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野生の電子レンジが襲ってくる世界にきました -天才ハッカーのハッキング無双ライフ-  作者: じいま
長距離通信網その3 第13機密兵器研究所編
126/202

頼れる女

【前回までのあらすじ】


・レイさん、かっこよかった頃に戻る

「ご主人様、とにかく逃げ」


マキちゃんの言葉が終わるより早く、レイの手から巻き起こる爆風で俺の身体は吹き飛ばされた。ゴロゴロと転がって空間の一番奥、中央演算装置にぶつかってようやく停止する。ナノマシンのおかげで相変わらず痛くはないが、全身血まみれで服はボロボロだ。


軽めの一撃でこの有様。生身の人間が戦闘用アンドロイドのレイと戦うのは不可能だし、彼女の攻撃力をもってすればナノマシンの再生力を無視して俺を消滅させるのも簡単だろう。のんびり床に転がっている場合ではない。どうにか頭を上げると、背後から低い声が響いた。


「侵入者・・・排除ォ・・・」


「中央演算装置が喋ってる・・・。」


「あまり複雑ではなさそうですが、このビル自体にAIが搭載されているようですわ。これがレイの人格データをリカバリしたのでしょう。」


何千年も孤独に研究を続けてきたAIか。尊敬はするが、とりあえずこれはチャンス・・・この状況を逆転できる、最初で最後のチャンスのようだ。俺の目は、中央演算装置にメンテナンス用のコネクタがあるのをすでに見つけている。俺は起死回生の一撃を放った。


「マキちゃん、あとよろしく!」


「お任せください。」


一撃じゃなかった。一言だった。マキちゃんのホログラムがハッキングのため俺の前から消失し、無表情のレイがゆっくりとこちらに歩を進める。歩くたびにホログラムの時にはなかった長い髪と、豊かな胸部装甲・・・装甲っていうか胸・・・が揺れ、状況も忘れてガン見してしまった。


1秒、2秒、3秒・・・


さすがに3秒でハッキングというわけにはいかないか。とはいえそれでも10秒ぐらいあれば、マキちゃんならやってくれるはずだ。


8秒、9秒、10秒・・・


気が付くと、レイは俺の目の前に立っている。その白くしなやかな腕を軽く振ると、それだけで俺の身体は3メートルほど横に吹き飛んだ。肋骨が何本か折れて身体から飛び出している。


15秒、16秒、17秒・・・


おかしい、遅すぎる。レイが口を開く。


「簡単には殺さない。じっくりといたぶってやる。」


その言葉と裏腹に、レイの声色はどこまでも冷淡で何の感情も感じさせない。この状況で俺にできることは・・・とりあえずトークだ、それしかない。


「レイ・・・」


「・・・なんだ、人間。」


「・・・やさしくしてね?」


「・・・。」


軽口を叩く俺の身体をレイが容赦なく踏みつけた。・・・心なしかイラッとしたように見えるが気のせいだろうか。ポキリというかグシャリというか、そんな音がして俺は口から血を噴き出した。マキちゃん、どうした。・・・まさか、またトラップを食らって気絶してるのか?


「ふん。」


「おわっ!」


レイがまるで空き缶のように俺の身体を蹴り飛ばし、俺の身体はまさに空き缶のように高い放物線を描いて飛ぶ。しばしの浮遊感のあと、固い床にぐしゃりと落ちた。痛くはないがびっくりする。視界の隅に、先ほど入り口で番をしていた2体のアンドロイドが映った。おそらくレイも含めた全てのアンドロイドが情報を共有していて、レイの加勢に来たのだろう。もともと開きすぎている戦力差がどんどん開いていくぞ。いよいよマキちゃんのハッキング以外に生き残る方法がなさそうだ。助けてマキちゃん。


「・・・立て、人間。次は◯◯◯を◯◯◯してやる。」


「初めてなのに・・・レイさんったら思ったより積極的げふぅ」


「黙れ。」


しかしマキちゃんが応答しない。ハッキングを始めてからもう1分は経っている。ホウレンソウがしっかりしている彼女が応答しないなんて、ただ事ではない。こうなったら俺もハッキングを・・・それとも、得意のトークでレイをチョロまかすか?血まみれの身体を起こしながら必死に作戦を練る。今のところ、攻撃してくるのはレイだけで他のアンドロイドは遠巻きに見ているだけだ。人間1人程度、彼女らから見ればどうにでもなる相手ということか。レイ1人ぐらいなら、うまくトークすればなんとかできる・・・かもしれない。他のアンドロイドが出て来る前に、前に・・・。


「レイ、なにをしている。さっきから見ていれば無駄なことを。」


「・・・ゲッ。」


言ったそばから他のアンドロイドが参加してきやがった。気が付くと、俺を囲むようにガンマとシグマと呼ばれていた2体のアンドロイドが立っている。焦って頭を起こそうとすると、レイがサッカーボールのように俺の頭を地面に踏みつけた。おいおい、昔のサッカー少年が言ってたんだけど、サッカーボールって友達らしいよ。蹴っ飛ばしていいから仲良くやろう。レイは2体のアンドロイドに向かって淡々と答える。


「ガンマ、シグマ。レイは人格データを改ざんされていた。屈辱だ。この人間は簡単には殺さない。」


ふたりのアンドロイドは顔を見合わせ、それからレイに向けて言った。


「屈辱・・・?不合理な感情に不合理な行動だ。もういい、レイ。」


「簡易リカバリでは戻りきらないほどにお前のAIは損傷しているようだ。メンテナンス室に行き、完全リカバリを受けてこい。その人間は我々が消滅させておく。」


「・・・。」


ガンマと名乗ったアンドロイドは俺に手のひらをかざした。その手に激しい光が集まり、エネルギーが溜まっていくのがわかる。これは前にレイに食らいそうになったヤツ。喰らえば俺も簡単に消滅できるだろう。走馬灯がビュンビュン見える。


「レイ、はやくどけ。メンテナンス室の場所を忘れたのか?」


「・・・。」


「レイ、どうした?そこをどくんだ。」


「・・・。」


レイは答えない。俺を踏みつけながら・・・いや、これ・・・もう踏みつけてない。踏みつけているフリをしているだけだ。


不思議に思って、踏まれたフリをしながらそっとレイの方を見上げる。見事な脚線美と滑らかな腰までのライン、そして豊かな膨らみ。ん、豊かすぎる膨らみのせいでレイの顔が見えない。これはこれでいい眺めだが。などど思っていると、レイは少し前かがみになり、俺を見下ろした。


やっと見えた彼女の顔は・・・優しく笑っていた。


「・・・ご主人さま、そんな下からのエグい角度でレイを見ないでほしいです。変態ですか?」


「・・・不可抗力だよ。」


次の瞬間、レイの身体がすさまじい速度で飛び出し、そのパンチがガンマの身体を砕いた。打撃の瞬間にプラズマの光が瞬き、敵のボディを文字通りのバラバラに分解する。驚いたもう一人のアンドロイド、シグマはとっさにプラズマ放射を放つが、レイは身体を低くしてかわして懐に潜りこみ、シグマの頭を掌底で吹き飛ばす。不意を突かれた2体のアンドロイドは一瞬でスクラップになった。


俺はヨロヨロと起き上がり、レイの背中に声をかけた。


「レイ、・・・その、なんだ・・・思い出した?」


レイはゆっくりと振り返って、にっこりと笑った。髪が伸び、身体が豊満になって雰囲気がグッと大人びたけれど、その輝くように無邪気な笑顔は間違いなく俺の知っているレイだ。


「ご主人さま、言ったはずですよ。レイがみんなを裏切るなんて、『ある日とつぜん無職でダメ人間なご主人さまにチート能力が芽生えて悪者たち相手に無双しまくる展開』ぐらいあり得ないです!」


「そのネタ、3回目だよ。」


「なかなかナイスなツッコミです、くふふふふふふ・・・。」


「へへへへへへへ・・・。」


静かな空間に、2人の笑い声が響いた。しかしその笑い声もすぐに止まる。壁に沿って無数に設置されたアンドロイド入りのカプセルが、次々と開き始めたからだ。中からは当然、戦闘用の強力なアンドロイドが次々と飛び出してくる。その1体1体がレイと同等、ナナ以上の戦闘能力を持ったアンドロイドだ。その数は100以上。外を飛び回ってたアンドロイドたちも含めれば、200以上のアンドロイドに取り囲まれていることになる。


敵は圧倒的。

マキちゃんは消息不明。

俺は・・・いてもいなくても一緒か。


状況は最悪、生きて脱出する方法が1ミリも思い浮かばない。そうこうしている間にも、俺とレイの前には着々とアンドロイドが増えていき、すでに隙間なく人垣ができていた。


「レイ・・・。」


「ご主人さまを蹴っ飛ばして時間稼ぎできるのはここまでですね・・・。」


やっぱり俺をいたぶってたのは、マキちゃんが戻るまでの時間稼ぎか。しかしこれだけ待っても戻ってこないのだから、マキちゃんに何かあったのは間違いない。あきらめムードで彼女の名を呼ぶと、しかしレイはにっこりと笑って俺を見た。


「ご主人さま、これも言ったはずですよ。」


「え、なに?」


「ご主人さまは、レイが守ってあげるです!」


悪夢のように居並ぶ敵の軍勢を前に、しかし太陽のように笑うレイ。ただの空元気なのはわかっていても、その笑顔は弱気になった俺の心を温かく照らした。


あんまりにもレイの顔が眩しくて思わず目を逸らしてしまう。なんだか顔が熱い。そんな俺を見て、レイはさらに続けた。


「頼れるレイちゃんに惚れてしまってもいいんですよ?」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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