名がレイダーの間に浸透し始めた頃。調子に乗った俺は、誰もが恐れるトキオステーション遺跡に挑んだ。そして手酷いしっぺ返しを食らい、鼻っ柱をへし折られると共に大切なものを失った。
本来、流れのレイダーは同じ町に留まったりせず、カネになりそうな遺跡を次々と渡り歩いていくものだ。だがあの失敗からずっと、俺はこの町を離れられずにいる。
トキオステーション遺跡。
あそこへリベンジする機会を待っていた・・・といえば聞こえはいいが。
実際にはあの時の恐怖が頭を支配し、一度たりとも再アタックできていない。ただ未練たらしく遺跡の近くに居座り、何年にも渡って後悔を垂れ流し続けていたに過ぎないのだ。
「そうでもないって・・・どういうことよ?こんなに条件がいいメンバー募集なんて、怪しすぎるじゃない。」
リリィが怪訝そうな表情を向けてくる。俺はあごをしゃくって店内の端、ひとつのテーブルを指し示した。そこには顔色の悪い男と大型のブレードを下げた女が座り、見たことのない不思議なナマモノがテーブルに寝そべっている。
「あれがメンバー募集をかけた連中だ。・・・確か数日前に募集を見かけた時は、あの女はいなかった。だから地雷だと判断したんだ。」
あの顔色の悪く、まるで覇気のないヒョロヒョロの男。
あんな男と一緒では戦力どころか足手まといだ。いくらカネを積まれても、アレとトキオステーション遺跡に挑むバカはいるまい。レンジムシのように弱そうだ。
だがあの女・・・あの女はどうだ。
ただ座っているだけにもかかわらず、所作にまるでスキがない。うかつに銃口を向けようものなら、腰のブレードで死んだことすら気づく間もなく両断されるに違いない。100人がいたら200人が振り返るような美人だが、声をかける者もいない。みんな本能であの女の危険さを察知しているのだろう。まるで大型の重機だ。
リリィが自然な動作で、気づかれないようにチラリとテーブルの方を見た。店内はハンターやレイダーで混み合い、しかも10メートル以上離れている。たとえ堂々と観察したって普通は気づかないだろう。
しかし女はこちらを見た。リリィの視線に気づいたのだ。やはりただ者ではない。
「・・・なにあれ・・・ホントに人間?」
リリィは両腕で身体を掻き抱くようにして一歩引いた。女の視線に耐えられなかったのだろう。あちらとしてはただ視線を向けただけだろうが、重機にチラリと目を向けられたレンジムシの恐怖は計り知れない。
「めったなことを言うな。肉にされても知らんぞ・・・だが、間違いない。アタリだ。」
「え?」
「いくぞ、リリィ。トキオステーション遺跡の攻略だ。」
「えっ・・・ちょっと、本気?あの募集に乗るつもりなの?」
戸惑うリリィを無視して、俺はまっすぐにテーブルの方に向かった。近づくにつれて増していく、肌を刺すようなプレッシャー。これは重機どころではない、悪魔、いや、魔王だ。だがそれでいい。あの悪魔の巣窟を攻略できるなら、魔王でも幽霊でもかまわない。
テーブルの前に立ち、声をかけた。まるでレイダーになりたての頃のように緊張する。
「おい、アンタ達がトキオステーション遺跡にアタックしようって連中だな?まだメンバーの募集は有効か?」
魔王は一瞬悲しそうな顔をした後、まるで天使のように美しい笑みをたたえてこちらを見た。
「もちろんよ・・・ようこそ、チーム『サリーズ』へ。」
悪魔の言葉にレンジムシ男が抗議する。
「ちょ、ちょっとサリー?そのチーム名はやめようっていったじゃん・・・?」
「ダメよ、『マキちゃん捜索隊』なんてカッコ悪いわ。」
「『レイちゃんズ』がいいです。」
悪魔とレンジムシが普通に言い争い、テーブルの上のナマモノまで喋っている・・・。なんだこれは、なんなんだこいつらは。
あまり他人に興味がない俺だが、さすがに頭を整理したい。考えるより先に質問が口から飛び出した。
「その、なんだ・・・あんたたち、どういう関係なんだ?」
テーブルのふたりと1匹は顔を見合わせてから言った。
「恋人とそのペットよ。」
「愛し合う主従と知り合いの女ですぅ!」
「・・・友達?」
わけがわからん。




